秋の間に紅葉した葉もすっかり落ちて、つめたい木枯らしがふく季節となりました。
夏の間をどうぶつ森ですごした動物たちは、少しずつせまる寒い冬にそなえて、あたたかい町の方へ引っこしていきました。どろんこぬまに住んでいたカッパさんも二、三日前にふもとの町に引っこしていってしまい、リス三兄弟やクマさんの玄関には「只今冬眠中」という看板がかかっています。
「はぁ〜〜」
どうぶつ森に住むふたごのウサギ、トトとムムも、にぎやかだった森がすっかりさびしくなってしまい、ため息ばかりついています。
そんなある日のこと、朝、目が覚めたトトは鼻をビクビクッと動かしました。ムムは耳を立ててじっと耳をすましています。そして同時に目をパチッとあけると、口をそろえて、「もしかして!」
とさけびました。二ひきがベットから飛びおりて窓を開けると、そこには真っ白な雪のじゅうたんが広がっていました。
「やっぱり!」
「わぁ、きれい。まぶしい!」
二ひきはにぎやかに歓声をあげると、
「おぉ寒い」
「ハックション!」
と、そっと窓を閉めました。
初雪で、すっかり元気をとり戻したトトとムムは、家の中を走りまわって大さわぎです。「セーターを出さなきゃ」
「手ぶくろとマフラーも必要だよ」
やっと見つけ出した去年のセーターを着たトトとムムは、おたがいに相手を指さして大笑いです。
「あはははは。ムムったらつんつるてんだ」
「うふふ。トトだって短くなってるよ」
冬の白い毛に生えかわったトトとムムの手はセーターからだいぶはみ出していました。でも、そんなことはおかまいなしに、二ひきは身じたくをととのえて、先を争って外に飛び出しました。森はどこまでも真っ白で、お日さまの光をあびてキラキラと光っています。二ひきはワクワクしながら雪をふんで、大きく深呼吸しました。
「何しようか。雪うさぎ作り?」
「雪うさぎみもいいけど、そりで遊ぼうよ」
「いいね、いいね」
トトとムムは相談して、物置から二人乗りのそりを引っぱってきました。
「しゅっぱーつ!」
トトのかけ声とともにそりがすべり出しました。みるみる景色が通りすぎていき、広場の入り口が見えてきました。ところが、
「がっこん」
という音がしたかと思うと、二ひきは雪の上にほうり出されました。
「トトだいじょうぶだった?」
「うん。ムムは?」
「だいじょうぶ。それよりそりは?」
どうやら切り株にぶつかったらしく、そりはこわれてしまっていました。
「そうだ。大工のサルさんのところへ持っていって直してもらおうよ」
ムムがいうと、
「サルさんならきっと直してくれるよ」
トトも賛成しました。
「サルさんこんにちは」
二ひきがサルさんをたずねていくと、サルさんは家の周りの雪をかき終えて屋根の上で一服しているところでした。二ひきに気づくと、サルさんは屋根の上から後方二回転宙返りをきめてスタッと着地しました。
「すご〜い!」
「かっこいい!」
トトとムムが手をたたいていると、サルさんが言いました。
「よう、ミミとモモ。ひさしぶりっ。あれ、キキとナナだったっけ」
「トトとムムです」
二ひきがふくれていると、サルさんはすまなそうに言いました。
「おっとすまねぇ。お前たちの名前は覚えにくくて……」
サルさんがもじもじしているので、二ひきはおかしくなって笑い出しました。
「そいで、トト……と……ムム、今日は何の用だい?」
サルさんがたずねたので、トトとムムはかわるがわるそりのことを説明しました。サルさんは、話を聞き終わるとニコッと笑って、
「お前たちは無事でよかったな」
と言って、そりを調べ始めました。
「うーん、こりゃぁ直せないこともないが、作り直した方が早そうだな」
それを聞いたトトとムムのミミがピンと立ち上がりました。
「え〜っ、新しいのを作ってくれるの?」
「おう。どうせならそこらへんの子ども集めて来い。おれがそりの作り方を教えてやる」
「やった〜!!」
二ひきは手をつないでバンザイをしました。「フッフッフッ。ひさしぶりにうでがなるぜ」 サルさんは力こぶを作ってみせました。
トトとムムは、できるだけたくさんの動物を集めようと、大きな声で叫びながら森じゅうを走りまわりました。
