2002.5
↓時間軸
サッカー、日本3−3ホンジュラス。
失点は、最終ラインだけの責任ではない(相手も強かったしね)。でも宮本は1点めでシューターに寄せきれなかったし、松田は2点めでも3点めでも判断ミスしているような(ほかに、致命的なパスミスもあり)。中田浩も、これまた2点めと3点めでやすやすとクロスあげさせちゃって。DFはほかのポジションとちがい、きょうのメンバーと森岡の4人はもう決まりみたいな扱いをされてて(中田浩なんか、もっと服部と競争させられるかと思ってました)、だから気がゆるんだってだけの話ならいいんですが。とにかく前半だけで3失点というのは、正直ちょっと動揺しました(笑)。
稲本はすこしずつ上向いてるみたいだけど、まだ完調にはほど遠い。微妙に判断が遅れてますよね。福西ともども、前に出てゆく力は見せましたが(逆にそれが失点の遠因かも)パスの供給元としては物足りなかった。したがって前後半とも「パスの出どころ」は中村しかなかったわけで、引いた相手を崩すのは至難です。セットプレイでしか得点できないってのはべつに不思議ではなく、むしろ得点できるセットプレイを持っていることを誇るべき。さすがに、これで中村は外せないでしょう。コーナーキックを直接入れるなんて、見たのはたぶんレオナルド(当時鹿島)以来かな。あれ、岩本テル(仙台)も最近やったっけ?
アレックスは、PKでの集中力は感心しましたが、実はあまり状態よくないですね。ペナルティエリア内のシュートチャンスにパスするなんて、眼を疑いました。まさか、自信を失ってる?
自信を失ってると言えば鈴木、そしてきょう出なかった柳沢。ほかにも、ミスだらけの西澤や化けきれない久保、FW陣がいつまでもこの調子なら本大会は全試合1トップで行け、と言いたくなります(暴論)。
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講談社ノベルスの新刊見本が届きました。もっとも、何しろGWなので流通は止まってるでしょう。店頭に並ぶのは、かなり先かも。
有栖川有栖『マレー鉄道の謎』、森博嗣『朽ちる散る落ちる』、浦賀和宏『浦賀和宏殺人事件』(密室本)、西尾維新『クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識』、そして本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ02』の5点です。もう1点、大塚英志『リヴァイアサン 週末を過ぎた獣』はちょっと遅れている模様。
『クビシメロマンチスト』は、装丁がますます突っ走ってるなあ。『マレー鉄道の謎』は帯の煽りがすごい――「今だからこそ問う真正面の「本格」!」。しかし何と言っても注目は、『浦賀和宏殺人事件』でしょう。「ミステリ作家浦賀和宏は悩んでいた。次作のテーマは「密室」。執筆が難航するなか、浦賀ファンの女子大生が全裸惨殺死体で発見される。彼女が最後に会っていたのは浦賀和宏!?」(カヴァー表4の紹介文より)。さらには帯に、「ミステリでここまでやるのは果して許されるのか!?」。むむ。あやしい。あやしすぎるこれは(笑)。
いつも森さんの新作が出る月は真っ先に読むんだけど(しかも「地下密室+宇宙密室」だそうで魅力的だけど)、う〜ん、今回に限ってはウラガーからかなあ……。って、『こわれもの』もまだ読んでないのに(汗)。
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高原も西澤もまにあわないとなると、また中山待望論が出そうですね。あまり賛同できませんが。それより、全試合1トップって話が現実味を帯びてきてたりして。
レアルマドリード1−0日本代表。
またしても左にアレックスでトップ下が森島とは。だからそれじゃあ攻撃が成立しないんだってば。気のきいたパスをくれる選手がいないからアレックスが生きない。前線にスペースができないから森島が生きない(右も市川、じゃなかっただけ若干ましでしたが)。後半から入ってみればアレックスが服部になっちゃってて小笠原も生きない。久保も山下も結果を出すでもなし、さりとて見切れる感じでもなし、何とも中途半端。
この試合で確定ランプのついた選手、逆に脱落の決まった選手、どちらも皆無でしたね。ひょっとして天候とピッチコンディションから、トゥルシエは早々にテストをあきらめてしまったのか?
