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アジアの薬膳
第5回
韓国の薬膳紹介

 薬膳=中国料理というイメージはありませんか?
 実は世界各国、多くの国で、地元で採れる食物を活かして、 その国の風土や気候に合わせた薬膳料理があります。
これから数回はアジア各地の薬膳を紹介していきます。



陰陽五行説にもとづいた五味五色
 アジアの中でも特に韓国料理は、“健康を維持するために食べる”という「補養補薬」の 考え方が深く浸透しています。
 おかずやスープだけでなく、朝鮮人参茶やなつめ茶、しょうが茶といったお茶や、 干し柿や梨のシロップ煮などのお菓子に至るまで、健康を意識した材料(漢方食材など)が 普段の食卓にたびたび登場します。

 すばらしいのは中国古来の世界観、「陰陽五行学説」を大切にし、五味五色を基本としていること。 甘、辛、塩辛い、酸っぱい、苦い、の「五味」を中心に味を考え、盛り付けには、 赤、緑、黄、白、黒の「五色」がすべて入るよう彩りに気を配ります (五行学説については第4回「ストップ・ザ・老化」を参照)。

 見た目が美しいだけでなく、栄養面から見ても過不足のない理想的な献立になることは言うまでもありません。 以下に代表的な食材をあげておきます。
       
 赤…唐辛子、なつめ、クコの実、にんじん
 緑…ネギ、きゅうり、青菜、ぎんなん
 黄…黄身だけでつくった薄焼き卵、ゆず
 白…白身だけで作った薄焼き卵、大根、モヤシ、白ゴマ、松の実
 黒…のり、しいたけ、牛肉、きくらげ、ぜんまい




日本食と似てる?!
キムチや焼肉だけではないさまざまな薬膳おかず

 韓国料理は米を主食とし、しょうゆやみそ、みりんを使うなど日本食と似た部分もたくさんある反面、 塩辛や唐辛子をひんぱんに用いたりと、やや異なる点もあります。
複数の材料を使うことで、栄養を補完し、料理の薬効を高める「薬念(ヤンニョム)」というあわせ調味料もあります。 これはごま油やしょうゆ、みそなどの調味料に、唐辛子などの香辛料、ねぎ、にんにく、しょうがなどの香味野菜を あわせたもので、料理の味付けや香りづけ、色付けに用いています。

 また韓国人は日本人の約80倍もの野菜を摂取すると言われています。 野菜をおいしく食べるレシピが豊富なのはただただ感心するばかりです。

それでは、どんな漢方食材をどのように調理するのかを見ていきましょう。



薬効高い滋養食 参鶏湯

 韓国の薬膳料理として代表的なのがこの「参鶏湯」(サムゲタン)。
夏バテ防止や病中病後の滋養食として食べられています。鶏一羽丸ごと使い、 そこから出るたっぷりのコラーゲンで美肌にも効果的です。

 本格レシピはひな鶏を丸ごと一羽使い、お腹の中の内臓を取り出して、 そこに漢方食材やもち米を詰めて作りますが、ここでは簡単にできるよう骨付き鶏もも肉を使用しました。 材料は以下のように五行説にもとづいた、5つの漢方食材を使います。

1,朝鮮人参
 韓国では高麗人参と呼び、参鶏湯の参はこの高麗人参の意味。 ウコギ科のオタネニンジンの根で、不老長寿の妙薬として「気」を補う「薬王の王」とされています。
 食物の栄養を吸収しにくい虚弱体質の改善に効果があります。精神安定、免疫力アップ、 消化吸収機能の改善、精力減退の改善、血圧の調整や血糖値を降下させるなど薬効の多い生薬です。
 漢方食材としての力が強いため、多量に摂らないようレシピの分量を守ること、生理中は「気」も 一緒に出ていくので、せっかく補った気を出さぬよう、この時期をさけて摂ることなどに気をつけましょう。
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2,なつめ
 ほんのりとした甘みが楽しめる中国のお茶請けの定番。気血を補い、生理不順や貧血、更年期のイライラ、 などの婦人科系疾患に用いられる漢方薬です。健胃効果、良質の睡眠をもたらす、 血行をよくするなどの効果もあります。

