2001年12月の日記

Home | [前へ] | [日記のトップに戻る] | [次へ]


12月1日(土)晴れ

 目覚めるとラケットバッグを持って外に出た。午前中はサークルの定期練習だ。集まりは悪く、コート二面に対して参加者は6名しかいない。休み無くたっぷりと練習できた。穏やかな日差しで暖かいというよりむしろ暑いぐらいだ。

 昼に一度家に戻ると相棒を連れて別のコートに向かう。移動の途中で相棒が作ってくれたサンドイッチを食べた。午後は仲間内での練習だ。小春日和のコートにボールとストリングスが奏でる気持ち良い音が木霊する。アップから、ボレー&ストローク、スマッシュ&ロブ、サービス&リターンを練習し、最後はゲームを楽しんだ。日が傾いてくるとちょうどデュースコートのリターンで正面から太陽と向き合う形になり、非常にやり辛い。急速に暗くなり始めた。コートの営業時間が終わる前に終了する。

 相棒を連れてさらにインドアのスクールに移動した。相棒はすぐにレッスンに入る。ロッカールームに行き、服を脱いで奥の大浴場に向かった。ジャグジーバスやサウナを備えていてリラクゼーションには恰好の場所だ。ゆっくりとサウナを楽しみ、さらにマッサージチェアで一眠りした。リフレッシュして今日最後のレッスンに向かう。夕食は帰り道の途中で済ませた。

 

12月2日(日)晴れのち曇り

 目覚めると先日インターネット通販で購入したコードレス掃除機を担いで外に出た。灰色の車の内部を掃除してやる。ドアを開け、マットや荷物などを全て外に出した。先細り形状になったノズルを取り付け、シートの上や床のゴミを吸い取っていく。コードレス式なので吸引力は物足りないし、カーペット張りの床に絡み付くゴミは元々取れ難いが、作業を繰り返すとほぼ満足できる仕上りになった。室内とトランクルームを掃除してもまだバッテリーに余力がある。ついでにうに色のクルマの床も掃除してやった。こちらはプラスチック張りなので、掃除が容易い。

 一仕事終えた後、相棒を起して、コーヒーとトーストとヨーグルトのブランチにした。昼前にラケットバッグを抱えて家を出る。今日も気持ちのよい日差しだが、風が冷たい。メンバーが揃って練習を始めた。久しぶりに練習に加わったメンバーがいて懐かしい気分だ。次第に東の方から黒い雲が広がってきて、ついにはコートの上を覆った。急に気温が下がる。終了時間より早く終えて帰宅した。熱い風呂に入り一息つく。晩飯は今シーズン始めての鍋にした。白菜、水菜、豆腐、蒟蒻、牛肉をポン酢と大根卸しで頂くと美味い。

 

12月3日(月)曇り後晴れ

 スリランカから持ち帰ったブロークン・オレンジ・ペコを銀のティースプーンで計って渋い色調の益子焼のポットに入れた。街中で庶民が普段に飲む紅茶を買ってきたので、茶葉は細かいが、ブレンドされていない単一の畑から取れた紅茶は野性的な強い味がする。充分に沸騰させた沸かし立てのお湯を、空気を含ませるように高い位置から勢い良く注いだ。丸いポットの中を対流によって紅茶の葉が開きながら踊る様を想像しながら、ぼんやりと朝のニュース番組に目を向ける。世紀の発明という噂が意図的に流されていた製品のニュースが映し出されていた。正体は立ち乗りの電動スクーターだ。冷蔵庫から出した500g入りのパックからプレーンヨーグルトをボウルに適当に取る。マーマレードを少し落として良く掻き混ぜた。スプーンで口に運ぶ。ヨーグルトの程よい酸味とマーマレードのほのかな甘さが目覚めたばかりの頭を少しだけハッキリさせた。大きめのマグカップ一杯のホットミルクを2分目ほど飲み残して、そこに充分蒸らした紅茶を注ぐ。熱いミルクティーの出来あがりだ。一杯のミルクティーの味わいと香りを楽しんでから家を出た。外に出ると寒さで顔が引き締まる。息が白い。

 

12月4日(火)雨後晴れ

 うに色のクルマに近づくとエンジンルームの下辺りの地面にコーヒーをこぼしたような小さなオイルの染みが増えている。やや量が増えたようだ。早急な対応が必要になるだろう。構わずドアを開けて作業着の入ったデイバッグを助手席に放り込んでから乗り込んだ。エンジンはわずかなクランキングで目覚める。自動的にCDプレーヤーの再生が始まり、BOSEのスピーカーから優しい女性ボーカルが流れ出した。冷え切ったミッションを労わるようにそっとクラッチをつなぎ、ゆっくりと走り出す。1速を使い、アイドリングよりやや回転を上げた程度の速度でスロープを上がって地上に出た。ヘッドユニットのモードボタンを押してCDからラジオに切替える。スピーカーから流れる声は張りのある男性パーソナリティーのものになった。まだギアは1速のままでシフトしない。建物の前をアイドリングでゆっくりと横切って電動式の門の前に近づいて停まった。門に近づくとセンサが検知して自動的に鉄扉が開き始める。クラッチを踏んでギアをニュートラルに戻し、再びクラッチから左足を離してフットレストに置いて待った。獣が唸るようなアイドリング音が朝のエントランスに響いている。

 