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ただいま執筆に忙しく死にそうなので、ごく簡単に。
小野の所属するフェイエノールト(オランダ)、UEFAカップを制覇(これはほんとうにすごいことです、日本人初の欧州カップタイトルだし小野は実際に貢献している)。
稲本の所属するアーセナル(イングランド)、プレミアリーグとFAカップの二冠達成(ま、稲本が貢献したとは言いがたいですが)。
そして、中田英の所属するパルマ(イタリア)、コパ・イタリア優勝(現在のセリエAでのパルマの位置を考えれば大金星)。
すべてにお慶びを申しあげます。おめでとうございます。代表チームにも弾みがつけばよいのですが。って、ふつうつくでしょ。
……最近、サッカーネタばっかりだな。つまらんと思ってるかたがいらっしゃったら、ごめんなさい。でもほら、生きてるあいだに二度とはないだろうイヴェントが迫ってるんだし、見逃してください(笑)。
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原書房ミステリー・リーグ用の長篇を、脱稿しました。ああ、しんどかった。
担当の I 毛さんも気に入ってくださって、ボツにはならずにすむ模様。で、 I 毛さんおっしゃるには、「いいですね、これ。じゃあ来月出しちゃいましょう」。……え? だって、もう5月も半分過ぎてるのに。んな無茶な。無理矢理な。まさか冗談ですよね?……
というわけで緊急告知(さすがスーパー編集者だ)。
次の新刊は6月下旬刊行予定です。原書房から。
サッカー、ノルウェー3−0日本。
いちばん気になったのは、チーム全体に漂う妙な気だるさのようなもの。疲れてるんでしょうか?(中田英が疲れていたのはあきらかでしたが……) モティヴェーションが下がってるはずはないんだけど、ほとんど無気力にも見えてしまうようなミスがやたらと多かった。前半だけで替えられた福西と市川はメンバー発表に向けて生きた心地がしないでしょうね。あと、やっぱり稲本。すごくいいプレイが増えてきましたが、同時にやばいプレイも多かったぞ。やっぱり本調子ではないような……。
でももっと心配なのは、トゥルシエ。2トップとか、小野は左で起用とかは、もう固めちゃったんでしょうか? いや、前者については戦略的に1トップシステムをあまり見せたくないのかもしれません(けがの柳沢をあえて使ってまで森島を隠した、というようにも映りました)。でも、小野を右やボランチで使うのはある程度長い時間、試しておくべきだと思うんだけどなあ……
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第2回本格ミステリ大賞は、小説部門が山田正紀『ミステリ・オペラ』(早川書房)、評論・研究部門が若島正『乱視読者の帰還』(みすず書房)と決まったそうです。受賞のお二人、おめでとうございます。
サッカーW杯の日本代表メンバー発表。……正直、バックレたいです。でも最近これだけ頻繁にサッカーをネタにしてきた以上、そうもゆきますまい。
もちろん代表監督は選考の全権をあたえられているわけで、どんなメンバーを選ぼうが自由。その決定は尊重されるべきというのは、当然の前提です。誰であっても、感情的に「文句を言う」とか「なじる」とか、そういうことはするべきでない。
でもいっぽうでその国のサッカーファンはそれぞれ自分なりの理想メンバーを思いえがくものであり、そこからあまりに離れた決定がなされた場合には「疑問を呈する」べきだし、「異議を申し立てる」のもいいでしょう。つまり「批判」は許されているはずです。そうやって異なる主観をつきあわせないと、その国のサッカー文化のレヴェルアップはありえないからです。
