|
11月22日、「萌える英単語〜もえたん〜」が発売されました。それから一ヶ月。各所に既に様々なレポート、考察などが上がっていると思いますが、それとは別に考察を試みたいと思います。なお、現時点では他の考察には目を通しておりません。(12月23日現在)
まず、「もえたん」が企画された背景としては、萌え実用書があります。主にコンピュータ関連の解説書で、いわゆる美少女絵を使ったものがいくつか発売されていました。これらに私は目を通していないのですが、普通に解説書だったというような感想を耳にした記憶があります。 「もえたん」はこうした萌え実用書としての単語集として企画され、発売前は一般にもそう認知されていたと思います。しかし、発売後にその評価は大きく変わったのではないでしょうか。そう、「もえたん」の真価は萌え絵にあるのではなく、そのネタ例文にあったのです。非常に狭い範囲の人たちをピンポイント爆撃するネタ例文は、その範囲内の人にとってはそれを読むだけでも非常に面白いものでしょう。面白いのはその狭さゆえであるという『勝手に改造』的面白さではあるのですが。(一般紙にマニア向けのネタが堂々と乗るというのは『勝手に改造』が大きな流れを作ったと思いますので、文化論的にこの考察も面白いと思います) 「もえたん」は例文が重要だと述べましたが、これは単語集として非常に注目すべきことです。言語は単語単位でなくフレーズ単位、できれば文単位で覚えるべきものだからです。なぜかというと、単語単位で覚えてしまうと、単語レベルの一対一対応で記憶してしまうからです。異なる言語で単語が一対一対応をしていることはまれです。さらに、単方向で覚えてしまう傾向もあるでしょう。双方向で単語が思い浮かばねば、身に付いたとはいえないでしょう。作文ができ、会話ができるには、単語の訳ではなく意味が身についていなければなりません。 今まで受験戦争を戦ってきた人たちは、当然単語集の類も使用したと思うのですが、例文はどの程度読みましたか? それほど良くは読まなかったのではないでしょうか。面白くもない例文を読むのははっきり言って苦痛ですからね。しかし、今まで述べてきたとおり、単語を覚える際には文で覚える方が望ましいのです。このギャップを解消するためには、例文自体を面白くするのがストレートな解です。しかし、この方法を取った例文集は今までメジャーではなかったと思います。例文を読ませるアプローチを取った単語集で、初めてヒットしたのが「もえたん」であると言ってよいでしょう。これは非常に画期的であると私は思います。 また、ネタ例文が既存のオタク族向けのネタを踏まえたものであることも大きいでしょう。なぜかというと、既に文脈が存在しているからです。人間の記憶はいくつかに類型化できるそうですが、そのなかにエピソード記憶と呼ばれるものがあります。これは話の流れとして覚えるもので、芋づる式に記憶するものです。この記憶は形成が容易で忘れにくいのが特徴です。文脈があれば、吉野家コピペ程度の長さなら90%以上の精度で記憶できるのです。一方、既存の単語集の例文がなぜ覚えられないかというと、それが単独で存在するもので、文脈が存在しないからです。文脈が存在すれば、既存のエピソード記憶にぶら下がることで記憶でき、記憶が容易になります。 また、オタク族にとって親和性の高い話題で構成されているのもポイントでしょう。「この文は英語ではどう表現するのか?」と、興味を持って接することができるからです。ですから、ある程度の英語能力がある人にとっては、表現の幅を広げる上で有用だと思われます。 ここまで、「もえたん」の優れている点を述べてきましたが、これはコンセプトの優秀性についてです。しかし、訳者の英語力と(たぶん)ネイティブチェッカが一般人だったことにより、英語表現としてこなれていないような印象を受けました。私の英語力は人に自慢できるレベルではないのですが、なんとなく英文が直訳くさいと感じたのです。まあオタク文化のような尖った文化を他言語で表現すること自体が難しいのですから、これは不可抗力でしょう。 以上が考察となりますが、私の中で「もえたん」、正確にはそのコンセプトの評価はかなり高いです。この手法は一般向けにもある程度応用できるでしょう。この本は、あの表紙で反応してしまうような人にとってはまず間違いなく買いです。ぜひ、みなさん「イラストに騙された名無しさん 」になってください。 2003年12月23日 もえたんのネタがほとんどわかってしまったNohe |