忘れられない恋しい峠 / 忘路峠(犬峠)・浦安峠・恋路峠
〜 忘れられない恋しい峠、そんなものがあるだろうか 〜
| 山梨県道志村には「忘路峠」、「恋路峠」というロマンチックな名前の峠があります。 秋風に誘われて道志の峠を巡る山旅に出かけました。 |
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| 室久保川に沿った道幅の狭い凸凹路面の未舗装林道を慎重になりながら 「横浜市野外活動センター」へ向けて車を走らせます。 キャンプ場手前の適当な路肩に車を置いて歩行の開始です。 「野外活動センター」はこの時期すでに閉鎖されていますが、 「野外活動センター」入口に設けられた「畦ガ丸方面登山道案内図」は理解不能のため無視し、 |
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| 白砂と滑(ナメ)で構成された優しい檜沢の流れを飛び石で渡り、 中州を進めば、「ひのきノ頭コース」と「畦ガ丸ハイキングコース」とを分かつ分岐点に到着です。 初めて忘路峠を訪れたときにもあったカラフルな標識がそれぞれの進路を示しています。 忘路峠道でもある「畦ガ丸ハイキングコース」はここから尾根へと取り付きます。 尾根道は明瞭そのもので、ヤブなどの障害はありません。 |
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| 栂の大木のある小突起を過ぎ、右手より涸れ沢が合流します。 一瞬戸惑いますが、その涸れ沢状の凹道が次に辿るべき道となるのです。 道を外れて右往左往するとダニ取り付きの餌食となります。 そう、ズボンには小さなミクロ級の子ダニの群れとその親らしき成虫のダニが取り付きます。 この秋にも産卵し、孵化したばかりといった子ダニ、その兄弟姉妹の数が半端ではありません。 一瞬にして一家で獲物に取り付く運動能力と家族の団結力には脱帽です。 それにしても丹沢のダニ繁殖は異常ではなかろうかと思います。 どこかで地球温暖化と関係しているのではと思えてなりません。 ダニを撒き散らす運び屋としてハイカーも一役買っていると思うと複雑な心境でもあります。 凹状道を登り詰めて、別の尾根へと乗り換えます。 |
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| 少々地形は複雑ですが、もう甲相国境尾根は間近です。 分かり難い箇所にはテープが巻かれているので、それを拾えば迷うことはないでしょう。 峠道の核心は峠直下のスクッと背をのばした落葉樹の森でしょうか。 明るく気持ちのよい落葉樹林と苔を纏った石の転がる沢筋の様子が好ましい。 紅葉には早過ぎましたが、もう少しすれば赤や黄色の色彩に山一面が包まれることでしょう。 |
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| 「忘路」とは哀愁漂うネーミングですが、「越路⇒恋路⇒忘路」の変化によるものでしょうか? 主尾根を乗っ越すことから「越路」と呼ばれ、お茶目な人がそれを「恋路」と捩り、 印刷環境の悪かった時代に「恋」という字が「忘」という字に化けたとも想像できます。 それとも「忘路」を「ボウジ」とすれば、 |
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| 忘路峠は「犬峠」とも呼ばれていたようで、 少し昔の日地出版の登山地図には「犬峠」の記載が見られます。 また、『峠をめぐる山旅』(田沢武夫編・朋文堂・昭和39年)の中では峠の写真が掲載されており、 「犬峠」と書かれた指導標識が、当時、峠にあったことがわかります。 丹沢で「犬」と言えば、「犬越路峠」をすぐに連想しますが、何か関係はあるのでしょうか? |
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| それにしても峠は、あまりに小さすぎる単なる尾根のへこみです。 尾根道を縦走する人は気にしていなければ峠とは知らずに通り過ぎてしまうかもしれません。 「忘路峠(犬峠)」と書いた手製の標識を取り付けて存在をアピールすることにします。 登って来た道とは反対側の谷を覗いてみると、南の沢筋はかなりザレている様子です。 |
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| 忘路峠から甲相国境尾根を西へと辿り、大界木山へと向かいます。 大界木山でお昼を迎えますが、山頂には先客パーティーがおり昼食は御預けです。 山頂を素通りして、次なる目的地、浦安峠下降分岐路を探しますがなかなか見つからず 鹿道に踏み込んだり、再び山頂まで戻るなどウロウロします。 探しても見つからないので城ヶ尾峠まで下ろうかと足を進めたところで、 浦安峠への道は実線で表記してもよいほどの道で、笹も刈り払われ歩き易くなっています。 |
