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フランスとアジアが融合し優しい味わいに
第6回
ベトナムの薬膳

今回はベトナムの食についてのお話です。

ベトナムは、隣接する中国、近隣の東南アジア諸国、殖民地時代のフランスの食文化が混ざり合い、 それぞれに影響を与え合って食文化を形成しています。

朝は、鶏か魚のおかゆや屋台などでフォーと呼ばれる汁麺をすするに始まり、昼は麺類や、 ごはんにおかず(これもお昼時になるとそこらじゅうで売り出しはじめる)をのせたもの、 夜はきまって、肉か魚に野菜をたっぷり添えたメインディッシュに、スープを必ず一品付け、 家族一緒に食べます。この取り合わせは非常に中国の食卓と似ています。

また植民地時代、フランス人が持ち込んだメニューとして代表的なのがベトナムコーヒーとフランスパン、 そしてプリンや西洋菓子などです。

さまざまな国から影響を受けながらも、ベトナムはその風土にあった食べ方を独自に築き上げました。 諸外国の味をどんどん取り入れ、「わが国の味」にしてしまうたくましさをもつ反面、 伝統料理では古くからの食材を使い続け、その料理にあわせるメニューもこれと決まったものを選ぶという、 昔ながらの食を大切に守り抜く一面も持っています。

ベトナムの家庭の主婦は、煮る、焼く、蒸す、揚げるの4つの調理法を柱にしてメインを決めたら、 次に味のバランス(揚げ物には酢の物など)を考えて献立を立てます。
体調の悪いときは薬効のある野菜や食材を選ぶ知恵も持ち合わせていて、ここでも「食=薬」 の考え方が日常に浸透しています。

近隣の東南アジア諸国に比べると、やや刺激の少ない味で、洗練されたやさしい味わいなのがベトナムらしさとも言えるでしょう。



理にかなった食材のオンパレード 〜ベトナムの食材選び〜

一般的に言って暑い国の料理は、強い日差しや多量の発汗による体の疲れを取り除き、 元気を与える食材をふんだんに使っていることが大きな特徴です。 ベトナムではどのような食材が使われているのかをご紹介します。

ヌクマム
これをなくしてはベトナム料理は語れないという、日本でいうしょうゆのような存在の調味料。 タイではナンプラー、日本では秋田のしょっつるがこれにあたります。
魚に塩を加え発酵させて作ります。色が薄くて透明度が高いほど品質が高く これを加えるだけでベトナム料理らしさが出せるといっても過言ではありません。
アミノ酸を多く含んでいます。

ライスペーパー
ベトナム料理独特の食材「バインチャン」(バンチャンともいう)。
米の粉を主原料にして水で溶いた液体を薄くのばして蒸してから乾かして作りま す。ごま入り、ドライフルーツ入り、芋のでんぷん入りなど種類も豊富。
ココナッツミルク
ベトナムを始め、アジア各国料理には欠かせない食材。日本人の「だし汁」に 対する感覚のように、その風味とおいしさを大切に考えています。
ココナッツの中にストローを突っ込んで飲んでいるのは、ココナッツジュースでこれはココナッツミルクではありません。 ココナッツジュースがはいっている周りの白い果肉を細かく粉砕して水と混ぜ、よく揉みだして絞ったものが ココナッツミルク。
現地ではココナッツミルクの一番絞り、二番絞りもあるそうです。(一番だし、二番だしのようですね)
豚肉
疲労回復効果のある、ビタミンB1が多く含まれます。
豚肉は耳から足まで残さず料理として用い、ゆで汁はスープとして使うなど無駄がありません。
ほかには鶏肉、そして海に囲まれた地形がもたらす豊富な魚貝類もメインとしてよく登場します。牛肉はご馳走です。
緑豆が原料になったもの
…春雨、もやし、ムングダル(皮なし緑豆)
春雨やもやしはスープの具やトッピングに、ムングダルはやわらかく煮て餡にしておやつに食べたり、 おこわの具にしたりして、日本の小豆と似た使い方をします。
体の熱を冷まし、炎症やかゆみを抑えます。解毒作用に優れ、体内の余分な水分を排出するのでむくみに よいとされています。のどの痛みがあるとき、夏バテでむくみがちなときは積極的に採るとよいものばかりです。
ハスの実、ハスの茎、ハスの葉
日本でよく食べられるレンコンはベトナムではあまり使われません。その代わりこれらの部位をスープや 炊き込みご飯、お茶やデザートなどにも利用します。
ハスの実は中国でも漢方食材として有名で、利尿作用があるので水太りを防ぎ、不眠解消や精神安定効果などの 効能もあります。
山芋
ベトナムには紫色をした山芋があります。これをすりおろし、スープにして豚ミンチのつみれを浮かべたものは ベトナムの有名な家庭料理です。ショッキングピンク色のスープは見た目にも鮮やかでアジアを感じさせる一品。
ねばねば成分ムチンが胃を守り、消化吸収を助けます。滋養強壮効果にも優れています。
唐辛子、にんにく、ライムの汁、白酢、レモングラス
つけだれの材料やベトナムの国民食、酸味スープに用いられます。 さっぱりとした口当たりは暑い気候で失いがちな食欲を回復させます。




