2003.11

↓時間軸





 飛鳥部勝則『ラミア虐殺』(光文社カッパ・ノベルス)読了。
 舞台設定は典型的な「吹雪の山荘」ものなんですが、ふつうその手の話ってどんどん内向的に閉じていってしまうのが定番(べつに、それが悪いわけではありません)。ところがこの作品は、そういう設定のもとで驚くほど伸びやかで豊潤な物語性を実現させています。そのことに、何よりも驚きました。
 そういう意味では、この作品は「本格」としての期待のもとに読まないほうが楽しめるかもしれません(これは、この作品が「本格」ではないと言っているのとはちがいます)。飛鳥部さんご本人は「謎解きスリラー」とおっしゃっているようですけどね。主人公が私立探偵で、微妙にハードボイルドっぽくもあり(読み進むうち、そうでないことははっきりしますけど)、ホラーのようでもあり、SFの要素もある。ジャンル的には謎な小説です。謎なまま読んだほうが、きっとおもしろいと思いますよ。
 それでいて、あざとい叙述トリックとか「意外な犯人」の演出とか巧妙な伏線張りとかもあるので、やっぱりこれは「本格」かなと思ったり。3人称多視点の手法を、非常にうまく使っていると思います。それから、「ラミア虐殺」ってタイトルは当然「ラミアが虐殺される話」と思わせるけど、最後まで読むと「ラミアによる虐殺の話」だったのね、というのにも感心。
 とにかく、楽しめました。飛鳥部さん、カッパではとりわけいいもの書くなあ(賛嘆)。あと、カヴァーデザインは渋くてとても好みなんですが、「ちょっとだけ中公新書に似てる」なんて思ってしまったのはナイショ。

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 個人的にけっこうショックな訃報が二つ。

 かつてサッカー日本代表でエース釜本さんと名コンビを組んだらしい(ぼくは直接見てませんが)、吉村大志郎(旧名・ネルソン吉村)さん。いまではストライカーよりもそこにラストパスを出す存在のほうがもてはやされる日本サッカーですが、その先駆的な存在だったのがこの吉村さんなのでは。

 それから、戦後の日本ジャズの草分けだというドラマー、ジョージ川口さん。やはり直接プレイを眼にしたことはありませんが、その名声はもちろんよく聞き知っております。ビッグ・フォーというバンドは歴史に残っていますしね。ほかのメンバーは、松本英彦(テナーサックス)、小野満(ベース)、中村八大(ピアノ)。

 お二方とも、心からお悔やみを申しあげます。

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 講談社文芸局のU山さんから、ミステリーランドの第2回配本をいただきました。ありがとうございます。送られてきたのは、有栖川有栖『虹果て村の秘密』篠田真由美『魔女の死んだ家』はやみねかおる『ぼくと未来屋の夏』

