2002年10月の日記

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10月1日(火)雨後暴風雨

 どんよりと重たい鉛色の空から雨粒が落ちていた。居間のカーテンを開けて濡れた街を見下ろす。牛乳をマグカップ一杯飲み干し、ヨーグルトを食べて家を出た。小走りで灰色の車に乗り込む。水中眼鏡を通して見るような景色の中を走った。

 夕方になり、時折風雨が激しく音を立てて事務所の屋根を叩く。大型で勢力の強い台風が真っ直ぐに近づいていた。早めに仕事を切り上げて事務所を出る。横殴りの雨に濡れながら灰色の車に乗り込んだ。雨の中を走り出す。街に向かう道は帰りを急ぐ車で混んでいた。

 地方都市の中央駅で相棒と待ち合せて、近くの中国料理店に向かう。車を止めて店に入った。外は嵐だが中は静かで悠長な中国弦楽の音が流れる。家族連れが一組楽しげに談笑していた。昨日届いたばかりの餃子パスポートを店員に見せる。テーブルに案内された。このパスポートがあれば、数ある餃子メニューが食べ放題になる。焼、蒸、茹の3種の調理法と様々な具を組み合わせて10皿注文した。ニラタマ、海老、白身魚、豚肉など、多彩な具が厚めの弾力のある皮に包まれていて、実に美味い。特に蒸し餃子の米粉の皮は具の色に透き通って美しく、もちもちの食感がたまらなかった。

 

10月2日(水)晴れ

 南西に向いている窓のカーテンを開くと澄んだ青空が広がり、左の方から差し込む朝日が下界を赤く染めていた。台風に巻き取られてしまったように雲一つ見えない。ラケットバッグとシューズを持って外に出た。うに色のクルマのトランクに荷物を放り込み、透明な風の中を走り出す。信号待ちでサングラスを出して朝日を遮った。

 定時に事務所を後にする。幌を降ろしたうに色のクルマで、壁打ちコートに向かう。既に秋の夕日が傾いて山の端を赤く染めていた。壁を相手にスマッシュとバックハンドとサーブをメインに練習する。久し振りに汗が流れる暑さだった。Tシャツを脱ぐとフェンスに掛けて更に打ち続ける。40分ほど打ち続けると、かなり汗が出た。

 幌を降ろしたままのうに色のクルマに乗ってテニスクラブに向かう。コートに入るとレッスン生は3名だった。コーチを入れて4名でボレー対ボレーをしていると一人加わり、4名になる。1対1のボレー対ボレー、サービス、球出しのスマッシュ、ボレー対ストローク、サーブからのポイントマッチと練習を進めた。スクールが終わった後、一人で20分程サービスの練習でさらに汗を流す。全ては美味いビールを飲むためだった。

 

10月3日(木)晴れ後曇り

 目覚めた時に少し汗ばんでいる程暖かかった。遥か南の海から台風が連れて来た常夏の風がまだ辺りに漂っているらしい。天気予報は真夏日になるところもあると告げていた。短パンとTシャツで家を出る。うに色のクルマの助手席に黒いショルダーバッグを投げ入れ、運転席に体を落とし込んだ。イグニッションキーをひねると、1800ccの直列4気筒DOHCエンジンがちょっとした轟音を発して目覚める。重く低い排気音が地下駐車場に反響した。小排気量のエンジンにしては大袈裟過ぎる。すぐにクラッチをつないで走り始めた。

 机の上に広げていた資料やノートPCを引き出しに片付けると外に出る。半袖のTシャツ一枚でも涼しくて気持ち良いぐらいだ。うに色のクルマの幌を降ろす。昼間の間に溜まっていた熱気が爽やかな外気と入れ替わっていった。室温計が20数℃を指している。走り出すと肌寒くなったのでヒーターを入れた。室温は26℃程度まで上がる。

 自宅に戻ると、焼いた鯵の干物、南瓜のそぼろ煮、豆腐とワカメの味噌汁、麦飯が食卓に並べられた。昨日開けた赤ワインの残りを飲みながら次々に平らげて行く。一晩置いて味の馴染んだ南瓜が口中で甘く蕩けた。

 

10月4日(金)晴れ時々曇り

 目覚めて居間まで歩き、テーブルの上からリモコンを探し出した。TVの電源を入れてチャンネルを合わせると見慣れたアナウンサーが映し出される。久し振りに週末の天気も晴れの予報だった。もちろん今日も天気の崩れは無い。冷たい牛乳をグラスに注いで飲み干し、ヨーグルトを一皿取って食べた。ラケットバッグとシューズを持ち、短パンにサンダル履きで家を出る。うに色のクルマに乗って仕事場に向かった。車外で響く排気音の音量にもだいぶ慣れたがやはりうるさい。

 定時に仕事場を出て、うに色のクルマの幌を降ろして乗り込み、走り始めた。テニスクラブに着くとすぐに靴を履き替えてコートに入る。意外に湿度が高く良く汗が出た。練習生は6名とちょうど良い。充実した練習になった。1時間半は瞬く間に過ぎて行く。

