風のマタザエモン

中澤大輝(なかざわひろき)



 今日は、梓川村(あずさがわむら)の花火大会の日です。
 ヒロちゃんナオちゃん兄弟は、朝から楽しみにしています。
「ママ、今日は花火大会だよね」
「お店いっぱい来るかなあ」
「兄ちゃんくじやるー。わなげもやろう」
「オレは、ぜったいゲームセットを当てるゾ」と、はりきっています。
 夕方になって、お空はまっ赤になって、太陽がジューといいながら、山の中に入りました。キラキラしたお星さまが出てきました。
「雨ふらねぇで、土がやけてこまるわ」
「ほんとにね、草もかわいて心配だわね」
と、おじいちゃんとおばあちゃんの話を聞きながら、二人は朝顔に水をくれました。なかなか咲かないので心配しています。
 パパとママと四人で、歩いて行きました。
 交通整理のおじさんが、一生けんめい車をゆうどうしていました。
「車は、グラゥンドに入れて下さい」
 おじさんは、ピカピカしたぼうをふっていました。
 会場では、村のおじさんおばさんたちが店を出していました。二人は、くじとわなげをやりました。ヒロちゃんは、ゲームセットは当たらなかったけど、竹とんぼをゲットしました。ナオちゃんはピーヒョロ笛をゲットしました。
 お腹がすいたので、あげタコとヤキソバとお米のパンを買って食べました。
「うめぇっ」
「のどにつまった。ジュース、ジュース」
と大さわぎで食べました。
 草の上のシートで大さわぎです。
 時間がくるまでまっていました。
 会場にアナウンサーの人が始まることをしらせました。みんなは、「ワーッ」とさわぎました。
 大きな花火が上がりました。
「ピューン、ドッカーン、バチバチ!」
とすごい音でした。
 大きい花火の後は、スターマインでした。いろいろな花火が上がって「ピュンピュン」とハチがとび出してみごとな花火です。煙もすごいです。
 ヒロちゃんが、
「ママ、お空のお星さまは、けむくないの。お星さまもきれいな花火見たいのに」
と言うと、
「そうね、かみなりのゴロザエモンは、今日よべないから、風のマタザエモンでもよんだのかもね」
と、ママがふしぎなことを言いました。
 すると、やさしい風がふきだしました。
「ほらね、来た。お星さまも見たいって」
と、ママが言いました。
 どこか、遠くで消防車のやさしいサイレンの音がしました。パパが、
「やけてるでェ、火の粉が草の上に落ちて火事にならないように消防車が出たな」
と言いました。ナオちゃんが「救急戦隊ダー」とさわいでいます。花火はまだまだ続きます。「たまやー。カギやー」どこかのおじさんがとなりでさわいでいます。ビールを飲みすぎたのでしょうか。
 ヒロちゃんが、
「ママ、お星さまは花火があつくないかなあ」
ときくと、ママは、
「よーく見てごらん。お星さまだってあついから、にげているでしょう」
と言います。よーく見ると、大きなきくのような花火のまわりには、お星さまはいませんでした。
 花火が上がるたびに、風がふいてけむりを流しているようです。会場に来た人たちは、むちゅうで見ています。
 いよいよこれが最後になりました。
 となりのおばさんが、
「今日一番大きいのが上がるよー。ようく見てててごらん」
と言いました。
「ヒューン」
 上へ上へ火の玉が上がっていくのが見えます。お星さまと同じ高さまで上がって、「ドッカーン」地面がゆれるくらい大きな音がして花火が開きました。空いっぱいに広がって、「バチバチ」と火の粉が落ちてきました
「アッ、お星さまも落ちて来たよ」
とヒロちゃんとナオちゃんがママに言いました。ママは、
「星が落ちたみたいにきれいだったねえ」
と言いました。
 帰ろうと思った時、
「こんばんは、楽しんでいますか」
と、黄色の帽子をかぶって、真っ青なシャツと白いネクタイのおじさんがそばに立っていました。
「これ、どうぞ」
とママにうちわをわたしました。
「あっ、ありがとうございます」
 おじさんは、ヒロちゃんナオちゃんに、
「最後の花火見てた? 星のかけらも落ちたみたいだよー。さがしてみるかい」
とささやきました。
