干支の峠・戌年 / 犬越路峠

来年は戌年だから戌に因む峠ということで犬越路峠を訪れました。
というのは後から取って付けた理由で、
本当は建替えられた峠の避難小屋見物が目的です。

犬越路峠の老朽化の進んだ旧避難小屋が撤去され、
新たにピカピカの避難小屋が建ちました。

味のあった旧避難小屋に宿泊する機会は逃がしてしまったけれど
木の香り漂うNEW避難小屋に一泊して
ゆっくりと峠越えを愉しむという趣向もよろしいかと思います。

来年は戌年か・・・、
犬切峠、犬挟峠、犬打峠、犬鳴峠と犬にまつわる峠はいろいろあるが
未(ひつじ)年は困っちゃうナ。

 


用木沢

西丹沢はいつの間にかうっすら雪景色。
北斜面はべっとり雪景色。

進路の用木沢の河原に積もった雪には
幾人かの足跡がついている。
沢の詰めに聳えるのは小笄・大笄。

下山路は小笄西尾根から点峰1125を経て犬越路林道に
降り立とうとも考えていたがテニスシューズに肩下げカバンじゃ
白い尾根には太刀打ちできそうもない。
早々に諦めて峠のピストンとする。


コシツバ沢

本流用木沢の流れに別れを告げて、
支流コシツバ沢に沿った斜面に峠道は付けられている。

「コシツバ」とは「越場」のことだろうか?
「越場→コシバ→コシッパ→コシツバ」かな?

信玄が軍勢を率いて峠を越えたというが
ちょいとガレ気味で急ではあるまいか。
でも登降距離は短いので見事に地形の弱点をついた道筋だ。


峠の空が近付いてきた

葉を落とした冬の木々に囲まれた峠道。
笹の緑だけが色の少ない季節に映える。

顔を上げると
峠の空が近付いてきた。

息があがり
肺の中に冷たい空気が流れ込む
この感覚を味わうのは久し振りだ。

峠に出る直前は
笹を掻き分け掻き分け。
笹のペシッという跳ね返りは
ボクの頬に任侠映画の主人公のような
傷を拵えてくれた。


犬越路峠

峠の風は冷たくて、
登りでかいた汗を一気に冷やす。
頬の傷もヒリヒリする。

北側の神ノ川に下る峠道はすっかり雪に埋まっている。
遠くに見える檜洞丸も厳冬の装い。

寒い、寒い!
さぁ、さぁ、避難小屋に逃げ込んで暖をとろう。


NEW避難小屋外観

ピカピカの避難小屋。
ウッデイな外観、大きな窓、ウッドデッキにテラス付き。
一目で気に入った。

嬉しいことにバイオトイレ付き。
それも洋式。
避難小屋というより別荘のようだ。

中に人影、先客が居るようだ。
大きなザックのその人は、お昼のお食事中。
昨晩檜洞丸に泊まって加入道に向かうという。
あまりの居心地の良さに足が先に進まないと言う。
本当だ、木の香りが漂う素敵な避難小屋だ。

僕も丸太イスに腰掛けてささやかな食事を取る。
三つの窓から入る明るい光。
木の優しい温もり。


NEW避難小屋内部


本当に居心地の良い避難小屋だ。
二重窓や通風孔、材の角の面取りなど
細やかな配慮も感じられる。

これから何人ものハイカーや岳人が利用することだろう。
天候の急変の逃げ込み小屋として、
目指す山頂の前線基地として、
縦走の中継基地として、
峠越えの休み場として。

そして丸太イスに腰掛け一服し、
あるいはテーブルを囲み楽しく食事をして。
きっと多くの出会いが生まれることだろう。

時にはシュラフにくるまり窓の外の星明りを見ながら、
独り心細い一夜を過ごすこともあるだろう。

時には都会の喧騒から逃れ、
山の静けさに抱かれ深い眠りにつく人もあるだろう。

利用者のそれぞれの記憶の中に
素敵な思い出を残すに違いない。

「峠の避難小屋」、使う人によってそこは、
五つ星のホテルとなることだろう。
いつかは泊まってみようと心に決めて、
今登って来た峠道を下ることにした。