労働基準法は、労働者の賃金や労働時間、休暇等の主な労働条件に
           ついて、最低限の基準を定めたものです。この基準に満たない就業規則
           や労働契約は、その部分が無効となり、労働基準法が適用されます。


           労働基準法はこんな法律です


         1.労働基準法とは
         
            労働基準法は、強行法規です。使用者がこれを守らないと罰金刑や懲役刑に処せられ
           ることもあります。たとえば、労働基準法の第4条に、「男女同一賃金の原則」の規定があ
           りますが、これに違反した使用者には「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処す
           る。」と同法119条に規定されています。
             また、このほかにも、強制労働の禁止、公民権行使の保障、時間外労働や休日労働の
           割増賃金の支払義務等に違反した場合の使用者に対する罰則規定は沢山ありますが、
           このように使用者に対して厳しい規定となっているのは、
労働基準法の目的が、労働者の
           
保護にあるからです。
            
             労働基準法は、同居の親族のみを使用する事業や家事使用人等を除き、全ての労働
           者に適用されます。社長と従業員の二人だけの事業場でも、その従業員には労働基準法
           が適用されます。

             それでは、労働基準法の主な条文を見ていきましょう。


         2.労働基準法の主な条文

             第1条(労働条件の原則)
              @労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでな
                ければならない。
              Aこの法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者
               は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向
               上を図るように努めなければならない。

                 労働基準法は、労働者が人間として価値ある生活を営むために必要な最低の基準を定めたものです。
                     就業規則の規定の水準が労働基準法の規定の水準を上回ることを理由に、就業規則の規定の水準
                     を労働基準法の水準まで引き下げることは出来ません。労働者側の同意があっても本条違反です。

               第2条(労働条件の決定)
               @労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。
                 
しかし、現実は労働者の立場は使用者より弱いですね。そのために、労働者は労働組合を結成し、
                     団結して使用者と交渉する等の権利が認められています。


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              第4条(男女同一賃金の原則)
                 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的
                取扱いをしてはならない。  
                 
女性を男性より不利に取り扱うことだけでなく、女性に有利に取り扱うことも本条違反になります。 

                
第5条(強制労働の禁止)
                使用者は、暴行、脅迫、監禁、その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手
                段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
                
実際に労働させなくても、労働者の意思に反して労働を強制することも本条違反になります。
                     なお、第5条違反には、「1年以上10年以下の懲役又は20万以上300万円以下の罰金」という
                     労働基準法の中でも最も重い罰則が科せられます(労動基準法第117条)。

               
第15条(労働条件の明示)
              @使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間、その他の
                労働条件を明示しなければならない。
                 
明示すべき労働条件には、労働契約の期間や賃金等、必ず明示すべき絶対的明示事項と、退職
                    手当や賞与等定めがある場合には明示すべき相対的明示事項があります。
                     なお、明示された労働条件が事実と相違する場合は、労働者は即時に労働契約を解除できます。

               
第16条(賠償予定の禁止) 
                 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定
                 する契約をしてはならない。
                
労働契約の不履行について、実際の損害額にかかわらず、一定の金額の損害賠償額をあらかじめ
                      決めておくのを禁じるもので、現実に発生した損害について損害賠償を禁止するのではありません。

               
第20条(解雇の予告)
               @使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予
                 告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均
                  賃金を支払わなければならない。
                    
たとえば、20日前に解雇するのなら10日分の平均賃金を支払わねばなりません。
                        なお、天災事変等で事業の継続が不可能になった場合や懲戒解雇事由等に該当する場合等、
                     労働者側に責任がある場合には、行政官庁の認定を受ければ、本条の規定は適用されません。
                      また、日雇労働者や短期的な労働者等も本条の適用外となります。

               
 第26条休業手当)
                   
  使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間
                 中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければ
                 ならない。
                  
就業規則等において休日となっている日は、使用者は、休業手当を支給する義務はありません。

              
 第32条(労働時間)
                @使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働
                 させてはならない。
                A使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について
                 8時間を超えて、労働させてはならない。
                
 皆様良くご存知の、労働時間の原則です。変形労働時間制を採用した場合等には特例が認められ
                       ています。なお、使用者は、労働時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは1
                      時間以上の休憩時間を、労働時間の途中で与える必要があります。

              
             第36条(時間外及び休日の労働)
                @使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合や労働者の
                  過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合
                 には、その協定で定めることによって、労働時間を延長し、又は休日に労働させる
                 ことができる(長文のため、簡略化してします)。     
                      この協定がいわゆるサブロク協定です。36協定で定められた限度を超えて時間外や休日労働を
                      させるのは、労働者の同意があっても、災害や公務による臨時の必要がある場合以外は違法です。
                      また、時間外労働や休日労働は、臨時の必要があった場合に行うべきもので、36協定を結べば
                      いくらでも時間外労働や休日労働をさせられるものではありません。
                      労働基準法には36協定を結ぶ際の時間外労働の限度に関する基準が定められており、限度時間
                      は、1週間に15時間、1か月45時間、1年で360時間となっています。

