秋のおくり物

三ツ井彩乃



 秋もだんだんと深まり、赤や黄色にそまった森は、明るく、元気があふれています。
 ふたごのウサギ、トトとムムの住むどうぶつ森にも、ドングリや山ブドウがたくさんなりました。動物たちは、あちこちで収穫作業に追われています。トトとムムは、畑でとれたニンジンで、特製の「干しニンジンチップス」を作り、みんなに配っています。
 すると、どこからか子どもの話し声が聞こえてきました。
「広場の方からだ!」
 トトが耳をぴんと立てて言いました。二ひきがあわてて広場に走っていくと、大きなけい示板に、はり紙がしてあります。
来週の土曜日は、毎年恒例の遠足です。
行き先は星見山。キノコとりも計画しています。
大勢の参加を待っていますよ!
 遠足は、秋になると毎年この村で行われる楽しい行事です。コースは毎年ちがうので、みんなワクワクと発表を待っているのです。
「わぁ。キノコとり、楽しみだなぁ」
 二ひきはスキップしながら家に帰りました。
 
 いよいよ当日の朝、家々の窓には、子どもたちの作ったてるてるぼうずが下がっています。
 実はこの日、トトとムムには、とても大事な仕事がありました。子ども一日新聞記者です。星見山遠足であったことを「どうぶつの森新聞」にまとめる仕事を任されたのです。二ひきは首からカメラを下げ、はりきって集合場所の広場に行きました。もうたくさんの動物たちが集まってきていて、
「いいお天気で良かったね」
「てるてるぼうずのおかげだね」
と口々に話しています。みんながそろうと、村長の野ネズミさんが朝のあいさつをして、
「さっそく出発します」
と大きな声を上げました。

 山へ続く細い坂道を、一列で登っていくと、「星見山が見えてきましたよ」
 野ネズミ村長がこんもりとしげった大きな山を指さして言いました。
「キノコキノコ、ピヨピヨピヨ」
 さっきまでふくれていた三つごのひよこは、たちまち元気になりました。
 山の入口≠ニいうかん板のあるところで、一っぴきのカメのおばあさんがむかえてくれました。野ネズミ村長が、
「みなさん、こちらはこの山を案内してくれる、カメのウメさんです」
と紹介しました。百二十五才のウメさんは、
「よろしくの」
と、しゃんとした声で言いました。トトとムムは、急いでウメさんの写真をとり、「ウメさん百二十五才、山の名人」と、メモしました。「この星見山には危険な毒キノコもあるそうなので、見つけたキノコは必ず、ウメさんに見てもらいましょう」
 野ネズミ村長の話が終わると、リス三兄弟は、
「ぼくが一番だもんね」
「兄ちゃんなんかに負けないぞ」
「いや、おいらが一番だな」
と、先を争って山にとびこみました。トトもムムもキノコをさがし始めましたが、もちろん取材も忘れていません。
「ウメさん、このキノコ、食べられますか?」 一番にとんできたのは、やはりくいしんぼうのパンダさんです。
「それはクリタケといってねえ、おみそしるに入れるとうまいんじゃよ。ほっほっほっ」
「本当ですかぁ?! やったぁ!」
 パンダさんはニコニコ顔でガッツポーズをすると、大事そうにキノコをしまいました。トトとムムは、そのしゅん間を、
「ナイス、ショット」
と言って、カメラにおさめました。
 その時です。
「大変大変!」
 リス三兄弟がかけこんできました。
「どうしたの?」
 トトとムムが口をそろえて聞きました。
「三つごのひよこのぴいすけくんがいなくなっちゃったんだよ!」
「リスくん本当かい? そりゃ大変だ!」
「ぴぃ―――!」
 野ネズミ村長は、首に下げていた笛を力いっぱいふきました。集合の合図です。みんなが集まったのを確かめると、野ネズミ村長はぴいすけくんのことをみんなに話しました。
「そこで、この山をみんなで手わけして探したいと思います」
 みんな、うんうんとうなずきました。
「めいわくをかけてしまってすみません」
 ニワトリさんが心配そうに頭を下げました。
「ぴいすけくん大じょうぶかな」
「早く見つけてあげなきゃ」
 みんな、真けんな顔で探し始めました。
 リス三兄弟は、虫メガネで、ぴいすけくんの足あとがないか、走りまわって調べています。カラスさんは、林からたくさんのカケスをつれてきて、空の上から探しています。トトとムムも、この時ばかりは取材どころではありません。カメラを望遠鏡がわりにのぞいて、ぴいすけくんを探しています。