なんでも巻いてみる?ベトナム独特の食べ方

ベトナム料理には必ずといっていいほど、葉ものやきゅうりなどの生野菜や、ドクダミ、バジル、 ミントなどの生ハーブ、そしてライスペーパーが添えられて出てきます。
大きめの葉やライスペーパーに、メインの肉料理や魚料理、揚げ春巻、ベトナム版お好み焼きの バインセオなどを小さくちぎってのせ、そこにハーブなども一緒にまいてつけだれにつけて食べる、 という食べ方をします。マナーがわからなければ「なんでも巻いてみたらいい」とさえ言われているほど。
味のしっかりついたものに、薬味野菜を添えて一緒に巻いて食べることで、たっぷりの野菜を摂取するという 目的の他、味のバランスも取っているのです。

中国料理は、作る作業もダイナミックで味付けもしっかりしたものが多く男性的であるのに対し、 ベトナム料理は見た目もあざやかなフレッシュハーブや野菜をコロコロとかわいいサイズに巻いて、 つけだれにちょんちょんとつけるので、とても女性的だなと感じます。

お友達を呼んだ日の軽いランチには、ちょっと目先の変わったおもてなしとして、 ベトナム料理を取り入れてみてはいかがでしょうか?

ハスの実としいたけのスープ

中国料理にもありそうなクリアースープ。
仕上げにヌクマムで味付けるところがベトナム流。
ハスの実の、栗のようなほくほくした食感が楽しい。

注意:ハスの実の中には濃い緑色の芯があり、たいていは取り除かれて売られていますが時々残っている ことがあります。
食べるとものすごく苦いので、見つけたら調理後やわらかくなるのを待って芯を必ず取ってください。
<材料 4人分>
ハスの実          30粒ぐらい
干ししいたけ        8枚
豚かたまり肉        150グラム
スープストック(缶詰のとんこつベースのもの) 1缶
酒             大さじ2

ヌクマム(ナンプラーでも)  大さじ1
塩、こしょう        適量
青ねぎ           2本

hasu
<作り方>
1)
ハスの実は洗って水に浸しておく(普通の鍋を使うなら一晩つけておく。圧力鍋なら短時間でよい)。
2)干ししいたけはぬるま湯で戻しておく。やわらかくなったら石づきをとる。
3)スープストック(水+鶏がらスープの素でもよい)とハスの実を鍋に入れ、煮立ったら弱火にして20分から30分煮る
4)豚かたまり肉は2センチ角ぐらいに切り鍋に加える。しいたけとしいたけの戻し汁、酒をくわえて火にかける。(水分の量は材料がつかる位。足りなければ水を足す)
5)高麗人参を加え、ふたをして1時間煮込む。
(ベトナムでは、こしょうがたっぷり利いた味わいが好きな人が多いそうです)



牛肉のラロット包み焼き

ラロットとはぶどうの葉に似た、よい香りがする葉っぱのことです。
日本では手に入りにくいので、しその葉で代用します。
女性の集まるランチで喜ばれるので、ぜひお試しを!
<材料>15個分
牛ひき肉         200グラム
シャロット(たまねぎでも)みじん切り 大さじ3
にんにくのみじん切り   大さじ1
ヌクマム         大さじ2
酒            小さじ1
砂糖           小さじ2分の1
塩こしょう        少々

青じそ          15枚

(つけだれ)
大根の細い千切り     50グラム
にんじんの細い千切り   50グラム
白酢           50cc
砂糖           大さじ4
ヌクマム(ナンプラーでも) 大さじ2
ライムかすだちの絞り汁  1個分
にんにく、生の赤唐辛子のみじん切り 少々

rarotto
<作り方>
つけだれを先に用意します。
1)1) 大根とにんじんの千切りは塩を振ってしばらくおき、しんなりしたら流水で塩を洗い流してよく絞り水気をきっておく。
2)2) その他のつけだれの材料をあわせ、よく混ぜて砂糖を溶かし、そこに大根とにんじんをくわえて味をよくなじませる。味がなじんだら、大根とにんじんを取り出しておく。
3)牛びき肉にその他の材料をあわせて手でよくこねる。
親指大ぐらいの大きさにまとめたら、ひとつずつしその葉でくるんで巻く。
4)フライパン(本場では網を使って遠火の炭火で焼く)に油を熱して、巻き終わりを下にして並べフタをして焼く。少し水を加えて蒸し焼きにしてもよい。
5)皿に、サニーレタス、生ハーブなどとともに盛り付け、取り出しておいた大根とにんじんも添える。サニーレタスに牛肉の包み焼き、ハーブ類、大根とにんじんを巻いて、つけだれにつけて食べる。





