峠と石![]()
人には各々、収集癖があるようで旅の土産に、
どこで大量生産しているか、わからないペナントや提灯を
買い集めている人もいる。
私はと言うと、一切土産物は買わないことにしている。
そんなお金があるのなら、その土地のウマイ物でも食べたほうがましである。
お土産の代わりというわけではないが、山や峠に行くと、
其処の石を拾って持ち帰り、部屋に飾っている。
おかげで部屋の本棚は各地の石で占拠されている状態で、
本棚ならぬ石棚となっている。
連泊で高山縦走などしていると、普通は日が経つにつれ荷が軽くなるはずが、
石を拾い集めていることで、日ごとにザックが肩に食い込むのである。
さて、峠やその近くにはなぜか石が祀られていたり、
意味ありげな大岩が鎮座していることが多い。
雨境峠の鳴石・入山峠のゆるぎ石・雨境峠の鍵引石・有賀峠のオメコ石
鈴鹿峠の鏡石・本坂峠の鏡石・小夜の中山の夜泣石・日本坂の旗懸石
宇津ノ谷峠の猫石・足柄峠の新羅三郎笛吹石・駒繋石峠の駒繋石・芋峠の福石
石丸峠の石マラ様・普甲峠の頼光の腰掛岩、鬼の足跡石・仁科峠のナベ石
二ッ塚峠の蒟蒻岩・大門峠の仏岩・戸田峠の涙石・船原峠の頼朝の運試し石
亀石峠・立岩峠・壁岩峠・箱石峠・カブリ石峠 など枚挙にいとまがない。
峠と石には深い関係があるようだ。
かつて峠を越える旅人は巨岩を磐座とし、祠を祀り、幣を手向けて
峠の神に奉祀し、旅の安全・通行の安全を祈ったのだろう。
あるいは他国より侵入する、邪神や疫病を防ぐために、
塞ぎの意味を込めて峠の門として、大石や巨岩を意識していたのかもしれない。
峠の石には伝説・伝承がつきものだが、
その内容は不確かで、後世の人々による脚色が色濃いようだ。
しかし、峠を通過する人々に、何かをいだかせる力が石にあるのは確かなようだ。
時にそれは峠道を行く旅人の不安、怖れ、などの心情の反映であったり、
峠の麓の村人の願い、誓い、あるいは諧謔の表象であったのかもしれない。
ある友人は、私の石棚のコレクションを見て、
「石には霊力が宿っているから収集するのは良くない」とおどかすのだが、
登頂記念に山頂の石を、峠行の思い出に路傍の小石を
懲りずに拾い集める日々が続いている。
なにせ、タダだからやめられない。