2002年05月の日記

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5月1日(水)曇り時々晴れ

 布団を出てMacを起動する。いつものメールチェックなどをこなすと、着替えてうに色のクルマに乗り、外に走り出した。いきつけのカー用品店に向かい、まだ空いている店内でホンダ純正オイルの4L缶を一つレジに持っていく。サーキット走行をこなして疲労しているオイルを交換した。オイルは約4L入る所を、3Lだけにしておいてもらう。自宅の地下駐車場に帰り、クルマを定位置に収めた。工具などを持って再び駐車場に戻る。先ず、幌を上げてFM−VICS用のアンテナを両面テープを使って固定し直した。次に昨日作成したエアクリーナーシュラウドに追加改修を行う。最後に1L残してもらったオイルにテフロン粉末と金属ボロン粉末を良く混ぜ、フィラーキャップから注ぎ込んだ。これで潤滑面の摩擦係数がさらに低下し、レスポンスが良くなる。

 次は灰色の車を入れ替えに駐車場に入れ、冬用タイヤを夏用タイヤに交換した。すでに6年程使っている夏用タイヤはひび割れ始めたが、まだ使える。

 車の作業は終わった。ラケットバッグを持ち、近くの壁打ちコートに向かい1時間程壁打ちを楽しんだ。家に戻ると仕事はまだ山積みだ。冷えた缶ビールを飲む。

 

5月2日(木)晴れ

 カーテンを開けた途端に、気持ち良く晴れた美しい空と対面する。同僚の車が迎えに来る。昨日整備した自転車を積み込み、家を出た。有料道路を南に走って、以前よく訪れた山に向かう。2時間と少しのドライブで集合場所にされる運動公園の駐車場に入った。仲間の二人はすでに到着している。一台の車に自転車を4台搭載し、ヘルメットなどを積み込み、山を上った。

 4年ぶりに訪れる山は、大きな変化もなく時間を感じさせない。尾根の駐車スペースに車を停めると、自転車を降ろして装備を身に付けて、登山道を仲間と共に走り出した。久しぶりのマウンテンバイクの操作に少し戸惑う。下りのスピード感に慣れるのには少し時間が掛かった。3年のブランクは大きい。だが体が憶えていた。意識のずれはすぐに修正される。元の駐車場に着く頃には感覚が戻っていた。積載車を取りに行って、また自転車を積み込み2本目を走る。もう昔のままだ。

 炭火を起こし、目刺、揚げイカ、とり肉を炭火焼きする。フライパンで肉や野菜を炒め、それらをつまみに冷たい缶ビールを開けて飲んだ。野外で初夏の陽射しの下、仲間ととる食事は堪えられない美味さだ。笑顔がこぼれた。

 

5月3日(金)晴れ

 朝目覚めてMacの電源を入れる。軽快な起動音の後にディスプレイに電源が入るうなり音がして、徐々に画面が明るくなった。大き目のロックグラスに製氷機の氷を満たし、レモン果汁を1、泡盛を9の割合で注ぎ入れる。初夏の朝に相応しい爽やかな一杯が出来た。

 Macでの書き物が一段落ついたところで、相棒が起きてくる。コーヒーを入れ、トーストを焼き、チーズとハムがたっぷりのスクランブルエッグを作り、ヨーグルトを器にあけて、ブランチをこしらえてくれた。熱いコーヒーも良いが、休日の遅い朝食にはレモンをたっぷりと落とした泡盛のロックが合う。もう一杯作り直して飲んだ。

 テニスウエアに着替えてラケットバッグを持ち、灰色の車でテニスクラブに向かう。空いたコートでアップしてから夕方までゲームや乱打を楽しむ。クラブに人気が無くなると、餃子ラリーに出かけた。閉店間際のパン屋で美味しそうなパンを購入してから4軒はしごして餃子を食べる。中でもキング餃子と称するかなり大き目の餃子は、そのボリュームに最初は臆したものの、食べ始めるとサクサクした軽い皮の食感と、スパイスが効いた新鮮な味でいくらでも食べられる。美味い。

 

5月4日(土)曇り

 早めに目覚めて朝食を取り、午前中からテニスクラブに行く。午後からは街に出て、歩いて餃子店を回る予定だ。軽くアップをしてから、いつものようにゲームや乱打をして楽しむ。時折晴れ間ものぞく空からパラパラと小雨が落ちてきたが、コートを濡らすほどではなく、瞬く間に乾いていった。気持ち良く汗が流れる。昼過ぎにコートから上がって更衣室で着替えた。灰色の車で街に出る。

 街の中心地からちょっと離れた駐車場に車を置き、雨が落ちそうな曇り空の下を街まで歩いた。2軒目の餃子屋は中高生の溜まり場になっている。安くてボリューム満点なのが売りの店だ。生ビールを飲み、出された熱々の餃子をぱくつく。店を出ると外壁を大谷石で覆われた美しいロマネスク建築の教会を見学し、さらにもう一軒の餃子屋に回った。一階は味噌屋で、2階が小さな餃子屋になっている。ここの特色は味噌スープの中に餃子が入るスープ餃子だ。酢と生姜と味噌の意外な取り合わせが、癖になりそうに美味い。ぴり辛味噌との組合せも良かった。餃子は煮ても形が崩れないしっかりした作りで、豚肉の旨みがしっかりと出ている。期せずして餃子の奥深さを知る事が出来た。