ベトナム バゲットサンド
こんなサンドイッチ見たことないのではないでしょうか。
フランスが技術を伝授したため、ベトナムのフランスパンはとてもおいしいといわれています。 そのパンにバターとレバーペーストを塗り、ハムやソーセージ、サニーレタスやきゅうり、たまねぎ、 青ねぎなどの野菜、そして先ほど登場した、大根とにんじんのなますをはさみ、 仕上げにはなんとヌクマムをふりかけるという、驚きの一品。
フランスとアジアが見事に融合し、信じがたいほどおいしいのです!
<材料> 小さめのフランスパン1個分
フランスパン(小)      1本
バター、レバーペースト   適量
サニーレタス        適量
ハム            2〜3枚
きゅうりやたまねぎの薄切り 適量
大根とにんじんの甘酢づけ(ラロット包み焼きレシピ参照 適量
生赤唐辛子の斜め切り    お好みで

ヌクマム          少々

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<作り方>
1)
フランスパンは横に切れ目をいれ、トースターであたためる。
2)バターとレバーペースト(なければ省略可)をぬり、サニーレタスや野菜、なますをたっぷりはさみ、 赤唐辛子の薄切りを散らしたらヌクマムをふりかけて食べる。



ムングダルのチェー
ベトナムのスイーツには、フランスから持ち込まれた西洋の香りのするもの (プリンやバタークリームのケーキ、アイスクリームや菓子パンなど)と、昔ながらの素朴な素材を使ったものの 2種類あります。

後者の方を見てみると、野采や煮豆、果物やナタデココなどの具に、カキ氷やココナッツミルクを混ぜて食べるCHE (チェー)というデザートがあります。乳脂肪分が少なく胃にもたれないので次の食事までのつなぎには最適。

野菜は生のとうもろこし、アボカド、タロイモ、豆はムングダルや小豆など。果物はバナナやマンゴーなどが 主な材料として使われています。
甘く煮た野菜や豆に、カキ氷かココナッツミルクがかかっているシンプルなものもあれば、 フルーツの細切りや角切り、赤や緑が鮮やかなナタデココが背の高いグラスに、パフェのように層になっていて、 下からざくざくかき混ぜて食べるものもあります。ハスの実や、白玉団子入りなどもあってバリエーションが 大変豊富です。

今回は余分な水分を排出しむくみをとる、ムングダル(皮なし緑豆)のチェーをご紹介します。

mugudaru
<材料> (2人分)
ムングダル     50グラム
水         適量
砂糖        50グラム

タピオカ      20グラム〜30グラム


ココナッツミルク  150cc
シロップ(水+砂糖を同量混ぜたもの) 100cc

che
<作り方>
1)
ムングダルはたっぷりの水に浸し3時間以上おく。
鍋に移し、やわらかくなるまで弱火で煮たら砂糖を加えて甘みをつける。
(白いんげん豆を煮たような味になります)
くずれて形がなくなりますが、そのままでもいいですし、お好みでうらごしし、 滑らかなマッシュにしてもOK)
冷蔵庫でよく冷やす。

2)タピオカはたっぷりの熱湯でゆで、やや芯が白く残るぐらいになったら引き上げる。
水でよく洗い、冷水に浸しておく。
3)器にムングダルのあんを盛ってタピオカをちらし、ココナッツミルク、よく冷やした シロップをかける。レンゲで全体をよくかき混ぜていただく。





ハスの実やムングダルなど日本ではあまり見かけない材料もありますが、最近ではネット販売が充実していますし、 ヌクマムやライスペーパーなどはデパートや大きいスーパーでは普通に売っています。 みなさまも是非、優しい味わいのベトナム料理にもチャレンジしてみてください!

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文:赤堀 真澄
プロフィール:
食生活アドバイザー。
95年から2年間、夫の転勤でニューヨーク在住。フランス料理、フラワーアレンジメン ト、ビーズジュエリーデザインを学び、2001年から香港在住。医食同源にもとづいた現 地の食文化に感銘をうけ、香港を中心に中国およびアジア各国の薬膳料理を研究する。
香港大学專業進修学院中医学基礎講座修了。

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