ロシアと北欧の美術館 1


 アテネウム美術館  フィンランド/ヘルシンキ

 ツアーでロシア旅行をした帰途、ヘルシンキの空港でグループから離れ、ヘルシンキに宿泊しました。北欧は夏が観光シーズンなのに、ヘルシンキの高級ホテルはサービス料金というので、滅多に泊れない5★に宿泊。都市のビジネス客の多いホテルなのでしょう。

ホテルから美術館までは徒歩15分くらいでした。途中路上で4.才.6才.10才くらいのジプシー?の美少女たちが猫の曲芸をしていました。一匹の猫が綱渡りを嫌がって少女の手を引っ掻いたり、ハラハラ・・・。娘を育てた身としては平然とは観られないものです。美少女を見る男たちのなかには好奇な視線を送るのもいて、暗鬱な気分になり、そそくさと美術館へ。
ヘルシンキ中央駅の前の堂々とした建物(写真)です。重いガラス扉を開けて中に入ると、思いがけず明るい近代的な内部でした。ジンベリの「傷ついた天使」↓を観るのが大きな目的だったのですが・・・。タンペリ?という町でジンベリの展覧会を開催中で、そちらに貸し出されたとの
ことでした。係りの方は列車で2時間だから行ってらっしゃいと勧めてくれたのですが、翌日はサヴォンリンナまで行く予定でしたから、無理(涙)。

   

フーゴ・ジンべリ(Hugo Simberg 1873〜1907)は19世紀末のサンボリスムの画家です。彼を初めて識ったのは「世紀末美術の楽しみ方」(新潮社とんぼの本)ででした。彼の代表作として、↑の作品が短く紹介されているだけでした。アテネウムで印象に残ったのは左の風景画と寒い国らしいイメージの病気になった悪魔のイラスト風の絵画でした。このあとサヴォンリンナから遊覧船で訪れたカレリア地方の湖畔の町でも何点か鑑賞できました。
    


帰国してから、彼の作品が版画を含めて18点札幌に来ていたことが判明・・・私は観ていませんでしたが、カタログがまだ芸術の森美術館で販売されていましたので、他の展覧会に行ったついでに購入。

「フィンランド 心の風景 landscape of Finnish Soul」1998年5月16日〜6月24日
副題はムーミン谷の冒険ですからムーミンの原画が売りだった展覧会だったのでしょう。

ジンベリがガレン=カレラの影響を受けたことは有名ですが、師の画風をそのまま踏襲したわけではなくフィンランドの中世美術はもとより、ベックリンや同じ北欧のムンクからの「死」のテーマを見つめ、印象的な作品を残しました。半ば憂鬱であり、半ば陽気な気質が彼の作品に観られるのは興味深いことです

この美術館のもうひとつの宝はガレン=カレラの「THE AINO MYTH」と呼ばれる3翼の絵画です。この地方のカレヴァラ伝説を主題に描かれています。まさに森と湖の国の伝説に相応しい作品です。

また、同時期にフィンランドの天地創造の詩「カレヴァラ」はシベリウスによって、組曲「レンミンカイネン 4つのカレワラ伝説」として作曲されました。

二人の偉大な芸術家によって、キリスト教が紹介される前の古代フィンランドの文化が消滅する前に新しい視覚と聴覚の輝かしい芸術で示されたことは、フィンランド人の誇りとなっています。



カレヴァラ伝説とは・・・フィンランド人の魂そのものです。森の精・水の精などの自然神を信仰し、自然界のあらゆる現象を神の霊の実現と信じて、口承により長い間伝えられてきました。狩猟の神タピオ、冬と氷の精ヨウカハイネン、太陽の輝きを表すポホヨラの乙女、大気の精イルマリネンらが登場します。19世紀になって研究、解釈の末「カレワラ」(1835.1849)として出版されました。      2000.7



   エルミタージュ美術館  サンクトペテルブルグ(ロシア)

ヴォルガ河クルーズのツアーに参加して、ロシアに行きました。モスクワから乗船し、10日ほどのクルーズの最後に、サンクトペテルブルグに停泊。市内観光の折にエルミタージュ見学をしました。
世界最大級の美術館はロマノフ王家の豪華で広壮な冬宮にあり、ツアーの制限時間の2時間ではほんの一部しか見られません。それは出発前から覚悟していたことですが、自分なりに欠かせない画家のものがあり、入り口で添乗員さんに断って、独りで行動することにしました。

←入り口付近から混雑

まず、館内地図をたよりにイタリア・ルネッサンスの部屋へ。ここにはダ・ヴィンチの「ブノワの聖母」と「リッタの聖母」。大変な人気で、小品ながら量感豊かな「聖母子」2点の前には行列ができるほど。ポントルモの「聖ヨセフと洗礼者ヨハネを伴う聖母子」の明るい色彩に目を見張り、ジョルジョーネの「ユデット」の慎ましやかな伏し目のユデットに詩的な背景に魅入りました。

いくつかの部屋をパスしながら、レンブラントの部屋へ。「イサクの犠牲」「「聖家族」「ダヴィデとヨナタン」などの傑作の数々。そして、別室に「ダナエ」。何年か前に展示中に傷つけられるという事件があり、その修復の過程などの説明パネルなど。この部屋の奥の部屋(ここまで来る人はあまりいなくて、ひっそり)にカラヴァッジョの「リューを弾く若者」があります。

←聖家族 ←ダナエ

途中だったでしょうか、部屋から部屋へ時間を気にしながら巡り歩いていて、ふと上を見上げると美しいガラス張りの天井と彫刻が(写真下)・・・ここは豪奢を極めた宮殿ですから、もっとゆっくり部屋の装飾も眺めながら歩くべきなのです。
そうは思いながら、自分の来た方角や部屋を頭の隅に置きながらの名画鑑賞です。団体で美術館に来たことを激しく後悔。それでもスペインのスルバランの「聖母マリアの少女時代」(右)で、ようやく写真を撮ることを思い出しパチリ。

   

マティスの部屋までの遠かったこと!「ダンスU」「赤い部屋」「家族の肖像」など装飾的な円熟期のマティスの魅力あふれる名作が部屋の壁を埋め尽くしています。凄過ぎる〜♪

家族の肖像                               「ダンス」のある静物
   

この部屋でツアーの方たちと合流できましたので、なんとか迷子にならずに済みました。ひどく疲れました。絵画だけでもまだまだ観たいものがあります。いつか再訪したいと思いながら船に帰りました。  2000.7