高水三山から青梅丘陵付近の峠

馬仏峠・名坂峠(大丹波峠)・ニセ伏木峠・榎峠・旧榎峠・名郷峠(長尾峠)・ノスゾウ峠(ノスザワ峠)

 春の一日、朝から電車に揺られて、惣岳山、岩茸石山、高水山の「高水三山」に出掛けた。
御嶽駅から三山を経由して雷電山、辛垣城跡のある丘陵を抜け青梅駅まで歩き通す予定であったが、
御嶽駅到着は、お昼を過ぎていて早くも計画が頓挫した。


名無し峠

青梅駅で乗換待ちの間に買ったM社の59円ハンバーガー2個を 
車内で食いそびれたので、御嶽駅裏の境内にてムシャムシャ。
税込み123円で結構なエネルギー補給となる。

境内脇の登山口から杉林の植林帯のジグザグを登ると、
背後の御岳山がだんだんと大きくなる。

途中、沢井と丹縄を結ぶ道が尾根を越えている。
峠状だが、地図には峠の名は無い、名無しの峠だ。
神木を見送り、亀に似た亀岩を過ぎ、清泉の前を通過すると、
青渭神社が建つ惣岳山に立つことが出来る。
山頂は中高年ハイカーで和気藹々としているので、
休憩そこそこに先へ進む。


岩茸石山 山頂

西の大丹波側の山々を木々の間に眺めながら、
心地好い尾根上の道を進む。
東方には、これから進む高水山から雷電山へと続く
丘陵が緩やかにのびている。

岩茸石山直下の巻き道と合する所を馬仏峠というらしい。
『多摩100山』(守屋龍男著)の中にその名前があった。 【*1】

岩茸石山頂から北方に眼をやると
権次入峠が眠る棒ノ折山方面の展望が開ける。


名坂峠(大丹波峠)

山頂を北側に少し下り、名坂峠を訪れる。
名坂峠は大丹波側の名称で、極指側では大丹波峠と呼称する。

『武蔵名勝図会』では
「二俣尾と大丹波との境へ越える道なり、険路なり」とある。
上成木集落の人々が大丹波の獅子舞を習いに行く際にも
この峠を越えたという。

峠は高水三山の賑わいとは打って変わってひっそりとしていた。

再び岩茸石山に戻り、山頂のツツジを愛でながら小休止。


ツツジ咲く常福院

なだらかな山道を東進して高水山へ。
突然現れた常福院には驚いたが、ツツジの美しさにも驚嘆する。
こんな所に、静寂の山上寺院があるとは。

ここからは一般登山道をはずれて伏木峠を目指す。
永栗ノ峰までは上手く辿り着いたが、
地図に無い林道の出現に動揺してか、
南の尾根に吸い込まれ、ヤブを掻き分けて出た所が榎峠であった。

止むを得ず車道を歩いて白岩の集落から伏木峠を目指す。


ニセ伏木峠

白岩集落のキツイ勾配の道を登り山道に入る。
沢の詰めに白い巨岩があったが、
これが集落名の白岩の由来となったものか?

峠には二つも道標があり、しっかりと「伏木峠」と記されていたが、
どうやらここはニセ伏木峠らしい。
本当の伏木峠は上成木側へもう少し行った所で、
石の祠がある所だ!
まんまと騙されて、ニセ伏木峠で踵を返してしまった。

後日、真の伏木峠を目指して再訪したいと思う。
「伏木」とは「ふしき」と読むらしいが、
「塞ぎ」、「ふせぎ」からの転化だろうか?
村に邪神や疫病が侵入しないように
峠に神を祀り防いだとも考えられる。


旧榎峠の切通し

車道の走る榎峠の横に、切通し状の旧榎峠が眠っていた。
歩く人もなく、落ち葉に埋もれかけた峠だ。 【*2】

これより杉植林地の急な階段を登りつめ雷電山を踏む。
「雷電」という強そうで、豪快なイメージとは裏腹に、
山頂は可愛らしく、豪快な展望もそこには無い。
杉や雑木に閉ざされた、ひそとした山頂だ。

ファミリーハイキングコース的な道を、
開花前のシャガを足元に見ながら名郷峠に向かう。
辛垣城跡なるものがあるが、体力温存の為先へ進む。


名郷峠(長尾峠)

名郷峠は峠らしい峠で成木と二俣尾を結ぶ。
峠には山ノ神らしき石祠が鎮座している。

『奥多摩』(宮内敏雄著)では「長尾峠」とも記されている。
また、同本によれば、名郷峠は、もっと雷電山に近いところの
鞍部であるとも読み取れる。

この名郷峠には、はっきりした越える道がつけられているのに、
地形図や登山地図に名前の記載が無いのが残念だ。


ノスゾウ峠(ノスザワ峠) か?

前出の『奥多摩』によると、名郷峠よりさらに東に行った地点の
正沢集落から二俣尾へ越す峠を「ノスゾウ峠」と記している。
【*3】
454m峰の石神入山(三方山)手前の栗平集落へ越す道と考えられる。

「ノスゾウ」とは人の名前か?
はたまた「乗っ越すぞう!」の意気込みか?

さらに東に進みたかったが名郷峠にもどり、
二俣尾駅へ向けて杉の植林地のジグザグを下る。
小さな沢が現れれば駅も近い。

集落の中にあった案内地図板に目をやると、
ノスゾウ峠は「ノスザワ峠」と記してあった。
ノス沢という沢があるのかもしれない。

駅前の酒屋で発泡酒を買って労をねぎらい帰路につくも、
荻窪の登山書を取り扱う古本屋に寄り道し、300円にて、
旧版『多摩の低山』(守屋龍男著)を仕入れて帰りの車内で読み耽る。
ああ、こんなにも埋もれつつある峠があるものかと感動しつつ、
うれしいやら、ヤレヤレと思うやら、
次回の峠行計画を練りながら家路についた。

【*1】 馬仏峠は『青梅を歩く』(青梅教育委員会)によれば、青梅市内では最も標高の高い峠という。 標高722m。
     二俣尾大沢と奥多摩町大丹波八桑を結ぶ峠。以前は奥多摩から高水山詣での近道として利用されたという。

【*2】 現峠は昭和50(1975)に改修されたもの。旧峠は東側の高いところにある。明治33(1900)の榎峠開鑿工事記念碑が建つ。
     「湯ノ木峠」と記した古い文献もある。

【*3】 栗平峠とも呼ぶらしい。

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