都会の外れの峠

 

大都会東京の西の外れの丘陵に幾つかの峠が点在している。

少し前までは開発の魔の手から逃れていたそれらの峠であったが、
都市の拡大、ベッドタウンとしての開発、商業圏の郊外化に伴い
凄まじい勢いで丘陵は切り崩され、かつては趣のあった峠道も
アスファルトの侵食に苛まれている。

峠の周辺が都市化するにつれ、
峠道はダンプ街道・トラック街道となり排煙にまみれることになる。

都市化して人口が増えれば、
ゴミも当然増え広大な廃棄物処分場なんぞが必要になり、
丘陵の谷間などに隠れるかのようにして造られる。
さすれば峠道に悪臭が漂うハメになる。

人目につかない峠道は、
不法投棄に恰好の場所となり、
心無い人の手によって汚され醜態をさらす。

都市の人口が増えればいずれ迎える死に備えて墓地も必要で、
これまたなぜか丘陵を切り崩し峠道の傍らに
巨大な霊園が出現することになる。

霊園ができれば宗教団体もつられてやってくるようで、
怪しげな宗教施設が峠道を占拠するかのごとく
デンと居を構える。

社会の目を逸らすかのようにして
外部から隔絶された空間である峠に至る谷間の道には、
老人ホームや病院が隔離施設のごとく建てられている。

都会に住む人々の束の間の享楽のために
丘陵を削り取り多数のゴルフ場が乱開発されている。
ゴルフがどんなに素晴らしく楽しいものなのかは存じ上げませんが、
もう、いらない。

大規模宅地造成に埋没した峠
ラブホテルが目に入る峠
拡幅される峠、トンネルを穿たれた峠
都会の片隅の峠は傷めつけられている。

峠を取り巻く環境だけでなく、
峠そのものも変貌を余儀なくされている。

都会の外れの峠を歩いていると
ダンプ、ゴルフ場、ゴミ処分場、不法投棄、墓地霊園
病院、老人ホーム、新設の大学施設、怪しげな宗教施設
そんなものばかりが目につく。

朽ちた道標、苔むす石祠、静かに微笑む石仏
踏み固められた土の道、旅人を休ませた峠の大木
そんなものはとうの昔に、露のごとく消えてしまったようだ。

都会の「外れ」の峠は
いまや訪れても「ハズレ」の峠である。

しかし、中には「当たり」がまぎれていることもあるので、
お見逃しないように。