東京都は2012年に築地を豊洲に移転するというけれど、本当によいのでしょうか?

  築地で働く人々のたぶん95%以上は昨年の今ごろ、移転は決まったものと考えていました。ところが、今年の三月辺りから、新市場の敷地が汚染されているという日本環境学会や築地の仲卸しを中心とした声がマスコミからも聞こえはじめたのです。私も土地汚染についてときどきニュースで聞いていましたけれど、正直いうと、あまり関心がありませんでした。「環境工学」というのをすこし聞きかじっていましたので、汚染された土壌を燃やしたりして土地改良をすればなんとかなるのではないかと漠然と考えていたのです。
  それから、日本特派員協会で築地移転についてのプレス・コンファレンスがあり、たまたま私も出席する機会に恵まれ――私がやっている「築地ツアー」のお客に特派員がいて紹介してくれたのです――、思っていたよりも、ずっと事態は深刻だと分かったのです。
  その後、日本環境学会の総会に参加し(3000円も払いました!)、深く知れば知るほど、豊洲に移転するは無理だという思いを強くしました。

  プレス・コンファレンスと環境学会でもらったさまざまな資料が手元にありますけれど、それらを私なりにまとめた結論だけをここに書くとしましょう。
  要点は、豊洲の土地と地下水が汚染されているのにもかかわらず、東京都がそれを認めず、今立てている、土壌の入れ替えやアスファルト舗装化などの対策によってまったく安全になると宣言している点です。
  それに対して、日本環境学会は、東京都の汚染に対する環境基準のとらえ方が甘く、対策も働く人々や消費者の安全確保の面からはほど遠いと主張しています。
  東京都は環境学会の学者による調査を拒んでいますし、「水質汚濁防止法」という、このケースに適用するのは見当違いな法律で環境基準をクリアするという法律違反まで犯しているのです。
  また、法律といえば、東京都は、汚染をひた隠しにしている事実を、完全な「ざる法」として悪名の高い「土壌汚染対策法」によって、「法律的にはまったく問題がありません」と、結論づけているのです。

  もうひとつ大事なのは、豊洲が地盤の液状化現象の危険地域に含まれるという点です。
  学術的に、首都直下型地震が起きる可能性は今後30年の間に70%とされています。液状化現象というのは、普通の状態では土のなかで均質に存在している、固体である土と、液体である水が、地震のエネルギーで分離し、水が地表にあふれ出す現象です。豊洲は東京湾をしゅんせつした泥で埋め立てられたので、土壌に多くの水分を含み、非常に液状化し易い土地と考えられています。埋め立ての後、1956年から1976年までの20年間の間に東京ガスが石炭からガスを精製した過程の副産物としてのヒ素、シアン、ベンゼンなどによって土壌と地下水が汚染されているのです。液状化すれば東京都の対策は役に立たず、汚染された地下水があふれ出し、新市場の営業が相当な長期間閉鎖されることが予想されます。
2007年7月19日
中村直人
豊洲の市場移転予定地で高濃度のベンゼンを検出
2007年10月6日
築地魚市場は日本の重要観光資源
2007年12月18日東京新聞
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