12月5日(水)晴れ後曇り

 定時に仕事場を後にして外に出ると既に冬の早い落日に空は暗く沈んでいた。雲が空を覆い尽くしていて星も見えない。駐車場まで歩いてうに色のクルマで走り出した。12月に入ると近くの市営コートのナイター営業が終了する。それを確認するために市営コートの前を通るとナイター照明は点いておらず、8面あるテニスコートは全て闇に覆われていた。壁打ちコートの横を通ると、何者かが車をコートの横に乗り入れて、車のヘッドライトの光の中で壁打ちをしている。少し車高の高い車なら乗り入れが可能なので、試してみようと思っていた手法だ。灰色の車ならば出来るだろう。いつか実行することを心に誓った。

 橋を渡って市内に入る。コンビニエンスストアの広い駐車場にクルマを乗り入れ、端の方に停めた。アミノ酸系飲料とスナックパンを買って車内に戻り、食べる。ゆっくり咀嚼して食べ終わるとシートを倒して仮眠した。30分ほど眠ると頭がすっきりする。再びクルマを走らせてテニスクラブに向かった。ナイター照明がまばゆくコートを照らしている。準備体操をしながら開始時間を待った。ヘッドのiラジカルを持ってコートに入る。今日最初のボールタッチの感触を楽しんだ。

 

12月6日(木)雨後曇り

 目が覚めると枕もとの障子の外はまだ暗い。起き上がって居間まで行きカーテンを開けると眼下の街はしとどに濡れていた。雨は既にピークを越え、勢いを無くしている。昼過ぎには上がるだろうと、TVからアナウンサーが告げた。習慣となった動作でTVのニュースを見ながらミルクを温め、ヨーグルトを器に取り、マーマレードを一さじ落とす。ポットをお湯でゆすいで温め、スリランカの紅茶を二さじ計って入れた。蒸らす間に歯を磨き、熱いミルクティーを飲むと外に出た。うに色のクルマで自宅から走り出す。

 帰りが遅くなった。うに色のクルマのガラスには霜の予兆が始まっている。ワイパーを使って夜露を振り払ってから走り出す。家に戻り、ストーブを点けた。小鍋にお湯を沸かし、出汁の素を放り込む。白菜を刻んで、先ず芯を入れる。しばらくしてから葉の部分も入れた。味噌を溶き入れる。フライパンに油を敷き、ジャコとカシューナッツを鷹の爪と一緒に炒めたものを適量放り込む。残りご飯を加えてほぐしながら炒めていく。刻んだ自家製のキムチも加えた。米粒がさらさらになったところで、卵を一個割落として全体に絡めるとキムチ炒飯の出来上がりだ。冷たいビールに合う。

 

12月7日(金)晴れ

 現場での作業は予想を越えたボリュウムを持っていた。たまに時計を見やる度に時間は無常にも流れていくのが判る。歯噛みしながらも確実に作業を進めていくと、ついに一段落着いた。次の瞬間、きびすを返しロッカールームへ走る。手早く着替えてから駐車場までの道のりを急いだ。ちょうど良いアップになる。うに色のクルマに乗りこみ、ヘッドライトを点けて夜の中に走り出した。

 壁打ちが日没で不可能になり、サークルのナイター練習も冬季休みに入った今、ボールを打つ機会を持つために最も手近な手段は、帰り道にあるテニスクラブに通うことだ。20分ほど遅れて到着すると軽く準備体操をしてコートに入った。この時間帯は人が少ない。今日のスクール生は3名だった。コーチを入れてやっと4名になる。スクールのレベルは物足りないが、金曜の夜の、この時間帯では、他に選択の余地がなかった。しかし、人数が少ないのは魅力でもある。気温は一層下がってきていて、ボールも弾まず、ストリングスの反発力も落ちている。現在使用中の二種類の性格が異なるラケットを使ってみてから、よりパワーがあってボールが飛ぶフォルクルのラケットを選択した。すぐに体が温まってくる。

 

12月8日(土)晴れ

 穏やかに晴れ上がった空の下へ、うに色のクルマで走り出した。トランクにはヘルメットやグローブの他にフライパンやコンロなどの野外調理道具を積み、トランクキャリアには折り畳み式のテーブルを積んでいる。助手席のクーラーボックスには北関東の地方都市で有名な店の冷凍餃子が入っていた。国道バイパスを南に向かって走る。途中で朝食代わりのお握りを齧りながらだ。1時間程のドライブでサーキットに到着した。開門を待つクルマの列に並ぶ。今日のチームメイト達と落ち合った。

 駐車場にクルマを並べて停めると、トランクからテーブルを降ろして、今日をたっぷり満喫するための陣地をこしらえる。太陽が次第に上って来て凍てついた空気を少しづつ暖め始めていた。風もなく過ごし易い1日になりそうだ。

 プラクティスが始まる。最初のドライバーがピットロードを出ていくのを見送った。まだ路面もタイヤも冷えている。7分程度で次々と4名のドライバーが交代してクルマの感触を掴む。スペック上は1.6LのSOHCで非力は否めないが、車体が軽い分、加速も良いし、コーナーリングスピードも上げられた。2時間付き合う相棒として悪くない。短時間で好感触を得た。

