2002年07月の日記

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 7月1日(月)曇り時々雨

 週の始まり、月曜日の朝は雨降りだった。目覚ましの音で目を覚ますが、昨夜の酒が、頭蓋骨の内側辺りをきりきりと締め付けている。冷蔵庫から買い置きのアミノ酸系飲料水のペットボトルを出し、頭痛薬を500mlの液体で胃に流し込んだ。アラームを2時間半後にセットし直して再び布団をかぶる。次に目覚めた時には頭痛は重いどんより感に変わっていた。布団を出てシャワーで全身にまとわりつくいやな汗を流してしまうとスッキリする。灰色の車で家を出て、通勤渋滞が解消して空いた道を走った。天候は相変わらず雨が降ったり止んだりの梅雨空で鬱陶しい。夏の高気圧は遥か南の海上で出番を待っているはずだが、今はその気配すら感じられなかった。

 

7月2日(火)曇り時々雨

 目覚ましの極めて電子的なアラーム音で眠りの淵から意識だけが急速に引き上げられた。手探りでボタンを押す。アラームが止まった。完全に目覚めるまでには、通常これが3回程繰り返されることになる。毎朝の儀式だ。起き上がると寝室を出て居間に行き、TVの電源を入れ、カーテンをあける。今朝もほの白いどんよりとした空に迎えられた。道路はまだ濡れている。灰色の車の中で聞くラジオからは新しい代表監督の話題が流れていた。地球の裏側のブラジルからやってきたサッカーの神様と呼ばれた男の話題だ。それが、もし本当ならば、その男は最高の選手が最高の監督たり得るかという命題を証明するための長く苦しい作業に入らなければならない。

 仕事を適当に終わらせ自宅に戻った。しばらく考えてから、晩飯のメニューを決める。豆腐とトマトとレタスのサラダを大きなボウルにたっぷりと作り、あじの開きを焼いた。冷たいビールを飲みながら平らげていく。主食は米から作った酒にした。芳醇な香りを楽しむ。

 

7月3日(水)曇り

 定時に事務所を抜け出し、ロッカールームで白い作業着からTシャツと短パンに着替えると、すっかり身軽になった。駐車場に置いた灰色の車まで早足で歩く。ドアを開け、車内の蒸し暑さに耐えながら乗り込んだ。エアコンのスイッチを入れるとたちまち溜まった熱気を冷風が追い払っていく。シートの熱さを背中と尻に感じながら走り出した。

 壁打コートまで走り、木陰に車を停める。シンセティックのストリングスを張ったラケットを選んでボールを打ち始めた。凄い湿気ですぐに汗が吹き出してくる。たまらずTシャツを脱いでフェンスにかけた。ストローク、スマッシュ、ボレー、サービスと一通りの打点を確認する作業に没頭していると一時間程が瞬く間に過ぎる。満足してテニスクラブに向かった。途中のコンビニエンスストアでアミノ酸系のスポーツドリンクとメロンパンを買い、軽く腹をなだめる。

 テニスクラブで、他のスクール生と軽い乱打でアップした。コーチが来てレッスンが始まる。蒸し暑いために面白いように汗が流れた。レッスン終了後は乱打でクールダウンして解散する。灰色の車の中で冷房にあたって生き返った。これでビールを飲んだら、たまらないだろう。

 

7月4日(木)晴れ

 久しぶりに雲が切れて夏の陽射しがアスファルトにくっきりと影を落とした。事務所の中で座っていると体から余計な汗が抜けていかない。環境問題を鑑みて冷房の設定を弱くしたようで、蒸し暑かった。生温い汗で体中がベトベトする。やっとのことで、事務所を出ることが出来た。ロッカールームに入ると少し涼しい。作業着の長ズボンから短パンに着替えると思わず笑いたくなった。日が沈んで少し経っても、まだ気温が高い。徐々に涼しくなり始めた外に出ていくと開放感が体を包んだ。

 うに色のクルマの幌を降ろして走りはじめると風が心地良い。窓も全開にしてドアにひじを乗せた。渋滞のピークは過ぎているので快適な速度を保ちつつ走る。少しアクセルを踏み込むと呼応して排気音が高まった。キャビン内には風が渦を巻いて流れ込む。空を仰いで見ても星一つ見えない暗い夜だった。

 

7月5日(金)曇り

 いつもより少しゆったりとした朝を過ごし、ジーンズとポロシャツに、歩き易いスニーカーをつっかけて自宅を出た。押しボタンで門を開けると歩いて表通りに出る。近くの駅まで歩き、南へ向かう快速電車に乗った。一回乗り換えて副都心のターミナル駅に降り立つ。駅前の大型カメラ店を2軒回って比較したあげく、デジカメを一台購入した。紙袋をぶら下げたまま、二駅私鉄に乗って大きな公園の側で降りる。

 少し歩いて指定された建物に入り、広い講義室の入り口で受付を済ませた。手渡された薄いパンフを持って部屋に入り、椅子に腰を落ち着けた。2時間に渡る講議を受講する。最初は法律問題だ。比較的身近な話題で分かり易い。30分の休憩を挟んで、マーケティングに関する講議を受ける。こちらも2時間飽きさせなかった。講議が終わると今日の仕事も終わりだ。再び電車を乗り継ぎ、地方都市に戻った。

