2002年04月の日記

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4月1日(月)晴れ

 地下駐車場に降りていくと、いつもの様にうに色のクルマが待っていた。事務方の理不尽な要求に対して交渉した結果、今年一杯はうに色のクルマで通勤可能になった。この程度の事で従業員に負担を掛ける損と、この程度の事で、気分良く通勤できる得に対する損得勘定が出来ないのは困り物だ。施策者としての資質を問われても仕方ない。カバンを助手席に放り込み、運転席にもぐり込むとエンジンを始動して走り始めた。

 水温センサを交換し、エアフローメータを清掃したが、その効果が現れたとは言い難い。アイドル回転は、今だやや高いままだ。現代の電子制御エンジンは各種センサを使って、精密にコントロールされている。その制御プログラムにはセンサが故障した場合にもエンジンを壊さずにそこそこの性能を出させたり、経年変化に対応して学習する機能が搭載されている。故障センサに対して学習した制御値が正常なセンサとの組合せでうまく動かないことは充分に考えられる。まだバッテリーを外して制御装置をリセットする操作をしていなかった。夜、自宅に戻ってからマイナス端子を外してみる。次の朝には効果が明らかになるはずだ。

 

4月2日(火)晴れ

 地下駐車場に止まっているうに色のクルマを少し離れて良く見ると極わずかに車体が左に傾いているように見える。以前に実際にメジャーでホイールアーチの頂点部の地上からの高さを測ってみたところ、運転席側が数ミリ程度低くなっていた。だが構うことはない。だいぶ前から泥で汚れたままのドアを開けて乗り込んだ。新品のステアリングは、さらっとした感触と、絶妙な形状が握る度に心地よい。エンジンを始動して走り始める。

 しばらく走って信号で止まった。水温計の針も動き出している。アクセルを離すとエンジン回転は一瞬ためらった後にアイドル回転に落ち着いた。正確に言うならばやや不整脈のような回転変動は感じられるが、ぞれを均してみると正常なアイドル回転と言える。バッテリー外しによる制御装置のリセットが効果を現したのだ。ただし、危惧した通り、わずかな回転の乱れまでは完全には治らない。だが、大きな前進だ。燃費も元に戻るだろう。

 1km程続く、桜並木の下を走っていくと、道の両側から覆い被さるように満開の花びらに包まれた枝を張った木々が、まるで白い綿帽子のようで現実感を希薄にさせた。

 

4月3日(水)曇り夜になって一時雨

 布団を出て居間のカーテンを開けるとぼんやりとした雲が春霞のように薄く天を覆っていた。TVの天気予報を眺めると、今日は日中晴れるが夜にはにわか雨があるかも知れないと新人のアナウンサーが告げている。テニス用ウォームアップは裏地のない薄手のものにした。ラケットバッグを背負って家を出る。少し涼しい風を感じながら、うに色のクルマでいつもの通勤路を走っていった。桜並木はすっかり葉桜となり、少し赤みがかった新芽の色が木全体を赤っぽく見せている。異例の早咲きで花の色が薄くなった分、余計に葉の赤色が濃い様に見えた。

 机を片付け、事務所を出る。まだ大分日が高かった。TVアニメの影響か壁打ちコートに子供がうろうろしていて危険だ。一時間程壁打ちを楽しんでからクラブに移動する。時間通りにレッスンが始まった。壁打ちで打点を確認しておいたお陰かリターンが良い。本来定められた終了時間を10分程オーバーしてレッスンが終わるとその途端に細かい雨が落ち始めた。幌を降ろしっ放しにして置いてあった、うに色の車に乗り込み、そのまま走り出す。家に着くまで雨は強くならなかった。

 

4月4日(木)晴れ

 カーテンを開ける前から、気持ち良く晴れて陽光が天空を満たしている事が判った。実際に春らしい薄いブルーが美しい空と対面する。家を出ると強い風がドアを押し戻そうとした。うに色のクルマに乗って家を出る。日が大分高くなって狭いフロントシールドの上端あたりから差し込んで来た。ブラウンのプラスチックレンズを入れたサングラスを着ける。

 外は一日冷たい北風が吹き荒れたようだが、空調の効いた事務所の中に居ると、何も感じなかった。仕事を終えて外に出るとすでに真っ暗な空に星が綺麗に見える。数日前まで内側から発光しているようにほの白く闇を彩っていた桜並木は、春の魔力が消えて弱弱しく光を失っていた。どこか魔物的な妖しい情念を秘めているように見えた桜の木は、見る影もなく普通の並木に戻ろうとしている。短い春の夜の夢は儚くなった。

 うに色のクルマのドアを開けて乗り込む。キーを使って起こしてやるとメーターパネルに命が通い、エンジンが咆哮を上げた。オーディオのスイッチは入れない。今日はエンジンの音だけで良い。闇を貫くヘッドランプの白い光の中に向かって走り出した。

 

4月5日(金)晴れ

 朝から天気が良い。いつもの様にうに色のクルマに乗って家を出た。風が少し残っていたが、大した事はない。気持ちの良い春の日が戻ってきた。風で桜並木の道路脇には白い花びらが多く積もっている。しかし、異常な気温上昇により速成開花させられたせいか、花びらの量が去年よりも少ないように感じられた。