 で、さっそく有栖川有栖『虹果て村の秘密』読了。
 現役の推理小説家である二宮ミサトの発言がほとんどうなずけるものであることだけでも、好感の持てる作品だと思いました。そのあまり、「もしかしてこの作品って社会派?」って思ってしまったことを否定はしませんけど。
 密室トリックについては、登場人物の小学生が「初歩の初歩のトリック」と断言してますし、さらには「漢字にたとえると、小学校に入ってすぐ習う『山』や『川』のようなもの。世の中には奇想天外で驚くべきトリックがたくさんある。漢字にたとえるなら、『薔薇』や『憂鬱』にあたる上級のトリックが」とまで的確な比喩で語っているんですから、子どもの読者に見合うようにレヴェルを落とした、という評価が妥当なのかもしれません。これを読まされたふつうの子どもは、「よし、もっとすごい密室トリックを経験してやろう」と思いそうですもんね。この仕掛けはOKだと思います。むしろ、このシリーズのなかではじめて「ほんとうに子ども向けに書かれた作品」と捉えることができ、そのかぎりで高く評価するべきとも思いました。
 さらには、その「初歩の初歩のトリック」は捨て筋であり、「なぜ犯人がそんなトリックを用いたのか」に謎をスライドさせ、それを「ロジック」で探偵役が解くという展開は、有栖川さんの面目躍如というほかないですね。おみごと。
 ところで、視点人物はずっと変わらないし、文体もしばしば「1人称的なもの」になるし、どうしてこの作品は3人称で書かれたんだろう、と読みながらずっと思っていました。これまで推理小説家を語り手としてきた有栖川さんにとって、それを志望する小学生に同じことをやらせるのはあまりにもあざといという判断が働いたのかな、なんて思ってもいました。でも、320ページのある1行を読んだときはじめて、「もしかして有栖川さんはこの1行を地の文で書きたかったがゆえにこの小説を書いたのかな、だから3人称だったのかな」なんて思ってしまいました。完全に妄想ですが、もしもそのとおりだとすれば、すてきなことだと思います。
 つまり、小説としてはほんとうによくできてる。一人でも多くの「本好き」な子どもに読んでほしい作品だと心から思いました。

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 福岡ダイエー・小久保の電撃移籍には、ほんとうにびっくりしました。あまりにもおかしすぎる。プロの世界に「無償トレード」なんてものはあるはずがない(というか、あってはならない)と思うので、何か裏事情があるんでしょうか。

 浦和レッズ、ナビスコカップ優勝おめでとうございます。何より、Jリーグに参加して11年めで(一時はJ2に降格したりもしました)とうとう初タイトルってのがすばらしい。あれだけ熱狂的なサポーターを得ているんですから、いつまでも無冠のままってわけにはゆかないよね。てか、無冠のままでいるわけがないよね。
 もちろんエメルソンがすばらしいんですけど、田中達也も「化けたね」と評してあげたい気分です。このまま一気に化けちゃって、いっそのこと高原(ハンブルガーSV=ドイツ)や柳沢(サンプドリア=イタリア)や大久保(セレッソ大阪)からフル代表のFWの座を奪っちゃってください。お願いしますよ。
 ところで、オフト監督がチーム方針と合わないので今季かぎり、ってのはちょっと心配。実はうまくいってなかったの? だいじょうぶなんでしょうかね。

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 講談社ノベルスの新刊見本をいただきました。うーん、今月は強力ラインナップ。
 森博嗣『四季 夏』はシリーズ第2弾。今回は四季が13歳のときの事件、ってことは……? 各務亜樹良さんをはじめ、紅子さんも七夏さんも林さんも大活躍の模様。
 高田崇史『麿の酩酊事件簿 月に酔』田中啓文『邪馬台洞の研究』もそれぞれシリーズ第2弾ですね。
 それから霧舎巧さんの私立霧舎学園ミステリ白書シリーズは『七月は織姫と彦星の交換殺人』『八月は一夜限りの心霊探偵』が一挙刊行(『八月』の「あとがき」によれば、「二冊同時には意味がある!」とか)。それにしても、グラビア・デビューって……こ、この口絵は……。
 西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』
は、『メフィスト』に体験版が載ったアレの完全版ですね。今回もイラストは竹さんではなく、TAGROさん。それにしても、「きみとぼく本格」が早くも帯文句になるとは……え、巻末広告によると西尾さん、またJDCトリビュートを書くの?