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3,くこの実
 「肝」「腎」の機能を助ける漢方薬。目の疲れ、充血、かすみ目、それからくる頭痛、視力減退など、 肝の機能が弱って出る症状や、慢性の膝や腰の痛みの改善など腎の機能をおぎなうときに用いられます。 滋養強壮、老化防止効果があります。

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4,松の実
 肺や気管をうるおし、食欲増進や、よいお通じをうながします。内臓の働きを活発にし、 髪の毛の若さを保つことなどから不老長寿の吉祥木ともいわれ老化防止に効果があります。

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5,にんにく
 殺菌作用、血行促進など効能の多い食材です。


参鶏湯 (4人分)
<材料>
鶏もも肉骨付き 300グラム〜400グラム
もち米     2分の1カップ
高麗人参    小1本
なつめ     4個
くこの実    大さじ1
松の実     大さじ1
にんにく    2〜3片

水       適量
塩       適量

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<作り方>
1)
鶏肉はよく洗って、血を完全に落とし、きれいに水気をふく
2)もち米は洗って、30分水に浸す。
3)高麗人参は太い部分をうすく輪切りにし、細い部分はそのまま使う。
4)鶏肉がつかるぐらいの水を入れ、ふたをして火にかけ、沸騰してあくが出たら取る。弱火にする。
5)高麗人参を加え、ふたをして1時間煮込む。
6)もち米、なつめ、くこの実、松の実、にんにくを加えてさらに1時間煮込む。
7)途中、差し水をして水の分量を調節しながら、スープにとろみがでて
  白っぽくなってきたら塩で味を調節してできあがり。
8)食卓に塩を入れた小皿を用意し、ほろほろっとくずれるほど柔らかくなった鶏肉を各自で塩につけて食べるのが韓国流。



五目野菜と春雨の炒め物 チャプチェ

本格チャプチェは、材料の彩りを考えて野菜を選び、一つ一つ別々に下処理、下味をつけてからそれぞれ調理し、仕上げにすべてをあえるという、大変手の込んだ料理です。実は韓国ではおもてなし料理として、とてもポピュラーなメニューだそう。
ここではできるだけ手間の省いた作り方でご紹介します。
<材料>4人分
春雨      100グラム
牛肉赤身    60グラム
卵       1個
干し椎茸    2枚

たまねぎ
にんじん
きゅうり
ほうれん草
もやし
黒きくらげ
赤ピーマンなどの野菜 各50グラム

(牛肉と椎茸の下味)
しょうゆ       小さじ2
砂糖         小さじ1
白いりゴマ      小さじ1
ごま油        小さじ1
コショウ       少々
にんにく、長ネギのみじん切り 小さじ1ずつ

(仕上げ調味料)
しょうゆ      小さじ2
砂糖        小さじ1
ごま油       小さじ2
白いりゴマ     大さじ1

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<作り方>
1)
卵は薄焼き卵にやき、できるだけ細く切って錦糸卵にする。
2)干し椎茸は水で戻して千切り、牛肉も千切り。両方あわせて下味につけておく。
3)野菜もすべて千切りにする。
4)フライパンにごま油をしいて、火の通りにくい野菜から順に炒めていく。しんなりしたら一度とりだす。
5)フライパンをサッとふいて、ごま油を適量いれ、牛肉と椎茸をいためる。
6)熱湯につけて戻し、食べやすい長さに切ったはるさめを加え、取り出した野菜もすべてあわせて炒める。 はるさめがまだ堅ければ、椎茸の戻し汁をくわえて柔らかくする。
7)仕上げ調味料で味付けし、皿に盛る。天に錦糸卵をこんもりともり、白いいりゴマをぱらぱらと振りかける (味がぼやけていると感じるときは調理の最後に塩少々加える)。


