特別展「プロジェクトX21〜挑戦者たち〜」

東京ドームシティ・プリズムホール

2004年8月7日(土)

この日は「立秋」、暦の上ではもう秋なのですが、東京では午前9時29分に気温が30度を超え、7月6日からの「真夏日」は連続33日間です。こんな日には、屋内のイベントにでも出かけようと、 東京ドームシティ ・プリズムホールで開催されている 特別展「プロジェクトX21〜挑戦者たち〜」 へ行ってきました。

NHKのテレビ番組「 プロジェクトX〜挑戦者たち〜 」の展示イベントですが、テレビで見たものをもう一度イベントで見る価値は何でしょう。また、夏休み期間中に小中学生は入場無料にし、子供たちにも見てもらおうというということですが、これから彼らが担う未来の物語ではなく、入学試験に出題されるような歴史的事件でもない出来事について知る意味は何でしょう。

会場入口

会場に着いたのは、午前10時30分頃。会場内は撮影禁止です。未だ開場30分しか経っていないので、それほど混んでいませんでした。やはり目立つのは中高年の方々です。夫婦連れの方は、 電気釜 洗濯機 の前で立ち止まり、当時を懐かしむように眺めていらっしゃいます。男性同士でいらっしゃってる方の中には、話の様子から、開発関係者か当時のライバル会社の社員の方もいるようでした。

さて、46件の展示を前にすると、改めて「新しいこと」に挑戦した当時の人たちのエネルギーを感じます。それが、このイベントの意義でしょうか。例えば、3台の自動車( クラウン コスモスポーツ スバル360 )は、どれも個性的で目的がはっきりしていて、その製品に賭けた思いが伝わってきます。最近の新車って、どれも似たようなデザインになってしまってますから、かえって当時のものが新鮮に見えるのでしょう。

そして ピアノ の実物は、テレビ画面で見た印象よりは小さなものでした。確かにテレビでは、平面的な情報、一部を拡大・誇張した情報しか伝わってきませんから、こうして実物を自分の目で確かめてみることは大切です。

先述のように、せっかくの夏休み企画なのですが、親子連れのお子さんにとっては、展示品は動かないし、後の壁の解説は難しい漢字で書いてあるし、退屈のようです。やはり、親子で話し合わないと、展示されている古い機械の持つ意味は子供にはすぐには理解できないでしょう。

そう考えると、私たちが小学生の頃に、太平洋戦争をどうとらえていたかに思いがいたりました。1970年から振り返って25年前の出来事でしたが、親がことあるごとに話してくれたことや、周囲に戦争を扱った本や雑誌が多くあったことで、零戦の活躍、戦艦大和の最期、原爆の開発と投下、空襲と食糧難での生活などについては知っていました。戦争という事の善し悪しはありますが、苦境に際し知恵を出し合い力を合わせて立ち向うという、プロジェクトの精神を感じ取っていたと思います。まだ、自家用車もエアコンもない時代でしたから、「食べるものがなかった」と言われても想像することは難しくなかったのか もしれません。

一方、2004年から1960年(昭和30年代)を振り返ると、現代の小学生に44年のギャップは大きすぎるでしょうか。生まれた時からホームビデオで撮影されている子供たちにとっては、昔の ビデオデッキ を見せられても、「それがどうしたの」といったところでしょう。さらにDVDレコーダーの普及で、近い将来ビデオテープ自体が家庭から姿を消してしまうと、ビデオデッキ開発プロジェクトの意味を理解してもらうのは難しくなります。これが、エジソンの蓄音機のように、教科書に載るような発明品であれば、興味も沸くのでしょうが、プロジェクトXで扱っているのは「無名の日本人」です。

また、 青函トンネル 瀬戸大橋 のように、プロジェクト・スタッフの思いとは裏腹に、完成後の評価が思わしくないものもあります。十分活用されなかったり、ムダな公共事業の代名詞のように言われたりするのでは、子供たちが関心を持つこともできません。

シャープテレビ1号機 三洋洗濯機1号機
企業PRブースでは、各企業の歴史や最新のプロジェクトを見ることができます。洗濯板から最新式洗濯機までを並べたコーナーは圧巻。

さらに、携帯電話やインターネットなど、便利なものが揃っているのがあたりまえの生活の中で、今更そろばんと計算尺で新製品を生み出した苦労話を聞く意味をどう伝えたらいいのでしょう。また、ヤミ研(プロジェクトが会社に認められず勤務時間外に無給で研究を続けること)や「連日徹夜」「会社に泊まり込み」などの武勇伝が、サービス残業を取り締まる現代に通用するでしょうか。

ただ、昨年1年間の自殺者数が過去最高となり、小学生による殺人事件が起きて、生命の大切さが改めて問われている時に、戦場や戦後の食糧難を必死で生き抜こうとした人たちがいたことや、貧しい環境でも(それだからこそ)社会の役に立とうと力を合わせた人たちがいたことを考えるのは意味があると思います。

大林組クイズ
来場者参加型のブースもあります。こちらは、展示パネルを見ながら携帯端末に表示されるクイズに答えているところです。

ところで、夫が中学生の時の国語の授業で、「テレビジョンが家庭に普及し人々は報じられる発言や情報を権威のあるものだと受け止めるようになる」と情報化社会の危険性について述べた評論を勉強した記憶があります。街頭インタビューの手法が取り入れられ、視聴者参加型番組やいわゆるタレントが自由に発言する番組構成が増えると、「テレビでこう言っていた」という情報の信憑性や価値は定かではありません。現代では、インターネット上で誰でも発言できますので、子供たちが「ホームページに書いてあった」と言っても、その内容は危険なものが含まれている可能性があります。

また、私たちの持っているブランド志向は、「雑誌で紹介されたから」「有名だから」という基準で、ものの価値を判断しがちです。そこでは、発言や仕事の内容よりも「テレビに出ること」「有名になること」「注目を浴びること」自体に価値がでてきます。

そこで、社会は、独りで脚光を浴びる人よりも、力を合わせて働く多くの無名の人によって支えられているということを、もう一度子供たちに伝える必要があるでしょう。そのために、このイベントは役立つと思いました。 黒四ダム の模型や 低公害エンジン のカットモデルを前に、なぜこうしたプロジェクトが必要だったのか、それら(の技術)が現在の生活にどのように役立っているのかを親子で話し合ってもらえば、エネルギー問題を考える機会にもなります。

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