 この地方都市の中心駅までは30分程の道のりだった。駅前で相棒を拾うと駅近くの餃子専門店に入る。中途半端な時間で客は少なかった。一人4種類の餃子を頼む。この店は皮がやや厚手でもちもちした食感が特徴だった。水餃子や蒸し餃子の方が皮の持ち味が出て美味い。牛肉とピーマンも意外な美味さだ。むろん餃子パスポートで幾ら食べても無料になる。

 

10月5日(土)晴れ時々曇り

 休日モードにセットされたアラーム音が頭の中に響いてきた。暗い眠りの世界から引き摺り出される。冷たい牛乳をグラス一杯飲み干すと意識がハッキリした。顔を洗うとラケットバッグとシューズを持って外に出る。地下駐車場に収まるうに色のクルマで走り出した。

 仲間内でのテニスは調子が出ず思うようなプレーが出来ない。練習からミスが多く、ストレスが溜まった。ゲームでもミスが多い。昼は自宅に戻り、ニンニクとベーコンとレタスをケチャップ味でまとめたパスタを作って食べた。午後からテニスクラブに向かう。ダブルスのゲームを4勝1敗で切り抜けて楽しむと、秋の日は落ちてコートが闇に沈んだ。

 駅前で相棒を拾い、最近改装してオープンしたばかりの中華料理屋に行く。以前は暗く落ち着いた雰囲気の店だったが、明るいオープンな雰囲気に変わった。水餃子、フカヒレ入りや海老入りの蒸し餃子、焼き餃子を頼む。厚手の皮に包まれた焼き餃子は、さくりと美味かった。胡麻味噌ダレの水餃子もつるりとした舌触りが堪らない。全般にニンニク抜きであっさり味だった。さらにスーパー銭湯に行く。サウナに入って汗を搾り出し、露天で頭を冷やした。愉快な週末になる。

 

10月6日(日)曇り

 白っぽい雲が空を一面に覆っていた。地表付近には霧も出ている。天気予報では夜に天気が崩れると予測していた。平日よりも早く起きると家を出る。うに色のクルマの幌を降ろして走り出した。目的地はNAVIにインプットしてある。自宅から目的地をほぼ直線で結ぶようなルートを選んだ。道程は約180kmほどある。まだ車の少ない地方国道を快調に走って行った。

 3時間半ほど経過したところで海に出る。少し寄り道をして砂浜にクルマを入れた。雲った空と鉛色の海の間ではサーファーが多く海に出て、白い波頭に挑んでいる。しばらく眼を休めてから目的地に向かった。

 去年の秋には梨園だった畑は、梨の木が伐採され、今では春に植え付けられたサツマイモがツルを茂らせている。すっかり眺めが変わった畑の一角にテーブルや椅子が用意され、火起こしを始めていた。火起こしを手伝い、サツマイモのツルを払って畑を露わにすると、仕事はなくなる。意外に良い運動になった。気が付くと汗が滴り落ちてくる。芋を掘り、焼き芋や焼き栗を作りながらBBQを食べていると満腹になり眠くなった。クルマの椅子に座り一眠りする。気が付くと夕方だった。帰り道は長く感じる。

 

10月7日(月)雨後曇り

 慢性的な寝不足が続いている。目覚めた瞬間の意識はまだ混沌としたままだった。眠りの暗い底から覚醒の水面への道程半ばで再び底に引き込まれて沈んでいく。3度目のアラーム音でやっと水面に浮かび上がった。目覚ましをセットした時間からきっかり10分が経過している。布団の上に起き上がると居間のTVを点けた。暗いグレーの画面から光が滲み出て来て、やがてアナウンサーの姿に像を結ぶ。画面は変わり海外のサッカーリーグで活躍するこの国の選手の様子が次々に映し出された。その男の左足から放たれたフリーキックが、生き物の様に弧を描きキーパーの手を弾いてゴールネットに突き刺さる様子が何度も繰り返される。

 うに色のクルマの幌を降ろして駐車場を出た。クルマが動き出すとボディに残っていた水玉が一斉に転がって視界を横切って行く。朝降っていた雨はだいぶ前に上がっていた。猛獣の唸り声のような低い排気音が乾いた路面を叩き、星の見えない暗い空に消えて行く。帰り道で本屋に寄り、新刊の車雑誌とテニス雑誌を買った。自宅に戻ると昨日の残り物を暖め簡単な夕食にする。雑誌の内容はイギリスの古い車の記事が多かった。しばらく夢中で読みふける。

 

10月8日(火)曇り後雨

 いつもより一時間ばかり早く目覚める。どんよりと重たい鉛色の雲が空を覆い、白い霧が視界を閉ざしていた。雨は落ちていない。地下の駐車場からうに色のクルマをゆっくりと地上に連れ出した。無彩色に沈む街の中に鮮やかなカラーが急遽出現する。大きめの排気音を早朝の静かな街に響かせながら幹線道路に出た。まだ車が少ない幹線道路を東に向かって走る。東北と関東を結ぶ国道のバイパスに突き当たると、いつもは直進するところだが、左に折れて北に向かった。トラックや商用車の往来が激しい国道も今の時間なら空いている。しばらく走って左の側道に入り、右折して再び東に向かった。大きな橋を渡り、小高い丘を登ると広い工業団地に入る。駐車場もがらんと空いていた。