さてこの際ぼくが中村俊輔の「プレイ」のファンであることは否定しませんが、以下は決して、ひいき選手を外されたがゆえの感情的反応ではないつもりです。「俊輔がかわいそう」だからではなく「日本が心配」だから言います。
現在の日本代表で欧州サッカー界に知名度を確立しているのは中田英と小野だけ。当然、ベルギーもロシアもチュニジアも特に二人に対してタイトにマークしてくると考えるべきです。そのとき、どうやって攻撃するか。二人が抑えられても、スペースに飛び出せる選手はいる。でも、そこにパスを出せる選手が二人以外に必要です。両方できるのが中村だと思うんですね。とりわけ、FWを1トップにして、中田英と並んでトップ下に入ったときの。シドニー五輪予選で実績があるんですから。そんなポジションじゃいずれマークがつく、と反論されるかもしれませんが、それで中田英と小野へのマークを分散できればすでに一仕事です。
多くの人が指摘するとおり、フリーキックも忘れてはいけない。日本の攻撃がある程度セットプレイに頼らざるをえないのはあきらかだし、左足のキッカーがスーパーサブのアレックスだけというのは、トゥルシエの大好きな「バランス」を欠くでしょう。率直に言って、日本が得点するパターンが中村抜きではほとんど見えません。だから「日本が心配」なんです。「ヒデもシンジもいるじゃんかー」という人は、W杯本大会で欧州チームがどういう戦いかたをするか、知るべきだと思います。
あるいは、ぼくが中村に感じるのと同様のことを名波に感じるかたもいるでしょう。稲本に感じるかたもいるかもしれない。でも名波も選ばれなかったし、稲本はこの文脈では全然復調していません。彼があと2週間で劇的に良化すればノープロブレムだけど……。一次リーグでどれだけ点がとれるか、きわめて不安だなあ。
それから中山と秋田ですが……まず、ご当人たちに対しては、何も含むところはありません。
合宿や遠征での共同生活を重視してチームの一体化を演出してきたトゥルシエは、ノルウェーで「99%がここにいるなかから選ばれる」とまで言いました。そのあげくここへ来て、あんなに長く代表を離れてた中山と秋田って、どう考えてもまともな選考じゃないですよね。
戦力としてにせよ精神的支柱としてにせよ、二人が必要だともともと本気で思ってたんならもっと早く合流させてなきゃ意味は半減します。土壇場でこんな泥縄をやるってことは、サッカー協会から圧力がかかったのでなければ……ノルウェー戦を受けて、トゥルシエが全面的にパニクってるんじゃないかとこれまた「心配」です。おいおいしっかりしてよ、こっちも応援してるんだからさ。
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浦賀和宏『浦賀和宏殺人事件』(講談社ノベルス)読了。
「×××(人名)が殺された事件」のことを「×××殺人事件」とはいわない、「×××殺害事件」である――という日本語のルール(クリスティの『アクロイド』ですね)を思い出して、このタイトルだいじょうぶかなとちょっと心配だったのですが、最後まで読めば微妙にだいじょうぶでしたね。けっこう深いです。
いや、何だか妙に好きになっちゃいましたこの作品。浦賀さんは「小説家・浦賀和宏」というキャラをみごとに立ててしまったというか。何か所かで爆笑してしまって、あれだけ陰鬱なイメージの先行してきたこの作家の、ギャグセンスも侮れないことに気がつきました。そうだよなあ、浦賀和宏で密室っていえば、やっぱりこれしかないんだなあ……それにしても、まさかぼくの名前まで出していただけるとは(笑)。
ところで、これっぽっちの分量なのに、どうして19行組みなんでしょうか(講談社ノベルスの基本は18行組み)。まさか、すこしでも薄っぺらくしたかったの?