 夕方早めに仕事を切り上げて事務所を後にする。今日から今までのスクールを止めて、別のスクールに行く事にしたのだ。少し遠く、帰り道の途中でもない上に、始まる時間が早いので、連続して参加できるかどうか微妙だ。うまく抜け出すことが出来た。急いで着替え、うに色のクルマの幌を降ろして走り始める。混雑する道を避けて、なんとか始まる少し前に着くことが出来た。軽く壁打ちで準備してからスクールに臨む。生徒は全部で5名だ。ボレーボレーのアップ、球出しからのボレーとストローク練習、ボレーとストローク、サービスというメニューで進行する。ボレーのスイングと、フォアハンドストロークのスタンスと、バックハンドストロークの左手と、サービスのスイングで指摘を受けた。指摘は具体的で判りやすい。気持ち良く汗をかいた。

 

4月6日(土)晴れ後曇り

 春の陽気が戻ってきた。しかし、日陰ではまだ肌寒い。野外調理用の機材を詰めた大きいトートバッグやクーラーボックスを持って家を出た。勿論、ラケットバッグやボールもだ。車で10分も掛からない近くの運動公園に向かう。去年の今ごろは満開の見頃だった桜もすっかり葉桜だ。僅かに花が残った桜の木を見通せる木陰にシートを敷き、公園に作りつけのテーブルを占拠する。

 朝は少ない人数で練習から始めた。次第に昔住んでいた隣の県など遠方からの人なども含めたテニス仲間が集まってくる。コートを増やし、アップを済ませたところからゲームに入った。午後からは3面に拡大してゲーム三昧にする。昼食には、この地方都市の名物と称される餃子を焼いた。フライパンにごま油を敷き、5人前の餃子を隙間なく並べる。詰め込み過ぎだが、25人前を焼ききる為には仕方がなかった。お湯を差して蓋をし、水分が無くなるまで焼く。底がほぼ一体化してピザのような形になった。酒やビールを飲みながら、焼き上がった餃子やお弁当にお菓子などを食べると話しも盛り上がる。テニスの後は温泉に浸かり、最後は食事をして解散にした。素晴らしく楽しい一日になる。

 

4月7日(日)晴れ後曇り

 薄く広がる雲を通して薄日が差す茫漠とした天気だ。物の形さえもどこか輪郭がぼやけて曖昧模糊として見える。気温は桜を早く咲かせるためにエネルギーを使い切ったように例年並に戻っていた。昨日のイベントによる疲れが残っていたので、昼過ぎまでをゆっくりと過ごす。遅目の昼食を摂ってからテニスウエアに着替え近くのテニスクラブに向かう。相棒と沢山のボールを打ってラリーをし、ボールの感触を楽しんだ。誘われて何ゲームか、ゲームもこなす。

夕方暗くなってからテニスクラブを出ると、街に向かい、餃子ツアーを始めた。このさしたる特徴も無い地方都市では餃子の街として売出しを図っていて、市民にももっと餃子を広めようとしているのか、餃子ツアーが企画されている。指定された57店舗を全て回って餃子を食べ、スタンプを集めると、一年間有効な餃子食べ放題パスポートが貰えると言うものだ。夕方から3軒回って一皿ずつ餃子を食べスタンプを集める。今まで一度も入った事の無い中華料理屋に入ってみると、色々新しい発見があった。この地方都市についてもっと良く知る為の良い機会になりそうだ。

 

4月8日(月)晴れ

 週末が終わり、いつもの様に再び月曜日になる。地下駐車場に降りていくと、変わらない姿でうに色のクルマが待っていた。今夜こそ洗車する、と心に決めて運転席にもぐり込む。走り出すとアイドリングはややバラけるが、それ以外は問題無かった。高回転では不都合無く回るので、何が原因か良く判らない。点火コイルやインジェクタ−の問題ならば高回転でも問題が発生するはずだった。一度信頼できるショップに預けて見てもらう必要がありそうだ。

 仕事を適当に始末すると、早めに事務所を抜け出した。うに色のクルマのガスタンクを満タンにしてやり、地下駐車場に帰る。自宅からバケツに一杯のお湯を汲んでくる。最近は、このバケツ一杯のお湯を使って洗車するのが習慣だ。お湯に浸したタオルを絞らずに、ボディを濡らしてやり、タオルで軽くなでるように埃を落とす。砂汚れをざっと落としてから人工セームで水滴を拭き取り、液体汚れ落とし&ワックスをスプレーして塗り広げた。ウエスで拭き取ると、表面の摩擦が減り、光沢が出てくる。これで充分だ。幌には保護剤をスプレーして磨いてやった。

 

4月9日(火)曇り後雨

 いつもより一時間早く目覚めた。勿論目覚ましのアラーム音で、だ。急いで着替えて地下駐車場に降りる。うに色のクルマにヘルメットバッグを積み込み、走り出した。南へと向かう。洗車して黄砂の汚れが落ちたうに色が一際朝の光に映えた。集合時間丁度にサーキットの門をくぐる。

 先ずは座学を30分ほど聞いてから、ジムカーナ場に移動する。最初はブレーキングの練習だ。アクセルペダルを唐突に放すのではなくじわっと放し、ブレーキをガツンと踏まず、じわっと踏んで前に荷重が掛かり始めたらドンと踏むのだが、難しい。次は、パイロンに沿って楕円のコースを回る。加速・減速・旋回と車の基本操作が全て取り込まれたカリキュラムだ。これもリズムに乗るのが難しい。出走待ちをしている間、コース脇の桜の木から花びらがはらはらと舞って、心を和ませた。