 駅を出て少し歩くとまだ新しい感じの建物の壁に目的の店名が彫ってある。階段を上がり、扉を開けて店に入るとアジア的な無国籍空間が広がっていた。懐かしい仲間が集まり、飲み会が始まる。蒸し暑い一日の終わりの乾いた喉に冷えたビールがたまらなく旨い。

 

7月6日(土)曇り

 急に蒸し暑い夜が訪れた。扇風機を回しっ放しで迎えた朝は、すでに太陽が室温をさらに上げ始めていた。軽い朝食を取り、身支度を整える。ラケットバッグを背負って家を出た。

 灰色の車で30分程度走り、広い公園の駐車場に着く。車を降りてコートまで歩いた。太陽は雲に遮られているが、空気はじっとりと湿気をたたえて熱く、重い。コートに出て、アップを始めると全身から汗が噴き出した。休憩を挟んで午前中一杯を練習に費やす。ゲームに入った仲間を後目にコートサイドの林に向かい、BBQの準備を始めた。すでに火は熾っている。炭火で鮎の塩焼き、肉や野菜の串焼きを作っていく。生ビールサーバーから冷たい生ビールを注いでは飲みながら火に向かっているとおびただしい汗が流れ、その代わりにビールが胃に収まっていった。食べて飲んだ後のゲームは夢見心地だ。一ゲーム終わってたまらず横になる。たちまち眠りに落ちた。目覚めて再び一ゲームを楽しむと、もう公園が閉まる時間だ。相棒の運転する車のシートに収まった。

 テニスクラブでレッスンを受けてから自宅に戻り、風呂で汗を流し、冷たいビールをグラスに注いで、飲んだ。素晴らしい一日の終わりだ。

 

7月8日(日)曇り後晴れ

 ヨーグルトに少量の塩を振って、スプーンでかき混ぜてから口に運んだ。酸味が緩和されて旨味が広がる。行きつけのパン屋で買った食パンをキツネ色に焼くと、マーガリンを薄く塗っただけで素敵に美味しかった。グレープフルーツジュースを飲んで軽い朝食を終える。テニスウェアに着替え、ラケットバッグを背負って近くのテニスコートに向かった。同僚と組んでダブルスの大会にエントリーしている。

 会場では友人や顔見知りに数多く会い、挨拶を交わした。参加者には毎年大きな違いが無かった。重い灰色の雲が嘘のように消えていき、真夏の日射しが照りつける。思いもよらぬ熱い一日になりそうだ。8ゲームマッチの試合は長い様で短く、短い様で長い。初戦の相手は顔見知りだった。レベルは変わらない。シーソーゲームで5ー4リードとするが、そこから相手はペースを上げてきた。サーブに攻撃力がある。食らい付いて行けず、僅かずつショットの力で押され、チャンスボールを先に与えた。サービスゲームでの不運な失点もあり、立て続けに4つゲームを失い、5ー8で敗れる。少しの差だが、それが積み重なって大きな違いになる。地力の差を痛い程感じさせられた。

 仕方なくコンソレにエントリーする。コンソレからはB級の代表が選ばれるシステムだ。次の試合はB級の二回戦になる。知人や友人の試合を観戦しながら出番を待った。昼食をとり、2時間程待ったところで、やっと試合が回ってくる。またほぼ互角の戦いだ。今度は逆に4ー5から流れを掴み、良い形でのサービスキープもあり、4ゲームを連取し、8ー5と勝利する。少しの休憩を挟んで3回戦に入った。

 暑い。軽い熱中症なのか思考力が鈍っていた。2ー3から気が付くと2ー7とリードを許している。次を取られると終わる、というところでやっと意識がハッキリした。蘇った闘志で攻撃的にサービスを打ち込む。キープしてチェンジエンド。まだいける。同僚のサービスまで回すと宣言して相手のサービスに挑む。ブレイクだ。そして同僚のサービスもキープ。良い流れで5ー7と3つ取り返すが、リードする相手も必死でサービスを打ち込んできた。リターンで追い込まれ、ポーチを許す。追いつけぬまま5ー8と敗れた。すでに日が傾き始めている。

 さらに別のコートでの練習に参加した後で自宅に戻る。シャワーの後のビールで長く熱い一日にピリオドを打った。

 

7月8日(月)曇り時々晴れ

 暑く寝苦しい夜だった。一晩中扇風機を回しっぱなしで目覚めた朝は体中に何となく気持ちの悪い汗がまとわりついている。冷たいシャワーを浴びると目が覚めると共に体がしゃきっとした。短パンとTシャツを身に着け、うに色のクルマに乗って家を出る。週の始まり、月曜日の朝は特に変わりなく、道には多くの車が流れていた。河を渡る。橋の上から両側に涼しげな水の流れと一段と濃さを増した緑の木々が見渡せた。この光景を外から見ている人が居るとしたら、うに色のクルマは美しい景色の中に見事に打ち込まれた句読点に見えるはずだ。軽快な排気音が風にさらわれて後ろに消えていった。