飛鳥部勝則『バラバの方を』(トクマ・ノベルズ)読了。
とにかく冒頭から登場人物の誰もが誰かを殺そうとしているような異様な設定に、思わず引きこまれる。いくら何でもこんな状況ありうるかい、という感覚がこれは幻想小説なのかと戸惑わせる。ところが中盤からすうっと霧が晴れるように視界がひらけて(謎はそのまま維持されてるんだけど)、個性的な名探偵もあらわれ、最終的にはまぎれもない「本格」になる。ある意味で、この筋運びは現代本格の理想型の一つですらあるかもしれません。
しかも、その「本格」ぶりが手がかりの提出といい謎解きの組み立てといい実にシンプルかつスマートで、まさしく端正そのもの。
(以下ネタバレ)ホラーっぽいラスト(ここまで)にのみ違和感がありますが、飛鳥部作品では名作『砂漠の薔薇』(光文社カッパ・ノベルス)に次ぐすぐれものだと思います。
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新宿に出て、原書房の I 毛さんとうちあわせ。
まずはミステリー・リーグ長篇の、早くも出てきた初校ゲラを受け取る。ラストの処理について意見交換し、いっそすこしばかり加筆しましょうという方針に。ほかにも細部についていろいろチェックポイントをご指摘いただき、修正すべき課題が明確になりました。さすがスーパー編集者です> I 毛さん。
それとタイトルですが、最終決定ではないもののどうやら『追いし者 追われし者』に落ち着きそう。掲示板やメールでご意見をお寄せくださったかたがた、ほんとうにありがとうございました。参考にさせていただきました。
さあ、これから地獄の著者校週間だ。でも、サイトもちゃんと更新するぞ(<だいじょうぶか?)
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西尾維新『クビシメロマンチスト』(講談社ノベルス)読了。
同じ構文を反復しながら、類義語や同音異義語を多用して意味を横滑りさせてゆく。あるいは、決まりきった表現のなかで単語一つだけを意図的に差し替える。こういった特異な文体は前作『クビキリサイクル』でも垣間見られた、いわば西尾維新式「戯言」の特徴と言えるでしょう。今回は、第一章の1ページめから「正当な日本語以外も使いますよ」宣言(「剣呑剣呑」)しているだけあって、さらにエスカレートしてます。ふつうだったら「これは誤用です」と国語教師に叱られそうな表現も、ちょくちょく出てきます(「瞳」を「眼」の意味で使ったり、「相槌る」とか「刹那げ」とか造語したり)。十代の読者が鵜呑みにしておかしな日本語を身につけたらどうすんだって思うくらいですが、これが魅力になっているから困る(笑)。あと、「ぼくの運動神経は並以下とは言わないが、決してそれ以上ではない」、「ぼくらしくないとまでは言わなくても、ぼくの流儀からは外れている」、「それほど低くもないけれど、決して高くもないのである」といった、饒舌すぎるとか冗長とかわかりにくいとか言われかねない表現が、実はそれぞれの箇所で特有のニュアンスを醸成していることも見落とせません。そういうわけで、ひとことで言ってしまえばよく書けている小説です。そう思います。
さて、ぼくは『クビキリサイクル』の感想で、西尾さんの才能そのものは疑いえないが「本格」にこだわらないほうがいいんじゃ、みたいなよけいなことを言いました。すると今回は、前作のように孤島が舞台になるでもなく京都の街で「青春小説」全開の展開。うんうんこのほうがいいよ、と読んでました。ところが最後まで読み通して茫然自失。前作以上に「本格」なのです。それも、みごとな。トリックに無理無理感は否めませんが、これほどまでに張りめぐらされた伏線の妙はどうだ。はっきり言いますが、一読ではこの作品の真価は理解困難ですね。肝の部分で何と叙述に神経を使っていることか、ほんとに感心しました。あと、《X/Y》の意味ですけど玖渚友の回答が正しいのなら、自信ないんですがひょっとして「みっしつ」が答えでしょうか。
というわけで、西尾維新の才能の寸法がぼくには見えなくなってしまったのです。もしかしたら、「本格」書きとしても希望の星なのかもしれません。次作以降に注目(幸い、次もすぐ出るみたいですし)、です。