 二人はうなずきました。パパが、
「知っている人?」
と二人に聞きました。二人は心の中で、あれが風のマタザエモンだと思いました。
 ふりかえるとふしぎなおじさんはいなくて「ピュー」とすずしい風がふいていました。
「川から風、上がってきたから帰るぞ」
とパパが言いました。ヒロちゃんはパパに、
「帰りはまなちゃんちの方の道行きたいヨー」
と言いました。
「少し遠くなるぞ」
 パパが先頭に立って四人は歩き出しました。 外灯がないのにまっくらな道が、ピカピカ光っていました。ヒロちゃんとナオちゃんは星のかけらだと思いました。ひろおうと思いました。でもちっともひろえませんでした。
 そこへピカピカ光るぼうを持った交通整理のおじさんが、
「ここは交差点だで、少しの光りでもわかるようにクリスタルの粉を入れて、あぶなくないようにしてあるんだー。ぼくたちきいつけて帰りな」
とやさしく教えてくれました。ナオちゃんが、
「ちがったね」
と言いました。
 大きな川のそばを通りました。
 草の中がピカピカ光っていました。二人がそばまで行ってみると、光はとびたちました。 パパが、
「小さいころ、ここがホタルでいっぱいだったけど、まだ少しいるんだな、きれいだね」
 二人は、あれがホタルだと知りました。川の方へ飛んだり、お星さまの方へ飛んでいったりして、ピカピカしてきれいでした。
 加工トマトの畑の中で四つの丸い光がパチパチ光っています。四つの光は、ゴロゴロいいながら近づいてきました。
 ヒロちゃんはおどろいて、心ぞうがとびだしそうでした。
「にゃーん」「ミャーゴ」
 よーく見ると、それは小沢さんちのタマと大池さんちのミューでした。二人は、夜ねこの目が光ることを知りました。二ひきはママの足もとにまとわりついてから、夜の畑に消えていきました。
「二ひきは、ラブラブだな」
 パパはそう言ってから、
「ナオちゃん、ねこは夜かっぱつに動くんだよ」
と、パパの足にしがみついているナオちゃんに言いました。
 田んぼの近くを通りました。だれかが田んぼの中に立っているのが見えました。
 車が通ってそのライトで、カカシだということがわかりました。もういねのほが出たのでカカシを立てて、すずめからほを守ろうとしたのでしょうか。
 二人は、めずらしくて、カカシの方に近づいて行きました。すると、カカシの麦わらぼうしの上にキラキラ光る物が三つありました。
 カカシが、
「上から落ちてきたんだ」
と言うと、いねのほたちが、
「花火にびっくりして落ちちゃったんだって」
と、さわさわさわぎました。
 二人は、パパとママに手の中の星たちを見せました。
「七夕のかざりが風で飛んできたのかな」
とパパが言いました。このへんの七夕は八月七日なのです。
 二人は、いそいで家に帰ってテープでそれをつなぎあわせました。そして、それをママに外のものほしにつるしてもらいました。
 おふろに入ってねることにしました。ママがさっきもらったうちわをあおいで、風をおくってくれました。その風はスイカのにおいがしました。
「ふしぎなうちわね。メロンのかおりがするわ」
 ママにはちがうかおりがするようでした。
 ナオちゃんとヒロちゃんは夢を見ました。風のマタザエモンがでてきて黄色いぼうしをとって、
「ありがとう、今夜中に星を空に上げることができました。おれいに君たちにプレゼントをしますね。今夜のさんぽは楽しかったですか。フフフフフ」
 朝おきると、ピカピカした星はなくなっていました。ママが、
「ヒロちゃんナオちゃん朝顔さいたわよ」
と言ったので、二人はいそいで外に出ました。ピンクと白とむらさきの花が咲いていました。ママが、
「この朝顔、ききょうっていうのよ、お星さまみたいな形できれいね」
と言いました。二人はうなずきました。「兄ちゃん、風のマタザエモンのプレゼントかなー」「うん、そうだよ」
 二人は、
「風のマタザエモン、ありがとう」
と言いました。

(おわり)



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