マカオの街は白い、という印象がある。街路樹の緑とブルースカイが、だから、映える。
商店が並ぶ通りでバスを降り、裏通りに入って、坂道をのぼった。澳門中央図書館で休んだ。 旧植民地ポルトガルの風情を色濃く残すマカオの
昼食のサラリーマンで混む食堂に入った。隣の男性が食べ終えた料理は、白っぽいけれど、カレーらしい。指さし注文した。青島ビールを1本飲んでいる間に、料理がきた。小どんぶりに山盛りにカレーが盛られ、皿に白いご飯がこんもりと盛られている。ご飯の上に全部ひっかけてスプーンで一すくいしてほおばった。
うまい。味が香ばしい。あの懐かしき味に触れた。写真を撮る。タマネギ、ピーマン、ポテト、トマトに、チキン。チキンが柔らかい。食べ終えて骨を数える。7本もあった。

食堂を出て5分ほど、海岸通りを歩くと、ぞろぞろと人が建物に入っていく。カジノである。あの世界最大の「売り上げ高」を誇るホテル・リスボアだ。むろん、無思考に流れに従う。
沢木耕太郎氏「深夜特急」の大小の下りを思い出す。全巻のうちで、あの下りが一番好きで、何度読み返したかわからない。その現場に、何の覚悟も決意もなく来てしまった。しばらく見ているうち、うずうずしてきた。最低賭け額は、100香港j。その札を小の上に投げた。残り10秒。一瞬、静まった。卓の真ん中に座っていた女性がさいころの入った容器のスイッチだろうか、押す。小さな歓声とため息。目は10だった。11から17までが大である。当たった。100香港j紙幣が2枚になって返った。

さあ、どうする。このままやり続けてもいい。もしかしたら、今日はツイているかもしれない。時間も十分にある。うまくいけば、うまくいくかも。しかし、待て。ここは、生まれて初めてやってきた、リスボアで「勝利」をものにして帰ることが大事ではないか、という神の声に似た声がして、札をしまい込むと、後は「見(ケン)」に徹した。
外に出ると、陽がまぶしい。タクシーを拾ってフェリー埠頭に直行した。 やはり気分がいい。ばくちなどというものは、勝った額ではない。みみっちいと言われようが、1500円の勝利は、帰りのフェリー代が30jで済むわけだし、あのうまいカレーライスをただで食べたことにもなるし、今夜の晩酌代も浮いたと
、同じ100jを何度もだぶらせて、快感を味わう瞬間がいいのだ。マカオがいっぺんに好きになった。