〜 なんちゃって K2に行って来ました 〜
★ 戸沢ノ頭(遠見山)--大杉山--弥七沢ノ頭
湯ノ沢乗越・箒杉乗越
| NHKで放送されたドラマ「氷壁」に感化されてK2に行って来ました。 といっても貧乏人ですから丹沢のK2です。 丹沢にK2のような鋭峰があるものかと疑問に思われる方もありましょうが、 K2の標高を御存知ですか? 中川川左岸、大杉山の標高を御存知ですか? 小数点がなければ同じです。 それでも行っちゃいました 丹沢の似非(エセ)K2に。 しかし、低山だと侮るなかれ! |
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〜 この山域について 〜 |
| 今回のルートは瘠せた尾根筋を歩くなど危険な箇所が多々あります。 事前学習等をするとともに天候の安定した時期に入山することをお勧め致します。 一般登山コースではないのですべての行為が自己責任の元で行われることを要します。 本ルートは主尾根さえ拾っていれば道迷いはないと思われますが、滑落、転落はいつどこで起きても不思議ではありません。 事前学習なしに支尾根に入り込まないこと、安易に巻き道に引き込まれないことが肝心です。 |
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| なぜそんな危険なエリアに、安全志向の峠屋さんが足を踏み入れるかといえば、 峠のお仲間である「乗越」を巡るためであります。 大杉山とヤブ沢ノ頭を結ぶ尾根上には沢屋さん御用達の「乗越」がいくつか点在しているのです。 その主たるものが「湯ノ沢乗越」と「箒沢乗越」であります。 「湯ノ沢乗越」は、とあるガイド本で「大杉峠」としているものもあります。(文献名を忘れてしまった) |
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| 丹沢湖の北岸、中川橋を渡った所にある駐車場に車を停めると目の前が入山口です。 K2へのアクセスにしては至極便利なのであります。【*1】 いざ出発進行と思いましたが、入山口の階段に覆い被さる笹薮を見て、 フリース素材のアウターを脱ぎ捨て、ツルツル素材の雨具を羽織ることにしました。 これはダニの取り付きを極度に恐れる軟弱者だからです。 シェルパの同行もなく不安ですが未知の山域にいよいよ足を踏み入れます。 いきなりの急登に息があがりますが、これはK2登頂への高度順化ができていないせいでしょうか、 |
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| 勾配が緩まり、うすい笹薮の中の踏み跡を辿るとp540の小ピークに到着です。 大きな杉が数本あり、似非K2の前衛峰である戸沢ノ頭(遠見山)が高く聳えているのが望まれます。 ふと足元を見ると、ズボンに数匹のダニが取り付いています。 クーッ!ここはまぎれもなく丹沢だ!高所寒冷の地であるK2にダニなどいるはずもないと、 いまさらながらに再認識させられるのでした。 それでも、うっとうしい笹薮とはここでしばしお別れです。 |
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| 富士を背後にした権現山や屏風岩山から畦ガ丸へと続く尾根を眺めながら、葉を落とした自然林の中、 次第に高度は上昇してゆきます。 怪しい巻き道らしき踏み跡も錯綜しますが、忠実に尾根を拾って歩くのが確実です。 境界見出標杭が埋まっているのでそれに従えば迷うようなことはありません。 戸沢ノ頭直下で再び植林地に吸い込まれ、打ち落とされた枝で隠され気味の踏み跡を登りつめれば |
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| 戸沢ノ頭(遠見山)は植林に覆われていますが、一部、玄倉側に向けて視界を得ることができます。 普段見慣れぬ角度から山々を見るだけで山座同定が覚束なくなるというのは まだまだ丹沢を知り得ていないという証拠でしょうか。 植林を全部取っ払えば「遠見山」の名にふさわしい遠見を見渡す山になることでしょう、惜しいです。 ここからはほぼ平坦な防鹿柵沿いの道となります。 |
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| クーッ!辿り着いたK2は予想以上のショボさ。 薄暗く、眺望も皆無。 三角点が無ければ通り過ぎる人も多かろう。 「大杉山」の手製標識を作ってきたが、「大杉」というよりは「多杉」という感じだ。 K2とは似ても似つかない、どちらかと言えば対極である。 そもそもK2に植林帯などあるはずもない。 「丹沢K2」の「K」は、「KURAI(暗い)」の「K」だったのか・・・ とても似非K2で食事などする気にもなれず、なおも植林地を進みます。 左手に窪地、右手に雑木林という不思議な地形を過ぎると暗い植林道から開放されます。 |
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| p845は小さな分岐コブ。小割沢ノ頭という名称があるようです。 ここは注意してやや右手に下降します。 最初に降りついた鞍部が湯ノ沢乗越でしょうか? 中川川水系湯ノ沢の詰めと玄倉側の小割沢の詰めが尾根上で出合っています。 |
