丹沢十峠

 

「丹沢十山」があるなら「丹沢十峠」があってもいいと思う。
丹沢を代表する峠で、かつ素敵な峠はどこだろうか。
「丹沢」の範囲や「素敵」という言葉の定義は曖昧だけれど考えてみようか。

その前に、一般的に丹沢で注目される峠はどこだろう、
各種文献資料から拾ってみよう。

『かながわの峠』(植木知司・かもめ文庫)では以下の峠が「丹沢」から選ばれている。

善波峠 浅間峠 不動越 蓑毛越 ヤビツ峠 旧ヤビツ峠 菩提峠 天神峠 七曲峠 山ノ神峠
津古久峠 巡礼峠 物見峠 貉坂峠 一ノ沢峠 物見峠 土山峠 半原越 宮ヶ瀬越 志田峠
三増峠 トズラ峠 犬越路 馬場峠 白石峠 城ヶ尾峠 二本杉峠 切通峠 三国峠 明神峠
世附峠 尺里峠 雨山峠 鍋割峠 後沢乗越 中山峠        

『丹沢・山ものがたり』(とよた時・山と渓谷社)では「峠の高さ比べ」と題し、
丹沢の峠が「標高順」に選ばれている。

馬場峠 1380 中ノ沢乗越 1320 金山谷乗越 1310 白石峠 1280 神ノ川乗越 1250 三国峠 1160
城ガ尾峠 1160 山伏峠 1140 バラシマ峠 1120 鍋割峠 1080 犬越路 1060 東沢乗越 1050
切通峠 1050 雨山峠 950 大滝峠 950 明神峠 890 山神峠 890 富士見峠 880
秦野峠 840 織戸峠 820 後沢乗越 800 ヤビツ峠 761 菩提峠 760 二本杉峠 740
峰坂峠 720 世附峠 700 蓑毛越 680 宮ヶ瀬越 660 物見峠 630 一ノ沢峠 550

『丹沢ブナは訴える』(神奈川新聞社編・かなしん出版)では「丹沢の主な峠」として紹介している。
(ほとんど上と同じ、馬場峠が無くて尺里峠が入っている)

中ノ沢乗越 1320 金山谷乗越 1310 白石峠 1280 神ノ川乗越 1250 三国峠 1160 城ヶ尾峠 1160
山伏峠 1140 バラシマ峠 1120 鍋割峠 1080 犬越路 1060 切通峠 1050 東沢乗越 1050
大滝峠 950 雨山峠 950 明神峠 890 山神峠 890 富士見峠 880 秦野峠 840
織戸峠 820 後沢乗越 800 ヤビツ峠 761 菩提峠 760 二本杉峠 740 峰坂峠 720
世附峠 700 蓑毛越 680 宮ヶ瀬越 660 物見峠 630 一ノ沢峠 550 尺里峠 530

『丹沢山塊・日本山岳写真書』(塚本閣治・生活社・昭和19)では、
「丹沢の峠は40に近い数であるが、その内から人間的な情趣を包蔵するもの」として以下を紹介している。

ザレ峠 白石峠 城ヶ尾峠 三国峠 鍋割峠 犬越路 雨山峠
明神峠 山神峠 富士見峠 秦野峠 ヤビツ峠 新ヤビツ峠 トビウツリ
二本杉の峠 世附峠・峰坂峠 物見峠 土山峠 善波峠    

『山と渓谷33号』では「丹澤の峠」(岩崎京二郎)と題し以下の峠を紹介している。

籠坂峠 ヅナ坂峠 三国峠 明神峠 峰坂峠 世附峠
切通シ 山伏峠 富士見峠 織戸峠 城ヶ尾峠 白石峠
大滝峠 二本杉峠 犬越路 箒沢乗越 中ノ沢乗越 ドウガク沢乗越(東沢乗越)
女郎小屋乗越 金山谷乗越 カギカケの越場 丹澤乗越 鍋割峠 雨山峠
玄倉峠(山神峠) 秦野峠        

