AppleのライセンスとMacエミュレータについて

2004/05/16 作成
2004/05/18 誤字の訂正および説明を若干追加
2004/09/28 Sebastian Biallas氏のインタビュー記事に関する記述を追記
2008/10/04 互換製品に関する記述を追加


● はじめに

以前より、非Apple製コンピュータ上で動作するMacエミュレータ(仮想マシン含む、以下同じ)に対して、Appleのライセンス違反の恐れがあることが指摘されていた。

微妙な問題を含むため、これまで本サイトではこの問題に対しコメントすることを避けていた。しかし、x86マシン上でMac OS Xの起動が可能なPearPCの登場により、Macエミュレータがこれまで以上に注目を集めているこの機会に、本サイトのスタンスを明らかにしておきたいと思う。

【重要】
以下は、あくまでも私の個人的な見解であり、実際にAppleが本件を問題視した場合にこの主張が通用するとは限らない。
責任逃れをするつもりは無いが、最終的な責任は使用許諾を読み、同意ボタンをクリックしたユーザー自身(もちろん私も含む)にある。

これらを踏まえた上で、Macエミュレータを使用するかどうか、各自で判断して頂きたい。
● 問題点

Mac OS Xインストール時に表示されるソフトウェア使用許諾契約の「2. 許諾された使用方法及びその制限」には以下のような記載がある。

本契約により、お客様は、一回につき一台のアップル商標を付したコンピュータにアップルソフトウェアを1部インストールし、使用することができます。

「アップル商標を付したコンピュータ」(英文では「Apple-labeled computer」)の定義が明確では無いが、これを「Apple製コンピュータ」と解釈すると、Macエミュレータを使用して非Apple製コンピュータ(PC/AT互換機等)にMac OS Xをインストールする行為はライセンス違反ということになる。

余談だが使用許諾契約の文章は時期によって多少異なり、例えばMac互換機が存在していた時期の使用許諾契約では「アップルマークの付された又はアップル社によりライセンスを受けたコンピュータ」(英文では「Apple-labeled or Apple-licensed computer」)という記載であったが、最近の使用許諾契約では「アップル社によりライセンスを受けたコンピュータ」の記載が削除されている。つまり、Mac OS Xが公式に対応していないPower Macintosh 9500等にXPoseFactoを使用してMac OS Xをインストールすることは問題無いが、UMAX等のMac互換機にMac OS Xをインストールするとライセンス違反ということになってしまう。
● コミュニティの反応

上記のような問題は、Mac OS Xに限った話ではなく、Mac OS 9以前のOSにも存在した。海外のMacエミュレータ系フォーラムやメーリングリスト等でも過去に何度か話題となったことがあるが、結論が出たことはない。

vMacプロジェクトのWebサイトにこの問題に言及したページがある。
このページの内容には興味深い点が二つある。

ひとつは、vMacの開発にあたり、AppleにMacintosh PlusのROM技術をライセンス提供してくれるように要請し、断られたこと。
もうひとつは「Apple-labeled computer」がAppleによって明確に定義されていないこと、である。

前者については後述する。後者については冗談半分だが「PCにAppleのステッカーを貼れば"Apple-labeled computer"だ」と書かれている。
(このジョークは海外でこの問題を論じる際によく使われるネタである)

ジョークはともかく、vMacプロジェクトでは本件が特に問題とならないと考えているようである。

一方、Mac-on-Linux(MOL)の作者であるSamuel Rydh氏はMOLのFAQの中でこの問題に関して次のように書いている。

・MOLはPegasosボード、Teronボード、AmigaOneハードウェア等のPowerPC搭載ハードウェア上でも動作する。
・しかし、非Apple製ハードウェア上で(MOLを使って)Mac OSを動かすことはAppleのライセンスによって禁止されている。
・MOLを使ってLinuxを動かすことは問題ない。

Samuel Rydh氏の解釈に従えば、例えばPC上でPearPCを使ってMac OS Xを動かすことはライセンス違反であるが、Linux/PPCやNetBSD/macppcを動かす分には問題無いということになるだろう。

また、これもジョークに近いが、Macintosh上でVirtaulPCやRealPC等のPCエミュレータを介してPC用のMacエミュレータを動かせば問題ないのではないかという意見(Ernst J. Oud氏)もある。
(これがOKなら過去に販売されていたDOS互換カード装着のMacでもOKだろう)
● その他のエミュレータ作者の見解

この問題に関して、Christian Bauer氏(BasiliskII等)、Gwenolé Beauchesne氏(SheepShaver/x86)、Sebastian Biallas氏(PearPC)、J.Mayer氏(qemu-ppc)の4名にメールで質問した。

公式な見解ではないので個々の詳細な内容についての公開は控えるが、4名のうち2名は特に問題は無いと考えているようだ。他の2名の返信はライセンス違反かどうか判断できないという感じであり、うち1名から逆に「他のエミュレータはどうか?」と聞かれたので上記Samuel Rydh氏の見解を伝えた。今のところそれに対する返信は無い。

【追記】
osView.comに掲載されたSebastian Biallas氏のインタビュー記事中に、ライセンス問題に関する言及がある。

Sebastian Biallas氏は(少なくとも彼の住むドイツにおいては)使用許諾契約に書かれた使用方法の制限は無効だと考えているようだ。
また、これまでのところPearPCの開発についてAppleからの反応は無く、Biallas氏側からAppleへ尋ねたこともないとのこと。
● 本サイトのスタンス

詭弁だと言われれば返す言葉も無いが、本サイトとしてはvMacプロジェクトの判断を支持したいと思う。

前述のように、vMacプロジェクトはAppleに対し協力を要請し、断られている。しかし、AppleはMacエミュレータ自体を禁止しなかったことが分かる。
(「asked us to discontinue making vMac.」との記載があるが、その後vMacの開発が続行されていることから、これは強制力のないものだったと推測される)

また、The OS Emulation HomePageによるChristian Bauer氏のインタビュー記事によれば、かつてAppleドイツでShapeShifter(Amiga用68k Macエミュレータ)をApple公式の製品に採用する計画があったらしい。この計画自体はApple本社がROMイメージファイルのバンドルに難色を示したため破棄されたそうだが、この時もAppleはShapeShiferの開発自体は禁止していない。

つまり、これまで商用・フリー問わず多数のMacエミュレータが登場しているが、Appleは10年以上もの間その存在を事実上「容認」していることになる。

もちろん、これまでがそうだったからと言って今後も同じとは限らない。

本サイトとしては、当面は現状通りMacエミュレータに関する情報を公開し続けていくが、本件に関してAppleが何らかのアクションを起こした場合は、サイトの運営方針について再考したいと思う。

【追記】
本ページは元々PowerPCや68k Macの時代にPC上で動作するMacエミュレータに関して記述したものであるが、その後AppleがMacのCPUをIntel製CPUに移行したため、例えばEFiXのような手法でPCにMac OS Xをインストールすることも不可能ではなくなった。これらに関してもエミュレータと同じ問題が発生するが、何らかの形で結論が出るまでは判断を「保留」としたい。

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