サンティアゴ巡礼路調査 2004年11月〜12月

  四国八十八ヶ所を歩くうちに、当然のことのように海外の巡礼路にも興味が湧いて来た。たまたま2004年の晩秋にイベリア半島を旅することになり、その旅のテーマとして「サンティアゴ巡礼路調査」も加えることにした。訪れようと思っていた場所の多くが巡礼路と重なっていたのだ。

  旅の前半は海岸沿いのいわゆる Coast Road を下るような(サンティアゴから遠ざかる)方向で、オビエド、サンティリャーナ・デル・マール、ビルバオ、サン・セバスティアンなどに泊まり、その後にメインルートともいうべき French Road をサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して辿った。前半は列車を主として一部バス、ごく僅かタクシーであったが、後半はバス主体に逆転した。

  フレンチ・ロードはスペイン国内でおよそ750キロあり、そのうちパンプローナからの680キロを約二週間で、ほぼ忠実に辿った。また三日間は部分的ではあるが合計60キロほどを歩き、車窓からでは窺い知ることのできない「歩いた実感」の把握や、道路状況の詳細を観察した。

  以下、四国八十八ヶ所(以下八十八ヶ所と略記)と比較しながら、その結果を記す。

 

道路状況

 

 

 

 

  八十八ヶ所に比較して遥かに平坦であり、道幅も広い。ほとんどが車輌通行可能な道であるが、巡礼路の車輌交通量は極めて少ない。

 


  交通量の多い幹線道路は、分離して未舗装の巡礼路が作られている。ごく一部、幹線道路の路肩を歩かざるを得ないところがあるが、それでも道幅に余裕があるため、八十八ヶ所より遥かに安全に歩くことができる。

 


 

 

  傾斜は最難所の一つとして有名なセブレイロ峠でも7キロで700メートルの登り、藤井寺から長戸庵が3.2キロで400メートルだから四国の方がきつい。 セブレイロはおまけに視界の開けた明るい道なので「難所」の印象は薄い。

 

舗装された地方道。交通量は至って少ない。
 

幹線道路に沿って続く巡礼路。未舗装で古来の道ではない可能性が高い。

ごく一部幹線道路の路肩を歩かされるが、それでも道幅に余裕があるので圧迫感はない。
 

森の中を行くのは稀だ。

セブレイロ峠の登り。勾配もさほどきつくはないし、道路状況も四輪駆動車ならば通行可能。

セブレイロへの途中にある栗林。車輌が通行できないのは此処ぐらいかもしれない。それとても顰蹙覚悟ならば強行突破も。

道標

  八十八ヶ所に較べ全体的に大がかり。やはり行政が主体でやると、このようになるかと感じられる。逆にいえば八十八ヶ所は民(個)主体で良く頑張っているの感慨も。
  サンティアゴ巡礼路がこれだけ整備されたのは、世界遺産に指定されたことも大きく影響しているようだ。

 

道標はコンクリート製多数のほか、金属製看板もある。

市街地では石畳に彫り込んであるところも。これも行政だからなせる業であろう。

ペンキの道標も、風情はさる事ながら判り易い。

集落は大概その手前に地図入り道標がある。教会やホテル、バルの位置が判り有り難い。

小数だが古風な道標。

さらに稀少な手造り道標も。

 

歩行サイクルタイム

  歩く旅は早出して早く着くことを原則としたいが、スペインの場合必ずしもそれが適するともいえないようだ。宿の朝飯は大体8時過ぎ。レストランでの昼食は1時前には無理で夕食も8時を過ぎる。全体的にスペイン人のサイクルタイムは遅い方にシフトしている。
  例えば5月1日のレオン付近(巡礼路のほぼ真ん中)の日昇、日没時間を調べると、サマータイムの関係もあり7時17分と9時25分だ。このようなことを考慮すると、日本的感覚から二時間くらい遅らせれば良いのかもしれない。
 

気候

 

 