 

5月5日(日)晴れ

 今朝も寝起きの一杯はレモンを多めに効かせた泡盛オンザロックにする。レモンの香りと酸味が泡盛の癖を消し、初夏の朝に相応しく涼しげで鮮烈な味だ。Macを起動してメール読み書きやWebサイト巡回を楽しむ。しばらくすると相棒が起きてきて、コーヒーとトーストとヨーグルトなどの遅い朝食を作った。ゆっくりと朝食を済ますと、テニスウエアに着替え近くのテニスクラブに向かう。

 相棒とアップしてから、ゲームや乱打など暑いぐらいの陽気の中でテニスを楽しんだ。半袖シャツに短パンが気持ち良いが、日焼けを気にする女性達は長袖長ズボンが多い。日が傾いてくると、涼しくなってきた。日が暮れるまでコートに残ってボールの弾ける感触を体に刻み込む様に打ち続ける。

 クラブを後にして、今夜も餃子店を巡ることにした。最初の店はすでに売り切れで閉店になっている。次の店で空腹に耐え切れず、ラーメンと餃子を注文する。このラーメンが予想外の美味さだ。透明な醤油味のスープは様々な旨みが溶け込んでいて、口に含むと鼻腔を楽しませてくれる。餃子も香辛料の一ひねりが効いていて美味かった。こんな経験もラリーの楽しみだ。次の飲茶の店も実に美味い。

 

5月6日(月)晴れ

 目覚ましのアラームで布団から這い出し、簡単な朝食を胃に押し込む。顔を洗って髪を整え、穿き込んだジーンズと麻のフード付きパーカーを身につけると家を出た。うに色のクルマで昇ったばかりの初夏の太陽の下に出ると、路上に車の数は少ない。今日は国民の祝日で、休みの人が多いに違いなかった。いつもより空いた道を、うに色のクルマは快音を奏でながら走る。エンジン各部に付いたいくつかのセンサのコネクタを接点復活剤で処理してからエンジンの調子が良かった。次の休みには手が届く範囲の全てのコネクタを接点復活剤で処理すると心に決める。

 作業着を色の抜けたジーンズと生成り色のパーカーに着替えて、ロッカールームから出た。比較的早い時間帯だったが、祝日のせいで早く帰る人が多かったようだ。すでに駐車場の車がだいぶ減っている。うに色のクルマに乗り込むと帰宅ルートにノーズを向けた。

 自宅に戻ると相棒がチキン入りの野菜カレーを作って待っている。また代わり映えのない日常が始まった。

 

5月7日(火)曇り後雨

 黒い雲に覆われて暗い空は、何時雨が降り出しても不思議がない様に見えた。久しぶりに曇天の朝になる。天気予報も確定的な雨の確率を報じていた。それには構わず、うに色のクルマのエンジンに火を入れ、路上に連れ出す。暗い空の下をいつもの様に走り出した。駐車場にクルマを止めると傘を持って降りる。まだ雨は降り出していなかった。

 昼前には雨が降り出す。強く降ったり止んだりと一定のリズムは無く、ダラダラと降り続いた。気が滅入る一日だ。帰り道で本屋に寄り、発売されたばかりの車雑誌を購入する。自宅に戻ると昨夜のカレーを火に掛けた。煮えるのを待つ間に豆腐を一丁冷蔵庫から出して、つまみながら冷たい缶ビールをグラスに注いで飲む。買ってきた車雑誌をめくりながらだ。毎月購入している雑誌の方には、それほど興味を引く記事は無かった。久しぶりに購入した中古車雑誌の方は、意外にも読み所が多く、つい引き込まれてしまった。就寝時間が遅くなるのも忘れて読みふける。ドイツ製のオープンツーシーターの記事が興味を引いた。

 

5月8日(水)雨後曇り

 普段の平日よりも一時間早く布団から出る。仕事を休んで半分遊びのボランティア活動をする事になっていた。簡単な朝食を口に押し込むと、着替えて家を出た。細かい霧雨が路面を濡らしている。うに色のクルマを汚れるのも構わず路上に連れ出した。幹線道路に出て南に向かって走る。 サーキットのゲートをくぐるとスタッフが集まっていた。先ずは参加者の受け付け業務に回る。一時間ほどの座学が終わると、ジムカーナ場に移動する。ここでパイロンを立てて2種類の楕円形を作り、そこを周回することにより、車の基本操作である、加速、減速、旋回に習熟するレッスンを行った。旗を振って受講者を誘導する役割を果たす。雨が止んで、濡れていた路面はレッスン終了時にはドライになった。 午後からは、基礎練習を生かしてミニサーキットを周回するレッスンに変わる。サーキット走行になると慌ててしまい、午前中に掴んだ車の挙動と丁寧な操作を忘れてしまう受講生が多かった。夕方、サーキットを後にする。 自宅に戻ってテニスウエアに着替え、テニスクラブに向かった。半ば雨で中止と諦めていたテニスが出来る。ボールの感触が気持ち良かった。悪くない一日だ。

