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今年の梅雨期、日本列島は各地で豪雨に見舞われ、その脅威にさらされた。今年の梅雨前線は活発な状態を維持して日本列島を南北に移動し、各地で過去に経験したことがないような豪雨をもたらした。土砂崩れ、河川の氾濫、道路の陥没など、降り続く雨により人身、家屋を脅かされ、犠牲者が多数出た。雨の恐ろしさに身がすくむ思いである。
気象庁は特に大きな被害を引き起こした7月末の豪雨災害について、「平成18年7月豪雨」と命名した。これは顕著な災害には名前をつけ、災害の教訓等を後世に伝えるために命名するもので、豪雨では2004年の「新潟・福島豪雨」「福井豪雨」以来である。因みに「平成18年7月豪雨」では、7月18日から24日までの7日間の総雨量が宮崎県や、鹿児島県の多いところで1200mmを超え(表1)、23日には24時間雨量が鹿児島県阿久根市などで600mmを超えた。雨量の少ない長野の1年間の平均雨量は約900mmなので、1週間で長野の1年分以上の雨が降ったことになる。
平成18年7月豪雨(7月15日〜24日)の記録(気象庁資料)
総雨量の多い方から10地点
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順位 |
地点名 |
雨量(mm) |
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1 |
宮崎県えびの市えびの |
1281 |
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2 |
鹿児島県薩摩郡さつま町紫尾山 |
1264 |
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3 |
鹿児島県大口市大口 |
1122 |
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4 |
宮崎県えびの市加久藤 |
1049 |
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5 |
熊本県球磨郡球磨村一勝地 |
912 |
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6 |
熊本県球磨郡山江村山江 |
908 |
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7 |
熊本県水俣市水俣 |
904 |
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8 |
鹿児島県阿久根市阿久根 |
866 |
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9 |
熊本県球磨郡五木村五木 |
837 |
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10 |
長野県木曽郡王滝村御嶽山 |
817 |
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9 |
鹿児島県姶良郡蒲生町矢止岳 |
68 |
1時間雨量の多い方から10地点
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順位 |
地点名 |
雨量(mm) |
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1 |
宮崎県えびの市えびの |
92 |
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2 |
鹿児島県薩摩郡さつま町さつま柏原 |
88 |
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3 |
長崎県雲仙市雲仙岳 |
86 |
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3 |
鹿児島県薩摩郡さつま町紫尾山 |
86 |
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5 |
石川県輪島市輪島 |
73 |
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6 |
神奈川県足柄下郡箱根町箱根 |
70 |
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7 |
熊本県阿蘇郡西原村俵山 |
69 |
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7 |
熊本県水俣市水俣 |
69 |
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9 |
鹿児島県大口市大口 |
68 |
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9 |
鹿児島県姶良郡蒲生町矢止岳 |
68 |
1200mmは1.2mの深さ
降水量は、降ったまま流れたりしみこんだりせずにたまった水の量を、mm単位の深さで表している。よって、「平成18年7月豪雨」で降った1200mm雨量はメートルに換算すると1.2mの深さになる。空のプールに水を貯めると1.2mまで水位が上がることになり、小学生では首から顔までもぐってしまう。このような恐ろしい大雨は別としても、地上に降った雨は、低いところ低いところへと流れるため、土地の低いところでは、降った量の数倍もの水がたまり、流れることになる。いつもは10cm、20cmの流れの小川が大雨とともに急激に増水し、3mにも4mにもなって、木をなぎ倒し、土砂も一緒に、荒れ狂ったように流れるのはこのためである。さらに都市部では比較的土地の低い道路に水が集まり、川のようになって流れる。
さて、人間にとって危険な水位とはどの位なのか。流れのある場合は、水位がひじの高さを超えるとおぼれる人も出てくるといわれている。図1に示したように、一般に人が行動できなくなる水の深さは、子供は水位20cm、大人の女性は水位50〜60cm、大人の男性は水位70cmといわれている。したがって、腰まで水位があるような場合は、水の中を歩くことができない。想像以上に低い水位ではないだろうか。
このため、浸水や洪水で家の周辺に水が押し寄せ、床上に迫るようなときは、あわてて、避難せずに救援を呼ぶか救援を待たなければならない。特に、洪水のときは水がにごり、汚物、倒木、破損した建物の一部も一緒に流れてくる。さらに、都市部ではマンホールの蓋が開き、危険な落とし穴になる。どうしても水の中を行動しなければならないときは、危険がどこに潜んでいるかわからないので、長い棒などを杖代わりにして水面下の安全を確認しながら進む。
図1 人が行動できなくなる水の深さ(日本損害保険協会HPを参考)
冠水道路は車で走るな
