2002年06月の日記

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6月1日(土)晴れ後曇り

 アラーム音で目覚めて軽い朝食を取り、灰色の車で家を出る。30分程走ったところにあるテニスコートでサークルの仲間と練習した。1時間半程掛けてみっちりと打ち合う。最後はゲームを楽しんだ。昼になるとコートの使用時間が終わり、ブラシを掛けてネットを緩め、コートを後にする。そのまま近くのそば屋に移動して昼食にした。それぞれ蕎麦やうどんを注文して食べる。暑い日中を太陽が照りつけるコートで過ごした後の、冷たいとろろ蕎麦は最高に美味かった。昼食を楽しんだ後、相棒と共にテニスクラブに向かった。夏の陽射しが容赦なく照りつけるハードコートで、さらに、練習やゲームを楽しむ。早めに上がって夕方には自宅に戻った。晩飯は冷やうどんと炒めものにする。

 

6月2日(日)晴れ後曇り

 まだ朝早いと言っていい時間にアラームが鳴り響く。慌ただしく準備をするとテニスウエアにラケットバッグを背負って家を出た。灰色の車に荷物を放り込んで駐車場から走り出す。まだ空いている国道を30分程走ってから道をそれ、大きな河の河川敷にある荒れた砂利道を入っていくと、広々と広がる公園の中にテニスコートがあった。

 今日は大会の決勝ラウンドが行われる。気温が上がって来て茹だるような暑さだ。サークルのロゴマークが入ったTシャツを着て、集まって来た選手の受付をこなす。すぐに試合が始まった。大会の全試合が終了した後に空いたコートで練習試合を幾つか楽しむ。3週間に渡った大会は無事終了した。

 コートを後にして、今夜も餃子店を巡ることにする。最初の店はもっとも有名な行列のできる店だ。久し振りに美味い。次の店も有名店だ。たちまち4店を回ってそれぞれの味を楽しみ、街を後にする。

 

6月3日(月)晴れ

 目覚ましのアラーム音でまたいつもと同じ新しい一週間が始まる。止めても5分ごとに鳴るアラームを3回数えてからやっと布団から這い出した。簡単な朝食を胃に押し込む。顔を洗って髪を整え、穿き込んだジーンズと着古したTシャツを身につけると家を出た。うに色のクルマに乗り込み明るい路上に漕ぎ出す。うに色のクルマは快音を奏でながら車の流れに乗って走った。

 タイムカードを端末に通してロッカールームに入る。今日から半袖にした作業着を脱ぎ、ジーンズに足を通すと靴も履き替えて、ロッカールームから出た。まだこの仕事場にしては比較的早い時間帯だったので、帰る人は多くない。駐車場まで歩いて、うに色のクルマに乗り込むと自宅の方向にノーズを向けた。明日は休みをとっている。自然に頬が弛んだ。

 

 

6月4日(火)晴れ後一時雨

 休日だが、むしろいつもより早くアラームをセットしていた。目覚めるとすでに外は明るい。天気予報は夕立ちの可能性を示していたが、昼間は晴天が続く筈だ。地下駐車場に降りるとひんやりとした空気が体を包んだ。うに色のクルマに潜り込むとエンジンに火を入れ、路上に連れ出す。今日生まれたての太陽の下を走り出した。ノーズを南に向け、国道バイパスを進んでいく。しばらく走るとサーキットのゲートが見えて来た。駐車場にクルマを止めると早速受付業務の手伝いを始める。

 参加者が少なく、時間に余裕が出来た。スタッフにも走行のチャンスが与えられる。これ幸いと、うに色の車を解き放った。アクセル操作に呼応してエンジンが咆哮を上げ、タイヤが激しく路面を掻きむしる。与えられた時間を少しも逃すまじと思う存分楽しんだ。陽射しはさらに容赦なく照りつける。車とタイヤには辛い条件だ。しかし、集まった参加者の熱意はそれを上回る。全てのスケジュールが終わる頃には、いつの間にか空は黒い雲に覆われていた。夕立ちが近付いている。手早く帰り支度をしてサーキットを離れた。途中で雨に降られ、幌を上げる。激しい雨の区域を抜けると暑さが戻って来た。

 

6月5日(水)晴れ後曇り一時雨

 定時に事務所を抜け出し、ロッカールームで作業着を短パンとTシャツに着替える。すっかり身軽になると駐車場で待つうに色のクルマまで早足で歩いた。幌を降ろして車内に溜まった昼間の熱気を追い出すと、路上に走り出す。壁打コートまで走り、一時間程壁打を楽しんだ。ストローク、スマッシュ、ボレー、サービスと一通り打点を確かめると程よく体が暖まり、軽く汗ばむ。満足してテニスクラブに向かった。途中のコンビニエンスストアでアミノ酸系のスポーツドリンクと惣菜パンを買い、軽く腹ごしらえをする。

