初めてピエロ・デッラ・フランチェスカを見そめた?のは、1994年ロンドン・ナショナルギャラリーでの「キリストの洗礼」
この美術館は2度目でしたが、前はあったのかどうかさえ気がつかなかったのに、どうしたことかこの絵の前でピタっと足が釘ずけに・・・。

キリストの表情、背景のグレイとブラウンを基調とした色合い、左にいる天使たちの仕草も好ましいと思いました。新しい発見でした。その後、パリ、ミラノやヴェニスなどで何点かピエロの傑作を観る機会はありましたが、いつか彼の故郷にある教会のフレスコ画が観たいと願っていました。

2000年ころ、修復がすんだばかりのアレッツォの画像をネットで見つけました。予約の画面もあり、すぐ申し込みそうになったほど。(^^;)それががきっかけで翌年2001.7トスカーナとウンブリアの画家の足跡を巡る旅に出発したのです。



写真:「キリストの洗礼」ロンドン・ナショナルギャラリー (テンペラ・板)167×116


 フィレンツエ/ウフィツィ美術館

「ウルビーノ公夫妻の肖像」 
残念ながら、お盆の里帰り中でウルビーノへ貸し出し中。
代わりに展示されていたのは最近までピエロの作とされていた「理想都市の景観」、春のイタリア年の記念展で東京で観たばかりでしたが、上から見下ろすように低く展示され、東京と違い人はまばら、ゆっくり観られました。
「ウルビーノ公〜」は2回観てますので、一応ここの欄にズルして?いれさせていただきました。(^^;)
   
絵葉書「フェデリコ・ダ・モンテフェルトロとバッティスタ・スフォルツァの対面肖像」1472〜74頃    各47×33 



 アレッツオ/大聖堂

「マグダラのマリア」
   
駅前のホテルから結構傾斜のある丘を登って、炎天下の旧市街をドゥォーモへ。
左側廊の聖具室の扉近く、なんとなく落ち着かない場所に描かれている。
そのうえ天井の大工事中、騒然とした雰囲気のなかのマグダラのマリア・・・けれどもその部分だけは見事なほどの清々しさをあたりに漂わせていて、さすが。しかも堂々たる存在感のマグダラのマリア。
綺麗に梳られた髪の毛、香油壷の磨かれたガラス、やや伏し目がちだが、通常描かれることの多い悔恨のマグダラのマリアにみられる罪の意識におびえた様子はまったくない。

清潔感あふれる柔らかな色調はウエイデンの「読書するマグダラのマリア」に匹敵する。
フランドルのお嬢様VS質素なイタリアの田舎娘と言ったところか。

絵葉書:左「マグダラのマリア」1460頃190×180             

絵葉書:右 ウェイデン「読書するマグダラのマリア」 ロンドン・ナショナル・ギャラリ
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 アレッツオ/サン・フランチェスコ教会

「聖十字架伝説」
  
前年、全面修復が済み予約制になったことを知り、矢も立てもたまらず来てしまった。
教会は先程訪れた大聖堂とは反対に簡素な単廊式。
教会隣りのブック・ショップで予約したむねを伝え、チケットをもらい見学。
教会に入ってすぐ後陣のフレスコが、なかでも私の好きな「コンスタンティ ヌス帝の夢」が目に飛び込んできた。
まるで恋人にでも会う時のように胸が ドキドキと高鳴ってくる。
思ったより狭い後陣には既に熱心な先客が10人ほど静かに鑑賞中。
予約がないと後陣に入って鑑賞ができないようになっている。
そのシステムを知らずにきた人も結構多いようだった。

珍しい主題の捉え方、描写については多少調べは済んでいたが、実物を前にその迫力には圧倒された。

イタリアへ旅立つ直前に偶然、美術史の先生からいただいたのが「ソロモンの橋」についての解説でした。それには「橋」という単語は聖書にはでてこないこと、つまりはこの物語は聖遺物崇拝とその収集が盛んに行われた中世のカルトの一環であること。
キリスト教=聖書のイメージから切り離して鑑賞する必要があるというわけです。
それを念頭に入れ「アダムの死」から順番に観ていく。
生き生きと描かれた跪いて聖木の橋を礼拝するシバの女王をはじめどの場面も神秘的で壮大なストーリー、そのなかにピエロ独自のおおらかな詩情があふれ、魅力的だ。
絵葉書:後陣全体

              


 サンセポルクロ/市立美術館

「キリストの復活」「慈悲の聖母」(多翼祭壇画)「トゥールーズの聖ルイ」「聖ユリアヌス」

なんと幸せな一日!まずサンセポルクロ、そして帰途に立ち寄ったモンテルキも含めて四点のピエロを堪能できた日でした。 

前日、アレッツォ駅前のインフォーメイションで調べておいたバスに乗車。
駅前のSITAターミナル発10:45でまず、サンセポルクロヘ(約1時間)。
終点のバスターミナルから徒歩数分で美術館Museo Civicoに到着。
ここでは「キリストの復活」がダントツで素晴しい。ベンチも置いてあってゆっくり鑑賞できる。
まず色彩、特に「ピエロの灰色」ともいえる品のある繊細なグレイの使い方に魅せられた。
画集の写真ではキリストの肌と陰につかわれたグレイの美しさに気づかなかった。
実物がこんなに素晴らしいなんて!!
 
しかし、「慈悲の聖母」ミゼリコルディアの祭壇画は同じ主題ではカルトンのほう(シャンティイ/コンデ美術館)が好き。南欧らしい透明感にあふれた明るさが画面をおおい、見てるだけで、優しい気持ちになる。
反面、ピエロのほうは初期の作品でもあり、制作に時間がかかったせい?他の部分との様式の違い?どことなく不安定な印象を受ける。
 
ここの「聖ユリアヌス」は東京での展覧会に貸し出し中と説明が・・・残念がるドイツ人らしい愛好者に「私は東京で観たのよ」とつい自慢してししまった。(^^;)

絵葉書:左がピエロ、右がカルトン(15世紀仏アヴィニヨン派の画家)の「慈悲の聖母」シャンテイイ・コンデ美術館



 モンテルキ/マドンナ・デル・パルト美術館

「出産の聖母」

サンセポルクロからモンテルキへバスで15分。
インフォーメイションの説明ではバス停のそばだから、次の20分後のバスに間に合うということだったが・・・とんでもない。
美術館にたどりつくまで小川を渡り、丘を登り、村の道を歩いて15分。
猛暑の昼下がり、汗だくになってようやく辿り着いた。

照明を落とした部屋、スポットライトに浮かび上がる身重の聖母と左右に幕を支える二人の天使。
もう文句なく綺麗!やや伏し目の聖母マリアの抜けるような色白の肌の美しさ、腰にあてられた手の誇らしさ、そして赤や緑の靴下の天使たちの可愛らしいこと!クーラーもない暗室、汗が滝のように流れた。

このフレスコ画一点のために建てられた小さな美術館。
修復前はピエロの母の故郷でもあるモンテルキの墓地礼拝堂に置かれていた。
修復の様子の写真を観たり、ビデオ室でピエロの他の作品も取りあげた、なかなか優れものの映像を観たりしているうちに、1時間半後のバスの時間が迫ってきた。
帰りは余裕で先程の道を戻り、数分遅れのバスでアレッツォへ。
ホテルで預けた荷物を受取り、夕方の列車で次の宿泊地ペルージャへ。



 モンテルキの美術館)



     

ピエロ・デッラ・フランチェスカを訪ねて 1