 午後はミニサーキットに移動して、ヘアピンを使ったコーナリング練習になる。午前の定常円旋回よりも高い速度から減速し、ブレーキを残したままアンダーを消して回頭するのは難しい。最後はサーキットを周回して総合練習する。テニスで言えば練習試合の様なものだ。サーキットを後にすると待っていた様に雨が落ちてきた。

 

4月10日(水)曇り

 明るくもなく、暗くもなく、暖かくもなく、寒くもない、全てに曖昧な気候が気持ちを宙ぶらりんにさせる。布団を出て居間のカーテンを開けるとぼんやりとした光がなんとなく漂い、物の色の濃淡や輪郭をぼやけさせ、平凡な町並みをより一層平板に見せていた。濃いグレーのテニス用ウォームアップをワードローブから選び出す。ラケットバッグを背負って家を出た。曖昧な町並みを走り抜ける、うに色のクルマだけがリアルでビビッドだ。まだ僅かに花をつけたままの桜並木をくぐる。今年の桜は切れが悪い咲き方だ。だらだらと咲き始めだらだらと散り残っている。

 机を片付け、事務所を出る。壁打ちコートで1時間ほど過ごした。スマッシュの打点が少し良くなる。クラブに移動する途中のコンビニで軽く腹ごしらえをした。レッスンが始まる。壁打ちで打点を確認しておいたお陰かスマッシュの当たりが良い。終了時間を15分程オーバーしてレッスンが終わった。さらに15分ほど乱打をしてクールダウンする。うに色の車の幌を降ろして走り出した。巻き込む風が少し肌寒い。温度調節ノブを温風側一杯に回し、ヒーターを効かせた。

 

4月11日(木)曇り後雨

 春の薄雲が太陽の光をほの白く散乱させているのは、カーテンを開けなくても判っていた。ことさらカーテンを開ける気にもならない。マグカップ一杯のミルクを電子レンジで暖めて飲んだ。プレーンヨーグルトに、ほんの少しの塩を散らして良くかき混、滑らか感を出してから口に運ぶ。マグカップの底に一口分ミルクを残し、そこに熱い紅茶を注いだ。ミルクティーの甘い香りが気持ちをリラックスさせる。今夜は雨になると天気予報は告げていた。久しぶりに灰色の車に乗って家を出た。今日もサングラスの出番はない。乳白色の空に太陽がまるで月の様に丸く見えていた。

 仕事を適当に切り上げて外に出るとすでに真っ暗な空に星も見えない。雨はまだ落ちてきていなかった。黄砂を被って汚れ切った灰色の車に乗り込む。ワイパーとウォッシャー液でフロントガラスを拭った。ハロゲンバルブの放つ、今となっては暗くさえ感じる光の中に走り出す。少し帰宅時間を早めたお陰で、雨が降り出す前に家に帰りついた。白ワインを開けて飲みながら、昨日作っておいたカレーの鍋に火を入れ、米を炊き始める。一晩寝かしたカレーは味に奥行きが増していた。

 

4月12日(金)曇り後晴れ

 地下駐車場に降りて行くと変わらぬ姿でうに色のクルマが待っていた。トランクにラケットバッグを積み、助手席にショルダーバッグを放り込むと、クランキング一発でエンジンを目覚めさせる。すぐにゆっくりと走りだし、家を出た。朝曇っているとサングラスが不要で、目にも刺激が無くてよい。桜並木の中に数本の八重桜が混じっていて、満開になっていた。ソメイヨシノは完全に新緑に包まれている。いつの間にか初夏の気配が近づいてきていた。

 会員制のテニスクラブの中のテニススクールに通う為には定時帰りが必要だ。うに色のクルマの幌を降ろして走り始める。混雑する道を避けて、いつもと違うルートを走ってみた。少し時間の短縮に成功する。クラブの近くでスーパーに寄り、飲み物とパンを買う余裕が出来た。軽く壁打ちで準備してからスクールに臨む。生徒は全部で6名だ。ボレーボレーのアップ、球出しからのボレーとストローク練習、ボレーとストローク、サービスというメニューで進行する。ボレーのグリップを少しフォアよりに変えてみたらと提案され、試してみた。僅かに変えるだけで随分当たりが変わる事に気付く。気持ち良く汗をかいた。

 

4月13日(土)晴れ後曇り後雨

 春と言うよりは初夏の日差しが雲の間から時折覗いた。雲の動きが速く、空を覆ったかと思うとまた晴れるを繰り返す。うに色のクルマを走らせていつもとは違う隣の市の運動公園に来た。夏になると一万人プールで大賑わいになる公園だが、今はまだ閑散としていてのびのびと過ごせる。午前中一杯を少し砂が多めの滑り易いオムニオートで友人達と気楽なテニスを楽しんだ。公園の入り口を出てすぐの辺りにイチゴ農園の出店があり、旬のイチゴを売っている。大粒で爽やかな味のイチゴだ。2パックをワンコインで購入する。助手席にイチゴの詰まったパックをそっと置いて家に戻る。