                
第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
                @使用者が、災害等による臨時の必要がある場合や36協定によって時間外
                  労働や休日労働をさせた場合においては、その時間又はその日の労働につい
                  ては、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下
                  の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わ
                  なければならない。
                 
 時間外労働や休日労働が、災害等による臨時の必要もなく、36協定によらない等違法なもの
                       でも、使用者は割増賃金の支払義務があります。
                       なお、割増率は、次のとおりです。
                         時間外労働      25%以上     休日労働         35%以上
                         深夜労働        25%以上     時間外、深夜労働  50%以上
                         休日,深夜労働       60%以上

                
第101条(労働基準監督官の権限)
                 @労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及
                  び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことが
                  できる。
                 
 労働基準監督官は、労働基準法違反の有無を調査するため事業場に立ち入ることができます。
                       そして、労働基準監督官は、労働基準法違反の罪につき、刑事訴訟法に規定する司法警察官
                       の職務を行うこととされています(労働基準法第102条)。。

                
第104条(監督機関に対する申告)
                 @事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実があ
                   る場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官
                   に申告することができる。
                  A使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他
                  不利益な取扱をしてはならない。
                   
不利益な取扱とは、解雇、人事異動、賃金等について他の者に比べて不利益な扱いをする事
                       です。
             
             第115条(時効)
                    この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は
                  2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合に
                  おいては、時効によって消滅する。
                   
賃金の時効は2年、退職金の時効は5年です。この期間を経過してから請求したり、訴訟を提起
                       しても、会社側が時効を援用すれば、つまりそれはもう時効だと主張されたら終わりです。
                       手続きは早めに行うことですね。


          
 3.その他の労働基準法の規定

         
  2でご紹介した以外にも、年少者、女性、有給休暇、就業規則等重要な規定があります。
            これらの規定の主要な部分をご紹介致します。
    
            (1)年少者
                @使用者は、児童が満15歳 に達した日以後の最初の3月31日まで、つまり、
                中学卒業までは、原則使用できません。
               A但し、非工業的業種の事業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その
                 労働が軽易なものについては、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を
                得て、満13歳以上の児童をその児童の修学時間外に使用することができます。
                また、映画の製作や演劇の事業については、上記の各要件を充たせば、満13
                歳未満の児童を使用することができます(以上労働基準法第56条)。

               B使用者は、満18歳未満の者を使用する時は、年齢を証明する戸籍証明書を
                事業場に備え付けなければなりません。
               C使用者は、Aによって満15歳未満の児童を使用する時は、修学に差し支えない
                ことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に
                備え付けなければなりません(以上労働基準法第57条)。
          
               D親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結したり、賃金を
                受け取ってはいけません(労働基準法58条、59条)。

            (2)女性
               @使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が
                休業を請求した時は、その女性を就業させてはいけません。
               A使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。ただし、産
                 後6週間を経過した女性が就業を請求し、医師が支障がないと認めた業務に
                 就かせることはできます(以上労働基準法65条)。

               B使用者は、妊産婦(妊娠中及び産後1年を経過しない女性)が請求した時は、
                 変形労働時間制を採用していても、1日または1週の法定労働時間(32条に
                規定されています)を超えて労働させてはいけません。  
                また、災害や公務のための臨時の必要があったり36協定があっても、妊産婦
                が請求した場合には、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせてはいけません
                (労働基準法66条)。

               C生後満1年に満たない生児を育てる女性は、通常の休憩時間以外に、1日2回
                各々少なくても30分の生児を育てるための時間を請求でき、使用者は、育児期
                間中は、その女性を使用してはいけません。
                なお、育児時間を有給とするか否かは、法律では定められていませんので、当事
                者が定めることができます(労働基準法67条)。

               D使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その女性
                を就業させてはなりません。
                また、就業規則等により生理休暇の日数を限定することは認められません。
                なお、生理休暇中を有給とするか否かは、法律では定められてません。
                育児時間と同様に、当事者間で決めることができます(労働基準法68条)。
              
            (3)有給休暇    
               @使用者は、労働者の雇入日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割
                 以上勤務した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇
                 を与えねばなりません(労働基準法39条)。
                 有給休暇についての詳細は、職場のトラブル事例をご参照下さい。
                   
                        ”職場のトラブル事例−正社員編(有給休暇の取得)”へ

                      ”職場のトラブル事例−パート社員編(年次有給休暇)”へ


             (4)就業規則
               常時10人以上の労働者を使用する使用者は、決められた事項について就業規則
               を作成し、変更した場合には、行政官庁に届け出なければなりません(労働基準法
               第89条)。
               就業規則についての詳細は、”就業規則とはこんなものです”をご参照下さい。

                            ”就業規則とはこんなものです”へ


               このほかにも、労働者を保護するための色々な規定があります。
               労働基準法は、口語体で読みやすくなっています。
               この機会に、あなたも労働基準法の条文を読んでみてはいかがでしょうか。

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