逃げる峠![]()
登頂を果たした山頂から眺望が得られなかった時や、
登頂できずに敗退・撤退した時など、
登山者の間では「山は逃げないからまた来よう」と言って
慰めの言葉をかけあうことがある。
しかし、峠ではどうだろうか?
「山は逃げないからあせらずおいで」と言うが、
峠は早く訪れないと、
その変貌に驚かされることがある。
自然の草木に埋もれていくならまだしも、
車道や林道の開鑿で破壊されたり、
ゴルフ場や宅地の造成で消滅していく峠は多い。
「峠は逃げるのである」
老後の楽しみに峠を歩こうなどと思っていたら、
その頃にはバスやダンプが行き交う、
排ガス混じりの峠道になっているのかもしれないのだ。
それならまだいい方で、
峠そのものが消えてしまっているかもしれないのだ。
思い立ったら、気にかかる峠があったら、
すぐにでも訪れなければならないのだ。
といっても、そうそう峠行ばかりもできないので、
欲求不満が募る一方だ。
気を紛らすために、峠に関する本など読んでは見るが、
これがまたいけない。
峠への想いはさらに強くなるし、
旧き良き時代の峠の様子などを、美しい文章や滋味のある写真などでみせられ、
すでに逃げられていることに気付かされるのだから。
「山は逃げない」という言葉も最近は怪しくなってきた。
山の塊そのものは、確かに逃げないだろうが、
本来あるべき姿の山は私たちから
離れて行っているのかもしれない。
ゴミの散乱や屎尿の問題、オーバーユースなど
山は私たちから逃げ出している。
私たちが追いやっている。
山も峠もいつまでも、そこにあるわけではない時代が来てしまったのだろうか。