 昼食を取って一休みしてから、工具箱を持って地下駐車場に降りた。うに色のクルマのボンネットを開け、スロットル回りをバラして見る。ブローバイが多いようだと言うディーラーメカニックの言葉から、PCVバルブの詰まりを予想して、外してみるが、問題無かった。結局、アイドルバラツキの原因は掴めない。午後の貴重な数時間を費やした車イジリは大した収穫も無く終わった。

 夜はスタンプラリーの為に市内の餃子店を4軒はしごする。各店舗毎にそれなりの特色があって面白い。

 

4月14日(日)曇り

 平日よりは多めに寝たが、それでも寝足りない感じが残っていた。逆らわずにしばらく二度寝を楽しむ。昼までに数時間を残して、やっと布団から抜け出した。昨日ほどは日差しが強くない。春の朧な柔らかい太陽が街に降り注いでいた。

 遅目の朝食を摂ってからテニスウエアに着替え近くのテニスクラブに向かう。壁打ちや乱打、ゲームとのどかな陽気の中でテニスを楽しんだ。半そでと短パンで体が軽くなったかのようだ。用事で出掛けていた相棒から、灰色の車が動かなくなったとの連絡がある。バッテリー上がりのようだ。うに色のクルマで自宅に戻ると、やはりバッテリーが弱っている。ジャンプケーブルでうに色のクルマと接続すると、難なくエンジンが目覚めた。うに色のクルマを地下駐車場に戻し、灰色の車でクラブに向かう。途中で少し遠回りして弱ったバッテリーに充電されることを期待した。暗くなるまでテニスを楽しみ、再び灰色の車に乗り込むが、バッテリーは再起不能だ。他の車に助けてもらい、エンジン始動する。帰り道で近所のホームセンターに寄り、新しいバッテリーを購入する。本来はまだ持つはずだ。寿命が短すぎた。夕食後は心地よい疲れで気分良く眠る。

 

4月15日(月)晴れ

 霞がかかった様に、朝の空は淡いグレー一色だ。薄雲の帳の向こうには初夏の太陽が確かに在る。地上には曖昧な影が落ちていた。うに色のクルマで家を後にする。路上に走り出たクルマは軽く咆哮を上げながら広い幹線道路を疾走した。カーテンを引いた様にさっと明るくなる。雲の切れ間から最初の日差しが地表に降り注いだのを合い図に、空が薄いグレーから薄いブルーへと、まるで魔法のように瞬く間に色変わりして行った。鮮烈な生まれたての陽光にうに色の車体をきらめかせ、新緑の並木道をクルマは走る。このまま何時までも走り続けたい欲求に駆られた。

 会議が終わって開放されたのは日付が変わる数時間前になる。急いで机の上を片付け、ロッカールームに向かった。作業着から着替えると、僅かに溶け残った雪の様に歩道をほの白く染める花びらを踏みしめて、暗い並木道を歩く。街灯がぽつんと暗い駐車場に車の影は少なかった。うに色のクルマのややずんぐりとした愛嬌のあるサイドビューを見ながら近づいて行く。開口部の大きい17インチホイールが精悍だ。斜め前方に近づくとラインがくっきりと引き締まる。角度によって驚くほど印象が変わって見えた。

 

4月16日(火)曇り

 水を含んで重そうな灰色の雲が空を覆っていた。TVニュースで新人のアナウンサーが曇り後雨の予報を告げている。バッテリーを交換したばかりのチェックの意味合いも兼ねて灰色の車で出掛ける事にした。野外駐車場に放置された灰色のボディは黄砂で汚れている。キャブ仕様のエンジンはEFIが当たり前になった現代のエンジンに比べるとやや長いクランキングの後に目を覚ました。オートマチックのセレクタをD4に入れて走り出す。

 暗い空に星は見えないが、雨はまだ落ちて来なかった。駐車場で待つ灰色の車に乗り込むと帰り道の途中に在るテニスクラブに向かう。途中のコンビニエンスストアでアミノ酸系の清涼飲料水のペットボトルと肉まんを買った。車に戻って水分補給をし、肉まんで腹を落ち着かせる。球出しからレッスンが始まった。スイングも打点もどこかおかしく、打球が定まらない。何となく体が重い感じもあった。ストローク、ボレー、スマッシュを球出しで練習した後、サービスとリターン、ダブルス形式の練習と続く。一時間半のレッスンは、あっという間だ。終了後、3人で乱打のクールダウンをするが、ストロークの感覚は最後まで狂ったままだった。

 

4月17日(水)曇り後雨

 コンクリートの建物の輪郭が曖昧になり、そのまま溶け込みそうな白泥色の空が広がっていた。もう何日も朝の青空を見ていないような気がする。地下駐車場にうずくまるうに色のクルマに近づき、鍵穴にキーをさし込みドアロックを解除した。シートに体を滑り込ませると、朝のドライブの始まりだ。通勤車両で混雑が始まった幹線道路に出ていく。

 机の上を片付け、急いで事務所を出た。うに色のクルマを、すでに帰宅する車が増え始めた道路に解き放つ。今夜はコーチが休みを取った為、テニスのレッスンが中止になった。わざと夕方の帰宅ラッシュで流れが悪くなり始めたルートにステアリングを切り、地方都市のターミナル駅に向かう。街中にあるカー&バイク用品の店の駐車場にクルマを止めた。エアクリーナーを清掃するキットと、ブレーキ回りを清掃するケミカルと、フルフェイスの白いヘルメットを購入する。暗くなった街に細かい雨が落ちてきた。コーチが休みでなくても今夜のレッスンは中止になっていただろう。