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| 湯ノ沢乗越だったり、湯ノ沢中俣乗越だったり、湯ノ沢七ノ沢乗越だったり、小割沢乗越だったり、 弥七沢左俣の詰めだったりを、沢を詰めずに尾根道の歩行だけで判定するのは厄介です。 おしなべて言えることは、湯ノ沢側はいずれも崩壊が激しく、傾斜も急であり、とても峠道としての役割を 担っているとは思えないということです。 やはり普通人が通行に使用できるかどうかという点は、「峠」なのか「乗越」なのかを区別する |
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| p956へ向かう登りに取り掛かる手前にも乗越風な箇所があり、 ここは例外的に湯ノ沢側の傾斜が緩くなっているように見えます。(上左画像) しかし、その先、ストンと切れ落ちている可能性もあり、湯ノ沢側へ下降するなど 安易に考えない方が良いでしょう。 『丹沢の谷110ルート』(丹沢渓谷調査団・山と渓谷社)では湯ノ沢について、 全身を使い(木の根を掴み、スズ竹のヤブを束ねて掴みながら・・・これから先の登りはみんなこんな感じ) |
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| そのもう一つの東のピークの手前に押出し沢右俣の詰めと弥七沢右俣の詰めとを結ぶ鞍部があります。 ここはなんとなく両側とも降りられそうな気がしますが、きっとそれも錯覚なのでしょう。 さてここから小ピークを越えて、箒沢乗越へと降るザレた道が個人的には一番緊張を強いられました。 乾燥した白ザレはズルズル滑るし、体を預ける立木の位置も微妙な配置、掴む岩はボロボロと崩れ、 |
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| 箒沢乗越には赤錆びた「県有林24/22」の看板と 立木に巻かれた白テープにマジックで「ホウキ沢乗越」と書かれた文字が残されていた。 押出し沢側の凄まじいガレの崩壊斜面を見ていると、 足も震えて、「箒」なんていう画数の多い漢字など思い出しもしなかったのだろう。 反対側の穴ノ平沢側だって普通人が決して歩いて下降できる雰囲気ではない。 『丹澤記』(吉田喜久治著・岳書房・1983年)には、 |
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| 箒沢の集落は美しい箱庭のように尾根上からは見え、 それも容易に下降して辿り着けるかのように感じられるのですが、 押出し沢の詰めは陰鬱で凄惨な表情をしていて人をまったく寄せつけようとはしません。 油断すると吸い込まれそうな悪魔の口を横目に見ながら、その縁辺をp926へ向けて這い上がっていくのです。 とりあえず課題であった二つの「乗越」は確認したので峠マニアとしては満足です。 |
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| まさに全身運動、木の根、笹薮、掴めるものはなんでも掴んでここからは攀じ登っていくのです。 所々、マーキングテープはあるので、それと踏み跡を頼りに進みます。 白い岩が堆積した場所は左手方向に流され易いですが、労を厭わず直上するのが正解です。 とにかく高みを目指してひとふんばりすれば待望の一般登山コースに合流です。 そして、なんともいえない満足感を味わいつつ、来し方を振り返ると、 スリルを多分に含んだ愉しいひと時を与えてくれた尾根道が逆光の中に浮かんでいたのです。 ヤレヤレ、峠のお仲間である「乗越」を訪れるために、とんだひと苦労でありました。 それにしても大杉山861.1メートルをK2としたのは大袈裟すぎました。 |
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【*1】 中川橋を自動車で渡る時は道路交通標識に要注意です。山北方面から運転して来た場合、右折はできません。 【*2】 『新ハイキング 571号』(2003.05.新ハイキング社)の「大杉山から弥七沢ノ頭-箒沢」(窪田弘著)を参考にしました。 その他、馬草山や弥七沢ノ頭西尾根を絡めたバリエーションルートの紹介としては 【*3】 HP『イガイガの丹沢放浪記』様には地元民からの聞き取りから「トウキョウ山(東京山)」との呼び名があることを紹介しています。 |
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◎ 再度、ご注意 ◎ |
| 冒頭、この山域は危険と書きましたが、実はそれほど危険でもありません。 しかし、それが危険なのです。 行こうとすれば行けてしまう、中途半端に危険なのです。 スゴイ危険なら、よっぽど集中して注意するだろうし、そんな所ならハナから挑戦しないことでしょう。 でもここは危険な場所が多いとされながらも歩けてしまいます。 ヤセ尾根のザレザレ斜面などは誰でも注意しますが、ちょっと気を抜いた瞬間、足をすくわれる危険が常にあります。 どうか思わぬ転倒に十分ご注意ください。 また、このコースは南下するより、北上する方がよろしいかと思われます。 転倒や崖への転落ばかりではなく、ヤブ沢ノ頭直下のヤブ気味の道や、 逆方向を歩いた場合の戸沢ノ頭からの下降など、迷い易そうな場所もあるにはありますからご注意ください。 |
中川橋10:00--戸沢ノ頭11:30--大杉山12:00--p926峰14:10--箒沢バス停16:15--バス発16:21