11月1日(金)雨後曇り午後まで降ったり止んだりを繰り返していた雨が、夕刻になってやっと上がった。仕事を放り出すと、うに色のクルマに乗って、帰宅車で混み合う街道を走っていく。白い光を放つ放電式のヘッドライトは、街灯がほとんどない暗い田舎道で頼りになった。まだ路面は完全に乾いていない。しかし雨がまた降り始める気配もなかった。テニスクラブの駐車場にクルマを停める。
ラケットバッグ、シューズなどの荷物を持ってクラブハウスに向かった。ナイターの灯りが美しいグリーンのコートを照らし出している。準備体操を終えるとボレーボレーからその日のレッスンは始まった。レッスン生は4名いる。球出しからの反復練習で、コンパクトなボレーを目指した。グリップをやや厚めにずらしてパンチが出るようにする。サービスもスイング軌道を修正する為に完全なコンチネンタルより、やや厚めのグリップにした。慣れるまでには、まだ練習が足りない。トスとタイミングがきっちり合うと、よりキレのある打球が放たれた。10球に2〜3球の確率を、6〜7球程度まで上げることを目指して、何度もサービスを繰り返す。途中で相手コートに立つ人の姿がぼやける程の霧が周囲を包んだ。
11月2日(土)曇り後晴れ
ラケットバッグやシューズを持って砂入り人工芝のコートに入ると、既に練習が始まっていた。総勢13名が2面のコートに散らばる。ショートストローク、ボレー、ストロークでアップをしてから、ボレー対ストロークの練習に入った。ストロークは高さと長さとコースを色々
変えてみる。ボレー側では深さとコースに気を配った。次はサービス&リターンの練習になる。グリップを確かめながらサービスを打ち込み、ネットに向かってダッシュした。優しいリターンのボレーではミスが減ったが、足元に返される厳しいリターンをファーストボレーするのは難しい。最後はゲームで締めくくる。
昼に練習が終ると近くの定食屋に向かい、昼食を取った。トロの切り身がたっぷり皿に盛られたネギトロ定食が美味い。その後は、テニスクラブに移動して練習を続けた。秋の夕暮れは早い。やがてナイター照明が点灯し、宵闇の中にコートに浮かび上がった。1時間半のレッスンで一日を締めくくる。
近くの餃子店で、水餃子と焼餃子を注文した。ニンニクを使わずスパイスを効かせた肉たっぷりの具が薄めの皮に包まれ、濃厚な味を出している。その後は、銭湯に行ってサウナで疲れを癒した。
11月3日(日)晴れ後曇り
ICにほど近い貸しテニスコートに行くと既にほとんどの参加者が集まっていた。ここで仲間同士での夫婦対抗ミックスダブルス大会が開催される。9組の夫婦ペアで総当たり戦を行うことになっていた。試合数が多い為、4ゲーム先取と一試合が短い。先行されると逆転するのは難しい状況だった。7勝1敗で優勝したペアに唯一黒星をつけたが、難しい筈の2−0からの逆転負けなどもあり、結果は5勝3敗で5位に沈む。勝負弱さだけは天下一品といえた。
大会終了後、テニスクラブに移動して、日が暮れるまで練習を続ける。クロスの半面を使ってサービスから決めのボレーまで、色々な展開を試してみた。日が暮れる頃には、くたくたに疲れ果てる。
灰色の車で街中に出掛けた。駅ビルの餃子屋に近付くと長い行列が待っている。連休のイベント開催で人が集まっているようだった。すぐさま退散し、もう一軒廻ってみるが、そこも混雑している。少し街の中心から離れたお店に行くと、すぐに席にありつけた。ふわふわの溶き卵が入る絶品のスープ餃子と焼餃子を頼む。エビ餃子にはぷりぷりの剥きエビが入っていて、実に美味かった。スープ餃子を2杯頼むが、すんなりと胃に消える。
11月4日(月)曇り後晴れ
朝の天気は予報通り曇りだった。灰色の車にラケットやシューズを積み込んで近くのテニスクラブに向かう。30分程相棒とアップした後、1時間半程の間に女ダブ対ミックスで1試合、男ダブで1試合を楽しむと、もう昼近くになった。クラブハウスのテーブルで熱いコーヒーで一服する。雲が動いて青空が広がり始めた。会員達のゲームが続くコートを離れる。
灰色の車のノーズを北西方面に向けて街道を走った。目的地の温泉町まで一時間程度のドライブになる。道は空いていて予定より早く到着した。軽く昼食をとる事にして、地元のスーパーでお握りを仕入れる。温泉旅館の寂れた雰囲気の庭園にある東屋の縁側でお握りを食べた。すっかり空は晴れて陽射しは暖かいが風が冷たい。予約した時間になった。温泉旅館に隣接したレストランが蕎麦打ち体験の会場になっている。早速、蕎麦打ち職人の指導の元に蕎麦粉と小麦粉をボウルに入れて少しづつ水を加え、手早くかき混ぜた。小砂利状になったところで少しづつ集めて捏ねに入る。意外に生地が固く、捏ねに力が要った。体重を掛けて表面がすべすべになるまで捏ねた後、伸ばしに入る。長い麺棒で伸し餅程度の厚みまで丸く伸した。
