・・・出演 うぶみ
 ひんの父は飲み屋さんが大好きで、お気に入りの店なんかも持っていたりします。誕生日にはお店のママの名前で家に花束贈られたりして、そういった手合いの遊びには慣れた人。たまに嫁の私を含めた家族みんなで、行きつけのお店に遊びに行ったりするのですが、その時必ずカラオケで歌う唄が一つあります。石原裕次郎の「爪」。

 始めてその曲を聴いたのは、もう十何年も前のこと。その時はごく普通に歌っていて、歌詞もメロディーもはっきりと聞き取れていました。が、年を重ねるにつれ回数を重ねるにつれ、義父なりの改良が加わっていき、今では何を歌っているのかすっかり分からない曲へと変貌しています。森進一ばりのセルフエコーで言葉がぼやけ、ビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」よりも激しい、頭の出だし一拍遅らす歌唱法を全章に渡って実行するという、とてもデコラティブな歌い方。技巧に走ると、こんなにも唄は変貌を遂げるという、とても素晴らしい見本となっております。

 さて、ここに一匹の猫がいます。名前はうぶみ。我が家の長男猫です。どうも仕草が人間くさいという特徴を持った猫なのですが、ある日ひんがうぶを指して笑っておりました。「ぶーさん、親父の「爪」だよ!」・・・確かにその姿はバーのカウンターで片肘付き、格好を付けながら「爪」を歌う義父の姿そっくり。前から親父臭い、親父臭いとは思ってはいたものの、まさか本当の親父にそっくりになろうとは。

 以来、このような格好を我が家では「爪」のポーズと言うようになりました。