郡内地方 気になる地名U 「風呂」

 登山の後や、峠歩きの後に、山あいの温泉でひと風呂浴びるのは格別でありますが、
今回取り上げる「風呂」は、その風呂とはちょっと違うようです。


中風呂バス停

 以前、西原峠・佐野峠を訪れようと大月の奥、
葛野川沿いの集落に赴いたことがあります。

その佐野峠入口の近くに「中風呂」というバス停があり、
面白い地名であると思っていました。
よく探してみると、郡内地域や奥多摩には「風呂」という
地名が各地に見られます。

一体、どういう意味なのでしょうか?
確かに「中風呂」バス停前には、松姫鉱泉という
お風呂がありますが・・・。


バス道から峠の入口へ


葛野川を橋で渡る

ちなみに、西原峠・佐野峠ですが、天気が悪くて峠行は中止しました。
(実は天気だけでなく、夏草が茂り ヘビの出現や蜘蛛の巣におののき撤退したとも・・・)


一軒家裏の分岐と石標
ここで右、西原道と左、小菅道に分岐


「右、西原 左、秩父・小菅」の石標

葛野川を橋で渡り、通称一軒家の裏手には、有名な道標があります。
これを見るだけでも価値があるのです。 かつて村里と村里とを結ぶ一級幹線道だった名残です。
奈良倉山周辺域の西原峠・佐野峠・十文字峠は、林道延長工事で変貌が激しいようなので、
かつての古道が消える前に、是非訪れたいものです。

(参考) 佐野峠に関しては、
     『あしなか208号』(山村民俗の会)の「消えゆく峠を探る・甲州郡内佐野峠考」(杉崎満寿夫)が役に立ちます。

 


山風呂バス停

上野原にも、「山風呂」という「風呂」系地名があります。


奥多摩の雲風呂

奥多摩湖の北岸、小河内小学校近くには「雲風呂」という
「風呂」系地名があります。


奥多摩の金風呂

奥多摩湖の西、大寺山の麓には「金風呂」という
「風呂」系地名があります。

金風呂は信玄の隠し湯として、古くから湧出していたという。
一時、湯口が塞がっていたが青梅街道を拡張した際に
突然、再び湧き出したという。

  他にも、小菅川流域に「釜風呂」、高水山南麓に「山風呂」、
南秋川流域に「中風呂」などの「風呂系地名」があるようです。

奥多摩湖周辺は、確かに温泉が沸いている所もあるので、「風呂」系地名は温泉の湧出を意味する
地名なのかもしれませんね。

それにしても「風呂」の前につく「雲」、「金」、「中」、「山」、「釜」というのは何なのでしょうか?
また、これまた各地にある「不老」という地名にも、「フロウ」=「フロ」との音の響きに近しいものを感じます。
なにか関連があるのでしょうか?

『奥多摩風土記』(大館勇吉・武蔵野郷土史刊行会)によると、
「‘フロ’とは風呂から湯気の立つように湧水から湯気の立つ所の地名で奥多摩湖畔の雲風呂や
日原道の不老等も同義語です。金風呂とは金気色をした岩石から噴出する鉱泉の湯気による
地名でしょう。」 としています。

また、『山と集落』(舞田一夫・集団形星)によると、
「雲風呂のフロは石室のことで・・・」 とあります。

「風呂」とは、温泉のような湧出のある地と、ムロからの転化で「篭る所」を意味する石室、石窟、岩屋
などの地を表わすようであります。

しかし、『奥多摩』(宮内敏雄・百水社)には。
「不老の名は風呂、吹路とも宛字され・・・・フロウはヌタ場を意味する。」ともあります。
猪や鹿たちの「お風呂場」と考えれば、「風呂」の字面にも頷けます。

地名用語辞典をひもとけば、「フロ」には「森」の意味もあるようです。
また、「神のいます所」「神の鎮座地名の称」とする地域もあるようです。

ますます謎が深まりましたが、個々の風呂について肩まで浸かり、じっくり調査する必要があるようです。

地名の研究は難しく、素人が手を出すべきではないと、地名研究の大家である柳田國男氏も
述べていることなので、「風呂」地名について風呂敷を広げるのはこの辺で終了と致します。
地名の風呂のことばかりに気を奪われて、肝心の峠あるき後の心地好いひと風呂を忘れないように。