ここからは乾燥を避けて手早く作業する。巻き伸ばしに移った。生地の角度を90度変えて麺棒に巻き付けて伸ばすと丸い生地が徐々に薄く、四角くなる。最後は職人が均一な薄さに整えた。打ち粉を振って、生地を4つに畳み、ガイドを当て麺切り包丁で切る。幅が不揃いの蕎麦が完成した。厨房に移って出来上がった蕎麦を煮え立つ大鍋にほぐして入れる。しばらく泳がせていると、ある瞬間にさっと緑がかった色に変わった。すかさずザルに上げ、たっぷりの流水で洗う。水を変えて充分洗った後、氷水に晒して締めた。ざるに盛る。打ちたて茹でたての蕎麦を、そのまま食べた。意外なほど美味い。汁を付けないと一層蕎麦の香りが楽しめた。
蕎麦を腹一杯食べた後は温泉に浸かる。客の少ない午後の温泉には時間もゆったりと流れた。離れの露天風呂を楽しんだ後、本館に移動して街を見下ろす露天風呂に寝そべりながら、夕日を眺める。秋の日が山の影に隠れた瞬間、雲の端が燃え立つようなオレンジ色に染まった。
街に戻る。駅ビルの餃子屋で味噌汁餃子とネギ焼餃子を食べた。薄味の京風白味噌汁と餃子が良く合っている。特製の味噌ダレと万能ネギで食べさせる焼餃子も実に美味い。
11月5日(火)晴れ
朝起きて先ず最初に居間の石油ファンヒーターのスイッチを押すのが新しい日課になる。次にリモコンでTVの電源を入れた。ちょうど天気予報が映し出される。北関東の最低気温が0度に近付いていた。冷えるのも無理はない。ファンヒーターが運転を始めると足元を温風が流れ始めた。マスタード色のジャケットを羽織ってジッパーを上まで上げる。それでも外に出ると寒風が首筋から忍び込んで来た。見上げた青空にも、既に晩秋の気配が色濃く滲んでいる。うに色のクルマを青空の下に連れ出し、いつもの通勤路を走って行った。交通量が増え、流れが悪く走り辛い。
思いがけず帰りが遅くなった。街灯の光も少ない暗い田舎道を走る。帰り道は大きな混雑はなかった。幹線道路に出るとトラックの姿が目立つ。自宅に戻ると大鍋にお湯を沸かした。相棒は小鍋で焼き芋を作る。中鍋にも水を張って火にかけ、小松菜を湯がいた。塩とごま油で合えてナムル風にする。別の中鍋に水を張り、昆布を敷いて、火にかけた。豆腐を適当に切って入れ、湯豆腐にする。煮立った大鍋に昨日打った蕎麦をほぐして入れた。2回に分けて、後半は職人が作った蕎麦を茹でる。食べ比べが楽しく、愉快だ。
11月6日(水)晴れ
寒い朝だった。居間の窓から外を見下ろすと、駐車場に停められた車が、霜で白くきらめいている。マグカップ一杯の牛乳を電子レンジで温め、表面に膜が張ったカップから熱い牛乳をすすった。薄いグレーのウォームアップスーツを出して上下とも着込む。ラケットバッグとシューズを持って外に出た。地下駐車場に降りて乗り込んだうに色のクルマの内部も10℃を切っている。エンジンを始動して走り始めた。しばらく走って水温計の針が動いたところでヒーターのスイッチを入れる。陽射しとあいまって車内の寒気が緩んできた。
定時に仕事場を出る。既に暗くなり始めていた為、壁打ちを諦めた。壁打ちコートの前を通ると、暗いコートに誰の姿もない。早めにクラブハウスに入り、暖房の効いた部屋で雑誌を読んで時間を潰した。ランニングと準備体操で体を温めてから、ボレー&ボレー、ストローク、スマッシュ、サービス、ボレー&ストローク、サービス&リターンと、練習が進む。レッスン終了後、15分ほどサービスを練習した。
家に戻るとキムチ味のスープを張った土鍋と小松菜、豚肉、豆腐、エノキなどの具が用意されている。野菜たっぷりのキムチ鍋は体が温まって美味い。
11月7日(木)晴れ
朝、目覚めて布団の外に出るのに少し躊躇する季節の訪れが、例年よりもかなり早いと感じる。もう当たり前の習慣のようにストーブに火を入れた。TVのニュースや天気予報を耳で聞きながら、昨日購入した車雑誌をめくる。マグカップのホットミルクをすすった。朝の短いながらも充実した時間が過ぎていく。顔を洗い、Tシャツの上に芥子色のジャンバーを羽織ると家を出た。灰色の車の上半分はびっしりと白い霜に覆われ、朝日を受けてきらきら光っている。エンジンを掛けてデフロスターを最高風量でオンにしてから、アイススクレーパーで窓ガラスの霜を落としていった。あらかたこそげ落とすと、すぐに走り出す。残りの霜が溶けたのは、幹線道路に出る頃だった。
仕事を切り上げて外に出る。帰宅を急ぐ人が増え始めていた。コンビニの駐車場で待ち合せて車の部品を貰い受ける。取引が終ると街に向かった。餃子専門店に入ると酔っ払いが気勢を上げている。スープ餃子、蒸餃子、焼餃子など4品を頼んだ。野菜餃子をラーメンスープに浮かべたスープ餃子がいける。焼シソ餃子はシソの香りが清々しく楽しめた。焼チーズ餃子はとろりとしたチーズが味にコクを加えていて美味い。
11月8日(金)晴れ後曇り