 テニスクラブに付いて、他のスクール生と軽い乱打でアップした。コーチがコートに入りレッスンが始まる。一時間程楽しんだ所で、真っ暗な空から冷たい水滴が落ち始めた。後30分持ちこたえてくれと言う願いも空しく雨が次第に強くなり、ついには本降りとなる。少し早めにクラブハウスに逃げ込んだ。雨の中を走り始め、家に近付くと雨は上がっていて路面も乾いている。気紛れな雨に振り回された一日だ。

 

6月6日(木)晴れ

 夏の陽射しがアスファルトに降り注ぐ。事務所の中は冷房が弱く、蒸し暑かった。生温い汗が下着を濡らし、不快になる。事務所を出てロッカールームに入ると少し涼しい。作業着の長ズボンから短パンに着替えるとほっとした。日が沈んで大分経って、やっと涼しくなった外に出ていくと開放感が体を包む。うに色のクルマの幌を降ろして走りはじめると風が心地良い。空いた道を選んで快適な速度を保ちつつ走ると素晴しい気分になった。少しアクセルを踏み込むとエンジンの咆哮が高まり、それと共にキャビン内に巻き込む風がうなり声を上げる。換えたばかりの新しいタイヤは音もなく路面を掴み、スルスルと速度を上げていった。振仰いだ空には大きな月が冷たい光を放っている。

 

6月7日(金)晴れ

 少し蒸し暑い自宅を出て、エレベーターで地下駐車場に降りて行くと、ひんやりとした空気に包まれた。キーでドアを開け、うに色のクルマの中に体を滑り込ませると、同じように涼しく快適な空間になっている。ラケットバッグはトランクに入れておいた。身の回りの小物を入れたショルダーバッグは助手席に転がっている。助手席に置いてあったプラスチックのケースからブラウンの偏光レンズのサングラスを取り出し、夏の陽射しを遮った。

 定時になると、まだ終わらない仕事を諦めてPCの電源を落とす。構うことはなかった。もう週末のはじまりにする。短パンとTシャツに着替えて身軽になると小走りに駐車場に向かった。幌を降ろして車内に残る昼間の熱気を解放すると少し気温が下がり始めた路上に走り出す。帰宅の渋滞が始まる道路から逸れて脇道に入り、車の少ない農道を走っていく。テニスクラブに到着するとすぐにスクールが始まった。今日は4名だ。ショットに勢いはあるが、まだミスの多い高校生を相手にスピードボールに慣れる。無心になってボールを追い掛けていると一時間半はたちまち過ぎて行った。500mlのスポーツドリンクを飲み干す。

 

6月8日(土)晴れ後曇り

 すでに太陽が上っていることが幽かな熱気を通して伝わってきた。寝苦しい夜が続く季節も間もなくやってくるだろう。今はまだしばらく爽やかな朝だ。軽い朝食を取り、顔を洗い、身支度を整える。うに色のクルマで家を出た。

 5分程度走ると広い公園の駐車場に車を停め、コートまで歩く。大きな木が太陽を遮りひんやりとした空気を濃密にたたえている休憩所からコートに出ると太陽が容赦なく照りつけた。しばらくラリーを続けていると全身から汗が噴出してくる。時折通り過ぎる風が一瞬の涼を与えてくれるが、すぐに天頂からの熱波が攻め立てた。

 自宅に戻りチャーハンの昼食をとってひと休みすると、今度は近くのテニスクラブに向かう。練習やゲームで夕方までの数時間を存分に楽しんだ。最後には、ほど良い疲労に体が重くなっている。

 自宅に戻り、風呂で汗を流し、冷たいビールをグラスに注いで、飲んだ。お湯を湧かし、うどんを茹でる。湯で上がった麺を氷水で引き締め、冷たいたれに付けて啜り込む。たまらない美味さだ。

 

6月9日(日)晴れ時々曇り

 コーヒーを湧かし、トーストを焼いた。ヨーグルトに少量の塩を入れる。近くのパン屋で買って来た食パンは焼いただけで十分に美味しい。軽い朝食を取るとテニスウェアに着替え、近くのテニスコートに向かう。年に二回、春と秋にある仲間内の夫婦対抗ミックス大会だ。軽くアップをしてから7組の夫婦ペアが4ゲーム先取の総当り戦を始める。陽射しは強烈で暑かった。ゲームの合間に冷たい缶ビールで涼をとる。4勝2敗で3位の成績だった。