さびしい思いをしていた動物たちは、子どもだけでなく、大人もたくさん集まってきました。真っ先に来たのはなんとライオンさんで、
「さびしかったぞ〜。みんな元気か〜?」
と言いながらトトとムムのあたまをぐりぐりとなでました。ほかにも、ニワトリさん親子やパンダさんなど、家にいた動物たちがはりきってサルさんの作業場にやってきました。
「よ〜し、じゃあ始めるぞぉ」
サルさんが声をかけると、
ワイワイ ガヤガヤ ギコギコ トントン
ひさしぶりに、にぎやかな音が響きました。 トトとムムは、一人乗りのそりを二つ、おそろいで作ることにして、木を切り始めました。サルさんは、
「のこぎりってのは、こう持つんだ」
「釘はよく見て真っ直ぐ打て!」
と、子どもたちの前で得意気に話しています。そりは思ったより難しくて、釘うちが終わると、みんなヘトヘトになりました。
その時です。玄関の方で「バサッバサッ」と音がしたかと思うと、ガラガラと戸が開いてふくろうさんが入ってきました。
「年よりにそり作りはきついが、お茶のさし入れぐらいしようと思ってね。みんなでお茶にしましょうや」
そう言ってふくろうさんが、持ってきたカゴを持ち上げてみせたので、作業場の中は一気に沸き返りました。カゴの中には干しりんごや野沢菜の漬け物、大根の煮物などが入っていました。みんなは温かいお茶を入れて、ふくろうさん特製の冬のごちそうをありがたくいただきました。くいしんぼうのパンダさんは、
「ぜひ、ぼくに漬け物を教えてください」
と、ふくろうさんに頭を下げました。ふくろうさんはにっこりほほえんで、
「いつでもおいで。待ってるよ」
と答えました。
楽しいお茶が終わると、そり作りは最後の仕上げに入りました。トトもムムも、そりにペンキをぬって、「TOTO」「MUMU」と名前を書きました。ライオンさんのそりは色も形もシンプルですが、やすりでピカピカにみがき上げられていて、木目がきれいです。ニワトリさんと三つ子のひよこは、三つの小さなそりの前後に金具をつけ、電車のようにつながるそりを作りました。中でも一番目をひいたのは、パンダさんのそりです。外側はうすい黄緑色、内側の座るところは茶色という、ユニークなデザインです。名前は「よもぎもち号」。実はパンダさんは、よもぎもちが大すきなのでした。
みんなはそりが完成すると、丘の上までのぼり、一列に並びました。
「よーい、どん」
と言うふくろうさんの声で、たくさんのそりがいっせいにすべり出しました。トトとムムのそりも、「シュー」と雪けむりを上げながら丘を下りました。広場について、みんながサルさんにお礼を言うと、サルさんは、
「これくらい朝飯前さ。また来いよ」
と言いました。動物たちは、自分のそりを引いてニコニコしながら帰っていきました。
家に着いたトトとムムが中に入ろうとすると、玄関の前に小包が置いてありました。差し出し人はくまさんです。
「何だろう!」
二ひきが家の中に入って小包を開けると、一番上に「トトとムムへ」という手紙が入っていました。
――元気ですか。この小包は初雪が降る
ころに郵便やさんに届けてもらうように
お願いしました。今頃、一面の雪に大は
しゃぎしていることでしょう。トトもム
ムも夏の間にとても大きくなったので、
新しいセーターをおくりますね。きっと
ぴったりだと思います。
春になったら、冬のお話をたくさん聞
かせてください。一年に一度きりの冬を
たくさん楽しんでね。 クマ ――
二ひきは手紙を読むと、ちょっぴり涙が出そうになりました。セーターは、ふんわりしたさくら色をしていて、ちょうど二ひきにぴったりでした。
「春の色だね」
トトがそっと言いました。二ひきの真っ白な毛に、やわらかなさくら色がよく合っています。
二ひきは、だんろに火をおこすと、熱いミルクティーを入れました。そして、
「春になったら、くまさんにお礼を言おうね」
「うん。話すこといっぱいつくろうね」
と、話しながら、いつものようにお茶を飲みました。
(おわり)
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