家の外に出ると寒気が体を包む。Tシャツの上に薄いウォームアップスーツを着ただけでは、少し肌寒かった。構わずエレベーターで一階に降り、さらに階段を使って地下駐車場に降りる。うに色のクルマを目覚めさせると外に出た。東に向かって走ると朝日が眩しい。しばらくするとヒーターが効き始めて車室内が温まり快適になった。
仕事を適当に放り出して、事務所から出る。着替えるとすでに家路を急ぐ車が増え始めた路上に、うに色のクルマを滑り込ませた。アクセルを開けて田舎道を快調に走る。テニスクラブに着く手前のスーパーでアミノ酸系ドリンクを買って飲みながらビスケット状になった栄養補助食品を腹に収めた。
テニスクラブの駐車場にクルマを停める。準備体操を終えるとボレーボレーからその日のレッスンは始まった。レッスン生は6名いる。攻めるプレーが出来ず、受けるだけになると押さえこまれた。攻めのパターンを作る必要がある。
買い物をして自宅に戻ると、茄子、人参、芋、玉葱などがたっぷりと入った濃厚なカレーが出来ていた。冷たいビールで口を湿らせると、猛烈に食欲が湧いてくる。大皿に二杯食べると満足した。麦焼酎のロックで口中を洗う。
11月9日(土)晴れ
いつもと変わらない時間に目を覚まし、ストーブを点け、ホットミルクを飲みながらTVニュースと天気予報を眺めた。グレーのウォームアップスーツを着込み、ラケットバッグとシューズを持って家を出る。うに色のクルマのトランクにラケットバッグなどを積み込むと、エンジンを目覚めさせてすぐに走り出した。平日よりもやや車の量が少ないが、思った程ではない。仕事場に近付いて行くと、他の会社の通勤車両や通勤バスが走っていることに気付いた。それでも、駐車場に車を停めた時間はいつもより10分近く早い。
定時を僅かに過ぎた辺りで仕事を投げ出して事務所を出た。一度自宅に戻り、灰色の車に乗り換えて相棒と共に、テニスクラブに向かう。コートはナイター照明に照らされて鮮やかなグリーンに輝いて見えた。1時間半のレッスンで一日を締めくくる。8名のレッスン生が参加していたため、やや物足りなかった。相変わらず簡単なミスが多い。
練習後、餃子店にいって、茹で餃子と蒸し餃子と焼餃子を注文した。厚めの皮に包まれた茹で餃子はつるつるした食感が楽しい。透明な米の皮に包まれたエビ餃子はぷりぷりした歯ごたえがたまらなかった。焼餃子も実に美味い。
11月10日(日)晴れ
冷たい風が吹いた昨日よりも朝の気温は下がっていたが、風がなく陽射しがある分いくらか過し易かった。灰色の車に荷物を積み込んで河川敷の公園に向かう。地元サークルが主催するテニス大会が開催される事になっていた。集合時間に少し遅れて到着すると、本部設営の手伝いをする。参加者が集まり始め、テニスコートの廻りが賑わってきた。受付や選手の呼出などを手伝っているうちに、試合時間になる。一回戦の相手は強敵だった。サービス、ボレー、リターン、どれも一枚上手と言わざるを得ない。1−3からペアのサービスキープで2−3とし、2−4となった後のサービスゲームで40−0とリードするもののそこから4ポイント連続で奪われ2−5となった。結局2ゲーム取るのがやっとで2−6の完敗を喫する。しばらく運営に戻った後、コンソレの一回戦が巡ってきた。予想通り伏兵の強敵に破られたシード選手が回ってくる。強打はないが老獪なテニスを攻められず、受けに回って術中にはまった。2−2から何時の間にかゲームを奪われ2−6で敗れる。最近にない酷い敗北で秋の大会は終った。夜は反省会と称して、居酒屋で生ビールを煽る。深い眠りについた。
11月11日(月)晴れ
晴れている。体に疲れはなかった。一日でたった2試合、それも簡単に敗れたからだろう。電子レンジで暖めたホットミルクと、プレーンヨーグルトに塩を一つまみ落としたものを腹に入れて家を出た。ショルダーバッグの他に制服を入れたデイバッグを背負っている。風は冷たく、遠くの山は白く雪化粧をしていた。エレベータで玄関ホールに降りる。エレベータ横のガラス戸を開けて中庭に出た。すぐエレベータの裏に位置する階段を降りて地下駐車場に入る。うに色のクルマに乗ってエンジンをスタートさせると低音の響く排気音を聞きながら走り出した。
仕事を切り上げて外に出る。真っ暗な空に無数の星が見えた。街灯の明かりが邪魔しなければ、もっと美しい星空が見られる。いつもは頼りない街灯が恨めしく思えた。うに色のクルマは快調に走る。回転を上げる度にドスの効いた重低音が排気管から叩き出された。路面舗装工事で少しだけ滞った場所を抜けると、車の流れは速い。少しアクセルを開けて流れに乗せていった。
家に戻ると、煮込んで寝かして熟成されたカレーの香りが鼻をくすぐる。熱々の麦飯の上にたっぷりとかけると、野菜の甘味と香辛料の香りが食欲を刺激した。
11月12日(火)晴れ