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 アジア野球選手権で日本が優勝およびアテネ五輪出場権獲得、おめでとうございます。
 ひたすらチームの勝利を願い、基本に忠実な全力プレイを心がけ、ベンチからはチームメイトへの声援が飛ぶ……非常に月並みな表現ですが「一丸となっている」のがありありと伝わってきて、不覚にもちょっと感動しました。すでに多くの人が言ってますが、「負けたらおしまい」というムードが高校野球を連想させましたね。プロの技術で高校野球のせつなさを演じたわけで、そりゃ胸に迫らないはずがない。あまり前例のないエンタテインメントだったと言えるのではないでしょうか。
 表彰式後のシャンパンかけをTVでちらっと観ましたが、ほとんど無邪気なまでのはしゃぎぶりが印象的。きつかった重圧から解放されたってこともあるんだろうけど、ひょっとしたら選手たち自身も高校野球の感覚に戻っていた部分があるのかも。

 で、アテネ五輪の出場権を得たことがもちろん最も重要ですが、あまりマスコミが言わないこととして、実は日本にとっては優勝したことより3連勝したことより、韓国が出場権を逃したことのほうがずっとビッグニュースだったのでは。だってチャイニーズタイペイ(以下、台湾)戦と韓国戦を観たかぎりでは、本大会でもう一度ぶつかるとしたら戦いにくい相手はどっちかなのか、あきらかでしたから。韓国を応援していたかた、台湾を応援していたかたが、これを読んでもしご不快になったらごめんなさい。

 ……なんて思っていたら、何と北中米予選では米国がまさかの出場権喪失、とか。もちろんメジャーリーガーは参加できないので3Aクラス中心で臨んだそうだけれども、まさか予選準々決勝でメキシコに負けるなんて。びっくりです。
 これで長嶋ジャパンのアテネ金メダルの可能性が大きくひらけた、といちおうは言えます。でも、何だかうれしくない。かえって、「野球の最高峰はあくまで米国のメジャー」という実態があらわになり、五輪の野球競技そのものが価値を下落させてしまうような……いえ、決して「こんなだったらやめたほうがいい」なんてことは言いませんけれども。

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 すでにネットのあちこちで言われていますが、辰巳四郎さんが亡くなられたとのこと。画家・イラストレーターにしてデザイナー。ずっと講談社ノベルスの主力装丁者だったし(まちがいなく「新本格」推進の一翼を担われてましたね)、ほかにカッパ・ノベルスでも早川書房でも創元推理文庫でも(クイーン国名シリーズの新装版とか)、印象的な作品がたくさんあります。もちろんそれ以外でも。こことかも参照。
 絵やデザインそのものも「かっこいい!」なのですが、ご自分が装丁する小説をよく読みこんでるんだなあと思わされることがしばしばでした。読み終わってからあらためてカヴァーを見ると、さりげないモティーフが使われていることに「あ! そういうことか」と気づく例が多くて。
 ぼく自身、むかしからあこがれていたわけでありまして、デビュー作(『真っ暗な夜明け』)の装丁をしてくださると知ったときには感激しました。以来、全部で4冊を手がけていただきました。お会いする機会は1度もありませんでしたが、ショックを受けています。
 京極さんの『陰摩羅鬼』とか森さんの『四季』(出たばかりの『夏』も)とか、つい最近までコンスタントに仕事をなさってたみたいなのに……急なことだったのでしょうか。
 心から、お悔やみ申しあげます。