 日中から降ったり止んだりしていた雨は夕方になっても止む気配を見せない。ナイターテニスの計画は中止することに決まった。12時間以上拘束されていた仕事場から離れても気分は盛り上がらない。そぼ降る雨の中、うに色のクルマのステアリングを握り自宅に戻った。食卓には麦飯、エノキとワカメの味噌汁、メインのマーボー茄子などが並べられている。泡盛のロックを飲みながら全て平らげた。

 

10月9日(水)雨後曇り後雨

 いつもより一時間早く目覚ましをセットしている。目を開けると外はまだ暗かった。やがて、この暗さが日常に変わる。それは寒い季節の始まりだった。ラケットバッグとシューズを持って外に出ると雨が僅かに降っている。うに色のクルマのトランクに荷物を放り込みスロープを上がると、フロントグラスを雨が叩いた。ようやく明るくなり始めた景色の中を走り出す。

 一時間早く定時を迎えた。うに色のクルマで、壁打ちコートに向かう。重そうな雨雲の所々から微かな青空がのぞいていた。壁を相手にスマッシュとスライスとサーブをメインに練習する。1時間ほど打ち続けても、さほど汗が出なかった。

 テニスクラブに向かう途中で雨がポツリポツリと落ち始める。すぐに上がると思われた雨が次第にコートを濡らしていった。結局レッスン前に15分ほど乱打をしただけで中止となる。

 やり切れない思いを抱えたまま街に向かった。店に入ると客がいない。注文してしばらくして出された水餃子のスープには薬味のねぎと胡麻が散らされ、薄く味がついていた。ふっくらと輝く茹で餃子をレンゲですくってかぶりつくと豚肉の風味が口中に溢れる。焼き餃子は薄皮でパリッと美味かった。

 

10月10日(木)曇り後晴れ

 「晴れの特異日」の称号は伊達ではなかった。いつもより早めに外に出ると、昨日まで居座った雨雲が魔法の様に消えていく有様を目にする。尊大に勢力を誇っていた雨雲が、太陽の光の照射を受けて見る見るうちにあっけなく霧散していった。その後には朝日を受けてやや赤みを帯びた青空が広がって行く。うに色のクルマの中から、太陽と青空の軍勢が圧倒的な勝利を納める光景を見物しながら、田舎道を走った。風は冷たい。

 残業を早めに切り上げた。うに色のクルマの幌を降ろして走り始めると冷たい風がキャビンを吹き抜けていく。気温は20度を切っていた。ヒーターを入れて快適な温度に合わせる。45分程のドライブで照明が眩しいテニスクラブに着いた。相棒と1時間半ほど乱打をして楽しむ。ボレーやストロークで走りまわると半袖と短パンでちょうど良い涼しさだった。

 コートを出ると街中の餃子屋に向かう。スープ餃子と揚餃子、焼き餃子2種を注文する。揚餃子は皮がサクサクとした食感で意外なほど油気がなく、スナック感覚で食べられた。ねぎ間餃子は、ネギの甘味が愉快にさせる。野菜入りスープ餃子はもっちりした食感が楽しめた。サインをするだけで店を出る。

 

10月11日(金)曇り

 目覚めて布団から起き出すと、先ずリモコンでTVの電源を入れ、天気予報を確かめた。週末の天気が今日の天気と同じぐらい気に掛かる。どちらも大きな崩れはない事が判った。満足してTVから目を離し、ラケットバッグとシューズを持ち、家を出る。うに色のクルマに乗って仕事場に向かった。車外で響く排気音の音量は慣れのせいか最初ほどうるさく感じなくなる。低速でのこもり音が減れば、これはこれで悪くなかった。

 うに色のクルマの幌を降ろすと暗い夜空が広がる。ヘッドライトを点けて走り出した。テニスクラブに着くとすぐに靴を履き替えてコートに入る。4名のスクール生でコート一面を走り回っても、涼しい為にそれほど汗は出なかった。ダブルスの練習に時間を多く割く。ボレーが良くならなかった。

 帰り道でスーパーに寄り、簡単に買い物をする。晩飯は鶏の手羽元、白菜、もやし、豆腐、大根などを土鍋で煮てポン酢で食べることにした。土鍋に昆布を敷き、水を入れて火を点ける。材料を適当に切って鍋に放り込み、しばらく煮込めば出来上がりだ。さっぱりとして飽きが来ない味になる。最後に鶏のスープで餅を煮て食べた。スープが良くしみて実に美味い。

 

10月12日(土)晴れ

 アラーム音で意識を取り戻す。窓の外はまだ暗い。相棒を叩き起こすと昨夜の内にまとめておいた二泊分の荷物を持って家を出た。灰色の車のリアシートに荷物を放り込むとすでに明るくなった空の下を走り出す。世界一の高額を誇る有料道路に入り、南に向かった。途中で一般道を経由して別の有料道路に入り、目的地の手前で降りる。ガソリン代とほぼ同額の道路代を徴収された。

