岡山県備前市発−薪ストーブのイノベーション


 新技術が都市部だけを豊かにするわけではない。岡山県備前市において、新型の薪ストーブが新たなビジネスとして普及を開始した。事業を担うのは、備前グリーンエネルギー株式会社。石油の高騰や地球温暖化対策として、間伐材や農業廃棄物などをエネルギーとして有効利用することが注目されている。環境にやさいい炎で暖房する、というのは、新しいライフスタイルの提案にもつながるものだ。
 備前市から始まった事業、いずれは全国に広まるだろう。

 新世代の薪ストーブ

 薪ストーブといえば、わが国にもかつては農村部などで使われていた。しかし、手軽な灯油ストーブ、ガスストーブが普及し、林業の衰退によって薪の調達が難しくなったこと、そして燃焼ガスによって空気が汚染されることから、もはや過去の物となっていた。
 しかし、ヨーロッパでは林業はなお盛んであり、おだやかに熱を放出する薪ストーブは、北欧やドイツ、オーストリアなどで進化し続けてきた。現在、ヨーロッパで使われている薪ストーブは、高い熱効率と石版による蓄熱構造が特徴となっている。薪が3本もあれば、1日の暖房がまかなえるという高い性能だ。しかも、室内の空気を汚染することがない。
 日本には豊富な森林資源がある。また、地方の民家の住宅は都市部と異なり、広い空間がある。こうした点に着目すれば、環境意識の高い人々に対して、十分なニーズが見込めることになる。また、価格の面では、機器の販売ではなく、リースという形をとるため、利用者は毎月の燃料代とリース代を支払えばいい。利用者自身が里山から薪を採取してくれば、燃料代は不要となる。

 環境保全商品は大きな流れ

 薪ストーブは、利用者にとって、ゆったりとした暖房を提供すると同時に、地球温暖化防止に貢献しているという満足感を与える商品だ。すでに、環境保全というのは、多くの消費者にとって大切な価値となっている。米国ですら、アル・ゴア前副大統領が世界中で地球温暖化問題の深刻さを訴えるドキュメンタリー映画「不都合な真実」が大ヒットするなど、市民の間でも重要な問題となっている。
 リサイクル商品、フェアトレード商品、オーガニック商品などに加え、地球温暖化防止商品が、環境保全商品の大きな流れとなるだろう。
 薪ストーブだけを見ると、大きく遅れてしまった日本だが、環境技術全体ということで見ていけば、日本は最先端の位置にある。こうした技術が「高い」というだけで採用されないとすれば、もったいないことだ。むしろ、薪ストーブのように、いかにして環境保全を消費者を分け合っていくのか、そうした工夫が必要だろう。

 金融も環境保全へ


 備前グリーンエネルギーでは薪ストーブの他に、省エネルギーサービス、木質燃料を利用したペレットボイラー、太陽熱温水器など、地球温暖化防止に資するさまざまな事業を展開しており、いずれも初期コストが不要で長期契約に基づくサービス料金での提供という形式となっている。
 その初期コストをまかなう事業資金だが、同社がユニークなのは、「市民出資」という形で調達しているということだ。これは、風力発電ファンドをはじめとする市民ファンドの専門会社である株式会社自然エネルギー市民ファンドを通じて、地球温暖化を防止したい全国の市民から出資を集めるというもの。10万円から出資でき、利率は2.1〜2.6%を見込んでいる。決して高い利率ではないが、省エネ事業には大型案件がいくつもあり、安定した配当が期待できそうだ。
 現在、1億6000万円の出資を集めているが、事業案件はまだまだたくさんあり、出資を募集している状況。市民といっても、法人として出資する企業もある。企業にとっても、余剰の資金の一部をこうした形で投資するのは、社会的貢献(CSR)ともなるためだ。これにより、企業は消費者に「備前市の地球温暖化防止事業を支援している」と言うことができる。
 実は、近年、社会的責任投資(SRI)が注目されている。同じ投資でも、より社会的な意義のあるものに投資しようというもの。エコファンドもその一種で、環境保全に貢献している企業の株式などで組成している。
 実は日本ではSRIの市場規模はまだ300億円程度と、欧米に比べて2ケタ以上も小さい。しかし、金融商品についても、環境保全型に向かう流れは明確にあると言えよう。こうした点から、究極のSRIとも言える市民ファンドは、新たな金融手法として注目される。
 岡山県備前市発の新しいビジネスは、新技術に基づいた、地方都市を元気にするビジネスということになろう。
(「企業と知的財産」No.417)


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