通行禁止の峠

明神峠・樫の木峠?・峰坂峠(広河原峠)・悪沢峠(柳島峠)・<仮称>丸尾峠

 ヤマヒルの活動が活発になる梅雨、東丹沢に足は向かない。
ヤマヒルから逃げて西丹沢を訪れた。

今回の目的はロープが張られ通行止の表示がある悪沢峠を辿ることと、
土沢左岸の道(土沢径路?)を探索すること。

明神峠(11:45)・・・湯船山(12:20)・・・峰坂峠(13:05)・・・悪沢峠(13:20)・・・造林小屋(14:00)・・・土沢入口・世附川取水口(14:30)

・・・三つ目の吊橋・巡視路終点(14:50)・・・水ノ木橋(15:45)・・・三ノ沢歩道入口(17:20)・・・一ノ沢(17:50)・・・明神峠(18:05)



謎の「明神歩道」

お昼近くに明神峠に到着。
峠から三国峠方面へ少し行った広場(バスの転回場所)に車を置く。

相変わらず明神峠のゲートは固く閉ざされている。
静岡森林管理署が設置した「最近クマが出没しました」の
看板があり、ちょっぴり緊張させられる。
しかしヤマヒルやダニなどの不快生物に比べれば
遭遇する機会も少ないことだろう。


明神峠の石祠
かつてはこの辺が峠だったのか?

ゲートの西側に「明神歩道入口」の標柱があった。
「明神歩道」ってなんだろう? かぼそい道が続いていた。

峠の標識に立て掛けられていた木の枝の杖を拝借して
尾根を東に進みます。

一段上がったところに山神様の石祠があります。
以前はこの付近が峠だったのかもしれません。


「入山御心得」を読むべし

送電鉄塔の下に、「三国山・湯船山を愛する会」の方々が設置した
「ご入山御心得」という立札があります。

ここに書かれた最低限の約束が守れない人は
素晴らしき駿相国境尾根を歩く資格はないのです。

トリカブトの林床からササに変わり道を隠し始めます。
冬場と違って少しばかり歩きにくいですが、
この辺ではダニの取り付き被害はゼロです。


グリーンヒルゴルフ場分岐
ここが、「樫の木峠」だろうか?

明神山を過ぎるとグリーンヒルゴルフ場の分岐となります。
以前は無かった素敵な標識が立てられています。
「愛する会」の皆様が道普請をされているようです。
いつの日か辿ってみたいコースです。

1989年版ゼンリンの住宅地図「山北」によると、
この分岐は「かしの木峠」となっています。


1989年版ゼンリン住宅地図「山北」より

山関連の文献では目にしたことの無い峠名ですが、
実際にこんな呼名があるのでしょうか?謎です?

ただ湯船山のことを麓の上野地区では「樫の木山」と
呼んでいたそうですから、まんざら誤った表記ではないようです。

ちなみに現行版のゼンリン住宅地図では山間部の記載は
省略されており、この峠名を見ることはできません。


湯船山

今まで積雪期にしか来たことのなかった駿相国境尾根。
その緑の濃さは新鮮です。

でもやっぱりこの尾根は冬向きの尾根道なのかな。
丹沢山塊西域部の奥懐を眺めるには落葉期が最適だと思います。


駿相国境尾根のブナ道

湯船山を過ぎるとササも姿を消し、
心地好いブナ、カエデ、ミズナラの道となります。

駿相国境尾根のブナは元気に生きています。
松沢神奈川県知事には、立ち枯れしたブナ林ばかり
見ていないで元気な若葉を纏ったブナの姿も見て欲しいものです。

(ブナの立ち枯れをアピールすることで、水源林保全のための
新税導入を速やかに成立させる魂胆か?
まあ、山に実際に登るだけ今までの知事よりは多少ましか)


白クラノ頭

白クラノ頭にも「愛する会」の標識が新たに立てられていました。
それによると、山頂から南にのびる尾根道を整備して
林道への接続を図ったとあります。 ただし、「ヤブコギ」とのこと。

綺麗で、見ていて楽しい、芸術的な標識を丹精込めて作り、
そしてそれを現地まで荷揚げして設置する。
土地所有者や役所の了解を得たりすること、
いたずらされたり、風化したりする度に手直しをすること、
これは実に大変な作業だと思う。