 昼食を近くのカジュアルなイタリアンレストランでとり、少し休息してからテニスクラブに向かう。夕方まで相棒と練習を繰り返した。疲れるとクラブハウスのテラスのテーブルに座り他人のプレーを見る。夏の長い日が傾いたころ、練習を切り上げ、最後に冷えたアイスコーヒーでクールダウンして、クラブを後にする。

 餃子ラリーの続きだ。先ず駅の構内に小さな店を出している餃子専門店に入った。お土産用の餃子を買い、次は駅を出てすぐのチェーン店に向かう。焼きが良ければまぁ食べられる味だ。仲間で経営しているらしい二つの店を回る。生ビールと焼き餃子と揚げ餃子がセットになった物は頼んで、晩飯にした。

 

6月10日(月)晴れ

 新しい週の始まる月曜の朝、寝覚めの気分は悪くない。寝不足だが、昨夜行われたW杯予選リーグでの母国の闘い振りに力を与えられていた。布団から出るとTVを点ける。昨夜、幾度と無く繰り返して放映していたゴールシーンが今朝も何度か繰り返されていた。顔を洗い、Tシャツと短パンと言うラフなスタイルで家を出る。うに色のクルマに乗り込んで、すでに多くの車が流れ始めている街道を走った。カーラジオから流れる聴きなれたパーソナリティーの声は時々語尾がかすれて、昨夜の興奮振りを露呈している。気持ちの良い朝だ。

 事務所を後にし、着替えを済ませてロッカールームから出ると、夏の長い日もとっくに暮れて月も見えない真っ暗な空だ。長距離トラックが黒い煙を撒き散らす主要国道を、うに色のクルマで快調に走って行く。暗い自宅に戻った。窓を開けると、夜風が室内の蒸された空気と入れ替えに入ってくる。米を研ぎ、ほうれん草と豆腐の味噌汁を作った。メインは豚肉とモヤシとピーマンを中国の甘味噌と辛味噌で炒めたものにする。熟しすぎたトマトのスライスと良く練った納豆を副菜に添えた。

 

6月11日(火)曇り

 うに色のクルマで地下駐車場からの緩いスロープを駆け上がった。地上に出ると、あいまいな白っぽい灰色に塗りつぶされた空が見える。この国の南岸に梅雨前線が停滞する季節がやってきた。気分が滅入る。暑苦しい湿気を振り払うようにアクセルを踏み込むと、うに色のクルマは快音を発して速度を上げた。

 夕方に始まった会議はダラダラと夜まで続き、着替えを済ませてロッカールームから出ると、日付が変わる2時間前になる。暗い駐車場に車の影は少なかった。街灯もまばらな暗い道を走り、国道に出る。大きな橋を渡って少し行くと幹線国道のバイパスと交差していた。左折して側道に入り、アクセルを踏み込む。バイパス道路の早い流れにうに色のクルマの速度を合わせて合流した。アクセルを戻すがエンジンブレーキの減速感が感じられない。シグナルで減速していくとエンジンが回転が下がるのに抗うようだ。クラッチを切ると勝手にエンジンが吹けあがった。ふと思いついてアクセルペダルの後ろに足先を入れて戻す方に力を入れてやると、エンジン回転が下がった。アクセルワイヤに渋りが発生しているらしい。自宅に戻ると、冷たい缶ビールを飲み干した。

 

6月12日(水)曇り後雨

 今夜は雨が降るらしい。TVの天気予報が既定事実のように告げていた。念の為にテニスシューズとラケットを持って家を出る。Tシャツに短パンにサンダル履きと言うラフなスタイルだ。灰色の車にラケットバッグを放り込む。駐車場から出るとすぐにラジオをつけて、いつものパーソナリティーの声を聴きながら走ったいた。

 定時で仕事場を後にして、外に出る。細かい雨が静かに降り敷いていた。壁打ちも出来ない。まっすぐ自宅への道を辿る。途中でスーパーマーケットと酒屋により、食材を少々と缶ビールを1ケース買い込んだ。自宅に戻る。雨はやや強さを増していた。窓を開けて蒸された空気を追い出す。台所で米を研ぎ、ニンニクとジャガイモと人参の皮を剥いた。深鍋を火に掛け、少量の油でニンニクを炒めて香りを出す。ブタ肉を加えて色が変わるまで炒めた。玉葱や人参などの野菜を加えてさらに炒める。カレーにするつもりだったが、ストックの食材の中に、半年前に賞味期限が切れているシチューのルーを発見して、考えを変えた。水を加えて煮込み、アクを充分に取ってからルーや香辛料を加え、さらに煮込む。濃厚なシチューが完成した。

 