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 サッカーのJ1を18チームに増やすなんて話があるそうで、唖然として言葉を失いました。
 春に始まって秋に終わるなんてシーズン設定をしているから欧州との人的交流が難しい(日本人が欧州に行きにくいだけでなく、欧州のいい選手が日本に来にくい)とか、ホーム&アウェイをきちんとこなさないうちに(つまりは不公平なうちに)優勝が決まってしまう2ステージ制とか、さらには10年前の開幕時が嘘のような外国人選手の小粒化(例外はエムボマとエメルソンくらい?)とか、現在のJ1に問題点はいろいろあります。でも最大の問題点といえば、いまの日本という国がサッカーという競技において許される枠を大幅に逸脱した、チーム数の多さだろうとぼくは思っています。
 欧州のサッカー先進国(イタリア、スペイン、イングランド、さらにはドイツ、フランス、オランダ……)がそれぞれの国のトップリーグを何チームで戦っているかといったら、18だったり20だったりでしょう(20にしてみて「多すぎた」と18に戻した例もあります)。さて、それらの国と同じだけトップリーグを支える選手の数がいるという前提ではじめてJ1もチーム数を18にできるわけですが……そんなわけありますかいな。競技人口はともかく、トップ選手の数ではまだまだ日本は先進国には及びもつかない。さらにいえば、欧州ほど南米やアフリカから「助っ人」が豊富に来るわけでもない。にもかかわらずチーム数を増やしたらどうなるかというと、1チームあたりの戦力は水増しされて薄められるわけで、もたらされる結果は要するに――リーグの水準低下です。
 チーム数をいたずらに増やしすぎると水準が低下するというのは、野球の米国メジャーリーグが如実にもたらしてくれた教訓だと思うんですけどね。10年前にJリーグが発足したとき10チームで始めたというのは、非常に賢明な水準把握だったと思います。ところが以後、無節操にチームを増やしつづけてしまった。それが試合の水準低下を招いた。そして「Jリーグなんて、観ていてつまらない」という印象をすこしずつ定着させた。とりわけ、欧州サッカーをTVでふつうに観戦できる環境が整ってからは。これが、客を呼べなくなった最大の原因ではないのでしょうか。
 現在のJ1のチーム数は、いちおう16で固定されています。これはこれでいい。でも正直なところ、せいぜい14か、ほんとうは12が妥当とぼくは考えます(ちなみに、韓国のKリーグは12)。かつ、J2の優秀な選手は積極的にJ1に移籍するのがあたりまえになるべき。J1とJ2のあいだに「差別」を設けるべきと言いたいのか、と問われればぼくはイエスと答えます。
 そうならないと、J2チームにほんとうの意味でのモティヴェイションなんか生まれないと思うし、それ以上に、J1が「観ていて楽しい」水準のサッカー、言い換えれば客を呼べるサッカーを実現するなんてありえないのではないでしょうか。さらには、そうやってハイレヴェルの切磋琢磨が実現するのでないと、日本代表の強化にもつながらない……
 今回のニュースは基本的に試合数の都合、言い換えれば入場料収入の都合だけからなされているように思えましたが、そしてそれももちろん大事だとは思いますが――それだけでことを決めるなんて、最終的には自殺行為だと思います。きつい表現ですが、はばからずにそう言いたいと思います。

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 社民党の土井たか子党首が辞任とか。ま、しかたないでしょうね(<冷たい)。もうあの党には未来なんかなさそうですから。むしろ遅すぎたくらい。
 ああ、何だかむなしいですね。ほんの十数年前、「マドンナ旋風」とかってこの国が騒いでいたのは、いったい何だったんでしょう。あのころ多くの人々がいだいた期待がまるっきり実現しなかったことの責任も、決して一人だけのものではないとはいえ、それなりに土井さんには感じてほしい。
 もちろん、責任を感じるべき人、反省するべき人はほかにもおおぜいいます。でも、あのころたまさか吹いた「旋風」がまちがっていたわけでは絶対にない――いまでも、そう思うなあ。「女だって、世のなかを決めていい」というメッセージは現在も有効なはずです。だって、わざわざ言うまでもないくらい、あたりまえのことですもんね。

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『古畑任三郎』(フジテレビ系)復活はおおいに喜ばしいんですが、犯人役が松本幸四郎とは……
 いえ、むしろこの顔合わせは夢の実現と言いたいんですよ。ただ、三谷幸喜脚本つながりという意味で、幸四郎さんが出演するなら『王様のレストラン』(フジテレビ系)の「伝説のギャルソン」役で古畑と対決してほしいな、と長いこと夢みていたもので。

 舞台は、とあるフレンチ・レストラン。古畑が例によってじわりじわりと犯人を追いつめていって、とうとうギャルソン松本幸四郎が犯人だと指摘する。そのとたん、幸四郎さんはひとこと、「すばらしい」――

