★オーヴェルニュの黒い聖母たち★

最初のロマネスク巡りの旅、オーヴェルニュ地方のあちこちで出会った黒い聖母たち。(絵葉書参照)
この絵葉書は確か、クレモンフェランの大聖堂の近くで買ったものです。一般に見られる聖母の清楚で優しいイメージとは異なっているので、強烈な印象を受けました。
このうち実物を拝めたのはル・ピュイの聖母子像、白い衣装に身を包み、カンガルーの赤ちゃんのようにお腹のところから顔を見せる幼児イエスが可愛い。
また、この絵葉書には写っていませんが、ロカマドゥールの聖母も奇跡の言い伝えに相応しい凄みのあるお姿でした。

「黒い聖母」のルーツはエジプトの地母神イシスとする説もあるとのことですが、ツアーのときのガイドの説明では、土俗的な信仰、例えば古代のケルト人が崇拝し、祀っていた地母神像との関連が濃いとのことでした。
キリスト教が一般に広く受け入れられた理由のひとつに、新約聖書では重んじられていなかった母マリアの崇拝を後になって地母神信仰と結び付け、高めた結果とも言われています。

その点、砂漠の民である、ユダヤやイスラムには風土的にも受け入れられなかったことは想像できます。実りの大地の母としての地母神崇拝は彼等には無縁の存在であったことでしょう。

一方ヨーロッパでは奇跡の聖母として中世に、カルト的な人気を集めました。今ではフランスのロマネスク聖堂、特にオーヴェルニュ地方の巡礼路に沿って多く点在しています。この地方のロマネスク巡りのもうひとつの楽しみといえるでしょう。


 オルシヴァル・バジリカ聖堂  Orcival


オーヴェルニュ地方のロマネスク建築の特色を完璧に備えた教会といわれています。朝、クレモンフェランを出発したバスは朝靄のなかピユィ・ド・ドームと呼ばれる火山岩の丘の地帯を過ぎ、峠からこの灰色の教会を見下ろすようにして、小さな村に入って行きました。
地形の都合か扉口は広場に向かず山側に建てられています。
後陣の外観は素朴ながら繊細な飾り彫刻で縁取られ、綺麗。
内部はこの地方に多い正面向きの地母神信仰の影響の強い聖母子像が内陣に置かれています。
教会の後ろ姿を眺める広場にはおみやげ屋やホテルがひっそりと建っています。
教会のなかで買った、峠から写したと思われる紅葉を背景にした教会全体の絵葉書です。この教会の立地の素晴らしさがおわかりでしょう。        1998.10   
★街角のロマネスク発見★

クレルモン・フェランの大聖堂の近くの土産物屋さんでこの絵葉書を見つけました。
「弟子の足を洗うキリスト」順番を待つ弟子が靴下を脱いで準備してます。いかにもロマネスクらしい素朴なユーモアにあふれています。さて何処にこの浮き彫りがあるのかしら?絵葉書には住所が書いてあります。Rue des Gras・・・すぐこの店の前の通りにその彫刻をはめ込んだ民家がありました。この絵葉書を買わなかったらきっと素通りしていたでしょう。    1998.10








サン・ネクテール教会 Saint Nectaire

サン・ネクテールはチーズの名産地で有名ですが、この教会の建つ丘の周りはひなびた静かな村です。ところがこの教会の管理人は変人といいますか、この教会を愛するあまり?国とたびたびトラブルを起こすそうで、このときも内部は見学不可でした。ただの管理人ではなく、この教会をここまで守ってきた功労者なのでしょう。こういう頑固な人物も必要かも・・・。

秋の紅葉するフランスの田舎にオルシヴァルと並ぶロマネスクの名教会がそのような人間のごたごたもよそに静かに建っていました。内部の彫刻を見るために再訪することももうないでしょう。大きな町から相当な距離があり、個人で行くことは無理と思いました。

豊かな自然に囲まれた美しい後背部からの眺めは完璧なピクチャレスク。瞼に焼き付いています。 1998.10





サン・ミッシェル・デ・ギュイユ礼拝堂 Le Puy en Velay

ル・ピュイの町に入ると山上に聳え建つ濃いサーモンピンクの聖母像(19世紀)が異様な感じで目に飛び込んできました。初印象は趣味悪い町!でした。

ところが、同じ山上でもこのデ・ギュイユ礼拝堂はサン・ミッシェルに捧げられ(多分ノルマンディーのモン・サン・ミッシェルの模倣)10世紀に建てられた礼拝堂です。268段の階段を登って辿り着いたせいもあって、感激の空間体験ができました。

入り口のラントゥには二人のセイレーンが長い髪を持ち、左右対称に向かい合っています。誘惑のシンボルとして二股人魚の姿ではあちこちにありますが、ラントゥに堂々と彫られたものは初めてでした。内部は狭い空間ですが、色褪せて、もはや識別の難しい壁画が後陣に残っています。壁のガラスケースには小さな木彫りのキリストの十字架像が飾られています。この鬚を生やし着衣のキリストの図像は古く、10〜12世紀の作と推定されています。

絵葉書は夜のデ・ギュイユ礼拝堂、奇観です。  1998.10












 
ノートルダム大聖堂 Le Puy en Velay

↑のデ・ギュイユから途中この地方が産地の黒い石で建てられた古い民家なども眺めながら、徒歩で大聖堂へ。結構傾斜のある坂道のうえの堂々たる構えは黒い石で建てられたせいもあってほかのロマネスクには見られない威圧感もあります。ただ外壁にはところどころ白や赤の石がアーチラインとして彩られ、それがとても美しいのです。正面入り口左にはアラブ文字も書かれた扉、建築様式にもビザンチンやアラブの影響がみえ、ダイナミックな空間が広がっています。

前述した黒い聖母子は8/15の聖母昇天祭には教会の外におみこしのように担ぎ出されるようです。
坂道の階段沿いには名産のレースのお土産店が並んでいます。レースが好きなのでショッピングを楽しみました。

「酔いどれ船」というランボーの詩集の名のついたレストランでランチ。ここの街ではホテルの夕食でもさすがに美味しいチーズが食卓に上りました。この旅のおかげでそれまで苦手だったブルーチーズも大好きになりました。           1998.10



   




 ノートル・ダム・デュ・ポール教会  Clermont-Ferrand


パリからフランスの中部を回ったツアーバスは最終地がオーベルニュ地方のクレルモン・フェランでした。
ここの旧市街から徒歩15分ほどのホテルに2泊し、郊外のオルシヴァルとサン・ネクテールそして市内の観光をしました。

この教会は6世紀の創建ですが、ヴァイキングに破壊されたあとは11、12世紀に再建、その後19世紀に鐘塔、屋根などが付け加えられました。ですから、建築スタイルとしてはあまり魅力はないのです。そのうえ
密集した市街地に建っていますので全体を眺めるのも難しいのです。でもその難点を充分補うのが内部の柱頭彫刻です。あいにく御葬式の最中だったので全部は観られませんでしたが、ロベルティウスが彫ったという力量あふれる造形に特徴があります。特に聖母マリアの被昇天(絵葉書参照)、アダムとエヴァなどが印象的でした。
1998.10





 



FRANCE

AUVERGNE ROMANE

オーベルニュ地方 (1)オルシヴァルOrcivalノートルダム聖堂 (2)ノートル・ダム・デュ・ポール教会  Clermont-Ferrand (3)サン・ネクテール教会 Saint Nectaire
(4)サン・ミッシェル・デ・ギュイユ礼拝堂 Le Puy en Velay (5)ノートルダム大聖堂 
Le Puy en Velay