峰坂峠

白クラノ頭からロープの設置された急斜面を下り、
植林帯をダラダラ下ると峰坂峠に到着。

峰坂峠から世附川側に下る峠道は以前探索した
その時、峠にあった「ガケ崩れあり」の小さな標識が
無くなっているのが気にかかる。

ロープで封鎖されてもおかしくない峠は峰坂峠なのである。
(峠道下部の大崩壊地帯は大変キケンなのだから)


悪沢峠・通行止のロープで封鎖

駿相国境尾根名物(?)サンショウバラ。
まだ間に合うかもと淡い期待があったけどすでに花を終えていました。
またまた見逃してしまいました。 (T_T) また来年。
そういって再び駿相国境尾根を訪れる口実をつくっているのかも・・・

目的の悪沢峠はやはりロープで封鎖されたままで、
通行禁止の看板がぶら下がっています。
設置したのは誰か?通行禁止の理由は何か?期間はいつまでか?
などを明示していないと好奇心に駆られた峠マニアの侵入を
招くことになってしまいます。


峠道に危険箇所は見られない

はてな? 峠道は至って明瞭だぞ。
ヤブもない。峠道に入って数メートル先に倒木があるだけだ。
しかし、峰坂峠の例があるから油断はならない。
前半は快適な道で、後半とんでもない悪路やも知れぬ。
どんな危険が待ち構えているのかと慎重に進む。

しかし、どこも危険な箇所が現われないぞ。
時々、数頭の鹿が行く手を横切るぐらいだ。
峠道も鹿の足跡がいっぱいつけられている。

危険といえば鹿との出合頭の衝突ぐらいしか考えられない。
ハイカーが歩かなくなった峠道は、
ちゃっかりと鹿クン専用の峠道と化している。


手入れされた植林地内の道

峠道は地形図の破線表示の道形とは若干異なり、
植林尾根をジグザグを切りながら下って行きます。
かつては沢沿いにあったものが崩壊して
現行の道筋になったのかもしれません。
(その時に峠道を封鎖したのかな?)

植林地は手入れされていますが、
切り株を見ると苔が生えており、数年前の間伐跡のようです。
間伐作業中は危険だから登山道を封鎖することはよくあります。
まさかロープを回収し忘れてそのままになっているということは
ないでしょうね・・・?


峠道の出口の広場
腐った丸太が積まれている

大きくジグザグを繰り返し、最後は鹿クンの獣道を通ると、
腐った丸太が山積みされた広場に出ます。

結局、危険箇所は皆無であり、
峠道を通行禁止にしている理由がわかりませんでした。

私有地なのでしょうか?
それとも鹿クンに譲渡してしまったのでしょうか?


造林小屋と建設中のログハウス

広場から幅広の道を下ると芦沢橋近くの造林小屋です。
造林小屋の前にはログハウスを新築していました。
まだ窓と扉が取り付けられていないのでビバークできるかも。
(冗談です。 私有物ですよ〜)

それにしても、逆方向から、つまり峠道の登り口に
「通行止」の警告看板が無いのも解せませんね。



土沢左岸の道・峰坂峠道への目印

世附川沿いの林道に降り立ち、
次に土沢沿いの道(土沢径路?)の探索に向かいます。

「世附川取水口」の標識から吊橋を渡り広河原へ。
以前峰坂峠探索を終えて土沢を渡り飛び出した地点に取り付けた
「火の用心」のプレートはまだ残っていました。 (左写真)

これからこの気になる土沢左岸の明瞭な道を探索してみます。


巡視路終点の取水口・三つ目の吊橋

古いガイドブック【*1】によると、
この道は雷沢出合、入道の滝を経て四ノ沢付近で明神峠への
林道と接続しているようです。

また別のガイドブック【*2】には、
「土澤は世附川渓谷の裡では最も取り付き易く、
谷の浅い割に静寂な澤であって、明神峠と結んで、
春秋ともに婦女子連のハイキングコースとして好適である。」
ともあります。

てっきり沢伝いに四ノ沢、あるいは明神峠付近まで歩けるものかと
思っていましたが・・・
三つ目の吊橋を渡ったところで道は消滅していました。 アレレ?