 ……ぐへ。妄想ですね。
 さて、新春スペシャルドラマでの田村正和vs松本幸四郎を、いまから楽しみにしましょう。

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 森博嗣『四季 夏』(講談社ノベルス)読了。

 あくまで、『四季』全巻の完結後に真価を問われるのがまっとうだと思います。「S&MシリーズとVシリーズの集大成」という位置づけを、いよいよあらわにしてきましたし。その意味では、S&MもVも読んでいない人が『四季』から読みはじめることは、お薦めしにくいです。
 今回はたぶん「本格」ではないし、ミステリー的要素も少ない。でも、『すべてがFになる』と関連づけて読めば、その補遺になっていることはあきらか。これ以上はネタバレになるので言えませんが、語ることがネタバレになるというそのこと自体が、もしかしたらこの作品をミステリーたらしめていると言えなくもありません。

 ところで、前作『四季 春』の感想でぼくは「天才・真賀田四季が小説の視点人物になることはありえない」なんて書いたわけですが、あらら、今回は第1章2節から、いきなり四季視点。うわあ、おそるべし森博嗣。
 でも、天才ならではの独自の内面描写(「しばらく集中して仕事をした。躰はその間、眠っていた」とか、「叔父のことを考えている一部を切り離す。今までの五分間に計算をしていた大半は、既に眠っていた」とか)はあるものの、基本的には彼女の思考が読者にもトレースできるように書かれている以上、どうやら四季が天才っぽくなくなってしまっていることは事実。
 それでも、この作品は基本的に四季の視点からしか書かれえなかった。物語上の明確な要請です。同時にそのことの正当化も、ちゃんとなされている。(以下ネタバレ)だってVシリーズで瀬在丸紅子は、何度も視点人物になってきたわけですから。彼女と四季を、この作品はある意味で等値化した。だからこそこの作品は成立しているわけです。(ここまで)
「本格」も「ミステリー」も離れて、ただ単純に「小説」として読んだときこそ『四季 夏』はめっぽうおもしろいし、同時にその超絶技巧ぶりが際立たつのでは。うならされました。

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 サッカー、日本−カメルーン戦
 う〜ん、やっぱカメルーン強いわ。決してフルメンバーじゃないし(何と言っても、エトゥとソングがいないのは大きかった)、コンディションも悪そうだったけど、それでもあれだけできてしまうのね。おかげで、とても緊迫した試合になったと思います。

 さて、最も注目されたのは当然ながら、藤田(ユトレヒト)の加入で中盤がどう変わるかだったのですが、いやあ変わりましたね。本人の運動量はさすがで、攻め手を増やしたと評価していいと思います。でもそれ以上に、「FWを追い越して前線に飛び出す」という彼の持ち味を周囲がものすごく意識していたみたいで、とりわけ中田が「藤田の後ろで試合を組み立てよう」としていたのが眼につきました。
 ただ、そのあまりに中田は下がりめ中央に位置することが多く、ほとんどボランチと化していたような。中田と中村が絶妙な役割分担で両サイドに散っていたこれまでの試合にくらべ、何だかサイドが薄いような印象があったのも、そこから来ていたんでしょう。ならば、稲本か小野が(たぶん小野がやるべき仕事かな)サイドハーフ的に、藤田と逆のサイドに上がってゆくような応用編がこなせていれば言うことなしだったんでしょうが。
 思うに、藤田の加入によって「黄金の中盤」の次の課題が見えたのでは。必要に応じて、中田と中村(この試合では中田と藤田でしたが)、小野と稲本、二つのラインのあいだで柔軟なポジションチェンジをやりとげること。小野も稲本も上がりめをやれることは言うまでもないし、中田だって中村だってイタリアでは3列めをやらされているわけで。