6月13日(木)曇り時々雨

 昨夜から降り続いた雨は、弱々しく今朝も所々で路面を濡らしていた。眠りが浅かったのか、外の天気の様に頭がぼんやりとしている。牛乳を飲んで、顔を洗い、外に出た。すっきりとしない頭を抱えたまま灰色の車に乗り込んで走り始める。ラジオからは今日もワールドカップの情報が流れてくる。

 心電図に変化が出たとの知らせがレターケースに入っていた。早速敷地内の診療所まで歩いて行き、心電図を取り直してもらう。看護婦が取り直すが、やはり去年から大きく変化した波形がでた。次に医師が取り直すと、去年と同じ波形になる。プローブの位置があっていなかったのが原因だと言う。結局何も問題ないということだ。晴れ晴れとした気分で診療所を出る。外はそぼ降る小糠雨だ。

 仕事を適当なところで終わらせ、ノートPCの電源を落として机の引き出しに仕舞うと、小振りのショルダーバッグを肩に掛けて事務所を後にした。ロッカールームで着替えて短パン姿になるとほっとする。大した雨ではなかった。傘を差さずに駐車場までの道を歩いていく。梅雨寒の気候がかえって気持ち良いほどだった。

 

6月14日(金)曇り後雨

 空全体が幽かな濃淡の灰色に埋め尽くされていて、いかにも梅雨らしい空模様だった。水分をたっぷりと持ち合わせて、いつでも降らす事は出来るが、今はまだ時期ではないと余裕を持って構えている様に見える。どうやら、じわじわと小出しに長時間に渡って大地を濡らすつもりだ。灰色の車でいつもの通勤路に走り出す。

 仕事場の駐車場に着く前からしとしとと降り出した雨は、霧の様に大気全体を湿気で満たして断続的に降り続いていた。定時の2時間以上前に事務所を後にする。まだ昼間と言って良い時間の、それでも車通りの多い道路を走って自宅に戻る。途中でまた雨が降り始めた。自宅に戻るとTVのスイッチを入れ、決勝トーナメント進出が掛かった母国の予選リーグ最終戦を見る。腰を落ち着けてゲームの進行を見つめた。相手チームからのプレッシャーはあまり感じず、余裕を持って見ていられる。後半に入って母国チームが先取点を上げた。そしてさらに追加点を上げ、危な気なく快勝して決勝トーナメントにコマを進める。この良い気分のままナイターテニスを、と期待するが、雨は大地を濡らし続けていた。しかたがない。泡盛のロックにレモンをたらして祝杯をあげた。

 

6月15日(土)曇り

 昨夜の祝杯の影響がまだ少し残っている。布団を出て居間のカーテンを開けると雨は上がっていた。軽い朝食を取り、身支度を整え、家を出る。ラケットバッグとオムニコート用の靴を持ってだ。灰色の車で30分程走った所にある林に囲まれた公園のコートに向かう。

 サークルの仲間と一時間半程練習で汗を流し、最後はゲームを楽しんだ。陽射しは無いが、蒸し暑く、汗が面白いように流れる。終了後は新鮮な海産物を出してくれる定食屋に移動して昼食を取る。皿に山盛りになったねぎとろがねっとりと舌に絡み付いた。家に戻るとシャワーを浴びてしばらく体を休める。相棒が体調の不調を訴えた。日暮れが近くなってから再びテニスウエアに着替え、ラケットバッグを持って家を出る。うに色のクルマで10分程走ってテニスクラブに行き、ナイタースクールでレッスンを受けた。日が落ちて少し風が涼しくなって来る。しかし、ボールを打ち始めるとたちまち汗が吹き出した。一時間半程気持ちよく汗をかいた後で、うに色のクルマで夜風を受けながら家に戻る。すぐにシャワーを浴びた。冷たいビールがたまらなく美味い。

 

6月16日(日)曇り

 アラームの電子音で眠りの底から引きずり出される。居間のカーテンを開けてみると空は明るい乳白色の薄雲に覆われていた。僅かにトーンの濃淡があるだけだ。ラケットバッグを背負って家を出た。うに色のクルマに乗り込み、近くのテニスクラブに移動する。今日は隣の県から遠征して来た人達と交流ゲームで楽しむ企画になっていた。次々と4面のコートに人が散らばっていき、4ゲーム先取アドバンテージありのゲームに入る。

 陽射しはないが、湿度が非常に高く、汗が乾く間もなかった。これで太陽が出ていたらかなり体力を消耗するはずだ。クーラーボックスでキンキンに冷やした缶を取り出し、流れた汗の代わりに喉に流し込む。乾いた砂に水を撒くように直ちに吸収されていった。午後になると時折涼しい風が柔らかく吹いて、一時の清涼感を与えてくれる。イチゴやトマトの差し入れがあった。トマトは甘く薫り高く瑞々しい。