 

7月9日(火)晴れ後曇り後雨

 暑さに耐え兼ねて寝る直前までかけていたエアコンと、一晩中回しっぱなしの扇風機のお陰で、寝入りも目覚めも悪くはなかった。晴れていて室温はじわじわと上がり始めている。冷たい低脂肪牛乳と塩少々を振ったヨーグルトと分厚い焼きたてトーストの朝食を取った。Tシャツに短パンとサンダルといういでたちで家を出る。気温は上がり始めて蒸し暑いが、うに色のクルマが待つ地下駐車場はひんやりとした空気で迎えてくれた。うに色のクルマに乗り込んで地上に出る。途端に薄い合成ビニルの屋根を通して太陽の熱エネルギーを感じた。暑くなりそうだ。

 午後になって気が付くと窓の外が夕方の様に暗くなっていた。しばらくしてかすかに地鳴りのような低い音が事務所内に響いてくる。雨の音だと気付くまでにそれほど時間は掛からなかった。すぐに地鳴りは激しくなる。重い鉄の扉を開けると、突然激しい雨音と水滴が僅かに開いた扉の隙間から堰を切った様に押し寄せてきた。すぐに扉を閉める。一過性の夕立ではなかった。雨は夜も降り続いている。視界が悪い中、傘の下で聞くような雨音のBGMを楽しみながら自宅に戻った。地下駐車場に入った途端に静寂が訪れる。

 

7月10日(水)雨

 南からの高気圧が梅雨前線を東北地方に押し上げたまでは良かったが、その隙間を狙って、遥か南海上で発生した台風が大きな勢力を保ったまま沖縄、九州、近畿、東海と攻め上がって来た。北関東の町では昼前から雨が降り始めている。時間が経つに連れて雨脚が強くなることは間違いなかった。頭の中を水浸しになって誰も居ないテニスコートの映像がよぎる。今夜のレッスンが中止になるのは火を見るよりも明らかだった。

 定時に事務所を出て、灰色の車で家路を辿る。道路は一部かなりの水溜りが出来ていた。水を掻き分けるように、しぶきを上げて走る。自宅に近づくと雨が小止みになった。急いで本屋と酒屋とスーパーマーケットを回って買い物を済ませる。自宅に戻る頃には再び雨脚が強くなった。

 ニンニク、鷹の爪、玉葱を刻んで大鍋で炒める。玉葱に色がつく頃、豚肉を放り込んだ。さらに人参、ナス、カレー粉を加えて軽く炒める。水を注いで火に戻したところで、冷たい缶ビールを開けて一息ついた。煮立ち始めたら、丁寧にアクをすくう。市販のルーと香辛料で味を整えてカレーが出来あがった。炊きたてのご飯にたっぷりとかけ、トマトとレタスのサラダを添える。

 

7月11日(木)曇り後晴れ

 一晩中雨が降り続いていた。朝起きて居間のカーテンを開けると、まだ濡れた町並が眼下に広がっている。遠くを見ると南の空は晴れていて、この島国の最高峰がくっきりと見えていた。見上げるとまだ黒い雲に覆われている。不思議な感じだ。うに色のクルマでまだ濡れた路上を走り出した。台風はこの街を通り過ぎ、雲を従えてさらに北上を続けている。走っていく間にも南から青空が広がってくるのが判った。北の町では今まさに台風の直撃を受けている。去っていく雲を見上げた。河を渡る。橋からは川幅一杯に広がる濁流が見えた。

 昼前には青空が広がって真夏の太陽が地表を照らす。気温はどんどん上昇していった。しばらく外を歩くと冷房の効いた事務所に避難する。夕方になると気温が下がり過し易くなって来た。会議を終え、事務所を出ると真っ暗な空に久しぶりの星が瞬いている。うに色のクルマの幌を降ろし、爽やかな夜風を感じながら国道を走った。満天の星を見上げながらの快適なドライブだ。周りの車の存在が遠くなっていく。この道と夏の夜風と星空に包まれたうに色のクルマは、まるで天空を駆ける銀河鉄道だ。他の音も聞えない世界に乾いた排気音だけが響いていた。

 

7月12日(金)曇り時々晴れ

 うに色のクルマに乗って、家を出る。夏の陽射しが雲の間から見え隠れしていた。ブラウンの偏光レンズを使ったサングラスで余計な光をカットする。陽射しに炙られて車内の温度が上がっていった。エアコンのスイッチを入れて快適なドライブを楽しむことにする。駐車場に車を入れると、トランクに放り込んだラケットが受ける温度上昇が少し気になった。気休めに過ぎないが出来るだけ日陰になる場所を選んで停めておく。

 夕方、定時を少し過ぎてから急いでうに色のクルマを駐車場から出した。一度自宅に戻り、小腹にトーストを収め、スポーツドリンクを持ってからクラブのテニスコートに向かう。今夜のレッスン生は高校生と友人の3名だけだ。蒸し暑い夜に熱いレッスンになるのは間違いない。ボレーボレー、球だしのボレー、ストローク、スマッシュ、サービス、ダブルス練習、シングルス練習と密度の濃い一時間半になった。