 自宅に戻ると冷たいビールを飲み、TVを眺めながら夕食を作った。メインは豆腐とピーマンとシメジをテンメンジャンと豆鼓で炒めた中華風豆腐料理だ。

 

4月18日(木)曇り

 薄くたなびく雲に太陽の光が柔らかく散乱させられて、あたり一面にふわふわと光の粒子が漂っているような春の朝になった。街並みは立体感が希薄で、ほの白い光のスープの中に溶け出していきそうなほど存在感を失っている。熱いミルクをすすりながらTVニュースを眺めた。大した事件はない。他愛無い芸能ネタやスポーツの結果などが流れていった。マグカップにスリランカのティーバッグを落とし、熱湯を注ぐ。ミルクの甘い匂いに混じって凛とした紅茶の香りが立ち上った。ゆっくりと熱い紅茶を飲み干すと家を出た。

 地下駐車場に降りていくとやや肌寒い。うに色のクルマのドアを開け、イグニッションキーを差し込み、一段ひねった。メータパネルの点灯を確認してから、キーをさらに一段ひねると、スタータモータのスイッチが入る。その瞬間、全てが息絶えた。沈黙が辺りを支配する。一瞬何が起きたか判らなくなるが、すぐに電源が途絶えた事に気付いた。手を掛けたままのイグニッションキーをひねり戻して、もう一度オンする。メータパネルも点灯しなかった。昨年バッテリーが上がった時と同じ症状だ。時間がない。諦めて歩いて外に出て灰色の車に乗り換えた。

 

4月19日(金)晴れ

 久し振りに晴れて気持ちの良い青空が広がった。一日会議室で缶詰になりながら知恵を絞り出して色々考える。夕方になってなんとかまとめを終え、会議室を出て駐車場に向かうと、屋根を下ろした赤いクルマが通りがかった。テニス仲間だ。軽く手を振り、走り去って行くエッジの効いたシャープなラインで構成された後ろ姿を見送った。

 金曜のスクールにはギリギリの時間だ。暗くなり始めた幹線道路を少し速度を上げて灰色の車を走らせて行く。準備体操の間に、なんとか滑り込んだ。先程赤いクルマで走っていった男が来ている。以前からたまに同じコートでテニスをしていたが、一緒にレッスンを受けるのは初めてだ。高校生を含め、今夜の生徒は4名になる。動きの多い、ややハードなレッスンになるが、きついと言う程ではなかった。

 自宅に戻り、うに色のクルマの待つ地下駐車場に行く。ドアを開けると弱々しい室内灯が迎えた。ボンネットを開け、バッテリー端子を外し、ワイヤブラシで磨き、グリースをたっぷり塗って組み直す。特に期待もせずにイグニッションキーを回すと、呆気無くエンジンが咆哮を上げて蘇った。原因はバッテリー上がりではなく接触不良だ。

 

4月20日(土)晴れ後曇り

 目覚ましの音で意識のない眠りの淵から急速に現実世界に引き戻された。ヘルメットバッグを持って、うに色のクルマに乗り込む。すでにトラックだけではなく普通の自家用車も増えて流れが遅くなり始めた国道バイパスを南に向かった。集合時間の50分前にはサーキットのゲートをくぐる。

 パドックにクルマを止め、途中のコンビニで買っておいたブランチ用のサンドイッチと飲み物を持って第2ヘアピンコーナーの観覧席に向かった。すでにサーキットを何台もの車が走り回っている。春の陽射しが暖かいスタンドのベンチに座って、ゆっくりとサンドイッチを食べ、苦い飲み物を飲んだ。計測器を取り付け、30分間の走行に臨む。ストレートスピードを上げることと、ヘアピンでのトレールブレーキングを今日のテーマと定め、コースインした。最後の方で調子に乗り過ぎて、トレールブレーキング過大となり、第2ヘアピンで360度ターンしてしまう。

 自宅に戻り、ラケットバッグを持つと、テニスクラブに向かう。3時間程相棒やメンバーを相手にテニスを楽しんだ。市内の餃子屋を3軒回って餃子を味わい、温泉に浸かって一日の疲れを洗い流す。帰宅して布団に潜り込んだ。

 

4月21日(日)曇り後雨

 目覚ましの電子音が深い眠りの底から意識のどこかに手を掛け、現実の明るみの中に引きずり出した。意識は目覚めているが、目の疲れがまだ眠りを要求している。しばらく抗ってみたが、諦めて二度寝を楽しむことにした。次に目を醒ますと、目の疲れは霧散している。

 ワイヤブラシとグリスと錆び止め塗料を持って灰色の車の待つ駐車場に出て行った。錆の吹いているバッテリーの端子をワイヤブラシで磨き、たっぷりとグリースを塗り付けて締め直す。派手に錆び付いているワイパーアームに錆び止め塗料を塗ってやった。灰色の車にもまだ働いてもらう予定だ。