 色々な相手と沢山のゲームをこなし、夕方を迎えた。コートに別れを告げ、三々五々引き上げていく。自宅に戻ると熱いシャワーで一日の疲れを洗い流した。冷蔵庫から出した冷たい缶ビールをグラスに注いで一気に飲み干す。

 

6月17日(月)曇り

 月曜の朝、昨日の疲労の残滓が太腿や肩の筋肉の張りとなって僅かに残っていた。布団から立ち上がり居間まで歩いていく間に張りがほぐれていくのを感じる。寝覚めの気分は悪くなかった。空は今日も薄い雲に覆われている。Tシャツと短パンに濃いブルーのスニーカーを履いて家を出た。うに色のクルマに乗り込んで、街道に出て行く。カーラジオから聴き慣れたパーソナリティーの声が流れていた。明日はW杯の決勝トーナメント一回戦に母国が初出場する。パーソナリティーの声が期待と喜びに高揚していた。

 制服の上下を脱いで、Tシャツと短パン姿になると開放感に包まれる。うに色のクルマの幌を降ろすと、頭上の真っ暗な空との間に隔てるものは無くなった。トラックが黒い煙を撒き散らす主要道路を快調に走って行く。暗い自宅に戻った。窓を開けて夜風を入れる。先ず米を研いでざるに上げて水を切った。豆腐の味噌汁を作る。メインは豚肉とキムチとニラと唐辛子を韓国風チジミの粉を卵と水で溶いたものでさっと閉じたものにした。キムチの辛味と酸味が豚肉と良く合って、美味い。

 

6月18日(火)雨

 うに色のクルマで地下駐車場から出た途端に幌に雨の当る音が響き、車内は急ににぎやかになった。鉄板の屋根と違い、傘を差して歩く時のような優しい音で、どこか懐かしい。しっかりとした雨だ。うに色のクルマの主治医が待つ工場へ向かう。ブレーキキャリパーとブレーキホースを強化品に交換してもらった。さらに一月半ばから既に持病と化したアイドリング不調を診てもらう。アイドル不調と高周波の異音を平行して調べていくうちにやっと異音の発生源をつきとめた。キャニスターからインマニにガソリンを戻すパイプが外れて、そこからエアを吸っている。パイプを嵌めなおすと音は消え、同時にアイドル不調も完治した。これで完調だ。

 家に戻るとビールのグラスを片手にTVを点けた。母国の記念すべき試合がまもなくキックオフを迎える。笛が吹かれた。固唾を飲んで見つめる。前半の早い時間にセットプレーから先取点を許した。グラスを泡盛のロックに変えて試合を見守る。扉は開かれなかった。0−1のまま試合は終了する。やり切れない思いで共催国の試合を見た。母国の試合が物足りなく思える程に熱い。素晴らしい死闘の果てに劇的な幕切れが待っていた。

 

6月19日(水)晴れ後曇り

 敗北と勝利が明暗を分けた運命の一日が終わり、爽やかな青空が広がった。陽射しが眩しい。素晴らしい試合を見た興奮が心の表層を覆い、内側には満たされない思いが冷たく重く沈んでいた。Tシャツに短パンにサンダル履きでテニスシューズとラケットを持って家を出る。灰色の車にラケットバッグを放り込む。エンジンを掛けるとすぐにラジオをつけた。パーソナリティーの声にも悔しさがにじんでいる。これがW杯だ。

 定時で仕事場を後にして、ロッカールームで着替えると外に出る。壁打ちコートで時間を掛けてスマッシュの打点を確認した。その後スクールに移動して軽く乱打をしながらレッスンの開始時間を待つ。珍しくいつもの練習パターンの中にシングルス系のストロークの練習が入った。左右に走ってストロークを打つと気持ち良く汗が流れた。こんな練習も悪くない。レッスン終了後、サービスを一カゴ打ってタイミングを確かめてから帰路についた。自宅に戻ると、先ず窓を開けて蒸された空気を追い出す。ニンニクやピーマンを刻みながら、キャベツの味噌汁を作った。豆腐とピーマンとモヤシを炒め、中国の甘味噌と韓国の辛味噌で味を付ける。当然の様に美味い。

 

6月20日(木)曇り後雨

 午後になって予報通りに雨が降り始めた。見る見るうちに路面を黒く染めていく。まとまった雨になりそうだ。仕事が一段落着いたところで帰る事にする。アプリケーションを終了するとスタートボタンから終了を選び、ノートPCの電源を落として机の引き出しに片付けた。黒いショルダーバッグに手帳を仕舞ってから肩に掛ける。これで帰り支度は完了だ。ベージュ色に塗られた重い鉄の扉を開けて外に出る。しけっているが室内の淀んだ空気よりは遥かに爽やかな外気を吸った。ロッカールームでTシャツに短パンとサンダルに着替えて暗い夜道を携帯の小さな画面でメールを読みながら歩く。灰色の車の助手席にショルダーバッグを放り込んで走り出した。カーオーディオから好きな曲が流れ出す。