「あれれ、ここ、どこだろう?」
 みんなが自分を探しているのも知らずに、ぴいすけくんは起き上がりました。
 キノコ探しに夢中になって、どんどん山のおくに入りこんでしまい、あたたかな日だまりでぐっすりねてしまったのです。
「ぼく、帰らなくちゃ」
 ぴいすけくんは、よちよちと歩き出しました。
 しかし……
「あれ? こんなとこ、通ったっけ?」
 歩きつかれたぴいすけくんは、とうとうすわりこんでしまいました。すると、
 ガサガサガサ。
 近くのやぶがゆれて、すらりと背が高い黒ネコが出てきました。すっかりおびえているぴいすけくんを見て、そのネコは言いました。「きみ、まいご? なんていう名前?」
「ぼ、ぼくぴいすけ。ウメおばあちゃんのところから来たの」
 ぴいすけくんがおどおどと答えると、
「食べたりしないから安心しな」
 そのネコはぴいすけくんをひょいとおぶって、すたすたと歩き出しました。
「おれはヤマネコ。この山で薬草をとって薬を作っているんだ。ウメばあさんとは仲がいいんだよ」
 ぴいすけくんは、ヤマネコさんの話を聞きながら、もう一人ぼっちじゃない、と思ってとても安心しました。

「ぴいすけくんはまだ見つからないのかい」
 みんなの報告をじっと待っていたウメさんも、心配そうにしています。するとそこへ、ヤマネコさんが走りこんできました。
「ウメばあさんひさしぶり」
「あれ、ヤマネコじゃないか」
 ウメさんはびっくりしています。でも、ヤマネコさんの背中から、ぴいすけくんがとび下りたのを見た動物たちは、もっとびっくりしました。
「お母ちゃん」
 ぴいすけくんは真っ先ににニワトリさんのむねにとびこみました。ニワトリさんは顔をくしゃくしゃにしています。
「よかったねぇ」
 ヤマネコさんからくわしい話を聞くと、みんなは、ほっとして言いました。
 トトとムムは、予想外のヤマネコさん登場に、はりきってインタビューしています。
「好きな食べ物は何ですか? 将来の夢は?」「ネコだけど好物はサツマイモ。将来はお医者さんになりたいんだ」
 ヤマネコさんは笑顔で答えてくれました。

 みんなはお弁当を食べ、ちょっとひと休みした後、山を下り始めました。すると、三つごのひよこがそろって声をあげました。
「あっ。キノコみぃ〜〜っけ」
 見ると、ひよこたちと同じくらいの大きさの、水色っぽい色の小さなキノコが生えています。キノコが光を出しているのか、ほんわりとあたたかい感じがしました。
「おぉ、それはホシミダケじゃないか! めずらしいのう」
 ウメさんが目をまるくして言いました。
「ホシミダケ? おいしいですか?」
 パンダさんがすかさず聞きます。
「いやいや。このキノコは百年に一度だけ見られるという、まぼろしのキノコじゃ。願い事をかなえてくれるという言い伝えがあるんじゃよ。だからとってはならんのじゃ」
 トトとムムは、ちょっとどきどきしながら、ホシミダケを写真にとりました。森のみんなは、心の中でホシミダケにお願い事をして、山を下りて行きました。

 さて、遠足から帰ってきたトトとムムは、目が回るような忙しさで記事をまとめました。トップはもちろん、『まぼろしのホシミダケ発見』です。山で出会ったウメさん、ヤマネコさんの紹介は、特に力を入れました。ほかにもぴいすけくん無事発見∞ガッツポーズのパンダさん=c…と、もりだくさんの内容です。

 次の朝、トトとムムは、ねむい目をこすりながらも早おきをしました。配達された新聞をワクワクしながら開くと、二ひきの記事はきれいに色刷りされたページに堂々とのっていました。トトとムムは、そのできばえにすっかり満足です。そして、いつものように、
「今年の秋もいい思い出がたくさんできたね」
「うん。また、ウメさんやヤマネコさんに会えるといいね」
と話しながら、お茶を飲みました。

(おわり)



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