手枷
(しゅみ作)
★
「ん…あふ…んんん?」
いつものように目が覚めたつもりで、違和感を感じるマルー。
自分の寝室であることに間違いはないが、手首のあたりに冷たい感触がある。
持ち上げてみる。
がちゃ。
「な、何コレ…?」
自分の両腕が頭の上の方にあって、ベッドの枠と手錠で固定されていた。
「な…は、はっくしょん!」
気がつくと、服も着ていない。
完全に、素っ裸であった。
「な、なんで…?」
その疑問は、すぐに別の感情に押し流されて消えた。
彼女のいる部屋に、二人の人影があったからである。
「き、きゃあっ!」
慌てて身を隠そうと体をよじるが、うまくいかない。
手を縛られているだけで、驚くほど身動きがとれないのであった。
「いやぁっ、来ないで!」
人影が、近寄ってくる。
「来ちゃダメぇ…!」
必死に自分の体を見ないよう説得するが、その侵入者達…バルトとシグルドは、
歩みを止めない。
「え、わ、若…?」
ベッドの両脇に、それぞれ移動する二人。
「きゃ! や、やだ…」
これから何か起こるのか分からず、二人の顔を交互に見つめるマルー。
二人の顔は、どこかにためらいを置いてきたようで、ある種の決意を秘めていた。
「マルー…」
不意に、バルトが口を開く。
「若…」
何かしらの納得のいく説明がなされるのではと、期待するマルー。
しかし、二人は無言で、その場にかがみ込んできた。
「こ、これは何なの?
ど、どうして(こんな…)」
その後は、うまく言葉にならない。
なぜなら、バルトはマルーの右胸を、シグルドは彼女の左胸を、それぞれ口に含み、
二人同時に、責め立て始めたからだ。
「ひ、ひゃっ…!」
突然の感触に、ぴくんと小さく反応するマルー。
「や、やめ…て…」
か細く、小さな声で哀願するマルー。
そのうち、バルトの右手が彼女の下腹部に移動し、彼の恋人の、もっとも秘めたる
部分に、指先が侵入する。
「!…―や、やめてっ!」
他人ではない、よく知った仲の二人…しかも、一方は自分と恋仲の関係にある男に、
体を触られるという今の状況に、様々な感情…心理的葛藤や、屈辱感、恥ずかしさ
のあまり、泣きたくなるのをかろうじて堪え、ぎりぎりで我慢し、冷静に頭の中で
整理しようとする理性的な部分が働く。そしてそれとは別に、何か得体の知れない
喜びにも似た感情…「もっとしてほしい」という、自分でも不思議だが、彼らの行為を
肯定する思考が膨らみ、と、同時に、自らの欲望を開放したい、が、できない、という
苛立ち…ジレンマ…そして背徳感からくる、「うずき」を感じ始めるマルー。
それが、自分の中のどこからくるのかは、わからなかった。
「あ、ダメだよ若! シグルドさんも…」
…そう、そういえば、なぜシグルドがここにいるのかも分からないことの一つだった。
若だけなら、わかる。
日頃から、キス一つするのさえもためらう自分に、業を煮やしての行動なら、それも
あるかもしれない。
理由がそれだけならば、まだ、彼を許せるかもしれなかった。
大教母たる、寛容をもって。
恋人の罪を、許しただろう。
しかし、シグルドは…
…っぷ、ちゅぷ…
「! ひゃん!」
彼女が考え事を巡らしている間に、彼らの行為はますますエスカレートし始めていた。
バルトは乳首の先端を舌を使って責め続け、その右手は、愛しいマルーの温かく湿った
部分を休みなく刺激している。
「わ、若ぁ〜。なんで、こういうコトするの?
ボクだって、何も、若のことが嫌いで、いつも拒んでいたわけじゃナイんだよ?
すごく、大切にしたいと思ったから。
若のことを、そして、自分のことも。
大事に思っているから、簡単には、決断できなかったんだ。
若のことが好きだから…。
でも、これじゃ…嫌いになっちゃうよ…ねぇ…若ぁ…お願い…もう…。」
とうとう、泣き始めてしまった。
その言葉が彼に届いたのか、それまで夢中になっていた乳房から顔を離し、なんとなく
呆けたような表情で、マルーの顔を見上げるバルト。
「ボクが、ずっと我慢させていたのなら、謝るよ。
けれど、それは女の子としては当然で…」
と、再び、彼女の言葉は途中で止まる。
バルトが突然、キスをしてきたからだ。
「ふ…ふぐぅ…んちゅ…はむ…」
それから、どれくらい時間が過ぎたのだろう。
およそ10分くらいで、バルトはマルーの唇を味わい尽くし、その口から唇を離すと、
今度はその体の上にのしかかってくる。
「な、何を…?」
マルーが、困惑して、怯えたような表情を見せる。
「…。」
バルトは、黙って、彼女の足を開き、持ち上げた。
「あっ! ま、まさか…。
待って、まだ…」
マルーが今までになく慌てて、とっさに足を閉じようとするが、バルトの強引な力で、
あっけなくねじ伏せられてしまう。
「い、いや…いやぁ!」
とうとう、彼は彼女の中に侵入し、そこで限界が来たのか、マルーの記憶は途切れた。
「おはよーさんでちゅ、マルーしゃん。」
「はっ! わ、若っ?」
「いやでちゅねぇ〜、朝っぱらから、寝ぼけないでくだちゃい。」
「え、チュチュ…?」
「おはよう…
みんな、食堂で待ってる…」
「それに、エメラダちゃんも…。」
「早く着替えて、下に来てくだちゃいね。
わたちゅは、もう、お腹がぺっこぺこでちゅ…」
そう言って、部屋から出ていく二人…いや、一人と一匹?
「みんな、夢だったの?
あれも、これも、全部…
私の見た夢?
若も、シグルドさんも…
全部…!!!」
自分の両手を見て、愕然とするマルー。
彼女の手首には、何かで締め付けられたようなアザが、まだくっきりと残っていた…。
(続く)
★
表の目次ページへ