過去の覚え書き(番外編)
● 2001/08/28
・アップルの「使用許諾契約書」とBlueChip。
PowerBook G3 (Bronze keyboard)用のCPUアップグレードカードのプロトタイプが公開(山本康仁氏のホームページ)され、話題を呼んでいるが、この種の製品に関して私はかねてからある懸念を抱いていた。本ページで紹介しているMacエミュレータにも関連することなので、いつかは取り上げたいと考えていたが、この機会に書いておきたいと思う。
本記事は、PowerLogix社やBlueChip LSを批判することが目的ではなく、ともすればやや軽んじられている感もある「使用許諾契約書」というものについてよく考えてみることが主旨であることを御理解いただきたい。
さて、PowerLogix社のBlueChipは、純正CPUカード上のブートROM内のプログラムコードをハードディスクを介してBlueChip上のフラッシュROMへコピーする手段をとっている。
一般に、この行為は以下のような理由で正当な行為とされている。
(1) 著作権法では個人使用の目的での複製を認めている。ブートROMコードの複製は、本人所有のMacから個人使用の目的で複製するので著作権法上の問題は無い。
(2) アップルは、アップルソフトウェアのバックアップ目的での複製を認めているので、使用許諾契約上の問題も無い。
しかし、アップルの使用許諾契約書には以下のような記載がある。
(これはMac OS 9日本語版のインストール時に表示される文章。赤字の部分は分かりやすいように私が色を変えたもの。)
--- 引用開始 ---
2.使用方法およびその制限
本契約により、お客様は、一回につき一台のアップル社のラベル付きのまたはアップル社が使用を許諾したコンピュータにアップルソフトウェアをインストールし、使用することができます。本契約は、アップルソフトウェアが同時に複数のコンピュータ上に存在することを許容するものではありません。お客様は、バックアップの目的に限り、機械による読み取り可能な形態でアップルソフトウェア(ブートROMコードを除きます)の複製物を1部作成することができます。
--- 引用終わり ---
これを見て分かるように、アップルの使用許諾契約書では、ブートROMコードのコピーを認めていない。
つまり、著作権法上の問題は無いが、アップルとの「契約違反」と判断される可能性があると思われる。
私が調べた限り、このブートROMコードのコピーを禁止する一文は、Mac OS 8.6の使用許諾契約書には無く、Mac OS 9(以降、X含む)の使用許諾契約書には存在する。私は法律や契約の専門家ではないので、こうした契約の変更が、過去の製品にさかのぼって適用されるのかどうかは分からない。ただ、使用許諾契約書の第1項には以下のような記述があるため、この契約はこの契約書が添付された製品に対して適用されると考えるのが妥当だろう。
(そもそもMac OS 8.6のみのユーザは、当然Mac OS 9の使用許諾契約書を見てもいなければ、同意もしていないのだから。)
--- 引用開始 ---
本契約書が添付されているディスク、読み出し専用メモリー、その他の記録媒体またはそのあらゆる形態上の、ソフトウェア(ブートROMコードを含みます)、書類および一切のフォント(以下「アップルソフトウェア」といいます)は、米国アップルコンピュータ・インクまたはその地域子会社(以下「アップル社」といいます)が、お客様に使用許諾するものです。
--- 引用終わり ---
この使用許諾契約書を読む限り、ブートROMコードのコピーは、Mac OS 8.6プリインストールマシンでは問題ないが、Mac OS 9プリインストールマシンでは使用許諾契約違反と判断される可能性があるということになる。では、Mac OS 8.6プリインストールマシンでブートROMコードのコピーを行い、その後Mac OS 9にアップグレードした場合は?