 一仕事終えて自宅に戻り、遅い朝食を取る。テニスウエアに着替え、ラケットバッグを背負って家を出ると、ちょうど雨が降り始める所だった。ハードコートのテニスクラブは雨が降るとしばらくは使えなくなる。予定を変更し、街中に向かった。灰色の車のオイルとオイルフィルタを交換してもらう。少し遠出をして温泉に入った。その後、市内に戻りながら3軒の餃子店を回る。キムチ入りのジャンボ餃子が意外に美味かった。自宅に戻ると、冷たいビールと氷たっぷりジンレモンを楽しむ。週末の夜は更けた。

 

4月22日(月)曇り

 昨日の正午から降り始めた雨は未明に上がった。道路は所々水溜りが残るものの、ほとんど乾き始めている。空はまだ霞がかかった様な薄雲のヴェールに包まれていた。初夏の日差しは、見えない。どちらの車で出勤するか少し迷った。だが足は自然に地下駐車場に向かう。黄砂が積もったままでクリーム色掛かって見えるうに色のクルマが、蛍光灯の寒々しい光の下にうずくまっていた。コクピットに収まると、エンジンを始動して地上に走り出す。スロープを上がっていくと乳白色の空に吸い込まれそうになった。朝の混雑が始まっている路上に滑り込んでいく。

 作業着を着替えて、ロッカールームから出ると、暗い空に星は見えなかった。まだ駐車場には多くの車が残っている。うに色のクルマの特徴的なノーズが白いセダンの影からちょこんと顔を覗かせていた。近づいて行き、正面から見ると特徴の無いセダンや無骨なRV車に挟まれて、低く構えた姿はあまりに異質な流麗さだ。乗り込んでイグニッションキーをひねると静かな駐車場にエンジンの音が響いた。ヘッドライトを点し、クラッチを踏んでギアを入れ、クラッチをつないで走り出す一連の動作は、スムーズに淀み無く流れる。

 

4月23日(火)曇り

 朝の青空を見ない日が何日続いただろう。今朝も大河の淀みのように取り留めの無い空が広がっていた。雲の中を透過してきた光の粒子は方向性なく空間を漂って全てをあいまいにしている。地上には影さえ落ちていなかった。それでも気温は上がって来ている。去年の秋にしまいこんだ、薄手の麻で出来たパーカーを羽織って家を出た。地下駐車場に降り、うに色のクルマに乗り込むとキーの一ひねりで目覚めたエンジンの上げる咆哮に耳を澄ます。異常は感じられなかった。シートベルトを締め、ゆっくりとクラッチを放すとエンジンの音が少し変わり、クルマはするすると走り始める。朝の通勤ドライブの始まりだ。

 長く続いた会議が終わり、解放される。ノートパソコンを引き出しに放り込むと、急いで事務所を出た。うに色のクルマの待つ駐車場まで急ぎ足で歩く。この国の首都と北の町をつないでいる大動脈にあたる幹線道路は遅い時間でも大型トラックが数多く走っていた。壁のように左右にそびえるトラックの間を縫うように走って自宅に戻る。きのこの炊き込みご飯とほうれん草のグラタンが湯気を上げて迎えてくれた。冷たいビールで喉を湿らせる。

 

4月24日(水)晴れ

 薄雲が初夏の陽射しを少し和らげていた。久しぶりに太陽光の熱を感じる。茶色の偏光プラスチックレンズを備えたサングラスを掛けるとかえって景色の輪郭がくっきりと見えた。テニスウエアの上下を着込み、ハードコート用のテニスシューズを履き、トランクにはラケットバッグを積んでいるが、行き先は仕事場だ。通勤路でも陽射しの下を走るのは気持ちが良い。少し高回転まで引っ張って加速し、青空に弾ける排気音を楽しんだ。

 定時で仕事場を後にすると、駐車場で待つうに色のクルマに乗り込む。壁打ちコートに向かうと先客の一人と半面づつ分けてスマッシュやストロークの打点を確認した。一時間ほど楽しんだ頃には半袖でもすっかり汗ばんでいる。水道で顔を洗いテニスクラブに向かった。ボレーボレーからレッスンが始まった。次に球出しからのスマッシュ練習、その後にペアでのロビング対スマッシュの練習になる。球だしのボールはスマッシュ出来ても生きたボール相手ではてこずった。最後はダブルス形式の練習で締める。一時間半のレッスンは、あっという間に終わった。終了後、2人で乱打する。少しストロークの感触が掴めてきた。

 

4月25日(木)曇り

 うに色のクルマに乗り込むと、薄曇りのはっきりしない空の下に走り出した。低く押さえた排気音を灰色の街に残して郊外に出て行く。大きな河に掛かった長い橋を渡った。周りの田んぼには水が張られてトラクターが代掻きを始めている。間もなく田植えの時期だ。新緑の山は初夏の陽射しを得られずにややくすんで見えている。八重桜の木の周りに大柄の花びらが散り敷かれて、そこだけが春の色に染まって見えた。

 特許事務所の弁理士と特許をでっち上げる作業に没頭していると夜になる。ロッカールームで着替えて外に出ると、一時期の初夏の陽気に体が慣れたせいか、夜の風が妙に肌寒く感じられた。うに色のクルマの幌を下ろし、キセノン放電管の白い光が照らし出す景色の中に走り出した。信号で停まると数十秒アイドリングが高くなり、それから徐々に落ちて来て正規のアイドリング回転数に収まると言う症状がたまに発生する。明らかにアイドルコントロールバルブが意図的にエンジン回転をそのようにコントロールしていた。長時間バッテリーを外した後はアイドルコントロールの学習が必要なのかも知れない。