 

5月9日(木)曇り

 連休が終わってから、はっきりしない曖昧な天候が続く。うに色のクルマでいつもの通勤路を走って行った。路面のわだちでステアリングが取られる。磨耗したタイヤが限界に近づいていた。交換用のタイヤは、ダンロップのコンフォート系タイヤの新製品であるLM702を注文してある。入荷の知らせはまだ入っていなかった。進路を乱されがちな荒れた幹線道路をステアリングを押さえ込みながら走る。アクセルを軽く踏み込むと排気音が太い音に変わった。

 

5月10日(金)曇り後雨

 地下駐車場に降りて行き、うに色のクルマと対面する。トランクにラケットバッグを積み、コクピットに体を滑り込ませると、キーをひねってエンジンを目覚めさせた。どんよりと重い鉛色の空の下に走り出す。相変わらずわだちに取られるステアリングを押さえ付けながらだ。

 夕方からは予報通りに雨が降り出した。見る見る事務所のある建物の間の通路を黒く染めていく。同じ雨がテニスクラブのコートも濡らしている筈だ。テニスを諦め、タイヤ屋に電話を入れてみる。案の定、注文したタイヤが届いていた。路面の水たまりを注意深く避けながらタイヤ屋に向かう。新しいタイヤへの入換えはわずか30分程で終了した。新しいシューズを履いたうに色のクルマはフットワークも軽く雨の中を走り出す。わだちに神経質になる必要は最早無かった。

 

5月11日(土)曇り

 目を覚まして居間のカーテンを開けると雨上がりの濡れた町並みが眼に映った。風が玄関ドアにぶら下げた表札を揺らしている音が聞こえる。軽い朝食を取り、顔を洗い、身支度を整えた。うに色のクルマで家を出る。

 5分程度走ると広い公園の駐車場に車を停め、コートまで歩いた。木や土手に囲まれた県営のテニスコートは風の影響が少ない。既に到着していた3名に合流して練習を始めた。しばらくボールを追いかけていると汗が噴出してくる。時折通り過ぎる風がこの時期にしては冷たく、心地よかった。

 木陰のベンチで冷たい缶ビールを飲みながら昼食を取り、午後からは一部メンバーを入れ替えて引き続き練習やゲームを楽しむ。開園時間が終わる頃には、ほど良い疲労に体が重くなっていた。

 空っぽの胃を抱えたまま、餃子ラリーの続きに挑む。町外れの餃子専門店から始めて、街中の餃子専門店、ラーメン屋、中華料理屋を回った。4店ともそれぞれに味が異なり、舌を飽きさせない。街中のラーメン屋の餃子が最も濃厚でジューシーな味わいで大きな満足感が得られた。自宅に戻り、風呂で餃子の臭いを落とすと、冷たいビールをグラスに注いで、飲む。たまらない美味さだ。

 

5月12日(日)曇り時々晴れ

 大き目のグラスに氷を放り込み、レモン果汁を垂らし、泡盛の古酒をたっぷり注いだ。氷とグラスが触れ合って奏でる音が涼しげに朝の目覚めを彩る。レモンの酸味が脳に活を入れた。軽い朝食を取るとテニスウェアに着替え、近くのテニスクラブに向かう。コーチの指導のもとに9名とやや多めの人数で練習を始めた。しばらく体を動かしていると暑いぐらいだ。たまらずアップの上下を脱ぎ、半袖、短パンという身軽な姿になる。解放感が夏の訪れを感じさせた。

 昼食は家に戻り、缶ビールとカレーライスで済ませた。少し休息を取ってから再びクラブに戻る。相棒とアップしてから、ゲームや乱打などを楽しんだ。疲れるとクラブハウスのテラスのテーブルに座り他人のプレーを見る。日が傾いて、やや肌寒くなった。最後に香りの良いホットコーヒーを一杯飲み干し、クラブを後にする。

 餃子ラリーの続きだ。先ず定番のチェーン店に向かう。変わらぬ素朴な美味さで安心して食べられた。次の中国の味を謳う店では小龍包風のスープが詰まった茹で餃子が美味い。厚手の皮を破ると濃厚なスープがあふれた。もう一軒のラーメン屋の餃子は肉と野菜にバランスが良く、豊かな味わいだ。

 

5月13日(月)曇り

 月曜の朝の寝覚めは悪い。何度目かのアラーム音で布団から這い出し、簡単な朝食を胃に押し込んだ。髪を整え、コンタクトレンズを入れ、歯を磨く。穿き古して色が落ち切ったジーンズと麻のフード付きパーカーを身につけて、うに色のクルマに乗り込んだ。すでに車の流れが滞り始めた街道を走っていく。昇ったばかりの初夏の太陽は雲の上だ。薄明るい光の下では、黄砂で汚れたうに色が冴えない。構わずアクセルを踏み込むと吸気音と排気音が同時に高まり、田植えが済んだ水田の上に響いた。

