★ 桧洞丸の古典的登路を行く / 桧洞(沢)

穴ノ平橋に車をデポ・・・玄倉ゲート(06:20)・・・ユーシンロッジ(07:45)・・・朝食・身支度・・・下降点・入渓(08:45)・・・
・・・ザンザ洞出合(10:30)・・・下駄小屋沢出合・昼食(11:45/12:00)・・・乗越沢出合(12:10)・・・金山谷乗越(12:45)・・・
・・・桧洞丸青ヶ岳山荘(13:30/14:00)・・・石棚山西丹沢県民の森分岐(15:20)・・・穴ノ平橋(16:20)


明薬大山荘前にある注意喚起看板

ちょっと昔の『ヤマケイアルペンガイド丹沢』(山と渓谷社)では
桧洞丸へのクラッシックルートとしてコース紹介がされていた桧洞沢。
現行版の『アルペンガイド』からはその姿を消している。

「度重なる風水害で荒廃し、再び原初の姿にかえっている。
5月の新緑、10月下旬の紅葉はとりわけすばらしく、
丹沢の主要なコースを歩きつくし、いくつかの沢登りを体験した人には、
ぜひ試みてほしい桧洞丸の古典的登路である。」 (同書より)

「古典的登路」という言葉に惹かれて、
カラ梅雨の猛暑の一日、涼を求めて入渓してみました。



パパチャリ出動・立間大橋

古典的登路にこだわるなら雨山峠か山神峠を経由して
ユーシンに入るのが礼儀かもしれませんが、
交通の利便性を考えて玄倉川沿いから入山することにしました。

予定下山口の穴ノ平橋に車をデポして、
自転車で玄倉ゲートに向かいます。
立間大橋までは一方的な下り坂。
一回もペダルを漕ぐことなく3分で到着です。


玄倉林道から大タル丸・裸山丸

玄倉ゲート脇に自転車をデポして、長い林道歩きに取り掛かります。
西丹の山々は早朝の低いガスに包まれていますが、
これは気温の上昇する前触れ。
本日の天気は快晴が約束されています。

ガスが湧き上がるのは大タル丸、裸山丸でしょうか、
深山幽谷の雰囲気です。
久し振りの早朝からの山歩きでご満悦。

後方から4人組の沢屋さんが近づいて来ました。
ここは道を先に譲ります。
その狙いは無灯の青崩隧道の先導役になってもらうために。
ムム、しかし、相手も然る者。
隧道前でペースを落とし、再びこちらが先頭に。
面倒でも仕方がない、ザックを降ろしてヘッドランプを取り出して
真っ暗なトンネルの先導役を務める。


ユーシンロッジ入口・MTBが数台

早朝から渓流釣りを楽しむ人がちらほらといる。
釣り人は林道内をMTBで移動している。
「車両通行禁止」の「車両」に自転車は含まれないのだろうか?
それともユーシンロッジの泊り客だろうか?

ユーシンロッジの裏手にある明薬大山荘脇から山道となる。
油断していたら大きな蜘蛛の巣が顔にへばりついた。
今日はまだ誰もこちらから入山していない証拠か。
それとも他の人は機敏に蜘蛛の巣をよけただけのことか。

松田警察署が設置した「金山谷乗越、道悪し、通行困難」の看板がある。
「通行禁止」ではなく「通行困難」という表現が微妙だ。


桧洞沢下降点

発電施設の横をすり抜け、
堰堤を鉄の梯子で越えて河原に降り立つ。
ちょっと入渓地点が早過ぎたようだ。
正面に見える大きな滝はボクの技術では越えられない。

とりあえずここで、はやる気持を抑えてつつ、
沢登りの身支度を整え、オニギリとバナナで朝食を取る。
沢登りはなんと3年ぶり。
最後に登った沢は名渓の誉れ高き北アルプスの赤木沢。
沢シューズやネオプレンソックスにカビが生えていないかと
心配したが大丈夫だった。

西上州の立岩の登山道から転げ落ちて左手小指を負傷してから
というもの、沢登り、岩登りから遠ざかってしまった。
(左手小指はいまだに完全に曲げることができないのだ、トホホ)
しかし、このところの暑さ、尾根なんぞ歩いている場合ではない!
沢が恋しくなった。