 自宅近くまで戻り、いきつけのガソリンスタンドに灰色の車を預けた。明日、車検を通してもらう予定になっている。代車の白いコンパクトカーに乗り移る。幽かにタバコの臭いがした。灰色の車よりも10年程若いその車は、排気量がやや小さいにもかかわらず、同等以上に走る。足周りがかちっとしていれば結構楽しめそうだ。短いドライブですぐに自宅駐車場に着く。雨は小止みになった。

 

6月21日(金)晴れ

 昨日一日満足するまで雨を降らしたようだった。梅雨前線の雲はこの地方都市の上空から消え去っている。冬ならばまだ日が出ていない時間だが、夏至を迎えた今ではサンバイザーが必要無い程太陽は高くから光を降り注いでいた。暑い。金魚鉢の様にガラス面積が大きい白い車の車内はみるみる温度を上げていった。様々な臭いが混じりあって暑苦しい。仕方なくエアコンを効かせた。驚くべき事に白い車はさしたるパワー低下も見せず、グイグイ走っていく。この10年程の進化を目の当たりにする思いだ。

 定時を少し過ぎてから事務所を後にし、ロッカールームでテニスウエアに着替え、急いで白い車を走らせる。帰宅車で混み合う少し前に何とか抜け出せた。いつもの壁打コートに向かう。少し遅い時間だが、壁を通してのボールとの対話を楽しみ始めた。しばらくすると汗が吹き出してくる。Tシャツを脱いで柵に掛けたまま、さらに打ち続ける。上半身に直接夕暮れの風が当たって心地良い。サービスとスマッシュの練習に時間を多く割いた。

 昨夜灰色の車を預けたガソリンスタンドに向かう。夕暮れ時は繁昌していた。綺麗に洗車された車を受け取り、満足して自宅に戻る。

 

6月22日(土)曇り

 起きたばかりの目は焦点調整にやや戸惑いがある。居間のカーテンを開けると僅かにぼやけた視界に雨に濡れた町並みが映った。天気予報は午前中に雨が上がると出ている。地下駐車場からうに色のクルマを出すと幌を叩く雨の音が車内を賑やかにした。雨の中を主治医の待つ工場に急ぐ。うに色のクルマがリフトに上げられた。前輪駆動車の弱点の一つであるドライブシャフトブーツに亀裂が入りグリスが漏れている。今日はそれらを新品に交換する手筈になっていた。2時間半の作業でうに色のクルマは再び地上に降ろされる。雨上がりの道を快調に走った。

 午後からは近くのテニスコートに行き、仲間とテニスをする約束だ。クラブハウスから突然声が掛かる。隣の県から来ていた知り合いとの偶然の再会だった。仲間と夕方までゲームをした後、さらに知り合い達と一緒にゲームを楽しむ。速いスピードボールが行き交う激しい試合になった。コーチの放つボールは良く回転が掛かり、意思を持つ生き物の様に軌道を描く。これが生きたボールだ。ミックス2試合、男ダブ1試合を楽しむとナイター照明の外は、すっかり夜の帳が降りている。心地よい疲労に満足して家に戻った。

 

6月23日(日)曇り後雨

 アラームの電子音が暗い闇に沈む意識を表層に引きずり出した。手早く身支度を整えるとグリーンのデイバッグを背負って相棒と共に家を出る。近くの駅から電車に乗り、一駅行ったターミナル駅で北に向かう新幹線に乗り換えた。車内で相棒手製のサンドイッチと缶ビールの朝食を取る。心地良い揺れに誘われ眠りに落ちた。2時間半ほどの高速移動で目的地の駅に降り立つ。バスで在来線の駅に移動し、駅前で自転車を借りた。この地方をイーハトーブと名付けた男の足跡を追う小旅行が始まる。

 川岸に古代の地層が露出した、その白茶けた泥岩の様子から、男がイギリス海岸と名付けた川岸の堤防沿いに自転車を走らせた。空は、ちょうどイギリスのように灰色の低い雲に覆われ、風がやや冷たい。男が3年間独りで農耕生活を送った家の跡地には詩碑が立っていた。この寒々しい土地で男は貧困にあえぐ農民の生活を何とか改善しようと身を尽くしたと言う。午後になってバスに乗り近くの温泉郷に移動した。付属のバラ園では色とりどりの満開のバラが甘い香りで迎えてくれる。裏山を散策し滝を見てからホテルに戻る。露天風呂にゆっくりと浸かると急速に空腹を感じた。ビールが美味い。