 自宅に戻ってから、明日に備えてうに色のクルマのタイヤを交換する。見栄え重視の大径ホイールを外し、コントロール性の良い正規サイズに戻した。僅かの作業で面白いように汗が流れた。シャワーを浴びた後の冷たいビールが例えようもなく美味い。

 

7月13日(土)曇り時々晴れ後雨

 平日の朝よりも早く目覚ましが鳴った。布団を出て簡単な朝食を取ると家を出る。ヘルメットが入ったバッグをトランクに積んで、幌を降ろしたうに色のクルマで走り出した。朝の風は爽やかだが、日中はかなり気温が上がり蒸し暑くなる筈だ。

 サーキットの門をくぐり、準備を始める。エントラントが集まり始めた。2時間耐久レースは朝一番のイベントになる。うに色のクルマをピットレーンに並べた。15分のプラクティスを走る。その後、ホームストレートに、プラクティスのタイム順に車を並べ、ルマン式のスタートが切られた。3番手で走り出す。30分毎にピットインして、クルマと体を休める。一人で2時間走り切ってゴールするとシャツは汗だくだ。結局ゴールは4番手だった。その後はスプリントレースのスタートフラッグ振りの仕事に付く。最終コーナーのガードレールの後ろに貼りつき、スタートの指示に合わせて旗を振り続けた。

 夕方、自宅に戻りシャワーを浴びると電車で街に出かける。友達のテニスサークルの飲み会に誘われていた。暑く、充実した一日の最後に、旧友と共にジョッキで飲み干す冷たい生ビールは、この世のものとも思えない、たまらない美味さだ。

 

7月14日(日)曇り時々晴れ

 朝ゆっくり起きてTVを眺める。朝食の食卓には、フレンチトーストと泡立てたミルクを浮かせたカプチーノ風のコーヒーが並べられた。手早く支度をしてから、ラケットバッグを背負い近くのテニスクラブに向かう。1時間半のスクールの後、ダブルス3試合こなすと、暑さと水分不足で頭がくらくらした。

 自宅に戻り、シャワーを浴びてから、近くの餃子屋に行く。スタンプラリー最後の店だ。相棒と二人で焼き餃子4人前と水餃子1人前を食べてから、スタンプシートを差し出すと、店員達の驚きと賞賛の顔で見送られた。

 テニスクラブに戻り、すぐ隣の居酒屋で生ビールを中ジョッキ2杯飲み干してから、しばらくクラブハウスのデッキで昼寝を楽しむ。最後に軽くゲームをこなし、クラブハウスで出されるアイスコーヒーを飲んでクールダウンした。

 買い物をして帰る途中、灰色の車の水温が下がらなくなる。ファンかサーモスイッチがいかれた様だ。近くの店に預けて歩いて帰る。シャワーを浴びてさっぱりしてから冷たいビールとそうめんとサラダと豚カルビ焼肉の夕食をとった。泡盛のロックのグラスを傾けながらTVの映画を眺めていると、休日の夜は静かに更けていく。

 

7月15日(月)晴れ後曇り後雨

 昨夜も一晩中扇風機を回しっ放しで眠った。それでも朝起きると体中にうっすらと気持ちの悪い汗がまとわりついている。熱いお湯と冷たい水を交互に浴びて汗を流した。軽い朝食をとり、短パンとTシャツを身に着け、家を出る。地下駐車場には雨天走行で全体的に水垢で汚れたうに色のクルマが置いてある。キーを使ってドアを開けるとコックピットに体を収め、走り出した。

 街は何も変わらない。いつもと同じ路上の風景だ。大きな河を渡る。橋の上から両側を見ると、台風の影響で茶色く濁り川幅一杯に増水していた水は引いて河原が現れ、中州も水上に姿を見せていた。水の色はまだ茶色く濁っていていつもの涼しげな美しさは無い。橋を渡ると緑の田圃で稲が風に揺れていた。

 夕方になると先ず機械の作動音のような低い音が、遠くから微かに聞えて来た。空調の音にも聞えるが雨の音だ。その後から雷鳴がごろごろと重いものを転がすように響く。夕立だ。唐突に雨音が激しくなる。建物全体が地鳴りのような音に満たされた。夏がすぐそこに近づいて来ている。

 

7月16日(火)曇り後雨後晴れ

 先週に引き続き台風が南から近づいて来ている。昼頃に関東に最接近すると天気予報が告げていた。居間のカーテンを開けて外を見ると、所々青空が覗き、台風の接近を感じさせるような予兆は無い。冷たい低脂肪乳と塩を一つまみ落としたヨーグルトの朝食を取った。Tシャツと短パンにスニーカーをつっかけて家を出る。うに色のクルマに乗り込むと何となく蒸し暑さと感じた。エアコンのスイッチを入れて心地良い冷風を噴出させ、発汗を押さえる。今日も暑くなりそうだ。

 かすかに古い空調機のような低い音が事務所内に響いてくる。窓の外を見ると夕方の様に暗くなっていた。北関東の、この町にも台風の影響が現れ始めている。すぐに空調機が出力をアップしたようにうなり音が激しくなった。外の駐車場でこの激しい雨に打たれているうに色のクルマの姿が浮かぶ。ビニールの幌が太鼓のように盛大に鳴っているはずだ。