 宿の駐車場で一時間ほど仮眠する。目を覚ますと荷物を持って宿に入った。着替えてコートに出る。早く到着した他の参加者に混じって練習を始めた。一時間ほどボールを打ち合うとクレーコートに慣れてくる。宿に戻り昼食を取り、再びコートに戻った。コーチによるレッスンが2時間ほど続き、その後、5ペアの男子ダブルスリーグ戦になる。初めて会った男と組み、4試合で3勝1敗の結果を出した。準優勝になる。ゲーム終了後、さらに日が暮れるまで練習を続けた。

 宿で風呂に入り、一日の汗と埃を洗い流すとさっぱりする。風呂上りに冷えたビールがたまらなく美味かった。晩飯を食べながらさらにビールを飲む。満腹と適度な疲れと軽い酔いに任せて、早い時間に布団に入った。すぐに眠りに落ちる。

 

10月13日(日)晴れ

 早朝目を覚ますと外は既に明るくなっている。着替えてコートに出て行くと早朝到着組がアップを始めていた。朝飯前の一時間半余りで、軽く一汗流す。冷たいビールがすんなりと喉を通り抜けていった。朝食を取り、コーヒーを飲むと寛いだ気分になる。

 ミックスダブルスの2ペアで1チームを作ってのチーム対抗戦が催された。1勝1敗の場合は勝ったペア同士が決定戦を行う。9チームが3リーグに分れてリーグ戦を行い、各順位の3チームが集まって、再びリーグ戦を行った。最初のリーグ戦を1勝1敗の2位で抜けて2位リーグに進む。天気が良く、風もなく暖かい日だった。昼になり宿に戻って昼食を取る。2位リーグのリーグ戦が始まった。3−2リードから一気に4ゲーム連取され、最初のゲームを落とす。チームメイトも敗れた。次の対戦は良いところなく敗れ、2位リーグの3位、全体では6位と言う結果に終わる。残った時間は暗くなるまで練習やゲームで楽しんだ。

 宿の風呂で埃を洗い流す。冷えたビールをグラスに注いで一気に飲み干すと至福が感じられた。晩飯と共にビール、ワイン、日本酒などを飲む。疲れと酔いですぐに睡魔が訪れた。布団に入り、眠りを貪る。

 

10月14日(月)晴れ

 寝覚めは悪くなかった。早朝のコートに出ていくと霜の降りていた昨日より暖かい。アップ代りにシングルスを1試合戦い、その後、男ダブ、ミックスを1試合づつ戦った。朝食前の一仕事としては充実している。ビールがするりと胃に収まった。

 朝食後は4チームの男ダブリーグ戦が始まる。3試合ともちょっとしたきっかけで流れが変わる厳しい試合になった。何とか流れを放さず、6−2、6−4、6−3で勝利を収め、Bリーグの優勝を果たす。再試合を挑んできた相手も返り討ちにした。昼食を食べに宿に戻る。ビールが実に美味かった。

 午後はAリーグの最下位との対戦が待っている。既に体は疲れていた。早朝のシングルスが効いたのか足の筋肉がひくつく。1−3、2−3、4−5とほとんどのゲームがデュースにもつれる展開になった。相方のサービスゲームになる。ネットインやイレギュラーの不運なポイントで追い込まれた。30−40のマッチポイントを奪われ、敗れる。さらに練習を重ねた。

 宿で風呂を浴び、皆に別れを告げ、荷物を積み込む。華やかなアウトレットモールで買い物をし、山間の避暑地を離れた。自宅に戻ると布団に吸い込まれるように眠る。

 

10月15日(火)晴れ後曇り後雨

 布団から起きあがろうとすると体のあちこちが悲鳴を上げたが無視する。しばらく動いていると次第に節々の痛みが気にならなくなった。地下駐車場からうに色のクルマを三日振りに地上に連れ出す。野太い排気音を早朝の静かな街に響かせながら幹線道路を東に向かった。田んぼの中を抜け、河に近付いていくと霧が漂っている。上り始めた太陽がその姿を現すと、霧はまるでレースのカーテンを引くように、なぎ払われて消えていった。霞んでいた景色が急にくっきりと姿を現す様子は、何かの手品のように見える。連休明けで早い時間から車が多くなっている通勤路を走った。

 13時間拘束されていた仕事場を後にして駐車場に向かう。疲れからか気分は盛り上がらなかった。うに色のクルマのステアリングを握り、街に向かう。一軒目の店はスープ切れで閉店、2軒目の店も閉店とついていなかった。三軒目の店でようやく席にありつける。茹で餃子と蒸し餃子を2種類ずつ注文した。熱々の餃子のぷっくりと柔らかい皮に歯を立てると熱くて美味いスープが溢れ出る。蒸した海老餃子が、特に美味かった。満足して自宅に戻る。帰り道で遠くの空が光るのが見えた。やがてにわか雨が降り出す。

 

10月16日(水)晴れ

 いつもと同じ日常が戻ってきた。目を覚まして顔を洗い、簡単な朝食を取る。長袖のウォームアップスーツの上下を着て、ラケットバッグとシューズを持って外に出た。風を通し難いので薄手だが寒さは感じない。うに色のクルマのトランクに荷物を放り込み走り始めた。