桧洞丸の古典的登路である桧洞沢なら登攀的要素もなく、
渓谷を渡る涼風を受けながらの爽快な登行が
楽しめるはずと思ってやって来たのだ。


最初の5m滝・左に巻き道

滝の右手上部に登山道が見えたので斜面を登る。
登山道に出て、しばらく行くと「下降点」の標識があった。
さぁ!いよいよ水の世界だ。

下降点を下りて、すぐに最初の5m滝が待っている。
登れないことも無さそうだが単独行で無理は禁物。
左手の巻き道を使う。
目印やロープも設置されている。


V字峡滝は右からクリア

5m滝を巻き道で越えると、次はV字峡滝。
右側から容易にクリアできる。
水流の中をズブズブ行く手もあるがまだ濡れたくはない。

V字峡滝を越えると、すぐにユーシン沢と桧洞沢の二俣となる。
両沢に挟まれた尾根の取り付き点にテープが揺れている。
金山谷ノ頭に続く尾根の入口である。


ユーシン沢との分岐である二俣

もちろん選択は桧洞沢。
この二俣を過ぎた所がいきなりの核心だった!

わー!なんて美しいのだろう!桧洞沢の白眉である。
ここに来るだけでも価値があるというポイントだ。


桧洞沢の核心といえる石英閃緑岩の美しいナメ

若葉の緑、苔の緑と石英閃緑岩の美しいナメを流れ落ちる瑠璃色の水。
大岩の配置も絶妙。 水線をゆっくりと溯上する喜び。
吹き抜ける風も爽やかだ。
ここは奥秩父の深い谷かと見まがうばかり。


オタマジャクシがウヨウヨ

美しい流れを口に含んでみる。
ちょっと植物系の濃い目の味がする。

傍らの水溜りを見ると無数のオタマジャクシが・・・。
オェー。
さらに上流には鹿の白骨死体もあった・・・。
またオェー。
どおりでダシが効いていると思った。


勝手に命名・ダブルベット岩

時々、カエルが流れてきたり、
ズボンには川虫の幼虫が付着したりする。
生命力に溢れた川だ。

ふと西丹沢にヤマヒルがいないのはなぜだろう?と考える。
カエルくんが食べているのだろうか?
(カエルってヒルを食べるのかなぁ?)

美しいナメ地帯を抜けると巨岩地帯となる。


勝手に命名・雨宿り岩

巨岩の通過は全身運動だ。体力消耗が著しい。
それに加えて頭上から降り注ぐ猛烈な陽射しがたまらない。
直射日光を遮るものがないから後頭部が暑い。
ヘルメット内はムレムレだ。

さらに水面と巨岩の照り返しも眩しい。
避暑に選んだはずの沢ルートは酷暑で迎えてくれた。
沢を渡る風も期待外れで止んでいる。

巨岩に命名しながら黙々と進む。
ひとつの岩を越えると、次の岩が待っている、これは苦行なのか。

ザンザ洞出合で一休み。
耳を澄ますと沢音が「ザンザボ〜ラ、ザンザボ〜ラ」と
聞こえてくるようなこないような。


魚止滝・最下段の4m滝

ザンザ洞出合を過ぎ尚も大岩を越えて進むと、
4×3×4×5の魚止滝。
もうここから先は大きな滝もない。

滝の淵の中に裸になって飛び込みたくなる衝動に駆られる。
暑い暑い!暑さに朦朧としている。

魚止滝の下段は難無くクリア、上段は右手側壁のガリーを
コブ付き固定ロープに命を託しゴボウで登る。

魚止滝を終えると傾斜も緩み、アセビの目立つ河原を進む。
おっと!痛っー!!
なんでもない河原で流木に足をとられてコケた!
受け身が取れずに尖った石に両膝を強打!痛い痛い!
膝の皿が割れたかと思ったが大事には至らなかった。
助かった!
こんな山奥で歩行不能になったら生還は絶望的だ。
左手親指の付け根から血がタラリ、
手首には、まるでリストカットしたような5センチほどの擦り傷。
消毒して、バンドエイドで強引に止血する。
暑さで朦朧とし、反応が遅れてしまったのが原因か、トホホ・・・。


下駄小屋沢出合・標識あり

ちょっと暗いゴルジュ状の地形に入る。
ここはなにやらアブ・ブヨがうるさくてイヤな感じ。
早速、血の臭いに集まってきたのか?