 予選タイムは出場13台中11番手程度だが、ほとんど関係ない。耐久は一周のタイムではなく、それに近いタイムをどれだけ重ねられるかだ。満足してパドックに戻るとタイヤを前後入れ替えることにした。通常欧州車はホイールをボルト止めしているが、この黒いクルマはスタッドボルトに換えている。しかし、酷く錆びていた。予感は当たり、ナットを緩めたつもりがスタッドごと抜けて来たのが一本、ネジ山をなめてしまっていたのが一本出てくる。チームメイトの二人がパーツを購入しに出かけた。

 大きめのトートバッグからカセットコンロと風避けの板を取り出し、クルマの陰にセットする。フライパンにごま油を薄く敷き、クーラーボックスから取り出した冷凍餃子を隙間なく並べた。おおよそ4人前、24個程度。これが一度に焼ける限界だ。少し底面を焼いてからポットに用意しておいたお湯を餃子が1/3浸かる程度注いで、蓋をする。後は焼き上がりを待つだけだ。クーラーボックスから冷えた缶を取り出し、中身をステンレスのマグカップに注いで飲んだ。美味い。やがてフライパンから餃子の焼ける良い香りが漂い始めた。時々蓋を開けて焼け具合を確認する。良い感じだ。

 最後の仕上げにごま油をたらす。フライ返しで餃子を底から剥がし、ボーンチャイナの白い皿をフライパンの上に逆さにあてがい、全体をひっくり返した。フライパンをどけると綺麗に焼き上がった餃子の皮が日射しを受けて透き通るように輝いている。特製のタレを付けて頬張ると、実に美味い。上出来だ。空いたフライパンに再び餃子を並べて焼く作業をくり返す。5回くり返し120個焼いた餃子は瞬く間に集まった仲間達の口に消えていった。

 耐久レースのスタートが近付いてくる。コース上ピット前にクルマが並べられ、コースを挟んで反対側にドライバーが立った。ルマン式スタートだ。グリーンフラッグが振り降ろされ第一ドライバーがクルマに駆け寄る。各車バラバラとスタートして行った。2時間先のゴールを目指してレースは始まった。黒いクルマのオーナーでもある第一ドライバーは素晴らしいペースで走り、思った以上のタイムを刻む。見ごたえのあるバトルが各所で繰り広げられた。第二ドライバーも充分に役割を果たし確実に周回を刻んだ。スタートしてから約1時間経ち、再びピットに戻って来た黒いクルマに乗り込み、ピットアウトの時間を待つ。制限時間が過ぎた。

 ピットロードを加速してコースに出た。ハザードを消し、一コーナーに滑り込んでいく。最初はやや押さえ気味にだ。クルマの状態は悪くない。車体が軽いこともあってタイヤの消耗も少ないようだ。徐々にペースを上げていく。最終コーナーをアクセルを踏み込んで立ち上がっていくと、突然エンジンが息つきを起こし加速が鈍った。ガス欠の症状に似ている。メーターを確認するとまだ半分程度残っていた。ストレートに出て横Gが消えると息つきが無くなる。タンク内でガソリンが片寄って一時的なガス欠症状が起きるのだ。無線でピットに告げ、走り続ける。次は第一ヘアピン、その次は第一コーナー、第2コーナーと症状の出るコーナーは増えていき、症状自体も重くなっていった。コーナーリング速度を上げてカバーしようと無理して侵入した第一ヘアピンでスピンし、コースアウトする。すぐに復帰してさらに我慢の走行を続ける。徐々に調子を上げていったその時、突如シフトレバーの手ごたえが無くなった。シフトリンケージが外れたらしい。2速固定になってしまう。レースは終わった。これ以上無理な走行を続けてクルマを壊してはならない。暗鬱な気分でクルマをピットに戻した。

 

12月9日(日)晴れ

 広い公園の中に入り、テニスコートの隣の林にクルマを停めた。風が強く、酷く寒い。テニスコートの周りには身長程の高さまで風避けネットが張ってあるため、低い球筋のボールはさほど影響を受けないが、サービスのトスやロブは風に流されて大きく変化した。風を遮るウォームアップの上下を着込んでいるのでプレイを始めるとすぐに寒さを感じなくなった。弱々しい冬の日射しも助けになっている。一汗かいて陣地に戻ってくると冷たいビールが旨い。つまみのあられや落花生などが出て来て、昼間から忘年会ムードになった。

 強風に翻弄されながらゲームを楽しみ、ゲームの合間は宴で楽しむ。理想的なオフの過ごし方だ。昼には用意された材料で豚汁を作る。スタッフが手際よく調理して熱々の豚汁が出来上がった。吹きすさぶ北風の中で具沢山の豚汁はたまらない旨さだ。腹が満ちると眠くなる。仲間が乗って来たミニバンの座席に上がり込んで眼を閉じると気持ちよいまどろみが訪れた。30分程の仮眠で気分が晴々とする。再びラケットを握ってコートに出ると、陽が傾くまでゲームに興じた。素晴らしい1日だ。家に戻ると埃だらけの体をシャワーで流し、熱い湯舟に浸かる。完璧だ。

 

12月10日(月)晴れ

 昨日は5セット程度しかゲームをこなしていないので、疲れは残っていなかった。目覚めも悪くない。うに色のクルマでいつもの通勤路を走っていく。風は冷たいが、体は良く効くヒーターで暖かい。極楽オープンドライブだ。