早朝にアラームで目を覚ますと、外はまだ暗い。ホットミルクを飲み干した。手早く身支度を整えて外に出る。覚悟していたほど寒くなかった。灰色の車のガラス面についた露の水滴は凍っていない。エンジンをかけてワイパーを動かすと、視界が確保された。リアシートは畳んでラゲッジスペースに変えてあるある。そこに積み込んでおいた荷物をサーキットに届ける仕事が待っていた。ヘッドライトを点けて走り出す。まだ暗い幹線道路はトラックの群れに占拠されていた。流れは速い。南に向かう流れに灰色の車を乗せてやった。30分ほど走って脇道に入って行く。さらに30分程、田舎道を走るとサーキットに着いた。荷物を降ろして別の車に積みかえると朝の仕事は終わりになる。再び北に向けて来た道を戻っていった。
夕方雨が振ったが、レッスンは出来ると言う。仕事を切り上げてテニスコートに向かった。ハードコートはまだ濡れていたが、滑らないので問題ない。レギュラー参加が3名、振替参加が3名、体験参加が1名で合計7名のレッスン生が揃った。ボールが弾まず、コートも濡れている為か、スライスが止まって打ち難い。レッスン終了後、サービスを球一カゴ分練習した。
11月13日(水)曇り後晴れ
石油ファンヒーターのスイッチを押すと、給油を促す電子音が鳴った。朝の寝起きから、寒いベランダで灯油を入れる気はしない。仕方なくエアコンのスイッチを入れた。TVからは遠い中東の国の話題が流れている。大量破壊兵器が存在する現実を身近に感じるには、かなりの想像力が必要だった。マグカップからホットミルクをすする。一つまみの塩を加えたヨーグルトを匙ですくって口に運んだ。濃いグレーのウォームアップスーツを着込む。ラケットバッグとシューズを持って外に出た。うに色のクルマのエンジンを始動して走り始める。
仕事を仕舞いにして事務所を出た。暗い夜道を走り家に戻る。先に帰っていた相棒と共に近くのテニスクラブに行った。ナイター照明の下、一時間半余り、基本ショット練習を繰り返す。ボレーの練習に多くの時間を割いた。引きつけて打つ感覚が無意識段階になるまでは至らない。
晩飯は街中の餃子専門店にした。「おむすび餃子」が意外に美味い。「天むす」と似た感覚で違和感は無かった。塩味で餃子を食べる事は一般的ではないが、実はかなりイケる味だと判ってくる。揚げチーズ餃子はこってりと濃厚で美味かった。満足して家路を辿る。
11月14日(木)晴れ
寒さに慣れたのか寒気が緩んだのか、あるいは、その両方か判らないが、目覚めて布団の外に出るのに、それほど覚悟が要らなかった。しかし寝不足で眠い。いつもの様にホットミルクをすすり、ヨーグルトを食べた。この組合せでは脂肪分の取り過ぎらしい。それでなくても芳しい紅茶の香りが懐かしく感じられる季節になっていた。そろそろお湯を沸かす一手間をかけて紅茶を入れる事にしよう。顔を洗い、Tシャツの上に芥子色のジャンバーを羽織ると、家を出た。うに色のクルマは快調なエグゾーストを奏でながら田舎道を走る。遠い山が白銀に輝く稜線をくっきりと空に突き刺していた。
仕事を切り上げて外に出る。日付が変わるまでにはまだ3時間以上あった。駅前で相棒を拾い、最近改装されたばかりのやや高級な中華料理店に入る。閉店が近い店内は空いていた。餃子メニューの種類は少ないが、なかなか美味い餃子を食わせる。特に身がぷりぷりしたエビ餃子が美味かった。汁気たっぷりで厚手の皮の手作り餃子もいける。胡麻味噌ダレに浮かぶ一口サイズの茹で餃子も上品な味だった。全体にさっぱりしているので、胃にもたれない。支払いの必要もなく、満足して店を出た。
11月15日(金)晴れ後曇り
仕事に方を付けてファイルを保存しPCの電源を落とした。ラップトップPCは机の引き出しに仕舞い込む。ホワイトボードに来週の出社予定時刻を書き入れると重い鉄の扉を開けて外に出た。暖房が効いて暑いぐらいの室内から出ると一層寒く感じる。ロッカールームで着替えて、早足で駐車場まで歩いた。うに色のクルマのエンジンを始動して夕闇の路上に滑り込ませる。
テニスクラブの暗い駐車場にクルマを止めた。途中のスーパーで買ったアミノ酸系飲料と栄養補助食品で空腹を鎮めたので活力が湧いてくる。準備体操を終えるとボレーボレーからその日のレッスンは始まった。レッスン生は5名いる。全員がかなりの技量の持ち主だった。緊迫した練習になる。少しづつボレーの感触が掴めてきた。スマッシュにはまだ問題が残る。肘が下がってしまう悪癖が抜けなかった。
買い物をして自宅に戻り、手早く鍋の準備をする。ニラ、もやし、豆腐、豚肉、おでんのタネ等を昆布を敷いた土鍋に入れた。味付けはニンニクとキムチの素などを利用する。冷たいビールで口中を冷やしながら、熱くて辛い具を腹に収めていった。実に体が温まる。最後はご飯と卵を入れておじやに仕上げた。
11月16日(土)曇り
