田越坂  


昭和29年発行1:10000「逗子」地理調査所

名前通りたぶん「坂」なんだけど、まぁ、行ってみたら「峠」っぽくもありました。
田越坂は葉山町長柄と逗子市桜山8丁目、9丁目を結ぶ丘陵越えの道で、
昭和42年の長柄隧道開通以前は、両地域を結ぶ道として頻繁に通行がされていたといいます。

葉山町の北端に位置する長柄地区は、周囲を丘陵に囲まれ、
昭和初期まで逗子・田浦方面に出るには主に三つの道が使われていたといいます。
一つは本立寺前を通り尾根へ出る番合坂(ばんこさか)であり、
一つは仙光院と本立寺の間にある尾根を通る道で、
長柄側入口に数基の庚申塔が残っている上坂(かみさか)であり、
そしてもう一つが長柄交差点近くから海に面した西側丘陵地帯の鞍部を通り、
田越川、逗子海岸に出る田越坂であったとのこと。
(『郷土史葉山第4号』 葉山郷土史研究会 平成19年)


この先の最終民家前から山道がのびる


常緑樹の道を進む

逗子駅方面から桜山隧道を抜けて、長柄の交差点に到る手前の信号を右に折れ、
谷戸の奥に入り込む路地の終点からか細い山道が始まります。
棕櫚やアオキなどの葉が青々と茂る中を階段状に削られた道を僅かばかり登れば坂上です。


坂上は切通し状


倒木が多く逗子側の斜面には崩壊跡がみられる

切り通し状のその様態は峠風でもあり、
標高がもう少しあれば坂ではなく峠と公言しても差し支えないのではとも思えます。
そのまま正面の逗子海岸へと下る道は、近年崩壊があったらしく、トラロープが張られています。
竹林の隙間からは穏やかな逗子海岸の浜辺が望めます。


坂上の標識 「田越坂」の名はない


尾根に出ると相模湾が望まれる

尾根を西南に行く道は、浅間山とも兵隊山とも呼ばれる小ピークへと続き、
鐙摺方面に下ることも可能です。
一方、尾根を北東へ向かえば、展望台を兼ねた桜山二号古墳へと達し、
そこから桜山隧道上の快適なハイキングコースで一号古墳へと繋がれています。

田越坂は、逗子海岸へ遊泳に向かう人々、
また逗子開成高校の学生が通学路の近道としても利用していたとのことです。
丘陵に囲まれていた長柄地区からの逗子・田浦方面に出る三本の道のうち、
自然が色濃く残るのはこの田越坂です。
番合坂、上坂はイトーピアの住宅団地に埋没したといってよいでしょう。
田越坂は桜山隧道、長柄隧道のおかげで(?)、いまもひっそりと生き残っています。