以前、本件についてアップルのサポートに電話で確認してみたが、はっきりとした回答は得られなかった。
いままで、こうした問題は雑誌やニュースサイト等でもほとんど取り上げられていなかったように思う。
Sonnet Technologies社からも同種の製品の発売が予定されている現在、製品を安心して使用するためにも、この問題に目を向ける時期に来ているのではないだろうか。
● 2001/09/01
28日に掲載したブートROMコピーの件は、先週PowerLogix Japan社にもメールで問い合わせているのだが、今のところ返事は来ていない。
山本氏のページにBlueChip LS 質問と問題点が掲載された。山本氏やZap2氏(当然So! 8/29分)も、Mac OS 9以降でBlueChipなどの製品を使う場合、使用許諾契約違反となる可能性があることを指摘されている。
しかし、実際に製品が出荷されたとき、「Mac OS 9やXではお使いいただけません」というわけにもいかないだろう。また、最初からMac OS 9プリインストールで出荷されたPowerBook (FireWire)用のCPUアップグレードカードは(技術的な問題とは別に)同様の手法では作成できないことになる。
山本氏は純正カードからのROM張り替え方式を提案されている。かつて、Newer社も純正CPUカードを利用したアップグレード製品を販売していたが、これらの方式であれば使用許諾上の問題は無くなる。しかし、インフラ整備やそれに伴うコスト増加、作業期間中Macが使えないなどの問題がある(我々のような地方のユーザには特に深刻である)。また、PowerBook G3 (Bronze keyboard)用のCPUアップグレードカードをROM張り替え方式とした場合、従来方式のiMac、PowerBook G3 98年モデル用のアップグレードカードの販売にも影響を与えることは必至である。
同様の方式のアップグレード製品を計画しているSonnet Technologies社の動きも含めて、今後の動向が注目される。
● 2001/09/07
あいかわらずPowerLogix Japan社からの回答は無いが、同様にiMac、PowerBook用のCPUアップグレード製品の発売を予定しているSonnet Technologies社にメールで問い合わせたところ、日本市場向け営業広報担当のM氏より回答を頂いた。残念ながら発売前の製品ということではっきりとした回答は得られなかったが掲載許可を頂いたのでここに一部を掲載する。
--- 引用開始 ---
(1) 一部報道によれば、これらの製品はPowerLogix社さんの
製品と同様に、純正CPUボード上のブートROMの内容を
コピーして製品上のROMへ書き込む方式をとっているとのことですが、
これは事実でしょうか?
ご参考:MacWIREの記事
http://www.zdnet.co.jp/macwire/0107/21/c_pbarmy.html
記事の通りです。インタビューの際には私も同席しましたが基本的にはROMをコピーする方式を取るようです。が、はっきりしたことは最終の製品が出来上がってこないとわかりません。ユーザーがオリジナルのCPUカードを送り返したりしなくていいことだけは確かですが。
(3) AppleのMac OS 9に添付されている「使用許諾契約書」
では、ブートROMの複製を禁止するとの1文がありますが、
もし上記(1)が事実の場合、「契約違反」と判断される恐れが
あるのではないかと思われます。
本件について、御社のお考えをお聞かせいただきたく思います。
これについては、PowerLogix社では「コピーして商用利用することは違法だが、個人の遊興のための利用であれば問題ない(CDをコピー、録音するのと同様で)。コピーの行為自体は販売の前ではなくあくまでユーザーが購入した後に起こることなので問題にならない」というようなステートメントを出していたと記憶しています。
が、弊社製品について先に申しましたようにはっきり最終的なメソッドが回答できませんので、これについてもなんともいえませんが。
--- 引用終わり ---
残念ながら、製品の発売前ということもあり、明確な回答は得られなかったが、これを読む限りSonnet Technologies社も「個人使用の複製であり、法的に問題は無い」と考えているようである。使用許諾契約についての言及は無い。
本来、著作権法上の問題と使用許諾契約上の問題は分けて考えるべきであるが、雑誌等でも両者を混同した記事を見かけることがある。一般的に使用許諾契約に関する意識は低いように思われる。
機会があればSonnet Technologies社に再度確認してみたいと思う。
● 2002/06/15 追記
PowerLogix社がPowerBook G3(FireWire)用G4アップグレードカードを発表している。また、Other World Computing社は、復活したNewer Technology社のPowerBook G3(FireWire)用G4アップグレードカードの販売を開始している。
PowerLogix社社のBlueChip Pismoは、ブートROMをコピーする方式ではなく、純正CPUカード上のG3プロセッサーをG4プロセッサーと交換する方式を採用しているようだ。
Newer Technology社のNuPowr G4 Pismoがどのようなアップグレード方式を採用しているのかどうかは不明であるが、アップグレードのためにPowerBook本体をメーカーに送る必要があることから、ROMまたはCPUの張り替え方式を採用している可能性が高いと思われる。
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