いつもと変わらない時間に目を覚まし、ストーブを点ける。お湯を沸かして紅茶を入れて飲みながら天気予報を眺めた。濃いグレーのウォームアップスーツを着込み、ラケットバッグとシューズと一泊分の着替えを詰めた荷物を持って家を出る。灰色の車にのリアシートにバッグなどを積み込むと、走り出した。空いた田舎道を南に向かう。4時間ほどのドライブで海岸沿いのテニスリゾートに着いた。
集合時間の昼になると続々と参加者が集まってくる。午後半日を使ってみっちり練習した。簡単なミスが少ないメンバーが揃っていたので、気の抜けない充実した練習になる。角度を付けた決めのボレーの練習を多めに行った。サーブとリターンも充分に行う。最後はタイブレークのゲームを何度か繰り返した。4時過ぎにはかなり暗くなる。そこから30分ばかり乱打して5時少し前に一日を締めくくった。
宿泊する旅館は9階建てで最上階は太平洋が見渡せる展望風呂になっている。しかし夜は、ただ真っ暗な闇が広がるばかりだった。夕食の後、宴会に入る。ビールをしこたま飲んだ。11時前に宴会を抜け出し自分の部屋に戻る。布団に入るとあっという間に眠りの底に引き摺り込まれた。
11月17日(日)曇り
宿自慢の展望風呂からは冴えない曇り空と寒々しい冬の海が180度見渡せる。朝食前の入浴で食欲が刺激された。1時間ほどのアップをしてから、参加者を2チームに分けての対抗戦を行う。8ゲームマッチの熱戦が6面ある砂入人工芝コートで繰り広げられた。練習コートでゲームをしているうちに試合の呼出が掛かる。相手は鋭いショットを持っていたが最初はミスが多く、自分達のサービスゲームをキープ、相手の片方のサービスをブレイクして7−3とリードする。そこで今までブレイクしていた相手のサービスをデュースの応酬の上にキープされてから流れが変わってしまった。4ゲームを連取され、7−7と追い付かれる。そして8−8と進み、タイブレークで3−7と敗れた。相手はミスしてもスタイルを変えずに打ち続け、やがて入り始める。こちらは攻めの姿勢をなくし受けに回って押し切られた。判っていても、どうする事も出来ない。また課題が増えた。その後は6ゲーム先取の交流試合を4試合こなして日没までたっぷりと楽しむ。
展望風呂に入った帰り道は、眠気に耐え切れず本屋の大きな駐車場の片隅に車を停めて仮眠した。充実した疲労が体の隅々まで静かに満ちる。
11月18日(月)晴れ
目覚めると鬱陶しい冬の雲は空から一掃されていた。気持ち良く晴れている。体に疲労が溜まっていた。朝から一日テニスをしてその後に4時間のドライブをすれば多少の疲れは不思議ではない。電気ポットのお湯で紅茶を入れた。少量のミルクを加えて熱いミルクティーにする。胃に染み渡るように美味かった。ショルダーバッグの他に制服を入れたデイバッグを背負って家を出る。地下駐車場でうに色のクルマに対面するのは二日振りだった。リモコンのボタンを押すとドアロックが解除される音と共にハザードランプが2回点滅する。異常はなかった。荷物を助手席に放り込みながら腰をシートに落とし込み、エンジンをスタートさせると軽快な排気音を聞きながら走り出す。
仕事を切り上げて暖房の効き過ぎる事務所から外に出る。外階段の踊場から見上げると真っ暗な頭上には冬の星座がさざめいていた。うに色のクルマで星空の下を走る。回転を上げると爽快な排気音が響いた。道路工事の交互通行で少し滞った場所を抜けて加速する。
家に戻ると暖かいクリームシチューが大鍋にたっぷりと出来ていた。半分に割ったアボガドにマヨネーズを付け、匙で食べるのも美味い。体が温まった。
11月19日(火)晴れ
無愛想なベージュ色に塗られ、金網入りの曇りガラスを通して僅かに外の明るさが判るだけの重い鉄の扉を開けてベランダに出る。急激な温度変化に一瞬首筋に緊張が走った。外していた上着の袖口のボタンを掛ける。鉄製の外階段を降りて固いアスファルトの地面に足を下ろした。空を見上げても何となく暗いだけで星の輝きは見当たらない。工場のような装飾性のない建物が並び建つ間の暗い通路を、ロッカールームに向かって歩いた。建て屋に入ると、再び快適な温度に空調が効いている。胸に付けたカードホルダーからIDカードを取り出すと、勤怠を入力するカードリーダーに通して退社の打刻を済ませた。ロッカーで作業着を脱ぎ、綿のルーズなシルエットのパンツと、渋い芥子色の中綿入りジャンパーに着替える。ショルダーバッグを肩に掛けて外に出た。駐車場までの暗い道を歩きながら、携帯でメールをチェックする。
うに色のクルマをドライブして街の中心に向かった。駅前のロータリーで相棒を拾うと、少し離れた中国料理屋まで走る。美しく透き通る米粉の皮に包まれたエビの弾力が絶品の蒸しエビ餃子や、ニラと玉子と干しエビの組合せがたまらない焼餃子などを食べた。