 作業着を脱いで着替えを済ませ、ロッカールームから出る。暗い夜空にいくつか星が見えていた。明日は久しぶりに晴れそうだ。長距離トラックが黒い煙を吐いて走る幹線道路をうに色のクルマは快調に走っていく。 自宅に戻ると、先に帰っていた相棒が鮭ご飯を炊いて待っていた。シメジの味噌汁とマッチして美味い。

 

5月14日(火)晴れ

 久しぶりに晴れて明るい朝だ。うに色のクルマのエンジンに火を入れ、薄暗い地下駐車場から路上に連れ出した。交換したばかりのタイヤは、空気圧を多めに入れているにも関わらず、柔らかめの当りで乗り心地は悪くない。しかし、車体剛性や足回りの能力に対して、ややオーバーサイズのホイールサイズでは、荒れた路面でバネ下がばたつ印象は否めなかった。最新の省エネを意識したタイヤらしく、転がりはスムーズで、クラッチ断続時の車速落ちが少なく感じられる。アクセルオフでの惰性走行でも車速落ちが少なかった。高燃費が期待できそうだ。無論、パターンノイズも低く押さえられている。

 早めに仕事を切り上げると再びうに色のクルマに乗り込む。テニスクラブに立ち寄り、1時間半のレッスンを受けた。コーチ一人に生徒は3名だ。ほとんど休みなく、ボールを打ち続ける。汗が首筋を流れた。レッスン終了後は30分程掛けてサービス練習を繰り返す。

 火照った体に夜風が爽やかだ。幹線道路を走ると速度に合わせて風が渦巻いて流れ込んで、余分な熱を奪っていく。自宅に戻ると先に帰っていた相棒が晩飯を用意して待っていた。冷たい缶ビールの喉越しがたまらない。

 

5月15日(水)晴れ後曇り

 うに色のクルマをセル一発で目覚めさせ、朝の路上に連れ出した。東に向かって走ると、久しぶりに太陽が眩しい。ケースからブラウンの偏光レンズを入れたサングラスを出して着けた。

 定時の30分前に事務所を後にした。はやる心を押さえながらうに色のクルマを走らせていく。自宅に着くとすぐに荷物を置いて歩いて家を出た。近くの駅から快速電車に乗って南へ向かう。すぐに睡魔が襲ってきた。目を覚ますとすでに都内に入っている。電車を降りて繁華街に出た。今夜はテニス仲間の壮行会だ。久しぶりに会う顔が集まってくる。

 店の入り口は昔風の木戸造りになっていたが、近づくと音も無く自動的に開いた。靴を脱いで上がり、薄暗い木張りの廊下を奥に通される。店の中は水平方向だけでなく上下方向にも広がりがあり、半地下や中二階が迷路のように入り組んでいた。席は区切ってあって、それぞれが半個室になっている。プライベートな雰囲気だ。通路を二回曲がった奥の突き当たりが十数名入れる掘り炬燵の座敷になっていた。ビールで乾杯する。料理が運ばれてきた。豆腐の料理がいける。大いに食べ、飲み、かつ語った。どれも尽きることは無い。2時間は余りに短かった。

 

5月16日(木)曇り

 所々重いグレーに縁取られた雲に太陽の光が弱められ、辛うじてあたりを薄明るくしていた。モノクロームの町並みは水墨画の背景のように頼りなく空に溶け出していきそうだ。TVニュースを眺めながらホットミルクを飲み干した。顔を洗い、麻で出来た生成りのパーカーを羽織って家を出る。やや肌寒さを感じながら地下駐車場に停めたうに色のクルマにもぐり込む。瞬時に目覚めたエンジンの音を聞きながらゆっくりとクラッチを放していった。いとも簡単に走り出す。抵抗が少なく良く転がるタイヤの感触を楽しみながらスロープを上がって地上に出た。

 一日の仕事を終え、駐車場に戻る。暗い駐車場にまだ車の影が多かった。ひときわ特徴的なフロントノーズが白く角張った車の向こうに見えてくる。ショルダーバッグを助手席に放り込んでから運転席に体を落とし込んだ。エンジンをかけ、ヘッドライトのスイッチを入れると、上下に薄いフロントガラス越しの視界が薄青くぼんやりと浮かび上がる。次第に光が白くなり、もののディテールがはっきり見える様になった。

 自宅に戻り、ニラタマの味噌汁と肉野菜炒めを手早く作る。炊き込みご飯の残りを電子レンジで暖めて晩飯にした。

 

5月17日(金)曇り後雨

 いかにも水分をたっぷりと含んで重そうな鉛色の雲が空を覆っていた。今は降り出していないが、時間の問題だろう。朝からうっとうしい雨降りの一日を想像するとうんざりさせられた。熱いミルクティーで活を入れて家を出る。早く雨が降り止む事に僅かな望みをつないでテニスウエアとラケットバッグを持った。灰色の車でいつもの通勤路に走り出す。

 昼頃から降り出した雨は夕方になっても飽きもせずに断続的に降り続いていた。定時で事務所を後にすると既に込み始めている道路を走ってテニスクラブの方に向かう。雨は止まなかった。テニスクラブの近くにある床屋に車を止め、簡単に髪を整えてもらう。買い物をして自宅に戻ると、テニスウエアを普段着に着替え、傘を持って再び家を出た。近くの駅まで歩く。雨は小降りになっていた。