 定時を一時間弱まわったところで仕事場を後にする。既に空は暗かった。うに色のクルマで壁打ちコートの前を素通りしてテニスクラブに向かう。ナイター照明がコートをまばゆく照らしだした。レッスン前に先ず準備体操をする。さらに15分ほど乱打をして体を温めた。時間になり、ボレー&ボレー、球出しのスマッシュ、サービス、ボレー&ストローク、サービス&リターン、アプローチからのゲーム形式と、いつもの様に練習が進む。ボールの行方を見ていて次の準備が遅れている事に気付いた。打った後、すぐ構えることに神経を集中する。

 街に向かい餃子店に入った。スープに野菜などの具が入った水餃子、揚げ餃子、変わり餃子を注文する。揚げ餃子はからりとして塩味で食べるのが良く合っていた。スープは野菜の旨味をたっぷり含んでいる。期待せずに頼んだ納豆餃子が意外なほど美味かった。満足して自宅に戻る。

 

10月17日(木)晴れ時々曇り

 毎朝同じ様な時間に家を出ているが、道路の混み具合は日によってだいぶ違った。妙に流れが悪い時もあれば、不思議なほど車が少ない時もある。この日は車が多い方だった。通勤路は県庁のある地方都市を取り巻く環状線という幹線道路にもかかわらず信号の制御が悪く、加速の遅い車が多いと、一回の信号で掃ける車よりも溜まる車が多くなり流れが滞る。少し走っては停まり、走っては停まりを繰り返し、無駄に消費されるエネルギーを増やしていた。

 事務所で13時間以上も過すと、飽き飽きする。机を片付けて重い扉を開けて外に出た。宵の口の風が冷たく感じられる。ロッカールームで着替えて駐車場に向かった。うに色のクルマに乗り込み室内温度計を見ると18度を下回っている。幌をゆっくりと降ろすと、イグニッションキーをひねってエンジンを目覚めさせた。低く太い排気音が辺りの空気を震わせる。丁寧にクラッチを合わせるとクルマは僅かにエンジン音を変えてから滑るように走り始めた。しばらく走って水温計が動き出したのを確かめてからヒーターのスイッチを入れる。温風が足元と手元に吹きつけた。巻き込む風に合わせて温度を調節してやると、意外なほど心地良い。

 

10月18日(金)雨後曇り

 目覚めて居間のカーテンを開ける前にTVの電源を入れ、天気予報を確かめる。アナウンサーの後ろの景色は雨模様だった。思わず急いでカーテンを開けると北関東でも雨の朝になっている。案ずる事はなかった。予報では午後には晴れることになっている。ラケットバッグとシューズを持ち、家を出た。うに色のクルマに乗って仕事場に向かう。

 うに色のクルマの幌を降ろすと雨が降り出しそうなので止めておいた。ヘッドライトを点けて走り出す。テニスクラブに着くと靴を履き替えてコートに入った。少し湿度が高い。4名のスクール生でコート一面を走り回ると、かなりの汗が流れた。失われた水分を補給しながら前後左右に動き続ける。ダブルスの練習にほとんどの時間を割いた。ストロークで陣形を崩してボレーに決めさせるパターンを練習する。

 うに色のクルマで街に出た。美味い中国料理屋だが今夜も他の客は一組だけしかいない。蒸した海老餃子とイカ餃子、茹でた豚肉餃子とニラタマ海老餃子の4点を注文した。湯気を上げて運ばれて来た熱々の餃子にニンニクの効いたタレを付けて食べる。皮の中から熱い汁が溢れて来て海老の香りが口一杯に広がった。たまらなく美味い。

 

10月19日(土)曇り後雨

 カーテンを開くと灰色の景色が広がった。ラケットバッグを持ち、家を出る。うに色のクルマを目覚めさせると、走り出した。コートに仲間が集まり始めている。ショートストローク、ボレー、ストロークでアップしてから、ボレー対ストローク、サービス対リターンの練習を繰り返した。最後はゲームで仕上げる。気持ちの良い汗が流れた。濡れたTシャツを着替える。

 昼食は栄養補助食料で済ませ、仕事場に移動した。少し仕事を進める。夕暮れが近付くと天気が気になった。重い鉄の扉を開けると雨が降り始めている。ナイターテニスは中止になった。うに色のクルマのヘッドライトを点けて、暗い田舎道を走る。

 自宅に戻ると灰色の車に乗り換えた。世界遺産を擁する景勝地に向かう道をしばらく走ると、右側に目的の餃子屋がある。殿様餃子と名付けられたそれは熱した鉄板の上で音を立てながら運ばれて来た。皮は一度下揚げしてあるので香ばしくサクサクしている。具にはキムチや高菜が練り込まれていてタレ無しで良い味を出していた。もちろん酢を付けても美味い。満足して店を出るとスーパー銭湯に寄った。サウナと露天風呂を交互に移動し、汗を流すと疲れが癒されていく。

 

10月20日(日)曇り後雨

 朝目を覚ますと雨の気配はなかった。カーテンを開けて確かめると確かに道路は乾いている。トーストとコーヒー、炒り卵にソーセージ、ヨーグルトなどの朝食をゆっくり取ると、ラケットバッグを持って家を出た。昼前からの2時間ほどを練習とゲームで楽しむ。昼食を買いがてら床屋で伸び始めていた髪を整えてもらった。再びテニスクラブに戻り、暗くなるまでゲームを楽しむ。雨が心配される天気予報だったが、結局一日中プレーする事が出来た。半袖でもプレー中は寒さを感じないテニス日和とさえ言える一日になる。濡れたポロシャツを乾いたTシャツに着替えるとさっぱりした。