 

6月24日(月)曇り時々雨

 バイキングで腹一杯食べた後に、また温泉に浸かってから眠った朝の目覚めは至って爽快だ。朝食前にサウナと露天風呂を楽しむ。朝食のバイキングは長い行列が出来ていた。軽いとは言えない朝食をゆっくりと取り、その後また温泉に浸かる。気分は爽快だ。バスに乗って温泉街を後にする。

 ここは沢山の名作と呼ばれる童話や詩を残し、この地をイーハトーブと言う名の理想郷にしようとした男が生まれ育った土地だ。新幹線の駅から歩いて小高い山の中腹に上って行き、その男の記念館や資料館を回る。沢山の推敲が所狭しと書き加えられた生原稿やメモが、男の創作活動にかける熱き思いを偲ばせた。展望台から見える風景は、新幹線が通り、高速道路が整備された今でも田圃が広がる小さな農村のまま、ひっそりと静まり返っている。これでも男が生きていた当時からすれば大きく様変わりしている筈だ。男のその瞳にはどんな未来が映っていたのか、今となっては知る由も無かった。ただ男の残した童話や詩や和歌が数々のエピソードと共に後世に伝えられていく。電車の時間が近づいた。南に向かう新幹線の座席に収まると南部せんべいをつまみに缶ビールを開ける。静かに目を閉じた。

 

6月25日(火)雨時々曇り

 朝から細かい雨が舞うように降り続いていた。傘を差してもあまり役に立たない。霧吹きで吹きかけられたように全身に満遍なく湿り気が押し寄せる。玄関ロビーを出て通りを渡り駐車場に行くまでの間に、うんざりする程の水分を含んだような気になった。梅雨寒の低温で蒸し暑くないのが救いになる。近所のガソリンスタンドでサービスのポリマー洗車を施したばかりの灰色の車は、全身に大粒の水玉を張り付けて、雨の駐車場にうずくまっていた。エンジンを掛けて走り出すと屋根に張り付いていた水玉が音を立てて流れ、リアウインドウで滝になる。

 自宅に戻ると少し前に帰っていた相棒が晩飯の用意を始めていた。ご飯と、玉葱とワカメの味噌汁と、牛肉とピーマンの炒め物をメインにしたおかずが食卓に並ぶ。TVで韓国とドイツの試合が続いていた。韓国選手の動きは前回の試合ほど良くなく疲れが見えている。ドイツの守りが固いせいだった。一瞬の隙を突いてゴールが決まる。奇跡の進撃は止まった。遠いヨーロッパの島国では最も由緒正しいテニスのグランドスラム大会が始まっている。母国の女子選手は順当に一回戦を勝ちあがっていた。

 

6月26日(水)雨後曇り

 居間の大きなガラス戸から見下ろす景色は、すりガラスを通して見た様に、全てが白っぽく平板に見えた。気温は4月に逆戻りしたように低い。また雨の朝だ。Tシャツとジーンズを身に着け、足元はテニスシューズを履く。ラケットバッグを担いで家を出た。灰色の車にラケットバッグを放り込む。エンジンを掛けるとすぐにラジオから聞き慣れたパーソナリティーの声が流れ出した。

 定時で仕事場を出る時には、まだ細かい雨が落ちている。駐車場から灰色の車を出すと、諦めて家路を辿った。自宅近くの家電量販店でデジタルカメラを弄って時間を潰す。スクール開始一時間前に電話を入れると、コートが乾いてテニスが出来る状態と告げられて軽く驚いた。途中で補給用水分と小腹を落ち着かせる菓子パンを買ってクラブコートに向かう。天気のせいかレッスン生は4名だけだ。充実した一時間半を過ごした後、さらに20分程度乱打をしてから帰路に着く。

 自宅に戻ると、相棒がオムライスとクラムチャウダーを用意して待っていた。ケチャップの効いたチキンライスと薄く焼いたオムレツとクラムチャウダーを交互に口に運ぶ。赤ワインを開けて口中を洗った。実に美味い。

 

6月27日(木)曇り時々雨

 昨夜遅くからまた雨が降り始めたようだ。目覚めてカーテンを開けると今朝も雨に濡れそぼる町並が眼下に広がっている。良く見ると水溜りにいくつもの波紋が広がっていた。牛乳とヨーグルトを胃に落とすと、顔を洗い、外に出る。灰色の車に乗り込んで走り始めた。雨は降っているのか降っていないのか判らない程度に漂う。フロントガラスに着く細かい水滴は雨なのか前走車が巻き上げる水煙なのか定かではなかった。ワイパーが往復しながら拭い去っても後から後からガラスを水滴が埋めていく。ラジオからは今日もワールドカップの情報が流れてきた。

