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ストップ・ザ・老化!
第4回
若さを保つ“腎”養生法

 今回は中医学の考え方を中心にお話させていただきます。

 中医学では、宇宙のあらゆるすべての物事は、陰と陽の2つに分けられるという「陰陽学説」 (例えば、寒がりの人は陰証、暑がりの人は陽証など)と、もうひとつ5つに分ける「五行学説」 という考え方の2つの学説があり、これをあわせて「陰陽五行学説」とよんでいます。




 陰陽学説は、その人の体質である「証」の診断や、生薬の分類(陽薬や陰薬)などに使われる、 中医学のベースとなる考え方です。
 一方、五行学説は、本当に世の中すべてのものを、五行(木、火、土、金、水)に分類する考え方です。 これがどれもなるほど!と感心するものばかり。
 主なものをご紹介しますと、例えば「五臓六腑にしみわたる」という言葉がありますが この五臓とは、肝、心、脾、肺、腎の5つを指します。続いて五感(中医学では五官と書く) を働かせるという言葉の、目、舌、口、鼻、耳。人の感情を表す五志、怒、喜、思、悲、恐。 季節なら、春、夏、晩夏、秋、冬。そんなところでしょうか。

 これを五行学説の分類に当てはめると、以下のようになります。
 
(五行) 木  火  土   金 
(五臓)  肝  心  脾  肺 
(五季)  春  夏  晩夏  秋 
(五官)  目  舌  口   鼻 
(五志)  怒  喜  思   悲 

 中医学では、長年の臨床の結果、この縦につながっているものはすべてそれぞれ相互に関係しあい、 互いに影響を与えていると考えています。

 春には肝を損ないやすいので、肝を養生すべきである。肝臓を患うと目(白目)が黄色くなったりして 目に変化が現れる。肝臓の悪い人は怒りっぽく、怒りっぽい人は肝臓を悪くしやすい。

 脾とは消化器系統を指しますが、夏の体の冷やしすぎ、冷たいものの飲みすぎによって晩夏に胃の調子が悪くなる、 胃が悪いと症状が口に現れ、思い悩みすぎると胃の調子が悪くなる、などなど。

 さて、表一番右の「水」の列を見てください。
 冬は腎を養生するとよいという中医学の教えに基づき、今回は“人の老化”に非常に関係の深い「腎」 についてお話します。

 五行学説によると、冬という季節は腎を消耗しやすい、腎が衰えると(=老化すると)耳が悪くなる (=お年よりになると耳が遠くなる現象をさす)、恐れおののくと腎を悪くし、腎の弱っている人は 人に嫌われるのが怖いため、腰の低い人が多い、などといわれています。

 この「腎」とは、西洋医学の腎臓とは少し違います。
 その意味は1)気を貯蔵し、2)成長、発育、生殖機能や免疫を司り、3)体内の水分の貯蔵、分布、 排出を担う場所であるというものです。

1)気とは、人体のエネルギーの素であり、各所の機能を正常に働かせる基本物質です。 人は生まれたときに親からもらった先天の気や、その後、飲食などによって補充されていく 後天の気を腎に貯蔵しています。これを消費しながら日々を送っており、不摂生をするとこの気が たくさん消耗され、早く老化すると考えられています。
2)また、腎中の気は、幼少期には、髪が伸びたり、歯が生えたり、骨が充実して背が伸びたり といった発育に関わります。青年期には、生殖機能の成熟(女性は生理がきたりすること)をはたし、 老年期には腎中の精気はしだいに衰え、性機能や生殖機能は衰退します。
3)体内の水液(お小水など)の貯蔵、分布、排泄作用を担っています。

 この機能のみ、西洋医学の意味する腎臓の働きと同じです。水分の排出がうまくいかないと、 体がむくむなどというような症状が出るように、体内の水分の量の調節をしています。