11月20日(水)晴れ
布団から出る10分ほど前に石油ファンヒーターの電源が入るようにタイマーをセットしておいた。10分程度のリードタイムでは部屋が暖まるほどではない。既に温風が出ているヒーターの前に立った。テーブルの上のリモコンでTVの電源を入れる。天気予報は晴れの一日を示していた。熱い紅茶を飲み干すと家を出る。うに色のクルマに乗り込んで、まだ半分眠っている街路に漕ぎ出した。まだどこかしら夜の残滓が残っていて、ほのかに暗い。
ラップトップPCを畳んで引き出しに放り込むと事務所を出た。新しく出来たカメラ屋を覗いて時間をつぶす。レッスンが始まる15分ほど前にナイター照明が眩しいコートに入った。準備体操の後、軽く乱打をして開始時間を待つ。時間になり、練習が始まった。一時間半余り、主に基本的なショットを多めに練習する。ボレーの練習に多くの時間を割いた。無意識で引きつけて打てるようになるまでは至らない。
家に戻るとシチューが暖められていた。大鍋に湯を沸かし、パスタを茹でる。茹でたてのパスタに煮え立つシチューをたっぷりと掛けると、体が温まる熱々のメニューになった。冷たいビールと共に熱いパスタを食べると実に愉快だ。
11月21日(木)晴れ
夜のテニスがないにも関わらず、早めに仕事を切り上げて事務所を後にした。仕事は終っていないが、構うことはない。少し混み合った道を40分程掛けて自宅に戻った。うに色のクルマをガレージに納め、部屋に入るとTシャツの上にフリースのトップを着て、さらに薄手のベンチコートを羽織った。丈が長いので腿の辺りまで温かい。近くの駅まで歩いた。一駅を7〜8分掛けて走ると電車は街の中心に出る。駅前のロータリーで待つバスに乗ると今夜のパーティーの会場に着いた。
老舗らしい、そのホテルの中は、思った以上に落ち着いて重厚な雰囲気を醸し出している。エスカレーターで3階に上がると、開け放たれたドアから丸テーブルが並ぶ室内が見えた。受付を済ませ、適当な席に座ると前菜が既に並べられ、中央の回る台には刺身が盛られた大皿と、カセットコンロに乗せられた鍋が置いてある。ピンク色のシャンパンがグラスに注がれ、乾杯の声とグラスを触れ合わせる音がしばらく続いた後に胃に落ちて行った。酵母の香りがする地ビールをたらふく飲み、出される料理を平らげると、愉快な気分になる。懐かしい顔に出会い、語り、笑い、宴は終った。家に帰ると泥のように眠る。
11月22日(金)晴れ後曇り
決めた時間を少しオーバーしたところで、やっと仕事に一区切りが付いた。作業を終えたファイルを保存しPCの電源を落とす。ラップトップPCは畳んで机の引き出しに仕舞った。ホワイトボードの退社予定時間を消し、出社予定時刻を書き込んでから外に出た。外は既に暗く、寒い。暖房が暑いぐらいの室内から出るからなおさらだった。白いウォームアップスーツの上下に着替えると、携帯でメールをチェックしながら駐車場まで歩く。うに色のクルマのエンジンに火を入れると夜の帳が降りたばかりの路上に漕ぎ出した。
スーパーに寄って、菓子パンとアミノ酸系飲料で小腹を満たす。テニスクラブの暗い駐車場にクルマを止めた。照明の下のグリーンのコートが眩しい。裏地のついたウォームアップスーツのお陰で寒さは感じなかった。準備体操を終えるとボレーボレーからレッスンが始まる。レッスン生は4名だった。全員が一定水準の技量を備えているため、ハードな練習になる。少しづつボレーの感触が掴めてきた。サービスはまだ良い当りが少なく、安定しない。 自宅に戻ると、ご飯に小松菜の味噌汁、豆腐のガーリック味噌田楽などに舌鼓を打った。冷たいビールが大層美味い。
11月23日(土)晴れ
いつもと変わらない時間にアラーム音に目を覚まし、ストーブを点ける。電気保温式ポットのお湯で紅茶を入れて飲みながら天気予報を眺めた。白いウォームアップスーツを着込み、ラケットバッグとシューズを持って家を出る。うに色のクルマに乗り込んで、祝日の、まだ人気が少ない街に走り出した。
我慢できずに早めに仕事を切り上げると事務所を後にする。自宅に戻ってしばらくのんびりと寛いだ後、ラケットバッグとシューズを持って家を出た。テニスクラブのコートは、照明に煌煌と照らされて輝いている。レッスン生は7名だった。球出しからの基礎練習を多めに行い、ボレーやストロークの動きを磨く。サービスの当りがまた悪くなるが、うまく直らなかった。寒い夜だが1時間半の練習で充分温まる。
少し離れた高速のICに近いラーメン屋に着いた。熱した鉄板に乗って出てくる巨大な餃子と普通の焼餃子を注文する。以前はキムチ入りで美味かったのだが、キムチが不評で味を変えていた。以前の味の方が好み だった事を告げる。2種類出したらどうだと言ってみた。 帰り道で銭湯に寄り、ジェットバスやサウナや露天風呂をゆっくりと楽しむ。短い週末の夜が過ぎていった。