 仕事を適当なところで切り上げ、PCの電源を落として事務所を後にする。ロッカールームでジーンズと麻のパーカーに着替えてから傘を持って外に出た。大した雨ではない。時折ワイパーを使いながら自宅に戻る。昨夜の残りのクラムチャウダーを温め、大鍋で茹で上げたパスタを放り込んでスープスパゲティを作った。赤ワインを飲みながら熱々のスープと共に多めのパスタを腹に収めた。TVでは母国の女子選手が芝の上で2回戦を果敢に戦い、勝利を収める映像が流れている。次の相手は強敵だが良い試合が見れそうだ。

 

6月28日(金)曇り時々雨

 今日も一日雨が降ったり止んだりを続けるのだろう。頭上には変わり映えのしない灰色の濃淡だけで表現できる空が広がっていた。灰色の車に乗り込んで家を出る。天気が悪い上に、スクールも期のはざ間を利用してハードコートを砂入人工芝コートに張り替える工事をしていて休校なので、ラケットは持たなかった。気温が下がって短パンでは肌寒いと言って良いほど涼しい。厚手のジーンズがちょうど良かった。

 夕方、定時を少し過ぎてから再び灰色の車に乗り込む。自宅を通りすぎ、行き付けの床屋に入った。余計なことをせずにカットだけ千円というリーズナブルな価格を実現したところが気に行っていたが、採算が取れなかったのか、7月よりカット+シャンプーで二千円が最低ラインに変更されると店内に告知してある。これが最後の千円カットになった。いつもより短めに刈ってもらい、さっぱりした気分で店を出る。

 テニスクラブに行ってみると既に張替え工事は終わっていて、真新しい人工芝に砂がたっぷりと含ませてあった。新しいサーフェスの感触を楽しく想像しつつコートを離れる。自宅に戻ると米を研ぎ、豆腐とワカメの味噌汁を作った。メインは冷しゃぶサラダにする。

 

6月29日(土)曇り後雨

 朝目を覚まし、居間のカーテンを開けて見上げる空は、薄墨を流したようにあいまいな灰色だった。所々重そうな濃い影が濃淡をつけている。地下駐車場からうに色のクルマを出すと、近くの市営テニスコートに向かった。仲間たちに混じりアップとゲームを楽しむ。

 昼になり、自宅に戻り簡単な昼食を取ると再びラケットバッグを背負って家を出た。相棒と共に灰色の車に乗り込み、近くの別の私営テニスコートに向かう。埼玉から友達とコーチがやって来るのに合わせて体験レッスンを受けることになっていた。ジュニアの中高生と共に最初のダッシュや筋トレから付き合うと体が悲鳴を上げる。構わず動かしていくと次第に体が慣れてくるのが判った。一通り体を動かしてから球出しのボールを打っていく基礎練習になる。その後は、サービス、ボレーボレーと進み、最後はゲームを楽しんで終了した。太陽光線で焼かれる辛さはない。しかし、湿度が高く、面白いように汗が流れた。レッスン後は時間貸しでコートを借り、友達と一緒にゲームを何試合か楽しむ。夕方暗くなる頃、雨が落ちてきた。しばらくクラブハウスで時間を過しクールダウンする。心地よい疲労に満足して家に戻った。

 

6月30日(日)曇り後雨

 朝起きてTVを眺めていると次第に頭がハッキリしてくる。朝昼兼用の食事を取り、泡立てたミルクを浮かせたカプチーノ風のコーヒーを飲み干した。手早く家の中を片付けてから、ラケットバッグを背負い近くのテニスクラブに向かう。2時間半ほど乱打とゲームを楽しんで汗を流してから、クラブハウスで出されるアイスコーヒーを飲んでクールダウンした。帰り道で少し遠回りして足りないものを買って家に戻る。

 シャワーを浴びてさっぱりしてから夕食の支度を始めた。今日は友人を家に誘って焼肉パーティーだ。クーラーボックスに作った氷水で缶ビールや缶チューハイを冷やす。モヤシとほうれん草でナムル風のお浸しを作り、冷凍の枝豆を茹でた。主食はお好み焼きだが、念の為にご飯も炊いておく。

 約束の時間に一人の友人を迎えに行って戻ってくると、ちょうど日本酒をぶら下げて自転車に乗って来た仲間と門前で遭遇する。二人を招き入れ、しばらく経つと友人夫妻が連れ立って到着した。最後に電車で来た友人がワインを持って現れ、全員がそろう。途中からW杯の決勝をTV観戦しながら、大いに肉を食らい、酒を飲み、そして語った。全員が帰った後、深い眠りが訪れる。

 


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