 数時間で台風は通りすぎ、晴れ間も見えてくる。帰り道ではすでに道路が乾いていた。家に戻ると米を研ぎ、味噌汁に入れるジャガイモとキャベツを刻む。メインは豚肉とえのきとニラの生姜焼き風炒めにした。蒸し暑い夜に冷たいビールが美味い。

 

7月17日(水)曇り

 遥か南の海上からジェット気流に乗って高速で通り過ぎていった台風が、梅雨前線をずたずたに引き裂いて東北地方に追いやった筈だが、台風一過の夏晴れとはならなかった。午後にはにわか雨が降ると天気予報は告げている。先週に引き続き雨がテニスレッスンを妨げる可能性が高かった。それでも、ラケットバッグを背負いテニスシューズを持って家を出る。うに色のクルマのトランクにテニス道具を積むと曇天の下に走り出した。

 昼を過ぎても雨は降り出さない。このまま雨にならない期待がもてた。定時に事務所を出てうに色のクルマで近くの壁打ちコートに向かう。サンダルを靴に履き替えて新しいストリングスを張ったラケットを選んでボールを打ち始めた。少し固めに張った新しいストリングスの打球感が気持ち良い。すぐに汗が出て来た。たまらずTシャツを脱いで、フェンスに掛ける。タオルで汗を拭いながら1時間ほど打点とスイングを確認した。クラブのコートに移動する途中でアミノ酸系のドリンクを買う。今夜のレッスン生は4名だけだ。1時間半のレッスンでTシャツが絞れるほどの汗が流れ落ちた。シャワーを浴びた後の冷たい缶ビールが狂おしいほど美味い。

 

7月18日(木)曇り

 夜からの会議が長引き、空腹を抱えながら終了を待ちわびる。一段落着いたところで帰る事にした。メールチェックをしてから、ノートPCの電源を落とし机の引き出しに仕舞う。黒いショルダーバッグに手帳や電卓を仕舞うと帰り支度は完了した。弱くエアコンがかけられた室内からまだ蒸し暑い外に出る。真っ暗な空に月が覗いていた。ロッカールームでTシャツと短パンに着替え、靴をサンダルに履き替えてから外に出る。湿度も気温もまだ高かった。暗い夜道を携帯電話でメールを読みながら歩く。うに色のクルマの助手席にショルダーバッグを放り込み、幌を降ろすと走り出した。カーオーディオから好きな音楽が流れ出す。トラックが多い幹線道路を走って自宅に向かった。

 ちょうど御飯が炊きたてで味噌汁も出来ていた。テフロンのフライパンで酒と少量の出汁と醤油を沸騰させてから相棒が買ってきた鰻の蒲焼きを置いていく。ふつふつと煮え立つタレが蒲焼きに絡んで香ばしい匂いをたてた。炊きたての御飯にタレをたっぷりかけてから少し焦げ目が付くぐらいに皮の方をぱりっと焼いた蒲焼きをのせる。山椒の粉を少し振って出来上がりだ。冷たいビールと良く合って旨い。

 

7月19日(金)晴れ後曇り

 天気予報は午後から高い確率で雨と告げている。その予報とは裏腹に曇った空から一向に雨は落ちてこなかった。湿度は非常に高く、しばらく外にいると何もしなくても汗が流れ落ちてくる。午後からは強烈に冷房が効くテスト室で実験をして過ごした。長く座っているとむしろ寒いぐらいだ。実験を終えてデータをまとめると帰り支度を済ませて事務所を後にした。急いでうに色のクルマの幌を降ろして自宅に戻る。地下駐車場に幌を降ろしっ放しのままクルマを停め、自宅に帰った。軽く腹ごしらえしてからアミノ酸系ドリンクのペットボトルを持って再び家を出る。

 テニスクラブのコートはTVアニメに影響されたジュニアに占拠されている。クラブハウスでしばらくくつろぐ。時間になってラケットとドリンクとタオルを持ってコートに降りた。まだかなり蒸し暑い。気温はともかく湿度の高さが体に負荷を与えていた。集まった4名のスクール生で練習が始まる。コーチの球出しは精力的だ。次から次へと出てくる球を夢中で追い掛け打ち返す。回転を与えるとボールは生き物のように軌道を描きコートに突き刺さっていった。自宅に戻ってシャワーを浴びた後のビールがたまらなく旨い。

 

7月20日(土)曇り時々晴れ

 熱帯夜が明けて夏の朝がやってきた。目覚ましで起きると体に汗がまとわりついている。トーストとヨーグルトの簡単な朝食を取るとラケットバッグを背負って家を出た。相棒と共に、うに色のクルマで走り出す。幌は上げたままだが、太陽の下に出ると薄いビニールの幌を通して、熱が伝わってきた。たまらずエアコンのスイッチを入れる。

