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 1-6月


「父、帰る」/2003年/ロシア映画/アンドレイ・ズビャギンツェフ監督

母と暮らしていた兄弟のもとに、12年ぶりに父親が帰ってくる。 父親は息子2人を連れて、小旅行に出かける――
12年間どこで何をしていたのか、何故とつぜん帰ってきたのか…。シンプルな構成ながら、緊迫感に満ちていて目が離せない。

ありあわせの材料で舟を作ったりする父親のサバイバル技術に魅了される長男、どこの馬の骨かも知れない男に父親面されて納得のいかない次男、12年間ずっと父親になりたいと願っていた男…。
それぞれの気持ちが観客には伝わってくるのだけれど、それは傍から見ている観客で他人だからで、近くにいればいるほど気持ちが見えないのだ…と、もどかしい思いにとらわれる。

衝撃的なラスト。結局、父親は「父親になりたい」という渇望を、思ってもみなかった手段によって叶えることになる。
宗教的な寓意については不勉強でよく分からなかったのですが、父親の登場シーンは解説にあるようにマンテーニャの「死せるキリスト」ですね(Olga's Gallery)。
(04.10.11)公式サイトへ/minipara.comへ

「子猫をお願い」/2001年/韓国映画/チョン・ジェウン監督

高校時代は仲のいい友達だった5人の少女たちが、20歳になってそれぞれの道を歩み始める。日常に忙殺され、話題も合わなくなり、次第に仲がぎくしゃくして疎遠になっていく…。

女の友情は儚いといったお決まりの話ではなく、ずっしりとした生々しさがある。
彼女たちの生活からは、家父長制、学歴社会、貧富の差の大きさ…といった社会の様相が透けて見える。娘の言うことをまるで聞く気がない父親に対する、テヒ(ペ・ドゥナ)の「殴るだけが暴力じゃないのよ」というセリフが心に残った。

彼女らのように環境が違えば、気持ちがすれ違うのも無理はないなあ…と思う。「笑って手をとり合うのは もっとずっと後でいいのよ  その前に やらなきゃならないことは たくさんあるはずだもの」というのは『Papa told me  EPISODE.41』(榛野なな恵/集英社)のセリフだけれど、映画の彼女たちが手を取り合えるのは、いつになるとも知れない。

それでも、観終わった後の気持ちは暗くはなかった。その後の彼女たちが直面する現実は、ますます厳しいものになるだろうけれど、どこかにきっと出口がある、と感じられる。
たらいまわしにされる子猫が、ちょっと気の毒でした。
(04.08.23)公式サイトへ/minipara.comへ

「堕天使のパスポート」/2002年/イギリス映画/スティーヴン・フリアーズ監督

イギリスはロンドンの、ホテルのメイドとして働くトルコ人、シェナイ(オドレイ・トトゥ)は、深夜フロントのオクウェ(キウェテル・イジョフォー)とルームシェアをしている。
オクウェはホテルで行われている違法な取引に気付き、支配人に報告するが…

ロンドンの底辺を構成する、移民や不法滞在の外国人労働者たちの生活が描かれる。
次第に明らかになっていくオクウェのバックグラウンドなどサスペンス要素もあり、オクウェとシェナイの恋愛的要素もあり、で飽きさせない。シリアスなモチーフながら、ユーモラスなシーンもはさまれていて、暖かみのある作品になっている。映画的ファンタジックな展開もみせつつ、100分にきっちり収まっているのも良かった。

ホテルの支配人の、「美しい国・イギリス」という言葉が印象的だった。 美しい国・イギリスが闇の部分をはらむように、美しい国・アメリカや美しい国・ニッポンにもそれぞれの闇がある。ニューヨークに憧れるシェナイだけれど、はたしてロンドンよりも良いところかどうか。それでも前をみつめる彼女の顔には一筋の希望がある。
(04.07.19)公式サイトへ/minipara.comへ

「パッション」/2004年/アメリカ・イタリア映画/メル・ギブソン監督

イエスが磔刑に処せられるまでの12時間を描く。回想シーンを交えつつ、福音書や伝説のエピソードが手際よくまとめられていて、キリスト教の教材としてよく出来ていると思った。
いかにもアメリカ映画といった大仰な演出に引き気味になりながら、すごいと思ったのは、当時使われていたとされるアラム語とラテン語を使用している点。と言っても私に分かるアラム語は「アッバ」(父よ)くらいですが。

イエスの受難をリアルに描写して話題になった作品ですが、個人的に印象に残ったのは聖母マリアやマグダラのマリアらが、イエスの流した血を拭き取っているシーンでした。福音書にそういった記述は見当たらなかったので、たぶん映画のオリジナル設定だと思う。
階下のイエスの気配を感じ取ろうと床に耳をつけたり、倒れるイエスに思わず走りよったりと、息子を気遣うひとりの母親としてマリアが描かれているところに好感が持てた。

ユダヤ人たちがイエスを処刑に追いやる描写がアメリカで問題になったらしいけれど、映画から受けた印象は、キリスト教の信者ひとりひとりに、「あなたも主が十字架にかけられるのを見ていたのか?」とつきつけるようなものだった。だいたいイエスもユダヤ人なんだし…。もっとも私自身はクリスチャンじゃないので、切実な問題としては捉えられないけれど。
ボスの十字架を運ぶイエスの絵(Olga's Gallery )など、キリスト教美術の数々を思い浮かべながら観るのも楽しい。
(04.07.26)公式サイトへ/minipara.comへ
参考:「なぜ、映画 『The Passion of the Christ』 が物議をかもしたのか?」 eigotown.com

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