 月曜から長い会議で帰りがすっかり遅くなる。うに色のクルマで空いた国道を走って家に戻ると、冷蔵庫に入れてあったバリ風カレーを小鍋で暖め、電子レンジで暖めた残り御飯に添えて食べる。ココナッツミルクが効いていて、実に濃厚なコクがある。香辛料の独特な香りもバリを思い出させて、味わい深かった。熱い風呂で体をほぐし、布団に潜り込むと瞬く間に睡魔に引き込まれていく。

 

12月11日(火)晴れ

 昨夜は遅くに寝て睡眠時間が不足していた。寝覚めが悪い。まだ眠りに後ろ髪引かれる思いを振払い、渋々布団を出た。スリランカの紅茶を濃いめに入れて眠った脳に喝を入れる。ラケットバッグを持って、うに色のクルマに乗り込んだ。いつもの通勤路は、いつもより渋滞していた。

 夕方、早めに仕事を終え、うに色のクルマを飛ばしてテニスクラブに向かう。久しぶりに火曜日のクラスに振り替えで参加した。ナイターの照明に照らされたコートに立つと、気分が良い。まだ手がかじかむ程の寒さではない。スクール生は休みも多く、3名だけであった。コーチが入って4名。ほとんどコートに入りっ放しだ。1時間半のレッスンが終わるとウォームアップの下のTシャツが濡れそぼる程の汗を流している。心地よい充実感に満足してコートを後にした。

 

12月12日(水)晴れ

 ブルーのワイシャツを素肌に着けて、グレーの細かい杉綾織模様のスラックスを履いた。ネクタイには全体として見ると赤系統ではあるが、良く見ると細かい複雑な模様で草原を走る狐の絵柄が織り込まれているものを選ぶ。紺色のシンプルなデザインのブレザーを羽織ると極普通のサラリーマンの出来あがりだ。カーキ色のバーバリーのコートを着て、黒のコインローファーを履くと家を出た。駅までの道を大またに歩いていく。南に向かう快速列車に乗ると目を閉じた。

 やがて列車は終点のターミナル駅に到着する。電車を二度乗り換え、地下のホームから長い階段を上って地上に出た。既に辺りは真っ暗だ。歩いてイベントホールに向かう。エントランスを入ると顔見知りのスタッフが迎えてくれた。クロークでコートを預け、胸に大きな赤いバラを模したリボンをつけられ会場に入ると、早速ビールで迎えられた。ドラムロールが鳴り響き、乾杯の後、今年のモータースポーツ表彰式は、立食式のパーティーで始まる。真っ先に表彰を受けた。レーシングスクールの優秀卒業生としてだ。宴も半ばで抜け出すとスタッフ達との二次会に移る。ビールを酌み交わしながらモータースポーツを語り合う。

 

12月13日(木)雨

 さほど強くないが細かい雨が降り続いていた。久しぶりの雨だ。全体的にぼんやりと水に沈んだような景色の中を、灰色の車で走っていくと、水中眼鏡をつけて泳いでいるような気分になる。

 退屈な会議を終えて外に出ると灰色の車のフロントガラスで水滴が凍り付いていた。軽く舌打ちしてからドアポケットのスクレーパーを取り出し、氷を取り除く。走り出しても、しばらくは車内は冷たいままだ。

 自宅に戻ると先ずストーブをつける。上着をクローゼットに収めると台所に行き、水を張った大鍋を火にかけた。ニンニクをたっぷりと刻み、弱火にかけたフライパンでオリーブオイルとじっくり炒めると香ばしい香りが漂った。イタリアトマトの缶詰を一缶加えて少し炒めてから、さらにピーマンを細かく切ったものを加える。大鍋に多めのパスタを放り込んだ。フライパンの中身は塩胡椒とアンチョビペーストとバジルなどで味を整える。茹ったパスタをフライパンに加えソースと絡めると簡単で熱々のトマトパスタが出来あがった。冷たいビールを飲みながら、熱いパスタをフォークで巻き取って頬張る。TVではパレスチナとイスラムの何時終わるとも知れない戦いのニュースが流れていた。

 

12月14日(金)曇り後晴れ

 雨は上がっていたが、まだ路面の所々に濡れた部分が残っている場所もあった。うに色のクルマで家を出て車が多くなり始めた朝の田舎道を走っていく。街の東側を南北に流れる大きな河に掛けられた橋の上は、昨夜の雨が凍結していた。朝の光で路面か一部白く乱反射をおこして見える。さらに丘を上がって行くと所々に凍結個所があった。タイヤがスリップする程ではないが、やや慎重に走る。12月も半ばだ。そろそろ冬用タイヤに交換する必要がある。

 仕事を片付け、うに色のクルマで帰宅渋滞の車の列に加わった。空いていれば10分程度の道のりに30分以上をかけて帰り道の途中のテニスクラブに辿りつく。ナイター照明の下では既にレッスンが始まっていた。今日のスクール生は総勢6名だ。コーチの球出しによるショット練習からペアでのボレー対ストロークのパターン練習へ進み、最後はサービスからのゲーム形式で締める。

 自宅に戻り、冷蔵庫を開けると根菜類が豊富にあった。久しぶりにカレーを作ることにし、人参、ジャガイモ、玉葱の皮を剥き、乱切りにすると豚肉とニンニクと鷹の爪とカレー粉などと一緒に炒める。水を加え灰汁を取りながらじっくり煮込んでいった。

 