11月24日(日)晴れ時々曇り
朝起きてカーテンを開けて見る。雨は上がっていた。うに色のクルマをドライブして東の県境に近い山村に向かう。途中から雲が晴れて来て、望外の晴天に恵まれた。初冬の枯れた景色が透明な光の中でどことなく緊張感のある美しさを見せている。山の中のサーキット上でイベントが行われる事になっていた。途中のお土産屋で何の気無しに買ったカボチャドーナッツが意外に美味い。
お握りの昼飯を済ませると、広い舗装路面に白線でコースを書いただけの場所を著名プロドライバーの指導を受けながら走るイベントが始まった。事前にブレーキパッドを交換してあるので、タイヤの空気圧だけチェックする。自らのドライブによる走行も実に愉快だが、プロのドライバーの豪快な走りを助手席で楽しむのも爽快で刺激的だった。タイム計測がないので平和なイベントになる。ガードレールもグラベルもないので、クラッシュの心配はなかった。それぞれの車は思い思いのラインで自由に操縦を楽しんでいる。二人のプロドライバーのそれぞれに特徴ある走りに感嘆した。他人の走りを眺め、ドライビングに熱中し、カーコントロールに集中するだけの痛快な3時間余りは、瞬く間に過ぎていく。
コレクションホールに並べられた市販車やレーシングカーを眺めてしばらく時間を潰した。うに色のクルマを駐車場から出して、数分でサーキットホテルの駐車場に滑り込ませる。サーキットホテル内のイベントホールに移り、参加したプロドライバー3名のトークショーを見聞する事にした。地元FM局のアナウンサーが用意した質問はありきたりだが、ドライバー達の話しは興味深く、飽きることはない。
一時間ばかりのトークショーを終えてホテルの外に出ると、既に辺りは夜の帳に包まれていた。気温が下がり、肌寒い。うに色のクルマでサーキットのグランドスタンドに移動して熱気球と花火のショーを見物する事にした。駐車場からグランドスタンドまで歩く。見上げると漆黒の空に散りばめられた星々が美しく瞬いていた。ホームストレート上に並べられた熱気球がバーナーの炎で闇の中に浮かびあがる様子は、まるで巨大な電球に明りが灯るようで、一種幻想的な雰囲気になる。 軽快な音楽に合わせて、色とりどりの熱気球の機体が明滅すると、クリスマスイルミネーションのようだった。フィナーレでは花火が冬の凍てつく夜空に打ち上げられる。しばし、光の競演に酔いしれた。
11月25日(月)雨
ドアを開けて外に出ると冷たい雨が降っていた。天気予報を見ず、カーテンも開けなかった事に今更ながら気付く。昨夜の満天の星空が瞬時に頭を巡った。冷たい雨が吹き込んで濡れた通路を歩いてエレベータに乗る。地下駐車所に降りた。うに色のクルマに乗り込むと雨の街に走り出る。雨と前車がまき上げる水煙が混ざってフロントガラスに付いた水滴を時折ワイパーで拭いながら走った。
重い鉄のドアを開けようとして、ちょうど顔の高さに貼られた金網入りのすりガラスを通して、ガラスの外側に水滴がついているのが見える。まだ雨が降っている事が予想出来た。ドアを開けると予想通り雨が降っている。外に出るのをやめて建物内の通路を通ってロッカールームに行くことにした。少し遠回りになるが雨に濡れずに済む。ロッカールームからは傘をさして駐車場まで歩いた。うに色のクルマに乗り込んで弱い雨が降り続ける路上に漕ぎ出す。
家に戻ると大鍋にたっぷりの肉じゃがが出来ていた。豚バラ肉を使っているのでこってりしている。温かいご飯と一緒に食べると、ジャガイモがほくっと崩れて実に美味かった。ほうれん草の味噌汁をすする。体の芯からじんわり温もりが広がった。
11月26日(火)晴れ
雨は夜のうちに上がっていたらしい。外に出るとほとんど雲のない空が広がっていた。寒さが少し緩んだように感じられる。うに色のクルマに乗り込んで朝の光があふれる路上に走り出た。まだ低い位置にある太陽がうに色のクルマの上下方向に薄いフロントガラスを通して直接目を射る。その光はどこか弱弱しく、夏のような激しさは感じられなかった。サンバイザーを下ろして遮る。
仕事を切りの良いところで止めにして、ファイルを保存するとPCの電源を落とした。うに色のクルマで暗い田舎道を走って行く。トラックが多く走る幹線道路を南に向かった。側道に入り、陸橋になった幹線道路の下をくぐって右折すると、片側2車線の比較的整備された環状道路に入る。クルマの数は、まだ多かった。自宅の門につながる短い取り付け道路に入り、門の前で止まる。運転席から降りてクルマの右側に廻った。マンションの部屋番号を押すと各戸の住人と話せるインターホンが付いている。暗証番号を押すと電動の門が開いた。
家に戻ると、昨夜の肉じゃがの残りと、ピーマン肉詰が待っている。玉葱が甘くて美味い味噌汁をすする。冷たいビールが体に染み渡って行くようだった。今日も終る。