 40分ほど走って河川敷にある広い公園の駐車場にクルマを停めた。歩いてコートに向かう。真夏の太陽が照りつけるコートでは頻繁な休憩と水分補給が欠かせなかった。参加したメンバー9名に3面は多過ぎる。1面は使わずに終わった。昼前には皆、暑さに参る。帰り道で修理に出していた灰色の車を拾い、自宅に戻る。冷たいシャワーを浴びると生き返った。昼食は冷麦にする。一休みして夕方から近くのテニスクラブに行き、レッスンを受ける。陽射しがなく過し易いが湿度は高く、面白いように汗が流れた。

 夜は駅前に新しく開店した焼き鳥屋に行く。オープン価格で生ビールが100円だ。飲まないわけにはいかない。焼き鳥、枝豆、冷奴をつまみに中ジョッキ4杯ほど飲んで自宅に戻る。今夜も熱帯夜になりそうだ。扇風機の風の中で眠る。

 

7月21日(日)曇り時々晴れ

 夜中に何度か目が覚めた。寝苦しい夜の果てに目覚ましのアラームで起こされる。扇風機の温い風にあたりながら1時間ほどTVを眺めた。TVを消して、バケツに水を汲みウエスを数枚持って地下駐車場に降りる。雨中走行で水垢汚れがこびり付いているうに色のクルマを洗い始めた。先ず水を含ませたスポンジで全体の汚れをざっと落とす。次にスプレー式の汚れ落とし兼WAXを吹きつけてウエスで拭った。最後にネルの柔らかい布で全体を磨き上げる。水垢の黒ずみが取れたクルマは鮮やかなうに色を取り戻した。

 洗車作業をこなすと大量の汗でTシャツが絞れる程だ。部屋に戻ると冷たいシャワーで汗を流した。冷凍庫で冷やしておいたグラスに冷たいビールを注ぎ、喉を鳴らして飲み干す。朝昼兼用の食卓には、トーストとスクランブルドエッグとコーヒーが並べられた。ゆっくり食事を済ませてから、ラケットバッグを背負い近くのテニスクラブに向かう。

 練習やダブルスのゲームで4時間遊ぶと、もう充分だった。自宅に戻り、今日3度目のシャワーを浴びる。冷奴で冷たいビール、さらに刺身を肴に冷やした白ワインを飲んだ。扇風機の風を受けながら汗ばむ体を布団に横たえる。

 

7月22日(月)曇り時々晴れ

 暑い夜だった。アラームの音に目を覚ますと扇風機が首を振りながら風を切る単調なリズムが聞える。顔と体にうっすらと汗がまとわりついているのが判った。布団を出てシャワーを浴びる。朝の日課に成りつつあった。軽い朝食をとり、短パンとTシャツを身に着け、家を出る。地下駐車場に降りて行くと、昨日洗車したばかりで薄暗い蛍光灯の灯りの下でも輝いている、うに色のクルマが迎えてくれた。コクピットに体を沈め、走り出す。地上に出ると鮮やかなうに色が陽射しを反射した。

 街はいつもと変わらない月曜日の朝が始まっている。カーラジオからは聴き慣れた声が流れていた。いつもと同じ一日になるだろう。大きな河に掛かる長い橋を渡った。川面を見やると水量はやや多めに感じる。青い稲の葉が揺れる水田の中の一本道を、うに色のクルマは乾いた排気音を残して走って行った。

 夜になり外に出ると暗い空に時々光が走る。北の方では盛大に雷の音が響いているに違いなかった。こちらまで来るかは判らない。自宅に戻り、地下駐車場にクルマを仕舞うまでも、そして結局朝まで雨が降ることは無かった。

 

7月23日(火)晴れ時々曇り

 またしても遥か南の海上から台風がゆっくりと近づいている。北に向かって進んできた台風は小笠原諸島付近で進路を西に変えた。明日には関東にも影響がでると天気予報が告げている。TVを眺めながらヨーグルトをスプーンですくって口に運んだ。朝スイッチを入れたエアコンの爽やかなそよ風が、シャワーを浴びたばかりのまだ少し濡れた体に心地よい。Tシャツと短パンにスニーカーをつっかけて家を出る。鮮やかなうに色を取り戻したクルマに乗り込むと緩いスロープを登って外に出た。じんわりと熱が伝わって来て車内の温度を上げ始める。今日も暑くなりそうだ。

 仕事を終えて駐車場まで歩き、うに色のクルマの幌を降ろす。シートに腰を落とすと、熱気が伝わってきた。走り出すと風が流れ込んで来て、少しづつ熱気を押し出していってくれる。夏の夜のオープンドライブは快適だ。家に戻ると冷凍庫から冷やしたグラスを出し、冷たい缶ビールを注いで呷った。痺れるほど冷えた液体が喉を通って行く素晴らしい感触を堪能する。たまらなく美味い。

 

7月24日(水)曇り後晴れ後曇り後雨

 台風の影響で午後から雨になると天気予報のアナウンサーが折り畳み傘を持ちながら笑顔で語っていた。居間のカーテンを開けて外を見ると、空は灰色の雲に覆われている。予報通りに雨が降れば夜のナイターテニスは中止だが、念の為、ラケットとシューズを持って家を出た。午後から雨になれば無駄になるが、構うことはない。うに色のクルマのトランクにテニス道具を積むと薄明るい曇り空の下に走り出した。