12月15日(土)晴れ

 目覚ましで起きて、ラケットバッグを背負って家を出る。うに色のクルマで30分ほど離れたコートに向かった。天気は良いが、やや風がある。ミニストローク、ボレーボレー、ストロークとアップをしてから、ペアボレー、スマッシュ、サービス&リターンと練習メニューをこなす。最後はダブルスのゲームをして午前の練習を終えた。

 帰り道でうに色のクルマをディーラーに向かって走らせる。オイル漏れの所在を確認しようと思って行ったのだが、生憎とサービスが休みで見てもらえなかった。スーパーやドラッグストアを3軒回って買い物を済ませ、自宅に戻る。昨夜のカレーと残りご飯で遅い昼食を取ると、灰色の車のタイヤを冬用のスタッドレスに交換し、空気圧を適正に整えてやった。通常タイヤは倉庫にしまう。その後、近くの大手カー用品ショップに出かけ、うに色のクルマのブレーキディスクローターを発注した。

 夜の暗く、空き始めた地方国道を灰色の車で走って、街中にあるインドアのテニスコートに向かう。コートは、6階建てのビル一つが会員制のスポーツクラブになっている、その最上階にあった。今月の練習テーマはサービスリターンだ。球だしを、繰り返しリターンする。

 

12月16日(日)晴れ

 何度も目覚ましをセットしなおして渋々起きる。身支度を整えるとビブラムソールのワークブーツを履いて家を出た。駅までの道を軽くジョギングして体を温める。南に向かう快速電車に乗りこむと、空いた座席に座って目を閉じた。座席の下からヒーターの熱気が上がってくる。すぐにスイッチを切ったかのように意識が遠のき眠りが訪れた。

 目を覚ますと乗換駅の一駅手前だ。電車を乗り換えて目的地を目指す。最後に地下鉄に乗り換えて一駅移動するところだが、わざと地下鉄に乗らずにあまり混んでいない通りを歩いて行く。地下鉄の一駅にしては距離があるが、歩いても30分程度なので、軽い運動に丁度良い。既に年末ムードを漂わせる商店街を抜け、初詣の準備を始めた神社の中を通りぬけ、さらに5分ほど歩くと目的の家に着いた。

 今日は何家族かが集まってのクリスマスパーティーだ。持参した安物の甘いスプマンテを開けて乾杯する。ビールや日本酒やワインを飲みながら料理を食べ、話に華を咲かせる。最後はフルーツポンチやケーキを食べてお茶を飲んだ。夜になって朝来たルートを逆に辿って自宅に戻る。風呂に入ると寝酒を飲み直し、布団に潜り込んだ。夢も見ずに眠る。

 

12月17日(月)晴れ

 夕方5時から始まった会議が9時過ぎまで続いた。終わってすぐに机を片付けて事務所を出る。うに色のクルマで既に空き始めた主要国道バイパスを走って自宅に戻ると10時を回っていた。相棒が用意してくれた晩飯を食べる。

 遅い時間からだが、借りてあった映画のビデオを見始めた。「バーティカル・リミット」という標高の高い山への登山中に起きる遭難と救助活動を扱ったサスペンスアクション映画だ。雪山の映像は美しいし、雪崩などの迫力もあった。映画館の大きなスクリーンと大音響で見るとさらに楽しめる筈だ。見始めるとハリウッド映画の巧みなスピード感のある展開で、つい最後まで見せられてしまう。世界の最高峰クラスへの登山をスポーツと言うならば、これほど死の危険と隣り合わせのスポーツは少ない。ここまで行くとスポーツと言うよりも冒険というべきだ。

 

12月18日(火)晴れ

 アラームで目覚めた。テニスウエアを着てラケットバッグを担ぎ、家を出る。近くの駅まで歩いた。まだ空席の目立つ電車に乗り、ボックスシートに座ると目を閉じた。シートヒーターの熱と適度な振動でたちまち眠りに吸い込まれる。目を覚ますと都心に近づき車内は通勤客で一杯になっていた。二回電車を乗り換えて、すっかり閑散としたホームに下りる。駅を出て東に20分ほど歩いていくと今日のテニスコートに辿りついた。

 サーフェスはゴムチップを固めたもので適度に弾力があり柔らかい感触だ。球足はかなり遅い。今日の趣向は交流試合だけでなく、HEAD専属のコーチのレッスンがつくことになっていた。元デ杯選手のコーチングを受ける機会は得がたい。レッスンが始まると、プロプレーヤーの美しいフォームのテニスには羨望すら覚える。また、テニスショップ経営のプロコーチの熱意と豊富な運動量に畏敬の念を覚え、的確な指摘に納得する。午前中の二時間は瞬く間に過ぎていった。昼食を取り、午後の交流ゲームに移る。初対面の人たちと組んで何試合か重ねた。目に焼きつけた美しいイメージと自らの動きの落差に落胆しながらだ。帰り道は心地よい疲労感と満足感に包まれる。

 

12月19日(水)晴れ

 机の上を片付けて事務所を後にする。重い鉄の扉を開けて外に出ると冷たい新鮮な空気に受け止められ、全身を包み込まれた。皮膚の表面が急に緊張するようだ。ロッカールームに入ると、その緊張が緩んだ。テニスウエアに着替えて駐車場に向かって歩いた。うに色のクルマに乗り込み、ヘッドライトを点けて夕闇の中を走り出す。

 壁打ちコートの前を通ると、今日もコート脇に車を乗り入れてヘッドライトの灯りで壁打をやっている男がいた。いつか灰色の車で一緒に照らしてやる、と心に誓いながら通り過ぎる。途中のコンビニで菓子パンを買って食べ、駐車場で30分程仮眠した。目覚めるとテニスクラブに向かう。