 ほかに眼についたのは、Jリーグではあんなに危なっかしい宮本や坪井が代表では引き締まるよなあとか、アレックスの守備がずいぶん板についてきたよなあとか……でも個人的に最大の驚きは、実は楢崎でした。
 グランパスの試合を観てらっしゃるかたに「いまさら何言ってんだよ」と馬鹿にされるかもしれませんが、ずいぶん前に飛び出して守れるようになりましたよね。一瞬、「あれ、川口?」と思ったくらい。ゴールにしがみついてしまうという最大の弱点をみごとに払拭したと思います。これなら正GKは動かないのでは。

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 あらら、サッカー欧州選手権予選、ウェールズはやっぱりロシアに負けちゃいましたか。初戦でアウェイゲームをドローに持ちこんで、けっこう期待していたんですが。マンチェスターユナイテッドのギグスを1度は祖国代表として晴れ舞台に立たせてあげたかったなあ(次はない、と決めつけるのも失礼ですけどね)。
 オランダ、スペイン、クロアチアの勝ちあがりは予想どおりですけれども、あのトルコがラトビアに負けちゃったってのは、ちょっと(というか、かなり)驚きかな。

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 ……しまった。TVドラマ『R.P.G.』(NHK総合/原作は集英社文庫)を見逃した。いえ、決して後藤真希をどうしても観たかったというわけではないんですが(汗)。
 宮部作品で最も映像化に向いているのは『クロスファイア』(原作は光文社文庫)で(もちろん、すでに映画になってます)、次いでコレかな、と勝手に思っていたもので。あ、かなり適当に言ってます、本気にしないように。
 でも観たかったな。まあそのうち再放送するだろ、とにかく仕事しなきゃ、と自分を慰める。

 ラグビーW杯はイングランドが初優勝、はじめてエリスカップを北半球にもたらしたとのこと(過去4回のW杯優勝国はニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、オーストラリア)。おめでとうございます。
 後半最後のワンプレイ(PG)でオーストラリアが追いつき、延長後半でもまた追いつくという粘りのおかげでかなり感動的な試合になりましたが、これだけディフェンス力が向上するとしかたないのか、「トライの快感」をあまり味わえない一戦でもありました。とはいえ、それまで外しつづけていたドロップゴールを最後の最後で決めて決勝点にしたウィルキンソン(イングランド)は、やっぱりおみごとですね。

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 ちょっと執筆に行き詰まりまして(汗)、霧舎巧『七月は織姫と彦星の交換殺人』『八月は一夜限りの心霊探偵』(いずれも講談社ノベルス)をあいついで読了。

 で、特に『八月』に感心しました。以下、未読のかたは反転部分を絶対に覗かないように。
 ……うわ、やられた。これはみごとにだまされました。とりわけ、琴葉ママと《旅館の子》がいったいどこにいるのかという点に関して。あえてケチをつけるなら、過去の霧舎作品によく似た原理のトリックはありましたが、だからといってこれはまず見破れない。
 前半はちょっと展開が遅くてもどかしい気もしますが、後半になってからのストーリー展開はジェットコースター並み。プロットの設定と展開がみごとで、感心させられました。作品の冒頭ではなく終盤近くになってから提示される謎「死体が一瞬で静岡県から北海道に移動したのか?」もぐらぐら来るし、何より、この本を読みはじめるとともに多くの人が感じるであろう「ずいぶん厚い紙を使っているな」ということ――奥付でページ数を確認して、本の厚さに「あれ?」と思う人すらいるかもしれない――がそのまま謎解きに絡んでくるなんて、もう唖然とするほかはない。「二冊同時には意味がある!」って、なるほどこういうことだったのか。
 ついでに言っておくと、あとがきに「北海道のことを教えていただいた柄刀一氏、佐藤友哉氏。同じく、静岡県のことをお聞きした乾くるみ氏」に感謝とありますが、読み終えれば「ああ、こういうことを尋ねたんだろうな」と察しがつき、それはけっこう重要情報だったり。

