山神様の峠 / 山神峠


山神峠

 以前より気になっていた峠である「山神峠」を訪ねました。
「山神峠」という名の峠は世附側の山神沢にもありますが、今回歩いたのは玄倉側の「山神峠」です。

 
林道上の崖から見下ろすカモシカ


山神峠

玄倉から林道秦野峠線に入ると、すぐにゲートがあり行く手を阻みます。
ゲート前に車を乗り捨て春の芽吹きを迎えた林道を歩きます。

春の陽気に誘われたのか、アスファルトの上にドデカイ蛙が這い出しています。
まだ眠そうで動きが鈍いです。
30m先の路肩の崩壊地に黒い塊が動きます。
ヤッタ!丹沢で見る初めての熊だ!と思ったらカモシカでした。

さらに進むと、本日二頭目のカモシカが林道側壁の崖の上にいました。
こちらが通り過ぎるまで、ジッとしていましたが、
追い越した瞬間に駆け下りて、舗装された林道の固い路面に着地しました。
様子が変なので見ていると、後ろ脚をひきずっています。
着地に失敗して脚を挫いてしまったみたいです。
強靭な足腰を持っていても林道の固いアスファルトへの着地はこたえたようです。

一日に、二頭ものカモシカに出会えて嬉しい限りです。
なんとなく生命力を感じる山域なのです。
山神様のおかげでしょうか。
マンサクの黄色い花を愛でながらサクサク進むと峠の入口である蕗平橋に到着します。

峠道を歩いていると、なんとなく誰かの視線を感じます。
山神様でしょうか?
先のカモシカも山神様の化身だったのかもしれません。

峠道の所々には古い石積みもみられ、古くから利用されていたことを窺わせます。
峠道は植生も明るく陰気な感じはありません。
幾つかの沢筋を越えるように道がつけられ、無駄なく、無理もなく、歩くことが出来ます。
標識も完備され、沢筋を越えるあたりの崩落に注意をすれば危険箇所も少ないです。

峠に近付くにつれ、送電線も近付いてくるのが気になります。
送電線も峠を越えているので仕方はありませんが・・・。


山神と水神が祀られた祠


峠より北側を望む
スプレーで「880m」の落書きあり

峠には山神と水神を祀った祠があります。
明和6年(1769)江戸の廻船問屋紀ノ国屋の寄進だといいます。
山の中にしては立派なものです。

この山神峠は雨山峠と同様に、玄倉谷に入谷するには通らなければならない峠であり、
往時は山林関係者、登山者、修験者、猟師、釣り師、曲げ物師、鉱山師、
あるいはサンカなどの往来が盛んであったと思われます。

山神様は危険がつきものの峠越えを見守ってきたに違いなく、
その立派な祠から信仰の程が窺えます。

水神様が共に祀られていることは興味深いことです。
通常、水神はもっと低い所の沢や泉や沼の、
飲料水や灌漑用水を得る場所に祀られることが多いものです。
この峠に水神が祀られたのは、沢が荒れることによって山道や植林地が崩壊するのを
護ってもらうためなのでしょう。

峠の北側にはユーシン付近が望まれます。
峠から雨山橋方向への道は、崩壊が激しいらしく登山地図には危険マークが付けられています。
しかし、復旧作業か、山林整備事業か、はっきりはしませんが、
工事をしている音がこだましています。
道標も新しいものが設置されているので、あるいは復旧が進んでいるのかもしれません。

今日はここで引き返すことにし、山神様の祠に再度一礼して峠を後にしました。
それにしても山神様を畏れもせずに、峠に送電線を通した奴はどの野郎だ!
許し難い暴挙である。

丹沢を歩いていると、しばしば山神様と遭遇します。

丹沢や桂川流域の秋山村などの山神様を知るのに役立つ
お薦めの本があるので紹介いたします。

  ● 『丹沢・桂秋山域の山の神々』
  ● 『山の神の民俗と信仰』

  ◆佐藤 芝明 著
  ◆丸ノ内出版