ニューヨークタイムス 1995.2.4

 

勤労者世帯に優先入居を認める公営住宅

(Housing Projects to Give Priority to the Employed)

 

●ニューヨーク市、ルールを変更

●住宅公社幹部は「新しい改革により公営住宅の安定性は保たれる」とするが、貧困層の指導者は懸念を示している。

(New York Alters Rules : Officials say move will renew stability, but advocates for the poor are wary)

by Shawn G. Kennedy

 

この10年間で初めてニューヨーク市住宅公社(New York City Housing Authority; NYCHA)は生活保護受給者に優先して勤労者世帯を空き家住宅に入居させる方針を明らかにした。市の幹部は、この方針によって公営住宅の経済的、社会的な安定性を回復することを期待している。

 ルールの変更は、さまざまな改革のひとつである。そのなかには職場において潜在的な居住者を掘り起こすことも含まれ、公社は18万戸に及ぶ公営住宅が、勤労者世帯にとってより魅力的なものとなるよう計画している。この10年間、勤労者世帯の構成比は46%から32%まで低下した。現在は、公営住宅への申込者のうち勤労者世帯はわずか8%に過ぎなくなっている。

 「経済的に統合された公営住宅は、うまく機能するものです。」「全米中で、このことが証明されています。」と、公社の総務部のマーチン・ペストライヒ氏は語った。

 この方針転換によって、住宅公社が長い間維持してきた、公的扶助を受けている者と高齢者、そして勤労者世帯に対して等分に公営住宅を供給する方針は破られることになった。しかし実際には、この10年間にわたり、勤労者世帯の応募と同様に、生活保護世帯への空き家の割当ては少なくなっていたのである。

 州と連邦政府が貧困層への生活保護の削減を推し進め、市もこの方針を採用することとなったとき、生活保護世帯と少数民族の擁護者たちは、彼らにとって非常に重要なこの方針の変化に対して危惧を抱くようになった。

 「私はこの変化を注意深く見ていきます」とヘイゼル・デュークス(ニューヨーク州HAACP会長)は語っている。「勤労世帯で低額所得のひとにたいする援助は必要であり、公営住宅の居住者もそれを望んでいることは知っています。しかし、それは問題を含んでいます。公正に実施されなければなりませんし、生活保護世帯を差別するようなものであってはなりません。」

 しかしながら、住宅公社の幹部とある居住者たちは、郊外の公営住宅は最も貧しい世帯のためのものとなってしまい、孤立している居住者が非常に増え、しばしば犯罪や薬物などの問題をもたらすようになったと主張している。

 実際、この新しい方針転換は、ここ数年住宅公社が始めた犯罪履歴のチェックや家庭訪問、面接などと同一の考えに基づき実施されたものである。

 ニューヨーク市では、まずクイーンズのファー・ロックアウェイ、ビーチ41丁目にある712戸の公営住宅にこの方針が適用された。この住宅に関しては、公社は勤労者世帯と高齢者世帯それぞれの待機者リストを別々に作成することにした。

 築20年のこの団地に対しては、最近4800万ドルの補助金を連邦が支出されている。この補助金は、5年間にわたる住宅整備と福祉サービス改善に活かされ、ハイテク技術を活かしたセキュリティ・システムとフルタイムのデイ・ケア、成人のための高等学校、小規模な企業融資、芸術文化活動のためのスペースと体育館、図書館を併設した地域施設などが設置された。

 しかしなお、住宅公社はこの新しい方針を推進している。公社総裁のルーベン・フランコは、今週、勤労者世帯の入居率を50%にまで引き上げるように空き家を割り当てることとした。

 「ビーチ41丁目団地の実験はとても重要です。この団地は今後他の団地で行う模範例となりうるものです。多様な人々が入居することがいかに大事かを私どもは認識しています。これはスタートにしかすぎません。」とフランコは語った。

 ここ数年、住宅公社は勤労者世帯、高齢者世帯、生活保護世帯がバランスを保つように努力を重ねてきた。しかし犯罪の増加と団地の衰退を目の当たりにして、勤労者世帯の減少と生活保護世帯の増加がその原因となっているのではないかと住宅公社幹部は考えるようになった。

 1980年代末、住宅公社はホームレス世帯に対して、市のシェルターの収容者数を減らすために公営住宅を提供するようになった。市ホームレスサービス局長のジョアン・マリンは、ホームレスに対する住宅の提供戸数が減少することは予期しなかったと述べている。住宅公社は、現在、ホームレス約1400世帯に対する住宅提供の義務を負っているが、これは4年前の2000世帯と比べて大きく減少している。

 「全体の戸数と比べれば、ホームレスに対する提供戸数は微々たるものにしかすぎません。私たちの努力に水を差さないでほしい。」とホームレスサービス局の広報担当、スーザン・ウィビオットは語った。

 ニューヨークの方針転換は、ジュリアーニ市長によって推し進められている。これは全国的な公営住宅方針転換の流れに沿ったものである。連邦住宅開発省の幹部は、他の公営住宅公社においても、同様の方針転換を行うことが望まれると述べている。

 「この方針転換の目標は、貧困層の公営住宅への集中を防ぎ、公営住宅自身が貧困の地となることを防ぐことにあります。私たちは収入階層をミックスさせることが最も直接的な方法であり、住宅改善と居住のルール変更を合わせて行うことが有効なのだと考えています。」と連邦住宅開発省副長官のジョセフ・シュルディナーは語った。

 クイーンズの団地に対して連邦住宅開発省が支出した補助金は、35000万ドルに及ぶニューヨークと他の7都市の老朽化した公営住宅に対する予算の一部である。

 住宅公社がラガーディア市長在任中の1934年に設置されたときは、居住者に関する規定は特になかった。1960年代末に至るまでは、両親のいる世帯か、少なくとも職業のある単独の親のいる世帯に対する入居が優先されていた。さらに、住宅公社は逮捕歴やアルコール問題を起こした者に対しては入居を認めないなどのモラル面での要素も入居基準としていた。

 しかし、公民権活動家たちによってこうした入居基準は変えさせられた。公民権活動家は、こうした基準が差別的なものであると主張したのである。住宅公社は、生活保護世帯がアパートに入居することが大変困難であると認め、生活保護世帯に対する平等配慮の方針を採用することとなった。

 さらに、1970年代末、議会は全国の住宅公社に補助金を支出し、収入制限を基準に導入し、公営住宅を最も貧困な層のために提供できるように決定したのである。

 しかし先月、連邦住宅開発省は、こうしたルールを緩和し、ニューヨーク住宅公社や他の都市の住宅公社に対して空き家のうち半数の入居者の入居基準を自ら決定できる権限を付与した。

 ビーチ41丁目団地ではほぼ半数が生活保護を受けている世帯であり、40%が高齢者世帯、11%が勤労者世帯である。平均収入は10380ドルであり、公営住宅居住者全体の平均収入12500ドルを下回っている。

 住宅の修復計画の実施には、居住者の移転が必要となる。新たな住宅では、ニューヨーク地域全体の平均収入の50%から80%の収入を得る者が入居者のうち60%を占めることになる。残りの40%については、主に高齢者世帯に割り当てられることになる。