 ただ、あまりにも内容が盛りだくさんすぎて、350枚前後(この作品はある理由から、絶対にそれより長くはできなかった)に詰めこむのはさすがにきつかったのでは。いきおい、探偵役の推理は恣意的なものに傾きやすく「発想は鋭いけど、もうちょっと言葉を費やしてくれないと説得力が……」となりがち。ことに、保と棚彦の推理には相違点がいろいろあるのにそれを最後にちゃんと検証していないから、「あれ、この推理は結局どうなったの?」みたいな感じで読者にとってわかりにくくなってしまっているのは事実。
 う〜ん、ひょっとして500枚かけて書いたら、年間ベスト級だったかも……?

 とはいえ、霧舎学園シリーズは薄味だと決めつけていらっしゃるかたがいたら、ぜひ一読をお薦めします。

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『トリビアの泉』(フジテレビ系)を観て、ひさびさに感心しました。
「トリビアの種」のネタに「ウサギとカメの競走は、どれだけの距離おこなわれたのか?」というものが採用されていて、正直、いったいどう料理するのか見当もつかなかったんですが、みごとに論理的に処理していました。数学者の秋山仁さんまでかつぎ出して。
 ウサギとカメそれぞれの移動速度を測定し、次に何とウサギの「1回の睡眠時間の平均値」を観察する。おお、なるほど! うなりましたね。これだけのデータが揃えば、あとはきわめて理にかなった推論で結果を導ける。要は、「ウサギが寝ていたのはこれだけの時間だ」という事実さえ確定できれば、あとは両者の移動速度の差から、カメが勝つ条件(早い話、レース距離がいくら以下なら逃げきれるか)を算出可能なわけです。
 いえもちろん現実的には、移動速度にしろ平均睡眠時間にしろ測定自体があまりにもいいかげんなのでデータとして信用できませんし、それに「あの物語のなかでウサギがどれだけ眠っていたか」を平均値から決めつけるなんて本来おかしいはず。つまり、前提となるデータがぐらぐらしているわけです。したがって、まじめな議論にはなっていません。
 でも、たまさかそれを固定してみると、そこから理屈だけで結論を誘導できてしまうわけで……大好きだわ、こういうの(笑)。馬鹿馬鹿しいし、ムダだし。でも、それだけではない。危うい前提をとりあえず鵜呑みにしてみたら、そこからいろいろ理屈をこねまわす「プロセスの快楽」が得られる。いちおうの結論を出してみることすらできる。その結論を盲信してしまわないだけの理性を保っていられるなら、の話ですけどね。
 ひょっとして、これって「本格」推理小説の楽しみの核心じゃないのでしょうか。しょせん小説である(=現実ではない)以上、あたえられる「前提」の信憑性はぐらぐら。でも、作者が「これだけは、疑う必要ありませんよ」というメタなメッセージを何らかの形で保証することによって「プロセスの快楽」を引き出す――読者はそこを基点にどうとでも考える自由があり、いちおうの結論を引き出して、それが作者の用意した真相と合っているかどうか確かめる楽しみもある。
 ……そんなふうにぼくは考えるのですが、こういう「本格」観はやっぱり少数派のものなのでしょうか?