韓国春雨は日本でよくつかう緑豆春雨とちがってさつまいもやじゃがいものでんぷんから作られています。 見た目も灰色で太く、しこしことしたコシがあります。 熱湯につけてしばらくおき、沸騰した湯でゆでます。ゆで加減の目安(メーカーによっても違う)は、 はしでもちあげた時十分しんなりしていること。そうなったらざるにあげて食べやすい長さに切ります。 まだこの段階では芯が残っているので、最後にいためてちょうどよい食感に仕上げます。
炒めてもまだ硬いと感じるときはしいたけの戻し汁を多めに入れてたっぷり水分を含ませ、硬さを調節してください。



栄養豊富なキムチを使う キムチチャーハン
キムチの効能

 韓国人は普段の食事にキムチを食べないと「ご飯を食べた気がしない」そうです。 また太りにくい体質の人が多いとも言われています。ここでちょっとキムチについて知っておきましょう。

 キムチは数多い発酵食品の中でも、乳酸菌などの有機酸、必須アミノ酸ビタミン、ミネラルの豊富な健康食品だと いうことはご存じでしょうか。

 唐辛子は体脂肪の燃焼を促進するカプサイシンをはじめ、ビタミンA,Cを含み、 にんにくはスタミナ増進のスコルジニン、代謝促進、殺菌作用のアリシン、しょうがは血液循環を改善するなどの 薬効があります。

 キムチの熟成に大切なのが乳酸菌による乳酸発酵ですが、これはヨーグルトのように、 腸内環境を整える整腸作用があります。

 キムチを作るときに使われる塩辛はすでに発酵した状態で、キムチの熟成を促進しますが、 この塩辛にはうまみを加える役割だけでなく、必須アミノ酸が多く含まれ、これが他のビタミンやミネラル、 各種香辛料の薬効とともにキムチの栄養を完成させています。

 買ってきてすぐはそのまま、しばらくたって酸味が出てきたらいろいろなキムチメニュー( 豚キムチ、キムチ鍋、キムチチャーハンなど)に姿を変えて楽しんでみては!?


キムチチャーハン
<材料> 2人分 
ご飯         茶碗山盛り2杯
豚バラ肉薄切り    100グラム
白菜キムチ      100〜200グラム
長ネギ        みじん切り
ごま油        大さじ1
塩          少々
しょうゆ       少々
牛だしの素      少々

(飾り)
キュウリの千切り
目玉焼き  2枚
きざみ海苔 適量
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<作り方>
1)
フライパンにごま油をしいて刻んだキムチを炒める。豚バラ肉も細かく切り、一緒に炒める。 一度取り出す。
2)よくふいたフライパンを煙が出るまで熱し、サラダ油をしいてご飯を炒める (卵は目玉焼きにしても、このとき溶き卵を流して一緒に炒めてももどちらでもよい)。 長ネギとさっき取り出したキムチと豚肉を加え、ぱらりとするまでよく炒める。
3)仕上げに塩としょうゆ、あれば牛だしの素少々で味付ける。

注意:キムチの汁は薬効が溶けだしていて大変栄養豊富なので、捨てないで!ただチャーハンにするときだけは、 ごはんがべたつくので、刻んだ後軽く水気を絞ってから使ってください。 鶏肉はよく洗って、血を完全に落とし、きれいに水気をふく


キムチの酸味
キムチは酸っぱくなると食べられないと思っていませんか。実は大間違い!  韓国の人はこの酸っぱくなるのを待って料理に使うのです。火を通すと酸味がうまみに変わります。 ごま油でキムチを炒めてから料理に使ってください。



三方を海に囲まれた地形の韓国では、海の幸もとても豊富。
たくさんのおいしいレシピからほんの少ししか紹介できませんでしたが、野菜や魚介類を、 さまざまな薬効をもつ「薬念」で調理し、キムチとともに食すお隣の国の食文化に少しでも興味を持って いただけると幸いです。

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文:赤堀 真澄
プロフィール:
食生活アドバイザー。
95年から2年間、夫の転勤でニューヨーク在住。フランス料理、フラワーアレンジメン ト、ビーズジュエリーデザインを学び、2001年から香港在住。医食同源にもとづいた現 地の食文化に感銘をうけ、香港を中心に中国およびアジア各国の薬膳料理を研究する。
香港大学專業進修学院中医学基礎講座修了。

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