 一駅だけ電車に乗って降りると県庁所在地の街に出る。駅のコンコースを出て長い連絡通路を歩き、階段を降りると灰色の町並みが広がっていた。降りて少し歩くと小さな2階建ての建物があり、一階は飲み屋だ。ここで昔一緒に仕事をした仲間が戻ってくる祝いの会が開かれることになっていた。ビールを飲みながら昔話に花を咲かせる。

 

5月18日(土)雨後曇り

 まだ少し酒の影響が残る眼をしばたいて居間のカーテンを開けると雨に濡れた町並みが映った。天気予報では昼過ぎに雨が上がると出ている。軽い朝食を取り、身支度を整えた。傘を差して歩いて家を出る。近くの駅まで弱い雨の中を歩いた。

 電車で一駅移動すると新幹線の止まるターミナル駅に着く。駅ビルに入っている餃子屋を巡る計画だ。味噌屋が営む餃子の店は本店には無かった焼き餃子のメニューがあったので、注文してみる。味噌だれで食べる餃子は新鮮な味だ。次は市内に何店舗も支店がある老舗の餃子屋に行く。餃子自体は変わらないのだが焼きが甘く、本来のパリッとした食感が損なわれていた。餃子は皮、具、焼き、たれのどれが欠けても美味くない。次の店は和風ラーメン屋だ。餃子も和風と書いてあった。普通の皮に包まれた具には大葉が刻み込んであるらしく爽やかな香りだ。さらに酢はレモンの香りがするポン酢になっていた。さっぱりと食べられる和風餃子も意外に悪くない。最後の店は中華料理屋だ。餃子の価格は高めだがその割にはべちゃっとしていて特徴に欠けた。雨の上がった夕方、少しでも打点を確認したくなって1時間ほど壁打ちを楽しむ。

 

5月19日(日)晴れ後曇り一時雨

 目覚ましのアラーム音で目を覚ますと外は明るい。久々の晴れた朝だ。急いで身支度を整え、家を出る。空いた幹線道路を走って試合会場の公園に灰色の車で乗り込んだ。既に到着していたスタッフに合流して準備を手伝う。一息つくと男ダブの相棒とボレーボレーで体を温めた。

 いきなり第一試合でコートに入る。相手は高校生だ。調子に乗せると手がつけられない。用心しながら試合を進め、うまくミスを誘って6−3で押さえ込んだ。しばらくすると2回戦をコールされる。相手は一回戦が無く、これが初試合だ。まだ動きが固くチャンスボールにミスが出る隙をついて6−2で逃げ切る。3回戦まで時間が空いた。昼食を取り、大会進行や選手の呼び出しをこなす。

 3回戦の相手は良く試合に出ているそこそこの実力の選手だ。どちらも大きな穴は無い。双方ともサービスブレイクが続く展開になる。こちらのサービスからスタートしているので終始リードされては追いつく形になった。しかし、3−4からの8ゲーム目をノーアド一本勝負でキープされ、3−5と追い込まれた。相棒のサービスゲームをキープ出来ず、3回戦敗退だ。やはりくじ運に恵まれても3回戦の壁は大きい。

 一緒に出ていた友人ペアはサービスとポーチに冴えが見られ、3回戦を突破した。ファーストサービスが入り、ポーチが決まると相手に与えるダメージは大きい。基礎は固まって来て、つまらないミスは減ってきた。その分課題はより明確になる。

 途中まで順調に進んでいた大会進行は、ミニシードの選手が敗れる結果が多く、コンソレの試合が予想以上に増え、また、進行するに連れて均衡した熱戦が各コートで繰り広げられた為、徐々に遅れて行った。本戦側はベスト16、コンソレ側もベスト8を残したところでコート使用時間が一杯になる。上位の試合は再来週に持ち越されることになった。

 ネットを片付け、コートを整備してスタッフも解散する。風が強くなり、昼過ぎから曇っている空からは冷たい雨粒が落ち始めた。帰り道で一時雨脚が強くなるが、通り雨のようで、すぐに小降りになる。自宅に戻る頃には雨は上がっていた。素早く着替えると、歩いて家を出る。電車に一駅だけ乗り、地方都市の中心に出た。これで三日連続になる。今日の大会を戦った友人と待ち合わせ、勝利の祝杯をあげた。塩味の効いた焼き鳥がビールに合う。4人のこじんまりした飲み会は終電まで続いた。

 

5月20日(月)曇り

 月曜の朝、寝覚めの気分は最悪だ。寝不足の上にまだ酒が残っている。何度目かのアラーム音で嫌がる体を無理矢理動かし布団からでた。ホットミルクと、イオンサプライ飲料を胃に流し込む。ジーンズを履き、パーカーを羽織って家を出た。うに色のクルマに乗り込んで、すでに多くの車が滞り気味に流れている街道を走っていく。強烈な光線を発している筈の太陽は、厚い雲に遮られて見えない。たっぷりと水が張られた水田に稲の苗が規則正しく植えられ、風にそよいでいた。