 いつものメンバーが揃い、コーチが現れるとレッスンが始まった。今日からニューボールになる。寒いために思った程は弾まないが、かなりメルトンが擦り切れていた先週のボールに比べると打球感が良かった。心無しかプレーの質も上がる様だ。ボレー&ボレー、ボレー&ストローク、サービス&リターンのポイントマッチ、ダブルス形式のポイントマッチと、内容はいつも通りだが、積極的に前に出る気持ちを維持し続けた。レッスンの後は乱打で締める。爽快な気分になった。

 

12月20日(木)晴れ

 昼から夕方まで長い会議が二つ続く。特に前半は聞いているだけなので酷く退屈だ。事務所を出ると満天の星が迎えてくれた。北関東の地方都市では、空が暗いので都心とは比べ物にならない程、星が良く見える。駐車場までの道のりを空を見上げながら歩いた。車が疎らになった薄暗い駐車場で、うに色の車は水銀灯に照らされながら待っている。鍵穴にキーを突っ込んで解錠し、繊細な細いアルミのドアハンドルを引き起こしてドアを開けた。黒いショルダーバッグを助手席に放り込むと、タイトな車室内に体を折って滑り込ませる。静かな駐車場にエンジン音が響いた。

 自宅に戻ると大鍋に水を張って火にかける。冷蔵庫を開いてレシピを考えた。ニンニクと鷹の爪を刻んでフライパンで熱したオリーブオイルにて炒める。玉葱を薄くスライスしてキツネ色になったニンニクに加える。さらに水を切った豆腐を適当な大きさに切ったモノを加えて炒めていく。酒、鶏ガラスープの素、牡蠣油、塩、黒胡椒で味をつけた。最後にほうれん草を軸と葉に切り分け、まず、軸の方をフライパンに放り込む。固めに茹で上げたパスタとをほうれん草の葉をフライパンに加えると中華風豆腐のパスタの完成だ。

 

12月21日(金)曇り後雪

 天気予報に合わせて、冬用のタイヤに交換した灰色の車で家を出る。昼前には予報通り雪が降り始めた。積もる程の勢いはない。灰色の空間を白い雪が舞う様子は何時見ても、何か不思議な気分にさせられる。日が落ちて暗くなる頃には既に雪が降り止んでいたが、今夜のナイターレッスンはコートが使えず中止になった。

 灰色の車を流れに乗せて走らせる。前方を見つめる瞳は沈鬱に暗かった。帰り道で二軒のスーパーを回り、食料品を仕入れる。この寒い夜を乗り切るメニューは鍋に決めた。安いほうれん草と牛バラ肉を使って、大根おろしとポン酢で食べることにする。

 自宅に戻ると土鍋に日高の昆布を切って入れ、水を張って火に掛けた。鍋の準備は簡単だ。一番手間が掛かるのは大根を卸すことぐらいになる。1/2本の大根を根気よく卸した。豆腐を適当な大きさに切り、ひらたけを適当に株分けし、ほうれん草を軸と葉に切り分けると準備は終わりだ。先ず、豆腐とほうれん草の軸とひらたけを煮立った土鍋に入れた。大根卸しとポン酢と柚子胡椒で作ったタレに茹だったほうれん草をたっぷりとつけて食べると、実に美味い。牛バラ肉も甘味があって旨い。米焼酎のロックを飲み干した。

 

12月22日(土)晴れ

 灰色の車にボール籠やラケットバッグを積みこんで昼過ぎに家を出た。天気は良く、日差しも穏やかだが、強い北風で体感温度は低い。車の外に出ると衣服に覆われていない末端部分が急速に冷えて、痛みを伴うほどだ。ボレーは良いが、ストロークは風の影響でボールが横に流された。サービスのトスも流される。休むとすぐに体が冷えて来てしまうが、ちょうど1面に4名なので休む必要が無く連続して体を動かせた。最後はゲームを3セットして終わる。

 夜のスクールレッスンに行く前に、イタリア風ファミリーレストランによって軽くおやつ代わりのドリアとケーキを食べた。ワインのデカンタを頼み、熱いドリアを突つきながら飲んだ。灰色の車のキーを相棒に預けて助手席で眠る。テニススクールのあるスポーツクラブのジャグジーとサウナで汗を流し、マッサージチェアでもう一眠りすると気分がすっきりする。

レッスンの後は、こってりしたどろどろのスープが売りの街道沿いのラーメン屋でラーメンを食べ、自宅に戻った。シャワーを浴びて眠る。

 

12月23日(日)晴れ

 早朝、目を覚ますとまだ外は暗い。日の入りは伸びたが日の出も遅くなっていた。コーヒーとトーストとヨーグルトの朝食をとっている内にすぐに明るくなる。灰色の車にラケットバッグを積みこんで朝の光の中を南に向かって走り出した。オープンのミックスダブルス大会にエントリーしてある。今日はその試合日だ。4ペアのリーグ戦が6組あり、その後に、それぞれのリーグ戦の1位〜4位に分かれて順位別トーナメント戦を行う方式だ。オープン大会らしく、そこそこレベルは高い。結局1位相手に0−6、2位相手に4−6、3位相手に3−6と良いところなくリーグ戦4位で午前中を終了する。午後は順位別トーナメントだ。午前中全く上手く行かなかったサービスが入り始め、サービスゲームをキープするものの、その他を全部取られて2−6。今日のゲームは全て終わった。他の人の試合を少し見てから荷物をまとめて撤収する。