取水口脇には沢に降りる階段があり、このまま沢沿いを歩けないこともありませんが、
どうやらこの先は沢歩きの領域です。 沢シューズが必要です。
また、暗い沢筋なので一人じゃ怖いかも。

ゼンリンの住宅地図によると、二つ目の吊橋を渡った後は、右岸の、ある程度高い位置に道が記され、
雷沢を経て入道の滝へと道がのびています。
そんな道あったかなァ?
あまりにはっきりしている取水口巡視路に目を奪われて土沢径路を見落してしまったのでしょうか?


水ノ木橋

これは困ったことになった。
土沢沿いを歩いて明神峠に至る林道に合流するはずだったのが、
車を置いた明神峠に戻る為には水ノ木橋を経由して、
延々と林道を歩かなければならないぞ。こりゃ大変だ。

三角形の一辺を歩く予定が、二辺歩かされる破目になった。
ヤレヤレ、事前調査はもっとしっかり行わなければ痛い目に遭うものだ。
状況が変わったら、速やかに計画を修正して
ただひたすら林道を歩くのみ。

時間節約の為、大棚滝の見物もカットしよう。
林道上にも滝の振り撒くマイナスイオンが満ちている感じがするから。
マイナス思考のボクとマイナスイオンが生理反応を起こしたら
プラス思考へと変化するだろうかとくだらない事を考えながら
コツコツと歩みを進める。


ここが<仮称>丸尾峠かな ?

「108.109」と書かれた林班界標がある。
この付近の斜面をs-okさんは丸尾山の下降路として使ったのか・・・
ウーン、きっとシカやカモシカのDNAが混ざっているのかもしれない。(失礼!)

なおもテクテク歩いて小さな尾根を越えると、
遠くに駿相国境尾根が見えてきた。

この部分が『丹沢だより2004.1.20.No.404』に<仮称>としてではあるが
記述があった「丸尾峠」であるらしい。


三ノ沢歩道入口

さらに先に進むと、おっ!「三ノ沢歩道入口」の標柱があるぞ。
なんか草に埋まっていてマムシでも出そうなところだ。

そろそろ林道歩きに疲れてきた頃、二ノ沢歩道入口に到着。
その脇にある岩清水に救われた。
ペットボトルの残りがあと3cm程だったので精気も蘇る。

次の一ノ沢歩道入口は暗い感じだ。
沢登りの本に紹介されている一ノ沢は陰々としている。
こりゃ冬向きの沢コースかもしれない。


峠道に横たわる大蛇

路面が舗装され明神峠まであとわずかという所で
大きなヘビに睨まれてしまった。
こんな奴とはヤブ道では会いたくないものだ。

今回出会った動物は、ヒキガエルと鹿とヘビと人間ひとり。
ヤマヒルはいないし、ダニの取り付きも現地確認では珍しくゼロだった。


明神峠の骨組みだけのバス停

やっと辿り着いた明神峠。
林道歩きは懲り懲りだ。

よくよく思えばこの明神峠も「通行止」なのだ。
こちらは交通事故頻発による仕置きらしい。
せめて自転車だけでも通行可能にしてくれれば
西丹沢の奥山探索も捗るというもの。

悪沢峠の「通行止」のロープが外されるのはいつの日になることやら。

【余談】

 明神峠から放置した車まで勾配のキツイ車道をトボトボ歩いていると、峠の走り屋の車がブルルン、ブォーン!とやって来ました。
 歩いているボクの傍らに停まり「何かあったのですか?」「お困りでしたら乗っていきませんか?」のやさしいお言葉。
 走り屋なんて、ろくな奴等ではないと外見で判断していましたが、良い人もいるようです。
 昔ヤンキー風のキレイな女の人だったので、乗ってしまおうかとも思いましたが、彼女の使いこまれたスポーティーな車は
 バンパーがボコボコでガムテープで補強している有様。 あの世まで送られても困るので丁重にお断りしました。
 結局、外見で判断してしまいました。

【*1】

『山渓アルパインガイド丹沢・道志・三ッ峠』 羽賀正太郎著 昭和50年
道は荒廃しているとしながらも、土沢沿いの道が明神峠方面に接続しているとの記述がある。
挿入地図にも広河原から四ノ沢まで破線がついている。