下駄小屋沢出合で稲荷寿司とバナナの昼食タイム。
出合付近の左岸に、なにやら径路風の地形が。
でもササヤブが繁茂しているので近付きたくはない。
気持良い沢歩きにダニの襲撃はゴメンだからね。


乗越沢出合・テープとケルンあり

下駄小屋沢出合からわずかな距離で乗越沢出合。
ケルンとテープが豊富。
これだけ賑やかなら、ここを見落すことはまずないだろう。

だんだんと水量が乏しくなってくる。
水との別れを惜しみトコトンまで水流の中を進む。
時々、小さな魚影が見られる。
魚止滝の上流にも魚はいるようだ。(放流しているのかな)


乗越沢上部・支沢は右へ右へと進む

桧洞丸と臼ヶ岳を結ぶ主稜線の尾根は割と近い。
支沢を右へ右へと入っていく。
立木に巻かれた先人の残してくれたテープが
無言の指示を与えてくれる。

水が涸れる最後の水溜りが水場かな?
倒木の上に目印らしき石が積んである。
ここで500mlのペットボトルを飲み干して、
怪しげな水場の水を汲んでおこう。
猛暑を予測して、まだ900mlのペットボトルが一本残っているが
念のために。


金山谷乗越・登山標識と木道が見える

金山谷乗越が見えてきた。
これはまさに乗越だ。峠ではなく乗越なのだ。

木道と指導標がある。
金山谷乗越は崩壊が進み反対側に越えるのは無理だろう。
木道が邪魔して鹿クンも乗り越えづらいだろうに。

これで本日のメインが無事終了した。
あとは下山路をどうするかだ。
「桧洞丸-テシロノ頭-中ノ沢乗越-仲ノ沢径路」にするか、
「桧洞丸-テシロノ頭-石棚山-西丹沢県民の森」にするかだ。
中ノ沢乗越の下降は魅力的だが小川谷源流域は暑いだろうな・・・。
それに引き換え「テシロノ頭-石棚山」はブナ林が涼しそうだな・・・。
そうだ冬場に
遭難しかけた「テシロノ頭-石棚山」をもう一度歩こう。


桧洞丸・青ヶ岳山荘

金山谷乗越から青ヶ岳山荘はキツカッタ。
まったくの無風で、ムッとする暑さに弱った。
蕗の林床が湿っぽくムシムシするのだ。

青ヶ岳山荘はボッカさんが開けていた。
思わず軒下の盥で冷やされていたオレンジジュースを買ってしまった。
350円のジュースなんて普段なら絶対買わないけど、
疲れた体が財政事情を無視してビタミンCを欲しがったから。

ベンチに腰掛けて二回目の昼食を取る。塩分補給も忘れずに。
沢シューズからテニスシューズに履き替えて出発。
テニスをする気など毛頭ないけど、重たい登山靴など
ザックに入れて背負う気持にもなれません。


バイケソウの中を行く木道

桧洞丸山頂の大きなブナと石の祠に挨拶して、下山を開始。

バイケイソウの中を行く木道は完璧に整備されている。
歩むべき方向がこんなにも明瞭だと楽ではあるが、
木道のささいな分岐で右に行くか、左に行くかと躊躇してしまう。

ツツジ新道の分岐を見送り、
同角山稜の分岐とも後ろ髪を引かれつつも別れを告げる。
「テシロノ頭-石棚山-西丹沢県民の森コース」と決まれば
あとは楽勝コースなり。

冬場の深雪でラッセルに苦しめられたのがウソのような快進が続く。


ブナに囲まれたベンチ
テシロノ頭と石棚山の間のお気に入り

尾根道に風はなく、暑いことに変わりはなかったが、
陽射しを遮ってくれるブナの枝葉があるだけ
沢筋コースよりはマシかな。

テシロノ頭と石棚山の間にある
お気に入りのテーブルの上に横になってブナの緑を満喫する。

石棚山を過ぎ、西丹沢県民の森への急下降では膝が笑う。
笑っているところをみると河原で強打して痛めた膝は大丈夫なのかな。

穴ノ平橋に無事下山すると、
早朝、小川谷遡行を目指し大混雑していた路上駐車は皆無で
静まり返っていた。 数張りあったテントも撤収されている。
行列ができていたトイレもシ〜ンとしている。
楽しかった一日が終わったのだ。

今日一日、古典的登路・桧洞沢を歩けたことで大満足。
デポした自転車を回収して、一路、山北駅前温泉「さくらの湯」へ。
炎天下で日焼けした肌が、温泉でヒリヒリした。

(山行2005.06.26)

【参考コースガイド】

少し前の『ヤマケイアルペンガイド・丹沢』(山と渓谷社)。現行版からはコース紹介は削除されています。
『山と高原地図』(昭文社)では破線でコース表示し、「ユーシンロッジ-金山谷乗越間、径路荒廃通行困難」とある。
しかし、2005年改訂版からは破線も削除された。

【参考HP】

意外と、桧洞沢遡行のHP記録は少ない。そんな中で参考になったのは以下のHPです。
・HP『丹沢・駈け巡り』様/丹沢ランニング・レポート/玄倉川檜洞
・HP『マシラの部屋(丹沢の尾根と沢)』様/丹沢の沢/檜洞(檜洞丸)