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| 浦安峠への下降途中に、大室山・加入道山の展望が開ける場所があり足を止めます。 人工物が目に入らぬ山深い所にいることを実感し、心細さや不安がよぎりもしますが、 足元に咲いている可憐なリンドウの花を見て、安らぎとともに力強さを頂きます。 数回のジグザグを切り、室久保川筋と三ヶ瀬川筋とを結ぶ林道へ降り立ちます。 |
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| 浦安峠の名の由来は不明ですが、『山と高原地図』(昭文社)には記載されている峠名です。 目立たぬように(?)手作りの標識を立ち木に括り付けることにします。 大界木山で食べそびれた昼食を、 時折、ドッカンドッカンと三ヶ瀬川筋から林道工事か、堰堤工事の雑音が聞こえてきます。 |
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| 「雑木ノ頭」は、名前の通り雑木に囲まれた明るい雰囲気。 もう少し素敵な名前を付けてあげればよいのにと思いもしますが、 それでいてこの名前がぴったりという気もします。 山頂からは「道志ノ森キャンプ場」へと下る道が分岐しています。 雑木ノ頭から北上する道は緩やかに下り、鳥ノ胸山との鞍部から |
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| 「山梨百名山」の標柱の立つ山頂に人影は無く、道志川の谷あいの一望を独り占めです。 ここから眺める御正体山はあまりに大きく、威風堂々としています。 その東尾根も地図で見るより長大に感じられ、 この冬には歩きたいと考えていた計画も再検討の必要があると感じるのです。 峠マニアにとって御正体山東尾根の興味は「ぶどう沢峠」と「道坂峠旧道」にあります。 特に、板橋・白井平と菅野とを結ぶ「ぶどう沢峠(栗の木タツマ)」の旧道が 現存しているのかが最大の関心事です。 目を移すと菰釣山、ブナノ丸の北方から派生する前ノ岳、長野山、高指も巨体を横たえています。 |
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| 『山と高原地図』には鳥ノ胸山から恋路峠への道が破線で描かれていますが、 その入口に案内標識があるわけではありません。 鳥ノ胸山本峰とニセピーク(南峰)との鞍部に、テープの巻かれた立木があったので、 この鞍部から東へと下降するのかと、安易に数十メートル下降しましたがこれは大きな勘違い。 明確な踏み跡は無く、傾斜も強まるばかりです。 これは変だとすぐに引き返し、ニセピーク(南峰)から東へ派生する尾根を下降します。 これが正解のようで、植林帯と自然林との境目には心細いながらも踏み跡がつけられています。 明確な目印はありませんが、尾根が細かく派生する箇所にはテープが巻かれていて |
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| 林道を川原畑方向へ辿り、恋路峠に向かいます。 しかし、現実は厳しいようで、恋路峠は恋い慕うほどの峠ではありませんでした。 出会い系サイトで顔の知らぬ人と待ち合わせをして、いざ出会ってみてガッカリという体験は きっとこんなものではないかと思い知るのです。 秋風に誘われて、ロマンチックな名を持つ峠を巡る山旅にやって来たものの、 |
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| 恋路峠の「恋路」は越路林道の名が示すように、「越路」の転化だと思われます。 誰か洒落たロマンチストが「恋路」と改名したのでしょう。 道志村の地誌である『道志七里』にも「恋路峠」の名を見ることができます。 『丹沢の山と谷-登山地図帳-』(山と渓谷社・昭和37年)の図中には、 あれほどまでに騒がしかったキャンプ場は嘘のように静まり返っています。 |
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| 今回訪れた鳥ノ胸山周辺の地名などを拾って一首ひねり出したりするのも楽しいものです。 「どうしても 君が 恋しく 忘られじ 殿の胸も 秋葉色づく」 文法的に正しいかわかりませんが、 「どうし(道志)ても 君(検見ヶ丸)が 恋し(恋路峠)く 忘られじ(忘路峠) 「どうしても君のことが 恋しくて 忘れられない などというオセンチな歌はいかがでしょうか? 『甲斐国誌』によると「鳥ノ胸山」は「殿ムレ山」であるようです。 恋路峠の姿に深く失望し、麗しい君が待っているはずもないからと、 |
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(峠行2008.10.13) |
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| 【補足】
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