 午後になっても雨は降り出さない。それどころか、雲が綺麗に無くなって快晴の青空が広がった。予報は大きく外れたらしい。定時に事務所を出てうに色のクルマで近くの壁打ちコートに向かった。テニスシューズに履き替え、ナチュラルガットを張ったラケットでボールを打ち始める。暑さで少し緩んでいるが打球音は気持ち良かった。午後の陽射しが差して来て暑い。すぐに汗が出て来た。たまらずTシャツを脱いで、フェンスに掛ける。タオルで汗を拭いながら1時間ほど打点とスイングを確認した。クラブのコートに移動する。今夜のレッスン生は6名だ。1時間半のレッスンでTシャツが絞れるほどの汗が流れ落ちた。シャワーを浴びてから飲む冷たい缶ビールが実に美味い。

 

7月25日(木)雨後曇り

 夜中に雨が降ったらしい。朝起きて居間のカーテンを開けると、まだ僅かに雨の余韻が残っていた。道路は既にほぼ乾いている。シャワーを浴び、ヨーグルトを食べると体も口中もさっぱりした。Tシャツと短パンと言ういつものスタイルに着替え、家を出る。うに色のクルマで走り出した。学校が夏休みに入っているせいで、通りには子供の姿が目に付く。時たま道に飛び出してくるので注意が必要だ。幹線道路に出ると子供の姿は無くなる。アクセルを開けて少し速度を上げた。乾いた排気音が気持ち良い。河を渡った。橋からは流れの中に腰まで浸かって釣りをする人影が見える。涼しげだ。

 昼に建物の外に出ると雨が降っていて少し驚きを感じる。激しい雨ならば建物の中でも微かに音が聞えるが、普通の雨では全く気が付かなかった。ほんの短い時間だけで雨は上がる。明日は休業日だ。土日と合わせて3連休が待っている。台風の動向が気になり、昼の天気予報を注意深く見守った。何とか持ちそうだ。当てにならない予報だが、気休めにはなった。机を片付けると自然に顔がほころんでくる。うに色のクルマは軽快に家路を辿った。

 

7月26日(金)晴れ時々曇り

 目覚ましが鳴った。布団を抜け出して冷たいシャワーを浴びる。Tシャツと短パンにサンダル履きの軽装だが、ラケットバッグにドラムバッグにクーラーボックスと荷物は多かった。クーラーボックスには氷と発泡酒が詰めてある。荷物を抱えて家を出た。すぐ近くのコンビニエンスストアで待っていると一緒に合宿に出掛ける仲間が1台のRVで到着する。荷物を積み込んで出発した。

 有料道路や下道を使って4時間ほどかけて標高千三百米程ある高原に辿りつく。既にほとんどの参加者は集まっていた。着替えてラケットを持ち、練習に加わる。ボールを打ち出すとすぐに汗が流れ出した。気温は例年よりも高い。基本的な練習で午前中は終わった。昼食は目の前の大きな丸太造りのレストランでとる。メニューは辛くないマーボー豆腐にサラダだ。サラダの野菜がとびきり新鮮で味が濃く、美味い。冷たいビールで乾いた喉を潤しながらサラダを頬張った。午後も基本的な練習を続ける。最後はゲームを楽しんで宿に戻った。展望風呂で雄大な景色を眺めると一日の疲れが吹っ飛ぶ気がする。炉辺焼きの夕食の後は、仲間と語りながらビールを飲み、最後はベッドに倒れ込んで泥のように眠った。

 

7月27日(土)晴れ時々曇り

 誰かが朝食の時間を知らせに来るまで眠り続けた。まだ酒が残る頭で食堂に向かう。濃厚な牛乳を飲み、新鮮な野菜をバリバリと噛むと意識がはっきりしてきた。熱いコーヒーで更に活を入れる。

 1.5Lの水筒一杯の氷と水に袋入りの粉末を溶かし、汗で失われる成分を補給する飲料を作ってコートに出た。ストローク、ボレー、スマッシュ、サービスと全てのショットを、時間を掛けて練習する。コート上は風がほとんど無く陽射しが強かった。休憩と水分補給が欠かせない。昼食はカレーだった。充分満足し得る辛さがあり、食欲を刺激する。冷たいビールとも良く合った。たっぷりの野菜サラダと共に平らげる。

 午後からはダブルスのフォーメーションも含めた練習になった。1コート7名程のメンバーが時間でローテーションしながらボレーを集中的に鍛える。夕方になって練習が終わった。展望風呂で汗を流してから、今夜の宿に移動する。丸太小屋風のレストランで特色の無い晩飯を食べた。最後に出されたピザはガーリックが効いていて実に美味い。ビールにも良く合った。宴会場に移り、更にビールを飲み、ゲームに興じる。部屋に戻って布団に横になるとたちまち眠りに落ちた。

 

7月28日(日)晴れ時々曇り

 明け方に何度か目が覚めた。早朝練習に参加した者も居たようだが、朝食の時間まで細切れの眠りをむさぼる。朝食はいかにもペンション風の簡単なもので、飲み物はコーヒーのみだ。いつもの宿の冷たくて美味いミルクが渇望される。