 市内に向かいテニスウエアのショップに入る。いくつか試着した後、ベストを一着購入する事にした。オーナー夫妻と練習会や試合の打合せをすると、店を出る。まだ混み合う市内を駅西から駅東に抜け、目的の餃子屋に入った。他の客は居ない。焼き餃子、海老餃子、キムチ餃子、スープ餃子を一つづつ取った。薄手の皮で包まれた具は肉たっぷりで旨味が多い。ぷりぷりの海老も美味い。キムチも適度な辛味で刺激的だった。溶き卵がふわっと浮いたスープ餃子も良い味がついていて実に愉快に美味い。

 

10月21日(月)晴れ

 アラームの音が遠く聞えた。ボタンを押して音を止めるが、体の芯はまだ目覚めない。再び眠りに落ちた。5分後にアラームが鳴った時にはもう少し深くまで音が届く。完全に目覚めるには、後5分必要だった。寝覚めの気分は悪くない。布団を出ると室内が肌寒かった。後に今朝がこの秋一番の冷え込みと知る。うに色のクルマのエンジンに火を入れると走り出した。地下駐車場を出るとフロントガラスと布の屋根を雨粒が叩くリズミカルな音が響く。雨の朝は暗かった。ヘッドライトを点ける。

 仕事を早めに切り上げてロッカールームに向かった。雨は止んでいる。路面もほとんど乾いていた。低回転ではボーボーと小うるさい排気音が、回転を上げると濁りが消えて澄んでくる。田んぼの中の直線道路で音の変化を繰り返し楽しんだ。市街地に入ると低音の反響が気になる。地下駐車場の定位置に停めてエンジンを切ると静かになった。

 自宅に戻ると烏賊墨のパスタとアボカドとマグロのサラダの準備が進んでいる。烏賊を二杯さばいて、下足と耳と内蔵を塩辛に仕込んだ。胴体は烏賊墨のパスタに入れる。醤油とマヨネーズとワサビで和えたサラダが熱いパスタに良く合って意外に美味い。

 

10月22日(火)曇り

 朝から鬱陶しい曇り空が広がっていた。気勢が上がらない事おびただしい。居間にあるTVの電源を入れ、ニュース番組を眺めた。マグカップ一杯の牛乳を電子レンジで温め、それをすすりながら、ヨーグルトを食べる。顔を洗ってジーンズとジャケットを着込むとショルダーバッグを持って家を出た。

 遅いエレベーターで1階まで降り、さらに階段で地下駐車場に降りて行く。階段からほど近い一角に停めてある、うに色のクルマに近付いた。キーホルダーに付けたリモコンのボタンを押すとハザードランプが2点滅すると共にドアロックが解除される。ドアのボタンを押すとアルミのハンドルが出てきた。指をハンドルに掛けて手前に引くとドアが開く。 助手席にショルダーバッグを投げ入れると、運転席に体を滑り込ませた。

イグニッションキーをキーホールに差し込んでONの位置まで回すと電源が入り、計器盤に灯りが点る。背後から電磁ポンプの作動する唸り音が聞えた。一瞬後にキーに内蔵された電子チップの暗号を受けて始動可能になる。キーを始動の位置まで回すと僅かなクランキングの後、弾けるように1.8LDOHCのエンジンが目覚めた。静かな駐車場に低い排気音が響く。

 

10月23日(水)曇り

 この雲の上には澄んだ秋空が広がっている筈だが、地上からは見えなかった。窓から見渡す景色は灰色のモノトーンに沈んでいる。薄いグレーのウォームアップスーツを出した。上下とも着込む。ナイターテニスは、涼しいと言うより肌寒くなるだろう。ラケットバッグとシューズを持って外に出た。うに色のクルマのトランクに荷物を納め、走り始める。

 定時で仕事場を後にした。壁打ちコートの前にクルマを停め、暗くなるまでの30分程を使ってスマッシュとサーブの打点を確認する。テニスクラブに着くとナイター照明がコートを闇から切り出していた。準備体操と乱打で体を温めてから、ボレー&ボレー、ボレー&ストローク、スマッシュ、サービス、サービス&リターン、アプローチからのダブルスゲーム形式と、練習が進む。打ったら即構えることとコンパクトなスイングに神経を集中した。最後はゲームで楽しむ。

 街に出て中国料理店に入った。焼き餃子、茹で餃子、蒸し餃子をバランス良く注文する。焼きはさくさくした歯触り、蒸しはもちもちした弾力性、茹では滑らかな舌触りと、同じ皮で三つの食感を楽しめた。サインをするだけで好きなだけ食べられるのは愉快極まりない。

 