 会議が夜まで続き、着替えを済ませてロッカールームから出ると、もう日付が変わるまで2時間も無かった。長距離トラックが黒い煙を撒き散らす主要国道を避けて、空いた田舎道を選び、うに色のクルマを快調に走らせていく。

 自宅に戻ると、先に帰っていた相棒がハヤシライスを作ってくれていた。熱々のハヤシソースに包まれたご飯を口に放り込むと肉と玉葱の甘味が口一杯に広がる。新鮮な甘いトマトのスライスを頬張り、口中を冷やしながら次々にスプーンを運び、大盛の皿を片付けて行った。

 

5月21日(火)晴れ

 うに色のクルマで地下駐車場からスロープを上がって地上に出ると、立ち木の向こうから太陽の光が直接目に入ってきた。思わず目を細める。しかし、気分は悪くなかった。灰色の町並みにくっきりと陰影が浮かび上がって立体的に見える。田植えされたばかりの水田に青い苗が揺れていた。水が光を反射してきらきらと輝く。初夏の田園風景の中を、うに色のクルマは快音を発して走りぬけていく。

 早めに仕事を切り上げて、駐車場で待つ、うに色のクルマに戻る。街灯が少ない真っ暗な峠道を下り、大きな交差点に出た。ここまで来ると少し明かりが目に付き始める。ナトリウムランプの黄色い光に照らされた長い橋を渡っていった。この時間帯はポッカリと穴が開いたように車通りが少ない。主要国道を気持ち良くエンジンを唄わせて走った。風がまだ少し肌寒い。

 自宅の門の前で一旦停止し、キー操作で門のロックを解除すると重そうな鉄の門が左にスライドしながら開いていった。自宅の窓を見上げると、明かりは点いていない。昨夜の残りのハヤシを暖め、茹でたてのパスタにたっぷりと掛けて晩飯にした。冷たい缶ビールの後は、芋焼酎のロックにレモンをたっぷり垂らして飲む。

 

5月22日(水)晴れ後曇り

 うに色のクルマは今日も快調に走る。タイヤを新品に換えてから、とみに好感度が増した。僅かに残るアイドルのばらつきを押さえられれば、さらに完璧になる。定時で仕事場を後にして、うに色のクルマの幌を降ろすと、気分が開放されていくのが判った。

 少し走り、壁打ちコートに向かう。二人の男が黙々と壁打ちを続けていた。軽く準備体操していると、一人の男が帰っていく。空いたスペースでボールを打ち始めた。始めはゆっくりと、段々ペースを上げていく。もう一人の男はハイペースでハードヒットを繰り返していた。スマッシュ、ボレー、サーブを含め、1時間ほど掛けてタイミングと打点を確認する。途中で隣の男が帰り、しばらく一人になった。その後に別の男が現れる。その男もハードヒットを身上としていた。壁打ちはペースが速い。男はミスショットでラリーが途切ると荒い呼吸音をたてた。

 テニススクールに移動して練習を始める。ボレー、サービス、スマッシュ、ダブルス形式と進み、一時間半の練習はすぐに終わった。フォアボレーとサービスは改善されたが、バックボレーとストロークが良くない。夜風に吹かれながら汗ばんだ体を冷まして、自宅に帰った。

 

5月23日(木)曇り時々晴れ

 一日の仕事を適当なところで切り上げ、ノートPCの電源を落として机の引き出しに入れた。小振りのショルダーバッグを肩に掛けて立ち上がり、ホワイトボードまで歩く。ネームプレートの横の退社予定時刻を消し、代わりにブルーのサインペンで明朝の出社予定時刻を書き込んだ。重い鉄の扉を開けて外に出て、爽やかな外気を吸い込む。暗い夜道を駐車場まで携帯の小さな画面でメールを読みながら歩いた。うに色のクルマの幌を上げて走り出す。頭の上を風が音をたてて渦巻いた。

 自宅に戻り、ドアを開けて部屋の明かりをつける。遅くなったがまだ晩飯は食べていなかった。冷蔵庫から良く冷えた缶ビールを出してグラスに注ぎ、二口程飲む。それから晩飯の調理に取りかかった。ニンニクを刻み、ごま油で炒めて香りを出す。そこに豚肉を少し加えて炒めた。中国の甘味噌と辛味噌を適量加えて味をつける。そこに豆腐一丁とニラ一束を加えてさらに炒めた。水溶き片栗粉を加えてとろみを付けてやる。大鍋で茹で上がった熱々のパスタの上に豚肉と豆腐の炒めものをのせて中華風パスタが出来あがった。赤ワインと一緒に食卓に乗せる。

 

5月24日(金)晴れ後曇り

 昼過ぎに一時雷鳴が響き、水分をたっぷり含んで重そうな雲が空から垂れ下がっていた。夕方雨になるのかどうかが、もっとも気に掛かる。うに色のクルマにはラケットバッグが積み込んであった。夕方になっても雨は降り出さない。定時に事務所を後にするとロッカールームでテニスウエアに着替え、急いでうに色のクルマを走らせた。道路は既に帰宅車で混み始めている。途中で幹線道路を逸れて畑の中の抜け道を走った。