 中医学では、腎が弱っている状態を「腎虚」という証で呼びます。
症状としては、慢性の腰痛、抜け毛や白髪、歯や骨が弱い、耳鳴り、骨粗鬆症、アレルギー、精力減退などです。
 加齢とともに、気を消耗し、少なくなってくると現れるような、肌のたるみやしわ、 髪が細くなったり少なくなったりするのも、中医学では老化と関係の深い「腎」の状態が弱っているからと考えます。 この不足している腎中の気を補いつつ、「気」や「血」を消耗しない生活を送る(=養生する)ことで、 心や体の老化の速度を確実に遅くしていくことができます。
 食事やお茶、生活習慣に気をつけ、将来、穏やかな更年期を迎え、閉経を早めないように、 一日も早くから養生していきましょう。


女性は腎虚が多い
女性は腎虚が多いといわれています。
なぜなら出産は気=精を非常に消耗します。産後の、歯や骨がもろくなったりすること、 髪が抜けたり白髪が増えたりするのはこの精の消耗からきています。 産後、充分に養生しないと、老化が早まり更年期がひどくなるという言われは、あながち嘘でもなさそう。 そのため、補腎(腎の力をおぎなう)の食べ物は、女性によいといわれるものが多いです。



「黒い食べ物」が女性を救う!
西洋医学でも証明されているその効果


冬は寒さでパワーダウンしがち。
特にこの季節は、「腎」を強めてあげる必要があります。
自然界の力に満ちた「季節の旬のもの」「粘りのあるもの」「次の生命を生むもの(豆や種実類、卵)」 「黒いもの」を食べるとよいとされています。
代表的な、腎によい食べ物をご紹介します。

●黒豆
黒豆の黒はアントシアニンという色素成分によるもの。これが万病の元と言われる、 活性酸素に大きな影響を発揮します。
抗酸化作用の主な効果は、ガン予防、アレルギー症状改善など。
さらに、メラニンを作る酵素の働きをアントシアニンがおさえるため、お肌の美白効果、 新陳代謝が体表に生まれる活性酸素をも抑制するので、抜け毛予防や美髪の発育促進まで、 女性にとってはうれしいことづくめ。

しかしなんといっても、黒豆アントシアニンの目玉は、“血液さらさら効果”ではないでしょうか。 血管を丈夫にし、健康な血液循環に大きな力を発揮。血液さらさらになると、体にとってどんなに良いかは、 今までご紹介したとおり。血行が改善されると冷え性にも効果が期待できます。

1日大さじ山盛り一杯(約15グラム)を、煮出してお茶にしたり(黒豆茶)、煮豆にして食べたりと いろんな方法がありますが、毎日続けるには、主食にあわせてとるといいですよ。


健康黒豆ごはん(4人分)

噛みしめるほどにおいしい、こんなご飯はいかが? 味付けのりや韓国のりをまいて食べるとよく合います。
<材料>
米 2合
黒豆 40グラム
雑穀の素 1袋


<作り方>
1)
米は洗って、普通に水加減を調節する。
2)黒豆はフライパンでからいりし、豆に亀裂が入ったら取り出す。(たえずかきまぜて、焦がさないように)
3)雑穀の素(スーパーのお米売り場などにあります)を加え、水を100ccほど足す。
4)炊飯器で普通に炊く。
kuromame


●黒ゴマ
抗酸化作用「セサモール」で体の錆びを起こさせない。つまり老化防止効果があります。 不眠を解消し、体力を増強させます。

黒ゴマトースト(1人分)

はちみつと黒ゴマっておいしいうえに便秘解消にもなる組み合わせ。(体に不要な老廃物は早く出してしまいましょう)ぱらぱらと振りかけるぐらいしか使わない黒ゴマを、どうやったら一度にたくさん取れるか考えたら、このメニューになりました。
<材料>
黒ゴマまたは黒ゴマペースト       適量
トースト                1枚
はちみつ                適量

<作り方>
1)
トーストした食パンにバターをぬり(カロリーが気になる人は塗らなくても良い)その上にはちみつをまんべんなくぬる。

2)黒ゴマをぎっしりパンが見えなくなるまで振りかける。(またはペーストを塗る)
kurogoma


●くるみ
中国へは4世紀ごろ、ヨーロッパから中央アジアを経て伝わったとされています。 昔から美容食として高貴な人々に好まれていました。清朝の西太后は「胡桃酪」というくるみのお汁粉 をよく飲んでいて、長寿で肌がすべすべで有名だったそうです。滋養強壮効果に優れています。