10月24日(木)曇り時々晴れ

 ロッカールームを出ると暗い通路を門に向かって歩く。二輪駐車場の横を通りかかると次々にエンジンを始動して走り出す音が聞えた。ここでは8千人からいる従業員のほとんどが自分の車かオートバイで通勤している。通勤時間帯には要所要所で酷い渋滞が繰り返されていた。夜は朝よりも比較的集中度が低い為、混雑は和らぐ。それでも夜の地方都市の郊外にしては妙に車の往来が多くなっていた。門を出て目の前にある25m道路に掛かった歩道橋を渡り、車の流れの対岸に降りる。街灯の少ない暗い歩道を駐車場に向かって歩いた。ガソリンスタンドの横の路地を入って行くと、ぽつんと立った街灯が蛍光灯の蒼白っぽい灯りを落としているだけの薄暗い駐車場が広がっている。手の中のリモコンボタンを押すと、うに色のクルマがオレンジ色の光を2回点滅させて答えた。

 街中に出て行き、餃子専門店に入る。酔っ払いが大声で終りの無い議論を続けていた。スープ餃子、揚げチーズ餃子、おむすび餃子、数種類の焼き餃子を頼む。塩味を付けて焼いた熱々の餃子を熱々のご飯に包んで海苔巻き風に巻いたおむすび餃子が意外なほど美味かった。揚げチーズ餃子もサクッとろっの食感が嬉しい。

 

10月25日(金)晴れ後曇り

 うに色のクルマに備わる瀟洒な細いアルミのドアハンドルに指を掛けて軽く引いた。剛性の高そうな金属音と共にラッチが外れ、ドアが開く。低い位置にあるシートに腰を落とし込んでメータパネルを見た。ステアリングのスポークの向こう、辛うじて見えるところに増設した室内温度計が、17.8℃を示しているのを確かめてから、フロントウインドウ上端に備えられた2個のロックハンドルを引いて、幌のロックを外す。中から幌の前端を持ち上げると僅かに昼間の太陽の温かみが残っていた室内に夜気が忍び込んで来た。もう1度外に出てトノカバーを開けるレバーを引いてボディと同色に塗られたプラスチックのカバーを開ける。幌を畳み込んで収納して再びカバーを閉じると幌は跡形も無くボディ内に消えた。ヘッドライトを点けて走り出す。

 テニスクラブでレッスンを受けた。苦手なボレーを克服することに集中する。サービスはスピードを上げる狙いでグリップを少しフォアよりに変えて厚く当ててみた。スイング軌道の変更に合わせてトス位置を調整する。タイミングが変化して安定しなかった。全てがバランスすると気持ち良い快音と共にボールが弾けてコートに突き刺さっていく。

 

10月26日(土)曇り後雨

 秋晴れの気持ち良い天気が続かない。カーテン開くと既に見慣れた灰色の景色が広がっていた。ラケットとシューズを持ち、家を出る。うに色のクルマをクローズドのまま、走り出した。近くの公営コートに着くと仲間が集まり始めている。ボレー、ストロークでアップしてから、すぐゲームに入った。3面に12名が全員入る。途中で雨が降り出したが、昼までゲームは続けられた。

 自宅に戻り、ゆっくりと昼食を取る。テニスを諦めて出掛けようとすると、その頃になって雨が上がった。方針を変更して近くのテニスクラブに向かう。練習やゲームを楽しんでいると秋の日はたちまち暮れて夕闇が訪れた。やがてナイター照明に灯が点り、再びコートに光が戻ってくる。最後に1時間半のレッスンを受けて一日を締めくくった。濡れたシャツを着替えて、明かりの消えたテニスクラブを後にする。

 街中の餃子店に向かい、水餃子、揚げ餃子、焼き餃子をバランス良く注文した。薄めの皮に包まれた肉主体で汁気たっぷりの具、野菜主体の具が日本の餃子らしい味を出している。キムチ餃子は、キムチと言うよりも明太子に似た味がした。軽い塩味のスープにも良く合う。4人前を平らげると満足する。

 

10月27日(日)曇り後晴れ

 朝、外を見ると曇っている。軽く朝食を取って近くのテニスクラブに行くとまだ会員は少なく、ジュニアのスクールが大盛況になっていた。昼までの2時間弱を練習とゲームで楽しむ。

 途中でスーパーに寄って、昼飯の弁当を買い込んでから別のテニスコートに移動した。初めて使うコートで、やや判り難いところにある。コートの後ろにシートを広げて座り込むと、お弁当の太巻きやフライドチキンを食べた。隣のコートでは知り合いのサークルが練習を始めている。昼食を食べ終わり、メンバーが集まって、アップを始めるとすっかり晴れて、むしろ暑いぐらいになった。午前中の練習でストリングスが切れてしまい、自分のラケットが使えない為、相棒のラケットを借りる。ラケットが軽いのと、ガットが緩いのとで飛び過ぎてしまい、まともに打てなかった。4ゲーム先取で試合を楽しむ。試合巧者の女ダブ相手に1ゲームも取れずに完敗した。柔らかい球で当たり前のことを当たり前にこなし、一球多くつなぐことの大切さを教えられる。

 日没後、メンバーでお茶会を開いた。ファミレスで夜まで話し込んだ後、解散する。帰り道でストリングスを張り直して貰う為にラケットを店に預けた。

 