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前回の雑文で書いた『クビシメロマンチスト』の《X/Y》の答えですが、掲示板(#354〜#362あたり)をごらんいただくとわかるとおり、大まちがいだったみたいですね(赤面)。失礼いたしました。
黒田研二さんから、新刊『ふたり探偵 寝台特急「カシオペア」の二重密室』(光文社カッパ・ノベルス)を送っていただきました。どうもありがとうございます。
またしても、大胆な装丁だなあ。というか、老舗カッパ・ノベルスでこれっていうのはかなりの冒険なのでは? そう思ったあとでよく考えてみると、去年のクイーン兄弟『Killer X』からつながる流れのような気もしてきました。どちらもデザインが泉沢光雄さんだし。そう言えばカッパ・ワンも泉沢さんですね。老舗も変わろうとしているのか……(って、実は光文社のS木さんからお電話いただいたときの雑談で仕入れた情報が入ってますが)。
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開設から約2か月半にして、20000アクセス突破。みなさまのおかげです。ありがとうございます。
新作『追いし者 追われし者』の初校を終了。けっこう集中してやったのでしんどかったのでありました。原書房・ I 毛さんに近くのファミレスまで来ていただいて、赤字ゲラを手渡し。今後の予定をうちあわせると、順調に行けば6月20日前後には発売になってしまうそうな(本決まりになったら、あらためて告知します)。
雑談のなかで I 毛さんおっしゃるには、「ここまでのミステリー・リーグで、いちばん×××な作品かも」。……あらま、そうですか。って、多少は自分でも意識していたような(笑)。
再校ゲラもざっとチェックする予定ですが、とりあえず作者としては大きな山を越えた感じ( I 毛さんはこれからが大変なんですけどね)。ワールドカップ開幕前に一息つけて、よかったよかった。
……いいえ。次にはさっそく講談社ノベルスの密室本にとりかからねば(とほほ)。
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何だか今年に入って「生きたまま焼いた」って殺人事件が多発してるような気が。『人魚とミノタウロス』の作者としては落ちつかない気分です。いえ、もちろん拙作が影響をあたえたのではと心配するほど、うぬぼれてはいませんよ。単に、そんなむごい殺しかたは小説のなかだけに存在していてほしい、と思うのです。
鳥飼否宇『非在』(角川書店)読了。
ネットでは、ほぼ同時発売の『昆虫探偵』(世界文化社)ばかり話題になっている観もありますが(すみません、そちらは未読です)、これはいい。いたく感心しました。
正直なところを言えば、「孤島が舞台」と言われると「またかよ」という内心の反応を抑えるのが難しいのですが、この作品のようにそこに「本格」としての必然性を練りこまれては、文句のつけようもありません。おみごと。
何より、解決篇で展開されるパズル的な論理展開が実に心地いい。読者に対して徹底的にフェアであろうとする姿勢が、はっきりと読みとれますね。しかも計算が行き届いている。思うに、元編集者というキャリアを最大限に生かしてらっしゃるような。これまた、おみごと。まあ、犯人特定のプロセスのなかに「自分だったらもっと理屈をこねまわすだろうなあ」と思う部分もないではないですが、それすら「創作意欲を刺激してくれた傑作」という高評価につながる感じです。
これも正直に言うと、デビュー作『中空』に対しては「小説としてバランスが悪いのでは」という感想をいだいたのですが、今回はそんな弱点は完璧に払拭してます。いちじるしい成長。エンタテインメント作家として、何かをつかまれたのではないのかな。
欲を言えば語り手の夏海さんにもっともっと魅力的であってほしい、と理不尽な注文をつけながら――これまた今年のベスト候補、と評価します。
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