当然のことながら地域差が大きいが、概して暑さ寒さ共に厳しくはない。
 
  10 11 12 平均
高知 5.5 6.7 10.1 15.5 19.2 22.5 26.3 27.2 24.1 18.5 13.0 7.8 16.4
A Coruna 10.0 10.1 11.2 12.0 14.1 16.2 18.2 18.6 17.8 15.6 12.2 10.6 13.9
A Corunaはサンティアゴの北、約40キロ

 

宿・食事

  街道沿いには、鄙びてはいるが居心地の良さそうな宿が多数ある。昼食を摂れるところも多い。
  さらにほとんど各集落に、少なくとも一軒のバルがある。軽い食事や、ワイン、コーヒーなどの飲み物も供され営業時間も長い。ちょっとした食料やミネラルウォーターなども調達できる。

 

バル

 

 

旅篭

 

 

ツーリストインフォメーション

  Turism(トウリスモ)は旅人にとって便利な存在だ。かなり小さな街にもあり、主要観光地や大きな都市だと、複数あるところも珍しくない。資料等も良く備わっている。
  英語が通じる見込みのなさそうな田舎の旅篭を、電話で予約したい時などには、代行してくれる。

アストルガのトウリスモ 一般的なトウリスモ以外に、巡礼路専門のもある

 

 

言葉

  英語は通じないことを覚悟しておいた方が良い。高級ホテルはともかく、三つ星クラスでフロントが英語をまったく話さないところもある。さらに地方の旅篭やバルでは、通じないことを前提としておくべきだ。しかし歩いてのんびり行く分にはあまり不自由しない。
  携帯電子辞書の7ヶ国会話ぐらいあれば多少便利だが、なくてもどうということはない。

 

服装その他

 

年配の巡礼者。一応標準的いでたち。

  八十八ヶ所のように白装束といった「制服」はない。一般的なのは、バックパッカーあるいはトレッキングの服装とでもいえば良いだろうか。
  巡礼者であることを示す、シンボル的なものとしては頂部が大きく湾曲した杖と、首からさげたり、ザックにつけたりするホタテ貝の貝殻がある。しかしこれにしても八十八ヶ所の金剛杖や鈴に較べれば少ないように見受けられた。

  地元の人々の巡礼者に対する眼差しは、八十八ヶ所同様に暖かい。今回、僅か60キロ歩いただけだが二回道を間違え、その度に救いの手が延べられた。
  最初は少し離れた所から、わざわざクラクションでこちらの注意を喚起して、正しい道を指してくれた。次の時は、追越して行った車が少し先で路肩に停まり、巡礼路を辿ろうとしているのか確認した上で、間違っていることを教えてくれた。
  

 

ガイドブック

  

左が本体、右側に付録の地図。専用ビニールケースに入っている。

 

  現地(サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサダ)で購入した英語版ガイドブックは245ユーロだった。フレンチ・ロードが主であるが、コスタ・ロードなども紹介されている。
  フレンチ・ロードを例にその内容を概説すると、全長約800キロを、一日で楽に歩ける30キロ程度に区切り、全部で31ステージとしている。
  1ステージ当たり8〜10ページ程度使用し、最初にコースの概要、地図、次いで宿やレストラン案内がある。そのあとには Histry and welth of the 〜 として、一種の観光案内となっている。
  本体の中に綴じられている地図とまったく同じものが独立し、バラバラの状態で付録になっている。歩く時はそのステージの地図一枚を専用マップケース(これもセットに含まれている)に入れて持ち歩けば良い。地図の裏側には、これまた本体と同じコースガイド(文)が印刷されている。
  サイクリストのためには、短いものではあるが各ステージごとに注意書がある。特に登りの険しい箇所での迂回路などは貴重な忠告であろう。
  これと同じものが日本で入手可能かは解らないが、同種のものがアマゾンで検索された
A Practical Guide for Pilgrims
  題名は違うがなぜかISBNコードは同じであった。現在品切れのようなので下記は英国アマゾン
The Road to Santiago-The Pilgrims Practical Guide

 

具体的にご質問頂ければ、もう少し情報を提供できるかもしれません。メールをお待ちします。