 朝食後、再び元の宿に戻り、コートに出た。今日は紅白2チームに分かれてのダブルスの対抗戦が予定されている。一人が2試合出来る様にオーダーが組まれていた。各コートでは、それぞれのレベルに応じた試合が展開されていて、見ていても面白い。自分の試合が回ってきた。渾身の力を込めてサービスを打ち込み、速いサービスにも思い切り良くラケットを振り回してリターンを狙っていく。今のテニスのレベルと体の動きを考えると、加減したスイングではかえってミスを恐れて萎縮する可能性が高かった。委細構わず思う存分ラケットを振り回していくと当然の様にミスショットも多いが、体はほぐれて来る。ポーチが決まり、ポイントを重ねていった。運とペアに恵まれて2試合とも勝利で終える。

 昼食を食べ、展望風呂で汗を流すと、二日半に渡る合宿も終わりだ。高原に別れを告げる。RVはディーゼルエンジンを唸らせながらゆっくり峠を越えた。

 

7月29日(月)曇り時々晴れ

 アラームの音に目を覚ますと扇風機の風を微かに感じた。牛乳とヨーグルトの朝食をとり、短パンとTシャツを身に着け、家を出る。地下駐車場には、うに色のクルマがうずくまるように待っていた。シートに身を沈め、イグニッションキーをひねるとすぐにエンジンが目覚める。電動の門が開くのを待って通りに出ると夏休みの子供達が道の両側をウロウロしており、走りにくいことこの上なかった。

 カーラジオからは聴き慣れた声が週末のゲームでのひいきチームの敗戦について語っている。リコール問題で名を落とした自動車会社が親会社の、そのサッカーチームは、強い相手を圧倒したかと思うと、下位のチームにころっと負けたりと、強いのか弱いのか良く判らなかった。しかし、熱狂的なファンが多いことでも知られている。不思議なチームだ。

 夜になって外に出ると湿った生温い風が暑苦しい。うに色のクルマの幌を降ろして帰宅を急ぐ車に混じって走り出した。自宅に戻り、地下駐車場にクルマを仕舞う。家に戻るとTVを点け、遺伝子操作で創り出された強化人間を巡る近未来SFドラマを眺めながら、ご飯と味噌汁と焼き魚などの簡単な晩飯を作った。

 

7月30日(火)晴れ時々曇り

 勢力の強い夏の高気圧がこの国の東海上に居座っている。頭上には夏空が広がっていた。うに色のクルマで、ラジオ体操帰りの子供達の群れを掻き分けながら、路地を慎重に走る。幹線道路に出ると途端に歩行者の姿は見えなくなった。アクセルを踏んでギアを掻き上げて行くと景色が顔の横で急に流れ出し、後方に消えて行く。

 仕事を終え、ロッカールームで着替えて外に出ると、夏の夜の生暖かい湿った空気が回りに押し寄せた。駐車場まで歩くだけでうっすらと汗ばんでくる。うに色のクルマの幌を降ろして日中に溜まった熱気の残滓を解き放した。走り出すと風が流れ込んで来て、名残惜しげに漂っていた熱気を巻き込み、連れ去ってくれる。夏の夜のオープンカーは素敵だ。ディーゼルの排気ガスが多い幹線道路を避けて走る。

 家に戻ると、旬の茄子を使ったマーボー茄子の晩飯が出来ていた。冷凍庫で冷やしたグラスに冷たい缶ビールを注いで、一気に呷った。冷たさに喉が痺れる感触を楽しむ。箸を取り、ひき肉の旨みが絡んだ熱くて辛い茄子とご飯と共に頬張った。旬の茄子の香りが口中に広がって、たまらなく美味い。

 

7月31日(水)曇り後晴れ

 夕方から所によりにわか雨になると天気予報のアナウンサーが微笑んでいた。窓から見た天気は悪くない。雨が降ればナイターテニスが出来なくなるが、いつものショルダーバッグの他にラケットバッグとシューズを持って家を出た。うに色のクルマのトランクを開けてテニス道具を積む。既に地下駐車場も蒸し暑かった。真夏の太陽の下に走り出す。

 午後になっても雨の気配はなかった。さらに気温が上がって蒸し暑い。定時に事務所を出てうに色のクルマで近くの壁打ちコートに向かった。サンダルをテニスシューズに履き替え、ナチュラルガットを張ったラケットでボールを打ち始める。暑さのせいで少しテンションが緩んでいて一層弾きが良かった。すぐに汗が噴出してくる。Tシャツを脱いでフェンスに掛けた。頻繁にタオルで汗を拭いながら1時間ほどサービスとスマッシュの打点を確認した。

 クラブのコートに移動する。いつものコーチは休みで別のコーチが来ていた。1時間半のレッスンでTシャツはびしょびしょになる。自宅に戻り、シャワーを浴びてから冷たい缶ビールを飲み干した。実に美味い。食卓にはそうめんやトマトがのっていた。旺盛な食欲で次々に平らげる。

 


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