11月27日(水)晴れ
うに色のクルマの運転席を中古の市販品に交換した。尻から腰がすっぽりと包み込まれるように固定され、座り心地は良いが、座面が高くなる。膝とステアリングコラムとの距離が短くなり、やや窮屈に感じた。ポジションと共に足首の角度が変わったせいか、アクセルを操作する右足がだるくなる。腿の裏の圧迫感にも違和感を感じた。慣れるには少し時間が掛かるだろう。
仕事を適当に切り上げると事務所を出た。うに色のクルマの座席にすぽっと収まると街中に向かう。ビデオカメラをロールバーに固定する金具と雲台を購入した。栄養補助食品とアミノ酸飲料で腹を落ち着かせてからコートに向かう。
風が冷たかった。それでも軽く汗ばむ程度に体を動かす。ボレーの練習に時間を使った。徐々にボレーが改善されているのが判る。ボールとの距離の取り方に工夫が必要だった。
コートを後にすると駅前で相棒を拾って、もう馴染みになった中国料理屋に向かう。駐車スペースにクルマを停め、店に入るといつものように他の客は一組だけだった。独特の味付けの蒸エビ餃子が美味い。茹で餃子はセロリが特に美味かった。セロリの香りが爽やかだ。焼餃子はニラエビ玉子が定番になった。
11月28日(木)晴れ
早めに事務所を後にした。仕事は片付け切れないが、構うことはない。帰り道でスーパーに寄って食料品を少し買い、スパークリングワインを仕入れた。次にケーキ屋に立ちより、ショートケーキを4個選んで包ませる。うに色のクルマを地下駐車場に納め、買い物袋を手に下げて部屋に入った。食料品やワインを冷蔵庫に仕舞う。しばらく寛いだ後、再び家を出た。
灰色のクルマで近くの駅まで行き、相棒を拾う。そのまま家に近い住宅街の中にあるイタリアンレストランに向かった。塗り壁調のしゃれた外観の店構えだが目立たないところにあるので空いている。渋い木の丸テーブルに座ると、メニューを開いた。前菜は岩手産ムール貝のガーリック焼を選び、パスタはスモークサーモンのクリームパスタとベーコンとブロッコリーのリゾットにする。サラダは海の幸のサラダ、主菜は骨付き子牛ロースのカツレツに決めた。
取り敢えずの生ビールと共にガーリックの効いた熱々の前菜を食べる。すっきりとした赤ワインに切替えて、旺盛な食欲でタイミング良く出される料理を片付けた。家に戻ると紅茶と洋ナシを丸ごと使ったケーキでデザートにする。たまにはこんな飽食の晩も悪くなかった。
11月29日(金)晴れ
決めていた帰宅時間が迫ったところでプリントアウトした資料は失敗だったが、修正は来週することにし、ファイルを保存して、PCの電源を落とした。机の下からショルダーバッグを取り出すとすぐに部屋を出る。すでに外は真っ暗だった。濃いグレーのウォームアップスーツの上下に着替えて駐車場までの道を急ぐ。うに色のクルマのシートにすっぽりと体を落とし込み、暗い空の下に走り出した。
スーパーの駐車場で栄養補助食品とアミノ酸系飲料を腹に入れて落ち着かせる。レッスン開始数分前にテニスクラブの駐車場に着いた。靴を履き替え、ラケットを持つと眩しい照明の下に出ていく。下着の上にやや薄手のウォームアップスーツを着ているだけなので、やや寒さを感じた。練習が始まるとすぐに汗ばむほどになる。今夜のレッスン生は3名だった。シングルス的なストロークラリーの練習に多く時間を割いた。
自宅に戻ると、土鍋を出し、水を張り、出し昆布を適当に切って泳がせる。水菜と牛肉と豆腐とシメジを洗って適当に刻んで準備は終った。卓上にカセットコンロを出し、煮え立つ鍋に具を入れて、熱々のところをポン酢で食べる。冷たいビールと赤ワインが実に美味い。
11月30日(土)曇り後晴れ
アラームが鳴った。布団から出てストーブを点ける。ティーバッグの紅茶を入れた。ヘルメットバッグとビデオカメラを持って家を出る。うに色のクルマに乗り込んで、まだ暗い路上に走り出した。近くのICから有料道に入り、約230km北にある町を目指す。
東北の田舎町にほど近い山中に、目的地のサーキットがあった。パドックの駐車場にクルマを停める。先ずはプロレーシングドライバーによる講義を聞いた。荷重とスリップ角とスリップ率という三つのキーワードが語られる。次に主催者からの簡単なルール説明があり、ピットに荷物を下ろし、空気圧をチェックし、タイム計測用の発信機を取りつけている内に走行時間になった。先導車についての完熟走行が2周ある。路面はウェットで低速でも驚くほど滑り易かった。フリー走行が始まる。プロレーサーの同乗走行によるレッスンを受けると走り方のイメージが掴めた。路面も乾いて走りやすくなる。丁寧に周回を重ねた。4時間の走行時間は瞬く間に終る。
東北の山村に早い夕暮れが訪れる頃、帰路を辿った。有料道の高速走行は風が冷たい。自宅のある町に戻り、大振りの餃子を10個食べると体力が戻ってきた。実に愉快だ。