【*2】

『丹沢の谷歩き』 坂本光雄著 体育評論社 昭和初期
「広河原から左岸伝いに這入ると、間もなく右岸に移る。左頭上に大きな隆起を擡げて来るのが、相駿国境の湯船山である。
その土沢側の山腹を不動日陰と俚称されている。地図上土沢の土の字の所へ注ぐ雷沢を渉ると、広河原から一時間ばかりで
この本沢唯一の入道滝に達する。高さ13.4mもあろうか水量の豊富な滝で、変化に乏しい土沢の渓間に一段と精彩を放っている。
入道滝からわずかばかりで、径路は左岸に移ると、左右に日向沢と日陰沢を迎合して、四ノ沢出合に達する。」ともある。 

その他にも、『丹沢の山と渓』 川崎吉蔵編 山と渓谷社 昭和27年 にも
「土澤は・・・澤沿いに道は作られてあり、之を辿れば明神峠に出られる。」
「始めは左岸沿いに行くが間もなく右岸に移りカミナリ澤を横切って暫く行くと堂々たる入道滝を見る。
15米位はあろうか、水量は豊富で中々立派な姿である。之から少し先で道は左岸に移り、やがて四ノ澤をすぎ、
右方に火燃し峠を越えて平野に抜ける林道を見送ると三ノ澤を渡る。径は今までより登りになって小尾根を越えて
一ノ澤に出る之からズナ澤の上を横切って辿ると幅広い道が右から登ってくるのを合して明神峠に着く。」 とある。

【注意】 立入禁止になっているのにはそれなりの理由があるのでしょう。悪沢峠に行かれる方は自己責任で。


◆起きてはいけないことが起きてしまいました!◆


フィルムケースにダニを監禁する

西丹沢から帰宅後、食事を済ませ部屋でくつろいでいると太ももの裏に違和感が・・・
虫の這いずる気配がするゾ!
蚊かな?と指でつまんでみると、な、なんとヤマトダニ!(>_<)!

とうとう自宅までの侵入を許してしまった。
つまみあげたものを見た瞬間の恐怖といったらなかった・・・

長ズボンを履いていたのに、下山後、現地で着替えてきたのに、
お金をケチって温泉に入ってこなかったのが失敗だ!

とりあえず奴をフィルムケースに閉じ込めて急いで風呂に入る。
下山後に着替えた時に取り付かれたとしてもすでに2〜3時間が経過している。
コイツとかくも長時間、肌を接していたと思うと身の毛がよだつ。

徹底的に頭を洗い、念入りに体の隅々まで洗う。
他にも居たらオオゴトだ。家族にまでも取り付かせてしまったら申し訳がない。

そういえば水ノ木林道を歩いているとき、お尻がムズムズしていたなぁ。
そうそうお尻の穴の辺が妙な感じだった。(下ネタでスミマセン)
太ももまで、はい登って来る奴だからトランクスの隙間をすり抜けお尻まで来ていてもおかしくはない。

風呂から上がり全身を隈なく鏡でチェックする。
首筋、耳の穴、脇の下、腹、背中、へその穴、膝の裏・・・
俺は全裸で何をやっているのか!
そして、お尻の穴まで念入りにチェックする。(下ネタでスミマセン)

こんな小さな一匹の生物のせいで自分の尻の穴までチェックしなければならないという
辱(はずか)しめを受けるとは、ああー情けない。
あまりにも屈辱的な仕打ちではありませんか。

ホクロやへそのゴマまでダニに見えてくる始末です。
しばらくはダニノイローゼに悩まされそうです。

フィルムケースに閉じ込めたダニはどのくらい生きるのだろうか?
一説には、ダニは飲まず食わずで一年くらい平気で生き長らえる我慢強い生き物だといいます。
よーし!無期懲役の刑にしてやるゾ!
それにしてもフィルムケースのツルツルの側面を滑らずに歩くダニの運動能力ってスゴイ。
ああーまた背中がムズムズしてきた。

ヤマヒルから逃げて西丹沢に行ったのに、お土産に宿敵であるダニを持ち帰ってしまうとは。
トホホ・・・。 侮れませんねダニのガッツは。
バルサンしよう、そうしよう。

ちなみに、数日後、フィルムケースに閉じ込めたダニは永眠なされました。 合掌。

(峠行2005.06.21)