青梅縞が越えた道 / 青梅坂峠


「東京府」の標界杭

枝垂れ桜で有名な梅岩寺の裏手の山を越える道が青梅坂(峠)です。
森下と黒沢下栃谷を結ぶ峠で、標高はわずか276m(274mとも)。

『皇国地誌』(明治12年)には、
「上町と森下の境にて、頂は黒沢村との境なり。
境界に雌雄の老松あり。坂路険ならずして牛馬通ず」
との記載があります。

今では老松の姿はありませんが手入れの行き届いた植林があります。
峠道にはシャガの群落が花を咲かせ見頃を迎えていました。

緩やかな坂道で、これなら牛馬も通れたことでしょう。


切通し状の峠

峠は見事な切り通し状です。
その上を東西に走る青梅丘陵ハイキングコースがあり、
叢雨橋が切り通しを跨ぐように架けられています。

南北の峠道と東西のハイキングコースが
立体的に交差する形をしています。

古道を探索していると「東京府」時代の標界杭を見つけました。
「都」ではなく「府」であり、なかなか味のある一品です。


峠の上に叢雨橋が架かる

青梅坂峠は、縞商人が越えた道です。
北側に散在する黒沢、小曾木、成木などの
山村農家の娘や嫁たち女衆に機で織らせた「青梅縞」を集め、
市場に運び入れるために通った道でありました。

現在は峠の西に「青梅坂トンネル」が出来たため
往来する人の姿はありません。
峠道はその使命をとうの昔に終えているようです。


青梅丘陵ハイキングコースと
立体交差する格好だ

峠の上の青梅丘陵ハイキングコースは整備の行き届いた道で、
家族で楽しめるお手軽ハイキングコースです。

昔、南北に歩いた人の流れは、
現在は東西方向に変っているのかな。

人はいつのころか自分の足で峠道を歩くことをやめ、
自動車でトンネルを通過するという選択をし、
安易で気軽な山越えをしています。

あっ!そもそも峠を歩いて越えることなど、
選択肢からも消えているのかもしれませんね。

安全や合理性を選んでいれば、
僕も転んでズボンを汚すことは無かったのかも・・・
でも、安易な道を選択していたなら美しいシャガの花とは出会えなかった。

【参考資料】

『青梅市広報487号・青梅ところどころ・市内の峠2青梅坂』昭和57年10月1日
『青梅を歩く・青梅文化財地図』(青梅市文化財保護指導会編・青梅市教育委員会発行)
『青梅市史』