さて、現代は車社会、大雨の後、道路に放置された車や冠水した道路で走行不能になった車をしばしば見かける。特に都市部では一時的な強い雨が降ってもガード下等の低い場所は冠水する。冠水道路があるときにはどれ程遠回りになろうとも、冠水道路を避けるか、危険な場合には、車で逃げるのではなく、なるべく高い場所(冠水しづらい場所)に車両を放置するが基本である。冠水道路走行中に走行不能になるのには「エンジン」「電気」系統2つの原因が考えられるが、最近の車は電気系統の水対策がかなり良くなっているので、「エンジン」が原因の場合が多い。車のエンジンは空気を吸ってガソリンと混ぜた上で燃焼させ、排気する。従って水を吸ってしまった場合には動かなくなってしまう。では、水を吸いやすい場所はどこなのか。一つはエンジンルーム(ボンネット内)にある空気取り入れ口。もう一つは車両後方のマフラーである。このうちマフラーの方が圧倒的に低い位置にあるので、このマフラー位置が冠水道路走行の基準となる。水位がマフラー位置を越えてしまっている場合には冠水道路走行は避けた方が無難である。道路冠水時の車と水位の関係を図2に示す。ここでは、車種によって状態が異なるので一般的なセダン型の車を1つの基準にしている。
図2 車と水位の関係(道路冠水時の目安)
バケツをひっくり返したような雨
ところで、気象庁から発表される注・警報等の防災情報では、「強い雨」とか「激しい雨」とかの表現が出てくる。感覚的な言葉ではあるが、気象庁では雨の強さに量的な目安を設けて使っている。表2は気象庁が示している「雨の強さと降り方」の一覧表である。「強い」「激しい」「猛烈」な雨は気象庁が防災情報で使う「予報用語」として決められている。1時間20〜30mmの「強い」雨は注意報、50mm位の「激しい」雨は警報基準に該当するところが多い(厳密には大雨注意報や警報の発表基準は都道府県によって異なる)。「今日は強い雨だね」「いや、いや、強いを超して激しいよ」などと私達が何気なく使う言葉であるが、きちんと使い分けされているのである。
この表の特徴は、雨が降っている様子から人が受けるイメージ、車に乗っていて受けるイメージ、そして、災害発生状況などが載っている。雷 雨の中、車に乗っていて水しぶきが激しくなり、ワイパーを早くしても前方が見づらくなり、怖くなった経験を持っている人も多いのではないだろうか。このときの雨が30mm程度で、歩いている人は傘をさしてもぬれて傘が役に立たない状態であり、側溝や、下水から水が溢れて、被害が出始める強さである。近年は温暖化の影響とも言われているが、1時間雨量で80mmや90mm、時には100mmもの猛烈な雨が降る。このような雨の時には、雷を伴うことも多く、雨の音も激しい。幸い筆者はこのような猛烈な雨は経験したことはないが、経験者の話では、恐怖感で鳥肌が立ち、足がすくんで、避難どころではなかったとのことであった。
衛星デジタル放送を見ていると強い雨のときに、衛星からの電波が弱くなり、電波障害で見えなくなる。この雨は20mm以上のときに起こるといわれている。表には載っていないが、日常生活の中で雨の強さを知る1つの目安となる。
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1時間雨量 |
予報用語 |
人の受けるイメージ |
人への影響 |
屋 内 |
屋外の様子 |
車に乗っていて |
災害発生状況 |
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(ミリ) |
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(木造住宅を想定) |
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10〜20 |
やや強い雨 |
ザーザーと降る |
地面からの跳ね返りで足元がぬれる |
雨の音で話し声が良く聞き取れない |
地面一面に水たまりができる |
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この程度の雨でも長く続く時は注意が必要 |
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20〜30 |
強い雨 |
どしゃ降り |
傘をさしていてもぬれる |
寝ている人の半数くらいが雨に気がつく |
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ワイパーを速くしても見づらい |
側溝や下水、小さな川があふれ、小規模の崖崩れが始まる |
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30〜50 |
激しい雨 |
バケツをひっくり返したように降る |
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道路が川のようになる |
高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象) |
"山崩れ・崖崩れが起きやすくなり危険地帯では避難の準備が必要
都市では下水管から雨水があふれる" |
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50〜80 |
非常に激しい雨 |
滝のように降る(ゴーゴーと降り続く) |
傘は全く役に立たなくなる |
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水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる |
車の運転は危険 |
"都市部では地下室や地下街に雨水が流れ込む場合がある
マンホールから水が噴出する
土石流が起こりやすい
多くの災害が発生する " |
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80〜 |
猛烈な雨 |
息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる |
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雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要 |
自分の身は自分で守る
一般に激しい雨が降るときは、強風を伴うことが多い。風を伴うことで視界不良になり、物が飛んできたり、体への風圧も加わり、恐怖感はさらに増すことになる。
この季節は、まだ台風の襲来もある。大雨が予想されるときには、警戒を怠りなく、事前にとれる最善の回避・対応策を考慮したい。不幸にして大雨に遭遇したときは、自分を取り巻く環境をよく見て、可能な場合は避難を、あるいは、身の回りの場所でより安全と思われる場所に移動するなりの判断をしていただきたい。
最後は自分の身は自分で守ることになる。
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