復習した峠 / 向風峠

 学校の勉強で予習や復習をしたことは無かったけれど、
峠歩き・山歩きでは予習や復習は大切ですし、愉しい行為でもあります。

以前訪れた上野原町の向風峠について復習をしていたところ、前回、峠と推定した場所が
実はどうやら探し求めていた向風峠ではなかったという事が判りました。

『新ハイキング530号』の「初冬の能竹山南尾根を行く」(小倉修著)という紀行文を見ていましたら、
しっかりと峠位置が記載され、可愛い峠の観音様の写真まで載っていました。

これはイカン!と、早速、本来の向風峠と峠の観音様にお会いしに足を運びました。

前回は山風呂集落から能岳に至り、北尾根を下りましたので、
今回は上野原中学校前から大越路沢沿いの林道を辿り本来の向風峠へ出て、能岳の山頂を再訪した後、
南尾根を下ってみることにしました。
(前回、峠と誤認してしまった場所も再訪し、見落としていた観音様にも出会いました)


林道入口にある石造りの道標
「右八王子、左山道」と刻む庚申の碑


林道終点の三叉路
「上野原中学校の野外活動地域」の看板


山道に入ってからの分岐
「八重山ハイキングコース」の標識が設置

大越路沢沿いの道は、地形図にもしっかりと破線で描かれていますが、それ以外の南尾根の道は
前回の北尾根の道と同様に描かれていません。

林道入口には「八重山ハイキングコース整備工事中」の看板があり気になるところです。
「八重山」ってどこのことだろうか?と。

また、林道入口には「右八王子、左山道」と刻まれた味のある石造りの道標があります。
右とは「大越路(峠)」であり、「クラコ峠」、「和田峠」を経て八王子に向かう道です。
ここは、左山道に分け入り、林間の美しい沢沿いの道を進みます。
「ミニ奥入瀬渓谷」と言ったら誉め過ぎかもしれませんが、清流沿いの心地好い道です。

林道の終点は三叉路で、「八重山ハイキングコース」の標識に従い真ん中の道を選択します。
尾根に取り付き、徐々に高度を上げていきます。 樹相も植林帯から広葉樹林帯に変わり明るさが増します。
チェーンソーの音が谷戸に木霊しています。 どうやらハイキングコース整備の為の伐木のようです。
一汗かいて尾根を登ると分岐がありますが、ここでは「八重山ハイキングコース」の標識を無視して、
左の仕事道風の山道を選択します。


秋の花リンドウが咲く


向風峠全景


ゴルフ場側は丸太で封鎖されている

足下に咲くリンドウを愛でながら飛び出し所が、能岳から南へコブを一つ二つ越した南尾根上です。
南尾根は先出の『新ハイキング』紀行文によると、ヤブ気味とのことでしたが、
すっかりと刈り払われ歩きやすい道が整備されています。
傾斜のきつい坂には丁寧に丸太の階段まで拵えてあるという状況です。

さぁ、能岳南の鞍部である向風峠に向けて、はやる気持ちを抑えつつも飛ぶようにして山道を辿ります。

「あった!」 向風峠です。
尾根を越してゴルフ場側に下る道も確認できます。 なんとも良い峠です。
前回誤認した場所は地形的に峠状でありませんでしたが、ここはまさに鞍部であり、越える道のある峠です。


向風峠の馬頭観音様


お顔の表情がイイのです

峠の馬頭観音様の表情も豊かで、木漏れ日を全身に受けて御満悦のようです。
所有している賽銭の額は117円で、100円玉が納められているのが目をひきます。
享和年間の刻みがある古い観音様で、西原村の人の手によって峠に置かれたようです。
そのやさしい眼差しで、どんな峠の変遷を見てきたことでしょうか。


ヤブが払われスッキリした山頂


「能岳」か「能竹山」か「向風山」か


前回誤認してしまった向風峠

観音様の脇を通り抜け、丸太の階段を登れば能岳に到着です。
前回訪れた時とは違い、ヤブが払われすっきりとしています。こんな南尾根道も無かったはずだが・・・
おまけに北尾根方向もヤブが払われています。
前回山頂へ登った道である山頂直下の三叉路からの登路は倒木とヤブで埋もれつつありました。

山頂標識の「能岳」には、マジックで「能竹山」とも書かれています。
地形図は「能岳」となっていますが、一昔前は「向風山」だったとか。


訪れる人も無くさびしげな観音様


前回気付かなかった観音様


山風呂集落から尾根に出る凹

ここまで来たのだから、前回、峠の石仏だと誤認してしまった観音様にも挨拶をしに行きました。
訪れた季節が違う為か、木々の葉に光が遮られ、ちょっと暗い感じの山道の傍らに、
さびしげな表情を浮かべて観音様が待っていました。

「お久し振りです 峠の石仏様ではなかったようですが 
    せっかくにめぐり会ったのですから 今後も よしなに」と、再会の悦びに浸るのでした。

さらに、山風呂集落に向かう尾根を散策。
前回気付かなかった大きめの馬頭観音様とも御初にお目にかかり、お近付きと相成りました。


勝手に命名した「巣箱尾根」
楽しいハイキングコースといった趣


色付き始めた木々間から
要害山、雨降山、権現山を望む


「巣箱尾根」途中の分岐路
登りに使った道に接続している

能岳南尾根は至って快適。 
ゴルフ場の眺めは不快でありますが、要害山、雨降山、権現山と奥行きのある西方の眺めは絶品。
一時間程度で登れる低山にしては、大いなる満足を得ることができます。

ちょっと小広いピークの506m峰が「八重山」でしょうか?
それにしては山頂標識がありません。
松の切り株もその切り口はまだ新しく、最近整備されたばかりのようです。

大越路(峠)に向かうであろう尾根筋ははっきりせず、切り開け明瞭な「巣箱尾根」(仮称)を下ります。
こんなに一杯巣箱を取り付けたら、鳥たちも自分の巣に帰るのに迷うではないかといらぬ心配をしてしまう。
「巣箱尾根」の途中にも三叉路があります。
右手の道は、どうやら登っている際にあった
「八重山ハイキングコース」の標識を無視した分岐へと
繋がっているようです。

ここでは、左手の道を選択してジグザグで「巣箱尾根」を下りましたが、
真ん中の尾根道をそのまま直進しても結果は同じです。
結局は林道終点三叉路に、右手からの道として接続しているのです。
スタート地点に戻る周遊コースとなっているのです。


スタート地点近くにあった「八重山」の標識

アレアレ、林道終点三叉路近くに「八重山」の立派な標柱がありました。
「八重山」とは特定のピークを指すのではなく、山域全体を指す呼称なのかもしれませんね?【注1】

能岳の山頂そのものは御世辞にも興味を惹く地とは言えませんが、
周辺一帯の里山の雰囲気はなかなかのものです。
向風峠と、峠の馬頭観音様も最高の演出で訪れる人を迎えてくれます。

登って下りて2時間という手軽さですから、重い荷物も、強靭な体力も不要です。
人込みの高尾山に行くより、寂静の里山がお薦めです。

朝寝坊して予定時刻の中央線に乗り遅れた際は、
いっそのこと予定を変更して、観音様の待つ向風峠を探訪してみてはいかがでしょうか。
きっと峠を吹く風と、観音様の微笑が、額の汗と日常の疲れを拭い取ってくれることでしょう。

【注1】

「八重山」とは、この広大な地域の土地30町歩を上野原小学校に寄贈したMさんの名前から、
当時の町長が命名したものらしい。

● 後日、「八重山ハイキングコース」整備後に再訪した時のレポートを見る。

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