 帰り道で安さを武器に急速に売上を伸ばしたカジュアル衣料の店に寄り、鬱憤を晴らすように買い物をした。太い畝折のコーデュロイパンツを二本買う。晩飯はニンニクを効かせたチゲ鍋にした。唐辛子の辛さに汗が出るほどだ。冷たい白ワインが美味い。

 

12月24日(月)晴れ

 空が、ようやく明るくなり始めていた。コンクリートの壁に蛍光灯の明かりが無機質な雰囲気の地下駐車場に降りる。キーを差し込んでひねると一瞬でエンジンが目覚め、野太い排気音が壁に反射して響いた。うに色のクルマで走り出す。祝日の朝は車も少なく、流れに乗って快適に走れた。

 帰宅すると相棒が夕食の支度をして待っている。今夜のメニューは、オニオンスープにポテトサラダ、メインは鳥もも肉のトマトソースかけだ。玉葱をきつね色になるまで丁寧に炒めると独特の甘味と香りが出る。北海道から取り寄せたジャガイモを使ったポテトサラダは濃厚なジャガイモの味が楽しめた。脂を落としながら香ばしく焼き上げた鳥もも肉にたっぷりとトマトソースをかけたメインディッシュはトマトの酸味が効いて爽やかだ。食後にはスリランカのブロークン・オレンジ・ペコを濃い目に入れた紅茶と、白桃を間に挟み、トッピングにマンゴのスライスを乗せたショートケーキが出された。ふわふわのスポンジケーキと生クリームをフォークで一口に切って口に入れ、薫り高い紅茶をすかさず口に含むとそれぞれの食感と香りが口の中で優雅なハーモニーを奏でる。借りてあった映画を楽しんだ。

 

12月25日(火)晴れ後曇り

 寒空の下で一日中実験をこなすと、体も心も冷え切っていた。自宅に戻る途中で大手のカー用品店に寄り、注文してあったブレーキディスクローターを受け取る。ドイツ製のスリット入りローターだが、むしろ価格は純正よりも安かった。うに色のクルマにフィットするように作られている。

 帰宅して先ずストーブをつけた。部屋が暖まるまではしばらく時間が掛かる。台所に行き、冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。プルタブを開けてグラスに注ぐと大きく一口飲む。爽やかな苦味と炭酸の刺激が気持ちよい。大き目の鍋に水を張り、火にかけた。先ず、ほうれん草を下茹でする。水を入れ替えて再び火にかけ、扇切りにした人参、ひらたけ、えのき茸などを入れる。今日の味噌汁の具のメインはカニだ。友人から出産祝いのお返しに送られたタラバガニ1匹のおまけについていたぶつ切りのカニ足をたっぷりと鍋に放り込む。味噌を溶き入れる前にスープの味見をすると、カニから出たエキスが溶けこんで素晴らしい旨みと香りが口中に広がった。味噌の量は控えめにする。どんぶりに茹でたほうれん草を入れ、具沢山の味噌汁をたっぷりと注いだ。柚子胡椒を添えて啜り込むとたまらなく美味い。

 

12月26日(水)晴れ

 暗い駐車場で待っていた、うに色のクルマに乗りこみ、夜の闇をヘッドライトの頼りない灯りで照らしながら走り出した。近くの壁打ちコートの前を通ると今夜もクルマのヘッドライトの明かりの中で壁打ちをしている男が居る。横目で見ながら通りすぎるとクラブのコートを目指した。

 レッスン開始時間の直前に照明の点されたコートに到着する。今夜のレッスン生はいつもより多く、8名だ。ボレー&ボレー、ボレー&ストローク、サービス&リターンの半面ポイントマッチ、アプローチからの平行陣対雁行陣のポイントマッチといつも通りに進行していく。一時間50分程度のレッスンはあっと言う間だ。気温が低いので使わない左手には手袋をしていないとかじかんでしまうほどだ。無論、右手や体は全く問題ない。

 昨日購入したCDをうに色のクルマに搭載したCDチェンジャーのマガジンに入れ、張りのある女性ボーカルを楽しみながら帰宅した。大鍋でお湯を沸かして、スパゲッティを茹で、作り置きのカレーを温めて熱々のカレースパを作る。かなり辛く作ったカレーには、冷えたビールが良くあって、美味い。

 

12月27日(木)晴れ
 昨日の雪による路面凍結を危惧していたが、思ったよりも早くに雪が止んだお陰で路面はほぼ乾いている。ノーマルタイヤのままの、うに色のクルマで凍てついた冬の大気を切り裂いて走っていった。不安はない。

 夜、まだフロントガラスに夜露が凍り付く前に駐車場を出た。もう1時間も経つと氷を溶かしてから走りはじめる羽目になる。薄暗いヘッドライトの光の中に冬枯れの景色が遠近感も希薄に浮かび上がっていた。木々が白っぽく凍っているように見える。なんとも寒々しい光景だ。寒さを振払うようにヒーターの風量を上げる。カーオーディオに入れたCDが再生され、BOSEのスピーカーからは張りのある女性ボーカルが流れ出し、うに色のクルマの狭いキャビンを音で満たした。外の殺風景な世界と、中の暖かく活気に満ちた空間が薄い幌一枚でくっきりと区切られている。幌を開ければ巻き込む寒風と引き換えに外の世界とガラス越しでなく交わりあって、全てが生き生きとしたものになる。しかし、幌をあげていると、外の世界は遠く、よそよそしかった。窓を少し開けてみる。冷たい風が刺激的だ。途端に外界が近くなる。隣を走るトラックの音、排ガスの臭い。空はまだ遠い。