 

4月26日(金)曇り

 空一面を薄く雲が覆っている。陽射しが弱く、ものの陰が出来ないメリハリのない景色の中をうに色のクルマが走っていった。明日からゴールデンウィークの名の元に九日間の休みが始まる。今日はその前の最後の出勤日だ。仕事場では大掃除や書類の整理などが待っており、すでに気分は半分休みに入っていた。黒とグレーの渋い色遣いのテニスウエアを着て、テニスシューズを履き、トランクにはラケットバッグを積んでいる。仕事場に行く装備ではなかった。

 夕方になり、ノートパソコンをロッカーに仕舞うと、もう仕事場にしばらく用はない。開放感に気持ちが高揚するのが判った。テニスクラブに向かい、暗くなり始めた幹線道路を少し速度を上げてうに色のクルマを走らせて行く。高校生を含め、今夜の生徒は8名になった。ダブルスの形での練習が多くなる。やや待ち時間が長く感じられ、少し打ち足りない感が残った。開放感と共に息が切れるまでボールを追いたい。気持ちを残したまま灯りが消されたコートを後にした。

 自宅に戻り、汗を洗い流してから冷たいビールをグラスに注いで飲み干す。素晴しい気分だ。

 

4月27日(土)曇り時々晴れ

 目覚ましの音で深い眠りの底から急激に覚醒した。目覚めた瞬間から意識は濁りなく澄み切っている。長い休みの初日の朝は心地よい目覚めから始まった。テニスウエアに着替え、ラケットバッグを背負って家を出る。うに色のクルマをイグニッションキーの一ひねりで目覚めさせて地下駐車場から春空の下に連れ出した。15分程走った所にある森に囲まれた運動公園に向かう。広い敷地を贅沢に使ってプール、散策路、広場、グラウンド、テニスコート、そして温泉施設までを備えさせた立派な公園だ。

 広い駐車場にクルマを停め、トランクからラケットバッグと砂入り人工芝用の靴を持ってコートに向かう。午前中の2時間半余りを、いつものメンバーと練習とゲームを楽しんだ。

 自宅に戻り、昼食を取ってから、相棒と共にテニスクラブに向かう。暗くなり始めるまで3時間程相棒やメンバーを相手にボールを追い回した。朝食も昼食も軽く済ませたので強く空腹を感じる。市内の餃子屋を4軒回って餃子を味わい、帰宅した。風呂で一日の疲れを洗い流し、洗濯を済ませるとジンをロックで一杯飲み布団に潜り込む。たちまち深い眠りに落ちた。

 

4月28日(日)晴れ

 目覚めの気分は悪くなかった。だがいつもより早い時間ゆえに心地良いとまでは言えない。布団から出てトーストとコーヒーとヨーグルトの簡単な朝食を用意した。顔を洗って昨夜のうちに整えておいた荷物を持って家を出る。地下駐車場に降り、うに色のクルマのトランクに荷物を積み込んだ。全てを積み終えるには幌の収納スペースも駆使する必要があった。

 有料道路や一般道を2時間半ほど走って首都圏の避暑地として名高い高原の街に入る。連休の朝だけに車の数は比較的多めだ。昼食のサンドイッチを買うと今夜の宿の駐車場にクルマを停める。ちょうどここで落ち合う予定だった友人達も到着し、久しぶりの再会を果たした。宿でテニスウエアに着替えると早速、土のコートに出て行く。高地で良く飛ぶボールや、普段馴染んでいるハードコートや砂入り人工芝のコートと土のコートとの違いを体に覚えさせるようにゆっくりとボールをやり取りした。高原の風はやや肌寒さを覚える程だが、陽射しが覗くと暑い。しばらくすると上着がいらなくなった。早く集まったメンバーで午前中に男子ダブルスで3試合楽しむ。友人と初めて組んで2勝1敗とまずまずの滑り出しだ。

 宿に戻り、サンドイッチを冷たい缶ビールと共に腹に収める。午後からの動きを考慮して食事は軽めにした。午後は男子、女子に別れてそれぞれゲームと練習になる。男子は前半ゲーム、後半練習で、女子はその逆だ。友人とペアを組み4チームのリーグ戦を闘う。サービスの調子が出て来て2勝1敗とし、同レベルの中ではまずまずのゲームメイクが出来るのが判った。しかし、上のレベルのプレーヤーと比べると一球一球の質が違うことも思い知る。一球毎の厳しさが足りないため、上級相手では主導権を持ってプレーすることが出来ないのだ。さらに試合後の練習で足りない部分が良く分かる。ボレーのレベルアップが早急に必要と感じた。繰り返しボレーの練習をするが、つなぎの返すだけのボレーになることが多い。積極的に攻めるボレーを掴むことが出来ないまま時間が過ぎていった。

 練習後、残ったメンバーと日没近くまで2ゲーム楽しんで宿に引き上げる。体力を使い切った充足感に包まれた。風呂に入り埃を落とし、入念にストレッチをする。風呂上がりの冷たいビールがたまらなく美味かった。夕食を食べると睡魔が襲ってくる。布団に潜り込むと瞬く間に意識が遠のいた。