くるみしるこ(2人分)

<材料>
くるみ(殻から出したもの)       50グラム
水                   300cc
氷砂糖(なければ砂糖)         40グラム
コンデンスミルク            大さじ1
生クリーム               大さじ3

kurumi

<作り方>
1)
くるみは熱湯で5分ほどゆで、水気を切る(本来はくるみを油であげますが、この方がさっぱりしていてしかもヘルシー) 2)ミキサー(フードプロセッサーではだめです)に水とくるみをいれ、しっかりなめらかになるまで攪拌する。
3)鍋にあけて火にかける。氷砂糖、コンデンスミルクを溶かす。
4)仕上げに生クリームを加える。


●ねばねば食材

長いも
中国ではれっきとした生薬。これを斜めにカットして干した「准山(わいさん)」は腎を強める漢方薬として処方されています。
オクラ
刻んだときに出るねばねばが体の老化を防ぎ、ホルモンバランスを調整。
納豆、モロヘイヤ、なめこ、ふかひれ、豚足などにも同様の効果があります。

ねばねばそば(2人分)

<材料>
そば(乾麺でもゆでそばでも)       2束(2袋)
なめこ                 1袋
長いも (すりおろす)          10センチ長さ
オクラ                 4本
のり

(なめこの味付け)
水       400cc
しょうゆ    大さじ2−3
砂糖      大さじ2
みりん     大さじ1
酒       少々
soba

<作り方>
1)
なめこは調味料とあわせ、甘辛く煮る。
2)そばはゆでるか、ゆでそばは軽く湯通しする。
3)器にそばをもり、ながいものすりおろしをたっぷりかけ、その上になめこを煮汁ごとのせる。ゆでて刻んだオクラをのせ、きざみのりをふりかける。
4)濃い目につくっためんつゆをまわしかける。好みでわさびも。
(写真では、ネギがのっていますが、香港でこの時期、オクラが手に入りませんでした。ぜひオクラを使ってください!)



改めて、「薬膳」とは?

 日々の食生活において、未病(まだ病気になっていない状態)の段階から、 体に取り入れるものによって病気を予防していこう。その季節、その日の天候、 もともと自分の弱っているところはどこかを知り、それを食べ物によって補おうしてとる食事が「薬膳」です。
 従って、症状が悪化してしまってからや、病気になってしまってからでは遅く、 また、一度、いいというものを食べたからといって「治る」という性質のものではありません。

 雨季から乾季に移り変わる10月ごろ、香港の人はきまって梨を毎日買い物かごに入れています。 はじめは、梨好きの人が多いのだなと思って見ていましたが、急に乾燥するこの時期の気候を知っていて、 あらかじめ乾燥からのどを守る梨のシロップ煮を作って毎日食べていたのです。 のどが赤く痛くなってから行動を起こすのではなく、前もってそうならないように対処する その意識に感銘をうけたことを思い出します。

 すでに何か気になる症状があり、ぜひとも改善したいと思う方は、一度、中医師に自分の証を診断して もらうといいかもしれません。自分の弱っている部分を知りそこを補う心がけ(食事や生活で) をすることにより、ある日ずっと気になっていた症状が改善されていることにふと気がつくことでしょう。
 不摂生をせず、心と体をいたわって毎日を送る、その意識こそが大切であると思います。

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文:赤堀 真澄
プロフィール:
食生活アドバイザー。
95年から2年間、夫の転勤でニューヨーク在住。フランス料理、フラワーアレンジメン ト、ビーズジュエリーデザインを学び、2001年から香港在住。医食同源にもとづいた現 地の食文化に感銘をうけ、香港を中心に中国およびアジア各国の薬膳料理を研究する。
香港大学專業進修学院中医学基礎講座修了。

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