 スクール開始の15分前にテニスクラブに到着した。まだナイター照明無しでボールが打てるほど明るい。軽く壁打ちして準備する。ボレーボレーから練習を始まった。照明に電源が入れられ徐々にコートは人工の光に満たされる。球出しのボールのボレーやストロークでミスはしたくなかった。しかし、正しい打点に入れずに何度もミスが出る。ボールとの距離の取り方が安定しなかった。正しい打点に向かって足を小刻みに動かし微調整しながら入って行くが近すぎたり、遠すぎたりと距離感にむらがある。

 簡単に買い物をしてから自宅に戻り、冷蔵庫から取り出した冷たいビールをグラスに注いで飲み干した。旨い。

 

5月25日(土)曇り時々晴れ

 目覚ましの音で深い眠りの底から急速に引き上げられた。地上に釣り上げられた魚が酸素を求めて喘ぐように、体は眠りを欲して喘いでいる。カーテンの外は明るかった。やっと頭が目覚め、意識がはっきりしてくる。軽い朝食をとり、テニスウエアに着替え、ラケットバッグを背負って家を出た。うに色のクルマで5分程走った所にあるテニスコートに向かう。ハードコートだ。1時間半程練習して仲間と別れて先に帰った。

 自宅に戻り、相棒と共にテニスクラブに向かう。まずスクールに顔を出した。16名程居てボールタッチが少ない。昼食は近くの餃子屋で軽くすます。そこから暗くなり始めるまで3時間程相棒やメンバーを相手にボールを追い回すが、納得のいく打点は結局得られなかった。

 夜道を餃子とラーメンの店に向かう。焼き餃子とスープ餃子を頼んだ。透明なスープは出汁が効いていて実に旨味が豊富だ。ラーメンの味も期待できたが、今は餃子だけにしておいた。もう一件餃子屋を訪れる。ここのスープ餃子のスープはやや塩辛いがごまの風味が効いていて旨い。2軒とも水準以上だったので満足して帰宅した。

 

5月26日(日)晴れ後曇り後雨

 目覚ましのアラーム音で目を覚ますと、相棒を叩き起こして急いで身支度を整え、家を出る。灰色の車で空いた幹線道路を飛ばして試合会場になっている河川敷の公園に着いたが遅刻だ。既に到着しているスタッフに合流して準備を手伝う。一息つくと相棒とボレーボレーで体を温めた。

 前の試合が終わり、コートに入る。相手は同年代だ。多少緊張しているようで動きが硬いので、様子を見ながら試合を進めているうちに、相手の自滅で6−0と好調に滑り出す。終わってすぐに2回戦をコールされた。相手は一回戦が無く、これが初試合になる。しかし、老練な夫婦ペアは安定していた。様子を見ていたら、たちまち0−4とリードされてしまう。このままではどうにもならないと、前衛、後衛で動き回り、相手のミスを誘い1−4とするが、続けてゲームが取れなかった。結局1−6で敗北し、選手としての大会は終了する。まだ昼まで2時間弱あった。大会進行や選手の呼び出しをこなす。

 一緒に出ていた友人ペアはタイブレークの熱戦の末、1回戦敗退した。コンソレに回るが、コンソレ一回戦で破れて大会を終えてしまう。冷たい缶ビールを飲みながら大会の進行を淡々と続けた。

 大会進行は、やや遅れ気味ながらなんとか上手く回り、この会場での決勝まで終了し、片づけを終える。そのまま河を挟んで対岸にあるもう一つの試合会場に移動した。双方の会場の勝ち残り同士で決勝戦が行われる。本戦側の決勝が終わった時点で、後を仲間に託し、相棒と共に会場を後にした。

 街中の餃子屋に向かい、ねぎにらを使った餃子を食べる。ねぎにらはにら特有の匂いがなく細いねぎの様に感じた。あっさりした軽快な味わいになる。スープ餃子もなかなか良い味を出していた。灰色の車を郊外に走らせ、山あいの温泉に行く。サウナで長時間過ごし、一日の疲れを癒した。その後は、誘蛾灯に引き寄せられた大量の虫が高電圧に触れて命の火花を散らすのを見ながら露天風呂に浸かる。良くストレッチをしておいた。

 再び街に戻り、駅近くの餃子屋2軒をはしごする。1軒目はチェーン店だが、今まで回った中では一番まともな味だ。2軒目は変わり餃子で有名だが、普通の餃子がきちんと出来ている。ラーメンも頼んでみたが、甘味のあるスープにやや平たい縮れ麺、外側に甘味のあるたれがしみ込んだ煮豚のトッピングという組み合わせで望外に美味かった。

 

5月27日(月)雨後晴れ後雨後晴れ後雨

 こんな目まぐるしい天気の日は過去に記憶がなかった。朝、目が醒めると窓の外の往来を通る車の走行音が、雨を教えてくれる。カーテンを開けると案の定、5月の温い雨に濡れた町並みが眼下に広がっていた。雨粒は小さく、もうすぐ上がることが判る。うに色のクルマを地下駐車場から地上に引きずり出した。