 

12月28日(金)晴れ

 今日からテニスクラブが休みに入るため、レッスンはない。今年の仕事を終わりにしてうに色のクルマで駐車場を出たが、夕刻の帰り道はあちこちで車が列をなして滞っていた。カーオーディオから流れる優しいそよ風のようなヴォーカルを聞きながらゆっくりと赤いテールランプの列を追い掛けて行く。橋を渡るとやっと車が流れ始めた。アクセルに乗せた足に力を加えると、うに色のクルマは少し声を高めて反応し、軽々と流れに乗って走る。

 帰り道の途中で少しだけ遠回りしてスーパーに寄った。朝食用の食パンと野菜や豆腐などを買い込む。安ワインも3本仕入れた。赤2本、白1本だ。地下駐車場にうに色のクルマを停めると、荷物を抱えて階段を上がり、玄関ホールからエレベーターに乗った。

 自宅に帰ると、先ずストーブのスイッチを入れる。冷蔵庫から頂き物のたらばがにを出した。浜茹でにして冷凍してある。昨夜冷凍室から冷蔵室に移しておいたが、まだしっかり凍っていた。蒸し器で軽く蒸すことにする。中が人肌程度になるまで暖めたたらばがにを毟って肉を取り出して頬張ると旨味と甘味が口一杯に広がった。文句なく旨い。白ワインで口中を洗いながら夢中で作業を続けた。

 

12月29日(土)晴れ

 今日から正月休みという人が多い為か、車通りは少ない。灰色の車にテニス道具を積み込んで、今年の打ち納めをしに近所のテニスコートに向かった。市営の安いコートは今日から休みに入っている。以前から存在だけは知っていたテニスクラブのレンタルコートを初めて借りてみた。ハードコートが6面のテニスクラブは、農家の大きい家や雑木林に囲まれてこじんまりとした雰囲気だ。古びたクラブハウスでお金を支払うと、空いているコートをどれでも使ってくれと言われる。午前中使っていた人たちが帰っていくと、コートに残ったのは一組だけだ。4人でアップしてから今年最後のゲームを楽しんだ。空は青く、静かだ。ボールの弾ける音だけがハードコートに反響して木霊していた。

 

12月30日(日)晴れ

 地下駐車場は薄暗いが、外を吹き荒れている寒風の影響はなく、作業を始めると軽く汗ばむ程だ。ホイールナットを緩めておいてからサイドシルのフロント側ジャッキアップポイントにジャッキをかけてリフトしていく。片側の前後タイヤが地面を離れるまでリフトした。フロントタイヤを外し、ブレーキキャリパーも外すとブレーキローターとブレーキパッドを新品に交換する。左フロントのパッドはほぼ完全に磨耗していた。ブレーキキャリパを元に戻して、前後タイヤをサーキット走行用のものに交換する。ジャッキを降ろし、反対側でも同様の作業をくり返した。ジャッキアップのついでにエンジン下に頭を突っ込みオイル洩れの箇所を探す。あちこちの継ぎ目と言う継ぎ目がオイル滲みで光っていた。

 バケツ一杯のお湯を汲んで来て、ウエスを十分に濡らしてから、うに色のボディの汚れを落としていく。泥汚れを落とし終わると人工セームで水滴を拭き取った。汚れ落としとワックスを兼ねた液剤をスプレーしてウエスで伸ばしていく。乾いたウエスで乾拭きすると、うに色がつやと輝きを取り戻していった。最後に幌に保護剤を塗り込み、幌の穴を当てもので補修すると、作業は完了だ。

 

12月31日(月)晴れ

 風も止んで穏やかな日になった。外の駐車場で灰色の車を洗ってやる。バケツ一杯のお湯でウエスを濡らし、ボディ全体の泥汚れを洗い流した。継ぎ目に残る水を息で吹き飛ばしながら人工セームで水滴を取り去っていく。汚れ落とし兼WAXをボディにスプレーしながらウエスで塗り込んだ。最後に乾いたウエスで拭き上げると灰色の車にも鈍い光沢が宿る。バンパーやモールの黒い樹脂部分に呉のタイヤワックスをスプレーしてウエスで磨くと樹脂表面に濡れたような艶が出て来た。紫外線で劣化したモールにも思った以上の艶出し効果が得られる。滑っては危険な部分を除いて車の内外を磨いてやった。総てのウインドウガラスをウエスで丹念に磨いていく。視界がかなりクリヤーになった。

 フロントウインドウの隅と、サイドクォーターガラスに張付けていたTVの車内アンテナを剥がして、配線も取り外す。購入しておいた電波職人のフィルム状車内アンテナをリアクォーターガラスに張付け、新たに配線を引き直してやった。これまでのロッド式車内アンテナよりもすっきりと取り付けられた上に感度も高い。満足して灰色の車を離れた。2001年はもう今日で終わる。穏やかな一日だ。


Home | [前へ] | [日記のトップに戻る] | [次へ]