夏になりました。冬の間、町にいた動物たちが、森にひっこしてくる季節です。ふたごのウサギ、トトとムムの住んでいるどうぶつ森も、とてもにぎやかになりました。
朝から、太陽がさんさんと照りつける、ある日曜日の朝、トトがゆうびんうけをのぞくと、いつものように新聞が入っていました。でも、ほかの家のゆうびんうけには、
どうぶつの森たより
今日の朝九時に、集会があります。
森の公民館に集まって下さい。
村長 野ネズミ
という紙も、いっしょに入っていました。
森の公民館というのは、森の入り口にある、赤いトンガリやねの小さな小屋のことです。
中には動物たちがすわる木のいすと、小さな黒板があり、森の集会は、ほとんどここでやるのです。
朝九時近くになると、動物たちが集まってきました。いつも昼間はねているフクロウさんや、最近どろんこぬまにひっこしてきたカッパさんもきました。カラスさんは、赤ちゃんカラスをせなかにのせて、
「せなかの上でさわがないで」
と言いながら、飛んできました。
みんながイスにすわると、村長の野ネズミさんが、せきばらいをしてから言いました。
「みなさん、次の日曜日は、ふたごのウサギ、トトとムムの九才のたん生日ですね。そこで、今日はトトとムムのたん生日会の計画を立てます
野ネズミさんが言い終わると、ニワトリの赤ちゃんの三つごのひよこが、
「ピヨピヨ、ピーヨピヨ」
と返事をしました。この森では、十才までの子どもが、森のみんなにたん生日のおいわいをしてもらえるのです。
森の動物たちが、朝から集会をやっているとは知らずに、トトとムムは、家のそうじをしていました。『日曜日はそうじの日』と決めているのです。二ひきとも、ムムがかけているそうじきの、
「ブィーン、ブィーン」
という音で、外が静かなのには気づきません。 やっとすみまでぞうきんをかけおえたトトは、真っ黒になったぞうきんを見て、
「ぼくたちはこんなほこりの中で息をしていたんだねぇ」
と言いました。
その時、風でゆれているカーテンのすき間から、シュッと紙ひこうきが入ってきました。びっくりしたトトが、紙ひこうきをひろってみると、はねのところに、「おてがみよんでね」と書いてあります。トトが、ムムといっしょに紙を広げてみると、
こんどのにちようび、おひるにひろばに
きてね。ぴいこ・ぴいすけ・ぴいたろう
より
と書いてありました。ムムが急いで、まどから外をのぞくと、小さい物が三つ、ピョコピョコと歩いていくのが見えました。二ひきは顔を見合わせました。
「なんだろう?」
「いたずらかな?」
「おもしろそうだよ。行ってみようよ」
「そうだね。ちょっとわくわくするね」
二ひきは、けっきょく行ってみることにして、カレンダーの次の日曜日に、赤いしるしをつけました。
さて、次の日曜日、トトとムムが、きょろきょろしながら、森の広場に行くと、みんなが集まってきて、
「おたん生日おめでとう」
と、口々に言いました。トトとムムは、はっとして、今日が自分たちのたん生日だったのを思い出しました。
二ひきがびっくりしていると、むこうの方からいいにおいがただよってきました。カラスさんや、クマさんたちが、大きなおなべでカレーを作っていたのです。
「おいしそう」
ムムが鼻をヒクヒクさせながら言うと、
「早く行って食べようよ」
と、くいしんぼうのパンダさんが、おなかをグーッと鳴らしながら言いました。
カレーは、じゃがいも、なす、トマト、かぼちゃ、ピーマン……夏野菜がたっぷり入っていて、トトもムムも、三ばいもおかわりしました。クマさんは、
「はちみつを入れてもおいしいんですよ」
なんて言いながら、カレーにはちみつを入れてくれました。
みんなのおなかがいっぱいになると、スタンプラリー大会が始まりました。
トトとムムが最初に行ったのは、森のはずれにあるどろんこぬまです。そこではカッパさんが、『どろだんご作り』というかん板を出して、みんなにどろだんごの上手な作り方を教えていました。カッパさんが、どろだんごの頭にきゅうりの葉っぱをのせて、
「黒ガッパのできあがり」
と言ったので、トトとムムも、そばにあったオオバコをどろだんごの頭にさして、
「黒ウサギのできあがり」
とまねしました。
「なかなうまい!」
と、カッパさんはきゅうりのスタンプをおしてくれました。
次に行ったのは、ニワトリさんの家です。ニワトリさんは、『たまご料理教室』というかん板を出していました。家の中は、『初級・たまごやきの部』と『中級・ホットケーキの部』と『上級・オムライスの部』の三つに分かれていました。トトとムムは相談して、ホットケーキにちょう戦することにしました。二ひきが、ポテポテこなをこねていると、ぴいこちゃんが、
「あわが立たないように、切るようにこねるのがコツよ」
と、アドバイスしてくれました。二ひきは一まい分の材料を半分ずつに分けて、小さくてかわいいホットケーキを作りました。すると、
「ごうかく!」
と言って、ぴいすけくんとぴいたろうくんが、たまごのスタンプをおしてくれました。
となりでオムライスを作っていたパンダさんは、中にごはんをつめすぎて、たまごに穴をあけてしまいました。でもパンダさんは、穴からこぼれ出てしまったごはんをつまみ食いしては、
「うーん。これはうまい>」
とニコニコしながら言ってはごきげんでした。 次は、サルさんの材木置き場に行きました。そこでは、大工のサルさんが、『木のなんでも工作』をやっていました。いろんな形の木切れがならべられてあって、見ているだけでわくわくしてきます。ムムが、
「これ、使っていいの?」
と、サルさんに聞くと、
「おう。おれが使った材木ののこりだから、使いほうだい、作りほうだい、持ってけどろぼう! さ」
と、いせいよく答えてくれました。二ひきは、丸い、コースターほどの大きさの木切れに、太めのえだを二つ付け、うさぎの形の表札を作りました。そして、細いえだや、木の実を使って、「トトとムム」と名前を入れました。
「家のがだいぶ古くなってきたから、新しいのととりかえなきゃと思ってたんだよね」
とトトが言うと、
「うん、うん。ちょうどいい時に作れたね」
と、ムムもうなずきました。
その時、
「ガラーンゴローン、ガラーンゴローン」
と、広場のかねがなりました。おわりの合図です。空を見上げると、もう夕焼けぐもがうかんでいます。二ひきは急いでサルさんにトンカチの先についているスタンプを、
「ほいさっ」
とおしてもらいました。
「あー楽しかった」
「もっとやりたかったな」
「またやりたいねぇ」
動物たちは、そんな話をしながら、広場へ向かいました。
みんなが広場に集まると、野ネズミさんが言いました。
「今日はとっても楽しい会ができましたね。わたしもスタンプを二つ集めました。次はだれのたん生日でしょうか。また楽しみにしていて下さい。では、これで、トトとムムのたん生日会を終わりにします」
みんなはもう一度、トトとムムに、
「おめでとう」
と言って、帰って行きました。
トトとムムは、みんながどれだけはりきって、今日のじゅんびをしてくれたのかということをクマさんから聞いて、じーんとむねがあつくなりました。
そして、
「今日は、とってもいいたん生日だったね」
「うん。みんなにおどろかされたねぇ」
「次はぼくたちも、みんなをびっくりさせるぞ!」
と話しながら、いつものようにお茶をのみました。
(おわり)
|