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「夏の名残の薔薇」/恩田陸/文藝春秋 <小説> 

山奥のホテルを毎年、貸切にして開かれるパーティ。閉ざされた空間を舞台に、悪意と秘密が絡み合い…、と恩田ワールド全開といったところです。
解説には、クリスティの『バートラム・ホテルにて』 がひいてありましたが、私は「世にも奇妙な物語」 の一編を思い出しました(「時のないホテル」 だったかな)。

一章ごとに語り手を替え、筋書きも変調していく趣向は面白いけれど、五章も繰り返されるとちょっと飽きるなというのが正直なところでした。
次の語り手が誰か想像しながら読み進めていきましたが、最終章の語り手には物足りないものを感じた。それにこれでは桜子がつまらない女みたいだし…。

恩田作品ならもっと面白いはず、という期待がいけないのかな。でもグロテスクな描写があっても上品な印象なのは恩田作品ならではと思う。
せっかくなので『去年マリエンバートで』 を観てみましたが、確かに殺人劇の舞台にはお誂え向きなホテルでした(死体を隠す場所はなさそうだけど)。『花模様の迷路』(坂田靖子/早川文庫)のあとがきにこの映画の話があったと思う。

どうでもいいことですが、表紙の写真はトルコキキョウでしょうか。 (05/07/31)

「豚は太るか死ぬしかない」/ウォーレン・マーフィー/田村義進・訳/早川文庫 <小説> 

トレース・シリーズ第四作目。吉田秋生氏のカバー・イラストと胸をえぐるタイトルにつられて読んでみました。
保険調査員トレーシー(トレース)が活躍するコメディタッチのミステリー。 トレースとルームメイトのミチコ(チコ)の、軽快な夫婦漫才が楽しい。「男と女では、染色体の構造が違うのよ。男はウォッカのにおいを嗅げない。女は嗅げる」に笑った。

トレースのひっきりなしのジョークには、よくわからないものもあって、ノリに慣れるまでちょっと時間がかかりましたが。訳注が欲しいところです。トム・コリンズくらいは知ってるけど 。アメリカ人って謎だ。
もっともトレースのほうは、日系人のチコに振り回されてて、彼に言わせれば、日本人は謎だということになるのだろう。日系人の会合での細かいネタも笑えた。ミッドウェー海戦とか、折鶴とか。 (05/07/31)

「死刑囚042」/小手川ゆあ/集英社ヤングジャンプコミックス <漫画> 

ファンタジーです。
死刑制度廃止に向け、死刑囚を社会に還元する方策の模索として、死刑囚の頭にチップを埋め込み、塀の外で奉仕活動をさせる実験が行われる。被験者が殺人を犯そうとすると、チップが爆発し、被験者の脳を破壊する。

死刑囚042号・田嶋良平は、実験第1号として、公立高校で働くことになる。仕事や、周囲の人間との交流を通して彼の内面に変化が起き…、と書くとベタベタな話のようですが、ほのぼの且つ適度にブラックなギャグが各所に挟まれていて、白けずに読めた。
田嶋と親しくなる女子高生・ゆめにしても、視覚障害者というベタな設定だけれど、嫌味にならず良い子に描かれていて、感情移入しやすい。

田嶋については、殺人犯にしては良い子すぎてピンとこなかったのですが、椎名など周囲の人間が変わっていく様子のほうが印象深かった。
死刑囚を人間扱いすることの残酷さだとか、モンスターだと言われる人間から見れば普通の人間の方がモンスターに見えているかもしれないとか、被害者に便乗して加害者を糾弾する人間の醜さだとか、いろいろ描きにくいところも描かれている。描けないところを無理に描こうとしていないところも良いと思った。

自分が田嶋の立場だったらと思うと、心を開かなければ刑務所に逆戻りだと脅されてカウンセリングを受けさせられるなんて、拷問以外のなにものでもないと思うけれど。

内容とはぜんぜん関係ありませんが、読んでいて猛烈にメダカが飼いたくなりました。そのせいではないけど(たまたま人が買ってきた)、いま飼っています。 (05/07/31)

「DEATH NOTE 5」/大場つぐみ・作/小畑健・画/集英社ジャンプコミックス<漫画>

とりあえず5巻の感想を。「別れは誰にでも平等に訪れる」のコピーに、別れなんかあったっけ、と思った薄情者です。「次巻誰かが消える」という4巻の予告は、リュークのことだったのかな。
パパの熱演を見ながら、これで父親がライトを殺してエンドという展開はなくなってしまったなあと思っていた。Lも、こんな猿芝居で納得するくらいなら、最初から監禁なんかしなければいいものを。

相沢さんの離脱についてはというと、自分の心情を訴えれば斟酌してもらえると思われても困るなといったところです。警察としての情報網や権力が行使できないなら利用価値が無いわけで。日本人はこういう人の味方だから書きにくいけれど(じゅうぶん書いているが)。

この巻では、ミサミサにやられっぱなしでした。甘いものは食べない、部屋では腹筋(?)、初対面の彼氏の父親に「お父様」、極めつけは「それやったらキラと同じじゃない」…。記憶が無いとはいえ、すごいなあ。ライトの「罪のない人間を何人巻き込んだと思ってる」ってのもすごいけど。大場先生に完敗。

ところで、もしストーカーに監禁された場合、どう対応するべきかちょっと考えてしまったけれど、拘束された時点で駄目な気もする。 (05/07/31)

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