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 ちょっくらサッカー日本代表の話を。

 まずはA代表
 W杯アジア予選についてですが。日本代表の一次予選初戦は来年2月18日、第2シードの国とのホームゲームになるようです。
 さて、前日本代表監督フィリップ・トルシエはカタールを、まちがいなく強くするはず――カタールのアジア内の位置、ひいては世界における位置と、トルシエの「とにもかくにも日本をW杯16強に導いた実績」とを考え併せれば、日本としては当然そう考えておくべき。でも、就任まもない現段階では、彼の戦術サッカーはまだまだ浸透してはいないでしょう。
 だったら、再来年の最終予選で――ほんとうに強くなってから――ぶつかるよりも、来年2月からの一次予選のうちに潰しておくほうがずっと楽、と考えるのが戦略的発想というものです。マスコミが「カタールと当たるかも!」と騒ぐのなら、単なる話題性だけではなくそういう発想もなくっちゃ。どうやらそれがないことは、メディアの水準としてとても残念です。
 それから、来年末にドイツ代表との試合が決まりそうだとか。初対戦ですね、楽しみ楽しみ。ただ、確かドイツのブンデスリーガはクリスマス休暇が長かったと記憶しますが、欧州の他国はどうかな? つまり、日程によっては、日本は欧州組を呼び戻せなかったりするのでは?

 次は五輪(22歳以下)代表
 まさかロシアのA代表が試合を受けてくれるとは思いませんでした(もちろん、どんなメンバーが来てくれるかわからないんですけどね)。まさか、「去年のW杯一次リーグのリヴェンジの機会をあたえてあげるよ」とか、あたかも日本のA代表が相手をするような言いかたでロシアをだましてないでしょうね日本サッカー協会? ……いや、もちろん冗談ですが。
 山本監督の「どれだけ世界との距離があるか、身をもって分からせたい」という考えはよくわかるんです(だって、世界大会の経験に乏しい世代ですから)が、タイミングとしてはちょっと遅いような気も。ちなみに、シドニー五輪代表がペルーのA代表と練習試合をやって完敗したのは、本大会の1年以上前でしたよ。とっくに「1年前」を切ったこの時期にこの相手では、深刻な自信喪失って可能性もじゅうぶんに考えられます。

 最後にユース(20歳以下)代表
 いよいよワールドユースが開幕。日本のユース代表も開催地のUAEに乗りこんだ模様。一次リーグ初戦の相手はイングランドです。むーん、ルーニーはメンバーに入ってないみたいですけど、それでも強敵ですよね。とりわけ、17歳のミルナーを抑えられるか。注目です。
 まあ、グループの残り二つがコロンビアとエジプト(もちろんこれまた強敵ではありますが、「絶対に勝てない相手」という存在ではない)だから、基本的には「守りあい」になるはずだけど……いや、もしイングランドが「グループ内最弱は日本」と判断したら、怒濤のごとく攻めこんでくるわけですが。
 この大会そのものももちろん大事ですけど、終わったあとに一人でも多くが五輪代表に繰り上がって力にならなきゃいけないんで、とにかく世界水準の経験をすこしでも多く持ち帰ること。それが大事。

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 横浜F・マリノス、J1完全優勝おめでとうございます。
 それにしても劇的な最終節でした。横浜が前半で退場者を出して一人少なくなりながらそこから磐田相手に逆転、という展開にはびっくり。でもそれ以上に驚いたのは――磐田と鹿島のファンのかたがたには申しわけないですが――、「後半ロスタイムに入ってから、優勝を逃す1失点」なんてドラマ(「ドーハの悲劇」みたい)を、したたかさではJリーグで突出していたはずのその2チームがあいついで演じてしまったことですね。
 まれに見る混戦だったこの第2ステージを象徴としているととらえるべきか。ひょっとして、「2強時代」から「混戦時代」への移行を見てとるべきなのか。いずれにしても、正直ちょっと興奮しました。
 おかげで去年に続いてチャンピオンシップがなくなって、とてもよかったと思います。いえ、Jリーグにせよ横浜にせよ(あるいは、チャンピオンシップが成立していれば横浜の相手になった架空のチームにせよ)多くの経済的利益を失ったわけで、その点はご愁傷さまと言うしかない。でも、そろそろ認めたらどうでしょう――2ステージ制なんて、もともと無理があるんだってば。
 それと、おかげで「チャンピオンシップがあるから」という理由で東アジア選手権の日本代表を辞退しなくてはならない選手が一人も出なくなったこと、これが最もめでたいのではないでしょうか。






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