10月28日(月)晴れ

 ルーズなシルエットのオリーブ色の綿パンの上に、生成りの麻のパーカーを羽織って家を出た。早朝のまだ冷たい外気に包まれる。太陽は出ているが、大気が暖められるのは、これからだった。遅いエレベーターに乗って1階に降りる。うに色のクルマを停めた駐車場へは更に階段を降りなければならなかった。今朝もエンジンは特にむずがることなくすぐに目覚める。クラッチを踏み直してからショートストロークに改造されたシフトレバーを1速に送り込み、軽くアクセルをブリッピングさせながらクラッチを繋ぐと、うに色のクルマは軽快にと走り出した。地下駐車場を出るとフロントガラスを通して朝日が差し込んでくる。幹線道路に出てアクセルと開けるとマフラーから大きめの乾いた排気音が吐き出され、辺りの空気を震わせた。

 駐車場に戻ってきてエンジンを切る。一瞬の残響音が消えると、急に静けさが辺りを支配し、機械室から聞える低いハム音だけになった。ドアを閉める音がコンクリートに反響する。リモコンでドアロックするとハザードが一度だけ点滅して答えた。家に戻ると野菜とハムのミルクリゾットで冷えた体を温める。食後の熱いミルクティーが美味い季節になった。

 

10月29日(火)晴れ

 朝起きて居間のTVの電源を入れた。天気予報が流れる。アナウンサーの背景にはすっきりと晴れ上がった青い空が見えた。南西に面した窓のカーテンを開けると、遠く離れている筈だが意外な程大きく富士山の姿が見える。白い雪を被った美しいシルエットが青空を背景にくっきりと浮かび上がっていた。暖めたミルクを啜りながら、しばらく目が離せないでいる。寒い朝だった。マスタード色の中綿入りジャンパーをTシャツの上に着込む。ショルダーバッグを持って家を出た。うに色のクルマを青空の下に連れ出す。通勤路を走って行くと、以前より車の交通量が増え、更に流れが悪くなったように感じられた。

 暗い田舎道を放電管式の白く明るい光で照らしながら走る。帰り道は時間帯が分散されるせいで混雑は少なかった。途中でスーパーに寄り、野菜や日本酒を買い込む。自宅に戻るとキムチ鍋が用意されていた。買ってきた野菜やキノコ類を追加する。食卓にカセットコンロを据え土鍋を沸かしながらキャベツ、ニラ、もやし、豚肉、豆腐などの具を、日本酒を飲みながら片端から平らげていった。最後にご飯を入れておじやにする。ピリ辛の出汁をたっぷりと含んで、実に美味かった。

 

10月30日(水)晴れ

 今日も窓の外に、この国の最高峰が見えていた。昨日ほどくっきりとは見えず、僅かに霞みがかっている。TVの天気予報は一日晴れると告げていた。夜のテニスは、少し寒くなるに違いない。チャコールグレーのウォームアップスーツを出した。上下とも着込む。バッグとシューズを持って外に出た。うに色のクルマに乗り込み、走り始める。混雑が酷く到着時間が少し遅れた。

 定時に仕事場を出る。既に暗くなり始めていた。街に出て、ストリングスを張りに出していたスポーツショップに寄り、ラケットを受け取る。テニスクラブに着くとナイター照明でコートが闇の中に浮かんで見えた。張ったばかりのストリングスは素晴らしい打球音を響かせて、気持ちが良い。乱打で体を温めてから、ボレー&ボレー、ボレー&ストローク、スマッシュ、サービス、サービス&リターン、アプローチからのダブルスゲーム形式と、練習が進む。打ってすぐに構えることを体に染み込ませた。ボレーの確率が上がる。

 家に戻り、大根とニラと豚肉の中華風煮付けとモヤシの味噌汁を腹に入れた。先週作っておいたイカの塩辛の味が馴染んで来ている。肝の旨味と塩味が残る口中を辛口の純米酒で洗い流した。

 

10月31日(木)晴れ

 カーテンを開けて青空が視界一杯に広がっているのは気分が良い。Tシャツの上にジャンバーを羽織ると家を出た。うに色のクルマを薄暗い地下駐車場から、朝日が溢れる地上に連れ出す。いつもの通勤路の混雑が激しく、時間が掛かるようになったので、途中からルートを変更した。多くの車が左折するT字路を右折する。予想通り、車の流れが少し良かった。いつもより短い時間で駐車場に辿り着く。

 ロッカールームを出て街灯の下の通路を門に向かって歩いた。表の道路では帰宅を急ぐ車が列を作っている。道路を北に少し走った先のT字路を右折する車が特に混雑していた。駐車場を出て南方向に向かう。少し大回りをして渋滞を避けると、駅に真っ直ぐ突き当たる街道に出た。市街中心に向かう。

 駅前のロータリーで相棒を拾うと、中華料理店に入った。広いフロアに客席が沢山ある。平日の夜で客の姿はまばらだった。フカヒレ餃子、エビ蒸し餃子、焼き餃子、胡麻ダレ水餃子などを頼む。この店のエビ蒸し餃子は大ぶりのエビの剥き身がむっちりした米粉の皮に包まれていた。香辛料の香りが良く実に美味い。焼き餃子も厚手の皮にたっぷりの肉が肉汁と共に詰まっていた。堪能する。

 


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