 仕事場に入ってしばらく経つと雨は時折強さを増して降り注ぐ。唐突に雨が降り止むとたちまち雲が薄れてちぎれ飛び、天空から去って行った。その後には眩いばかりに澄み切った深く透明なブルーの空が残る。つい先ほどまでの雨が信じられなかった。太古の昔からそこにあるような突き抜けた青空だ。夏の陽射しが降り注ぎ、地面の湿気をたちまち吸い上げて行く。コンクリートが見る見る白く乾いていった。

 涼しくなったのに気付いて空をあおぐと、水分をたっぷりと抱えて重そうに垂れ下がった雲が青空をグレーに塗りつぶしている。こうなると、この雲の上に先ほどの青空が広がっていることが信じられなかった。そして、再び強い雨が乾いたばかりの地表に降り注ぐ。気紛れのような天気に翻弄され、重く濡れた作業着をロッカールームで着替えると気分も体も軽くなった。

 

5月28日(火)晴れ後曇り

 気持ちよく晴れ渡った青空を見上げると目が痛くなる。ブラウンに着色されたプラスチックレンズのサングラスを掛けた。うに色のクルマのボディが陽射しを浴びてきらめく。深く澄んだ青色の空に乾いて澄み切った音色の排気音が溶け込んでいった。周りの車など関係ない。この青空と緑の地上との間に、うに色のクルマがただ一台だけだ。アクセルを踏み込むと風が勢いを増してキャビンに流れ込む。透明な水面の上で青い稲の苗が揺れていた。このままずっと、どこまでも走り続けたい。

 

5月29日(水)晴れ後曇り一時雨

 わずかに薄雲が初夏の太陽を遮ろうとしていたが、その試みは成功とは言えない。秋の様に空が澄んで高く見えた。仕事場に向かう通勤路だが、春秋用のテニスウエアの上下を着込み、ハードコート用のテニスシューズを履き、トランクにはラケットバッグを積んでいる。うに色のクルマのバスタブのような室内は快適そのものだ。5速に入れて微妙なアクセル操作を駆使してるとたまらなく気持ち良い。

 昼過ぎには黒い雲が空を覆っていた。夕方になると雷を伴いながら弱い雨が降り続く。テスト作業が長引き、スクールの時間に間に合いそうもなかった。だが雨でレッスンも中止になるだろう。残業をこなしているうちにスクールが始まる時間になった。クラブハウスに電話を入れると、ほんの十数キロ離れた場所のテニスコートに雨は落ちず、いつも通りレッスンしているという返事が返ってくる。信じられない思いで、休む由だけ伝え受話器を置いた。やりきれない思いが残る。

 

5月30日(木)晴れ後曇り

 うに色のクルマの狭いコクピットに体を折り曲げるようにして乗り込んだ。座り心地の良い大振りのシートに収まり手を伸ばすとステアリングやシフトレバーが自然に受け止めてくれる。足を伸ばすと、そこにペダルがあった。良く言われるイタリアの手長ザルポジションではない。イグニッションキーをひねり、4気筒の小振りなエンジンに火を入れた。太陽の光が降り注ぐ地上に出る。門を通り抜け、幹線道路に出た。低く押さえた排気音を灰色の街に残して郊外に向かう。大きな河に掛かった長い橋を渡った。透明な水を満たした田んぼには緑の苗が揺れている。

 夜になった。ロッカールームで着替えて外に出ると、風の匂いに夏の気配が感じられる。水銀灯が冷たい光を愛想なく照らす並木道を歩いて駐車場に向かった。うに色のクルマの幌を下ろし、走り出す。エアバッグの慣性マスも無くなり、気持ちよく旋回できるステアリングの感触を楽しみながら、ワインディングロードを下っていった。

 

5月31日(金)曇り

 うに色のクルマの幌は後ろのトノカバーの下に収まっている。曇り空だが構うことではなかった。風がキャビン内に容赦なく巻き込んでくる。夕暮れ時の幹線道路はクルマの往来が激しく、やや滞りがちだった。長袖のテニスウエアが蒸し暑く感じられる。足下はテニスシューズを履き、トランクにはラケットバッグを積んでいた。テニスクラブの近くのスーパーに寄り、アミノ酸の効用を謳うスポーツドリンクと野菜ジュースとメロンパンを買い込む。駐車場で野菜ジュースを飲みながら、メロンパンをゆっくりと咀嚼した。まだ空は明るさを残している。

 スクールの始まる時間まで壁打ちで体をほぐした。すぐに汗が吹き出てくる。今夜のレッスン生は6名になった。ダブルスの形での練習を多く繰り返す。アミノ酸のスポーツドリンクを補給しながら色々なショットを試した。

 うに色のクルマで風に吹かれながら自宅に戻る。冷たいビールをグラスに注いで飲み干した。帰り道で買ったマグロの切り身の上から擦った山芋をたっぷりと乗せて出汁しょうゆを回しかける。海苔を刻んで散らした。炊きたての御飯に乗せてかっこむと、これは美味い。

 


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