 

4月29日(月)晴れ

 4時に誰かの目覚ましが鳴って目が覚める。早くに寝始めたので、すぐには寝つけないが浅い眠りの中で不思議な夢を見た。朝起きると季節外れの雪が積もっていてテニスコートが使えないのだ。残念な気持ちと何故か大きな安堵感を持って二度寝の夢の中でさらに二度寝に入る。5時の目覚ましで再び意識を取り戻すと当然ながら雪などなく、外は明るかった。しばらく布団の中で起き上がるのに抵抗する体と闘う。5時半近くなって渋々と起き上がった。見た夢の内容から考えても早朝テニスに気が進まないのが明らかだ。しかし起き上がってしまえば後は体が勝手に動いてテニスウエアを着込みラケットバッグを背負って宿を出て行く。

 人の集まりはそれほど多くない。まず男子ダブルス1試合でアップして、シングルス1試合、そして相棒と組んでミックスダブルスを2試合行う。ミックスの1試合目は同レベル相手で苦しい戦いだったが6−5で辛うじて勝った。2試合目は上級ペア相手に競ったゲームのノーアドを全て取られ0−6の大差で破れた。それでも3勝1敗はまずまずの成績で悪くない。朝飯前の一仕事で程よく疲れ、激しい空腹を感じた。

 宿に戻り、冷たいビールで咽を潤しつつ、友人夫婦と共に語りながら朝食を取る。朝食の時間は短かったが午前中のカップルズカップ(ミックス2ペアを1グループとした団体戦)は、くじ引きでシードを獲得しているので、ゆっくり顔を洗ってから宿を出た。コートに着くと、やっと説明が終わり試合が始まる所だ。シードチームは最初の試合を待つ間、別コートで的当て賞品取りゲームで時間を潰した。サービスや球出しからのボレーでコートに置かれた的を狙い、当たれば早い者勝ちで何がしかの賞品をもらえる。しばらく的当てに没頭している間に第一試合が終わりだし、シードチームが呼び出されて行く。賞品を3つ獲得し、賞品の全てが無くなった頃、呼び出しが掛かった。

 最初の対戦相手は強敵だ。相棒と共に緊張しながらも必死に闘うが、終わってみれば2−6と力の差はハッキリしていた。友人夫婦も別ペアに破れ、0−2で緒戦敗退し、コンソレに回る。コンソレ1回戦の相手は同レベルだ。初めから競ったゲームが続く。常にリードして5−4のマッチポイントを握るが、ものに出来ず、5−5。ブレイクして来た女性のサービスゲームを落とし、5−6の惜敗に終わった。

 友人ペアも破れ、またしても0−2で敗退する。対戦相手はその後、コンソレ優勝を遂げた。試合後、しばらく4名で虚脱状態になるが、すでに昼だ。宿に戻り、冷たい缶ビールを飲みながら、カレーライスを頬張る。マイルドなカレーにビールが良く合った。部屋の畳に大の字になり、しばらく休息を取ってからコートに戻る。午後からは友人と男ダブを組み、4ペアのリーグ戦に入った。同レベルの相手2ペアを6−3、6−2で退ける。最後は上級ペア相手に3−1とリードするが、そこから5ゲーム連取され気が付けば3−6と実力に屈した。戦い方が単調になると上級ペアには通用しない。課題を頭に刻み込み、練習を繰り返した。ボレーの感触は最後まで上手く掴めない。

 宿に戻り、風呂に入って汗を流した。入念なストレッチも忘れない。荷物をまとめてロビーで最後まで残っていた人達と挨拶を交わした。二日間の合宿を終え宿を離れる。友人夫婦とアウトレットモールで買い物を楽しみ、そばを食べてから別れた。それぞれの家路を辿る。高速道路を避けて暗い山道を走って3時間程で自宅の駐車場にうに色のクルマを収めた。冷たい缶ビールで二日間の宴にピリオドを打つ。

 

4月30日(火)曇り後雨

 昨日までの快晴がまるで夢だったかの様に雲が空一面を覆っていた。キーボードの電源キーを押してMacを立ち上げるとテニス合宿の間に溜まっていたメールに目を通し、返事を書く作業を続ける。昼過ぎになってから灰色の車に乗って買い物に出た。ホームセンターやスーパーを回って必要な物を買いそろえる。

 自宅に戻るとハサミやカッターなどの工具と購入したアルミ板やアルミテープを持って地下駐車場に降りた。うに色のクルマのトランクとボンネットを開ける。トランクから工具袋を出し、ボンネットの中のエアクリーナーをスクリュードライバーで緩めて外した。エンジンルーム内に突き出している傘型のエアクリーナーがラジエター後方の熱いエアを吸わないように遮熱板と導風板を兼ねたエアクリーナーシュラウドを作成する作業に入る。段ボール紙を利用してだいたいの形状は決めてあった。段ボールの型紙をアルミ板に当てて型を写すとハサミやカッターナイフを使って加工して行く。切り出したアルミ板を折り曲げて立体形状を付けた。縁をアルミテープで張り合わせて固定する。出来たシュラウドを取り付けて完成だ。エンジンを始動する。吸気音がやや押さえられた。

 


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