このサイトについて


 氷川透です。
 いまや、小説家といえばサイトを持っていてあたりまえ。そういう時代になってしまって、あわてて対応を試みたというのが実情です。

 インターネットはマニアックな出版なんかよりずっと不特定多数の眼にふれる可能性のあるメディアですから、宣伝効果という点で絶対に無視できません。さらに、自作に対する読者からのリアクションを得るという意味でもきわめて有効ですし、その場合の速報性ということも重要です。早い話が、小説家はもはやこういう部分では出版社に頼っていられず、みずから動かざるをえないわけです。

 ただ、ウェブサイトを開設する際になかば自動的に求められるのが、「プロフィール」のコーナーを設定することです。当然でしょう。ネットという匿名性至高のメディアで何かを発言しようとするなら、自分の社会的位置を可能なかぎりあきらかにしなければまったく説得力がない。ぼく自身も他人様のサイトを覗く際、しばしばそういった部分を重視していました。

 しかし、じゃあぼくもサイト開設にあたって「プロフィール」を明かせるかとなると話は別。なぜなら、ぼくはたまたま自分と同じ名前を持つ主人公が活躍する作品でデビューし、それを基本シリーズにしてしまったからです。この趣向は「エラリー・クイーンの猿真似」と称されてもしかたないでしょう(事実、1996年、鮎川哲也賞に応募するための作品を書きはじめた時点でこの設定を決めたときのぼくの心理はほとんどそれで言い当てられてしまう程度のものでした)。でも、こと現在に至ると事情はやや異なっていて、作者名と主人公の名が同じであることにはもうすこし積極的な意味があります。だから、このシリーズは(版元に見捨てられないかぎり)これからも続きます。

 さてこの状況下では、ぼくが生身の自分を無頓着にさらしてしまうことにはちょっとした問題が生じます。もちろん、自著の「著者紹介」に書かれている程度の情報(たとえば、横浜生まれ。A型、射手座。東京大学文学部卒)はそのまま示せますけど、すでに察していらっしゃるかたも多いでしょうが、「著者紹介」ではある種の情報が意図的に隠匿されています。もうちょっと具体的に言うなら、作中の「氷川透」と、現実の社会的存在としてのぼく――両者のあいだで異なるデータがもしあれば(ある、とは言ってませんよ、もしあれば、です)、それについてはいっさい載せないようにしているわけです(あ、東京都世田谷区在住くらいは言っていいだろうと最近思います)。さらには、「著者近影」も絶対に載せていません。

 こう言うと、「素顔をさらせないほど、さぞかしルックスが悪いんだろう」とか、「もしかして、よぼよぼのじいさんなんじゃ?」とか、「実は、美しい女性なのでは?」とか(笑)、さまざまな憶測を呼んでしまうかもしれません。だとすればそれらすべてを、「論理的に否定できない可能性」として受け入れます。否定しません(肯定もしませんけどね)。ご自由にご想像ください。

 ぼくが真に願っているのは、作品をできるかぎり自由に読んでほしい、ということです。読者のみなさんに対して、ぼくが重要に思うのはあくまで「作品」であって、「作者」たるぼくではありません。ですから、作中人物の「氷川透」についても、読者として好きなだけ想像の翼を広げて、お好きなように読んでほしいわけです。もちろん彼とぼくとはあくまで別々の存在です。言われるまでもなくそうするよ、という健全な読者もいるでしょう。でも人間の感情としてそうそう両者を切り分けられない、というかたがいらっしゃっても不思議ではない。となると、ここで(あるいは著作の「著者紹介」で)ぼくが不用意に「生身の自分」をさらすことによって、それに影響され作中の「氷川透」を偏って見るようになってしまうような読者の存在を、ぼくはこれまた「論理的に否定できない」わけです。それは避けたい。だから、ぼくは素顔をさらしません。これは、ひょっとすると「死ぬまで」になるのかもしれません。

 ですから、ぼくはこのサイトで、生身の自分を語るような発言を必要以上にすることは、厳に慎みます。
 毎日の日記をヴィヴィッドにアップしたりすることにも誘惑されたのですが、それは「生身の自分」をたれ流しすることでしかないので、残念ながら見送ることにします。ただ、せっかくサイトを開設するわけですから、何か言いたいことができた場合にそれを発言するコーナーは設けます。「雑文」コーナーですね。そこでの発言は、作中人物「氷川透」によるヴァーチャルカキコになる場合もあるだろうし(たぶん、これが多数派でしょう)、可能なかぎり素顔と生身を隠したうえで社会的存在としてのぼく自身の人格でする場合もあるでしょう(どちらかと言えば少数派になるのかな)。それを見分けていただく必要は……ぼくの側から言うならば、まったくありません。

 これは、掲示板でのレスや、メールに対するお返事に関しても同様です。ただしこれらについてはそもそも、かならずしもなされるとは限りません。この点、よろしくご了承ください。
 何だか、ほんとにめんどくさいやつですが、いろんな意味でとにかくおつきあいいただければ幸いだと思っております。どうぞよろしく(^^)。



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