『山と渓谷98号』では「世附川流域の峠」(鈴木経一)と題し「世附川流域」と限定しながらも、
以下の峠を紹介している。

二本杉峠 大滝峠 城ヶ尾峠 富士見峠 オリド峠 切通シ峠
三国峠 明神峠 峰坂峠 悪沢峠 世附峠  

『丹沢の山と渓』(川崎吉蔵・山と渓谷社・昭和27年)の「丹沢と史跡と伝承」(中野敬次郎)の中で
「丹沢の峠を思う」と題して以下の峠の名前が挙げられている。

城ヶ尾峠 二本杉峠 白石峠 犬越路 三国峠 明神峠 世附峠 秦野峠
雨山峠 山神峠 ヤビツ峠 土山峠 志田峠 三増峠 物見峠  

『ブルーガイド丹沢』(奥野幸道・実業之日本社・昭和51年)の中では
丹沢の峠として以下の峠が挙げられている。

ザレ峠 白石峠 城ガ尾峠 三国峠 鍋割峠 犬越路
明神峠 富士見峠 秦野峠 ヤビツ峠 雨山峠 山神峠

『丹澤記』(吉田喜久治・岳書房)には「峠について」と題した文章があり、
丹沢の峠について思いを語っている。

丹沢を代表する峠はどこか。
山の最高峰は蛭ヶ岳で議論の余地はないが、峠となると一寸うるさい。
高さだけで決めるわけにはいかないからだ。勿論、高さは第一の条件ではあるが、
特殊なもの(例えば山登りだけのもの)、利用度の薄いもの、年代の浅いもの、
そしてこさえもの(例えば旧帝室林野管理局関係のもの)など、峠として減点される要素をもつ。

・・・・・丹沢には1000mを越えるもの27あって、その過半は西部にある。
そのうち籠坂1104m、山伏峠1140m、三国峠1167m、ヅナ坂1320m、いずれも1000mを超え、
高度からすればAクラス、錚々たる顔触れである。
にもかかわらず彼らは南部、奥部での鍋割峠1080m、オガラ沢打越1000m、雨山峠970m、
山神峠910m等に遠くおよばない。
そのわけは山も沢も峠自身も深さ険しさがなく、浅く単調であるからで。

・・・・・まず常識的にいって主要峠の第一は城ヶ尾峠1170mであろう。

・・・・・単に高さだけでいうならば本谷川打越1560mは苦情がでようが、
鳥屋打越(早戸川打越、丹沢打越ともいう)1440mは問題なかろう。
さらにザレ峠(馬場峠)1380mを挙げるならば、破風口1400mも存在を主張するだろう。
お茶煮のコシッパ(白石峠)など歴としたもの。

・・・・・特殊なものとして山登りが通るだけで、土地の者は殆んど利用しないもの、・・・
金山谷打越1460m、ユウシン沢打越1300m、ザンザ洞キレット1340m、東沢打越1080m、
丈量小屋沢打越1000m、ヤシチ沢打越780m、コワリ沢打越780mなど。

・・・・・オガラ沢打越。おきすてられて顧みる者もいない。

・・・・・たくさんある峠の中でもっともユニークな存在は犬越路。

・・・・・雨山峠 この峠はいわば奥丹沢のクラッシックルート、好きな峠の一つである。

・・・・・山神峠 これまた忘れ得ぬ峠。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

これらはほんの一部、いろんな人が、いろんなとこで丹沢の峠について語っている。

数ある丹沢の峠の中から
お気に入りの素敵な峠を10だけ選ぶのは難しい。

標高、奥深さ、歴史、伝説、思い出、
人間の臭い、利用頻度、石祠・石仏の有無、舗装・未舗装の有無、
の他、特定の地域に偏らないバランスある選出もしなければなるまい。

丹沢を代表する峠を3ヶ所選べといわれれば、
ヤビツ峠、城ヶ尾峠、犬越路峠なのかもしれない。
しかし代表する峠と好きな峠とは異なる。
素敵な峠とも異なる。

代表する峠を10選べとなるとこれまた難しい。

ヤビツ峠 城ヶ尾峠 犬越路峠 山神峠(玄倉) 秦野峠
雨山峠 二本杉峠 世附峠 物見峠 山伏峠

なのか?
(多分、いや絶対違う!適当に選んでしまった)

最高度の馬場峠は?、樹林に包まれた一ノ沢峠は?、
不思議な山ノ神が祀られた山神峠は?、駄馬が越えた峰坂峠は?
などと問われると選考から除外する理由は見当たらない。

また、三増峠、善波峠、尺里峠、土山峠、宮ヶ瀬越などの
丹沢前衛の峠を無視し過ぎているかもしれない。

結局、選べない・・・・。

さして「10」に意味はないのだから。
それでいいのだ。

丹沢が「丹沢十峠」を簡単に選べてしまうエリアではなく、
頭を悩ますエリアであることを喜ぼうと思う。

頭を悩ますほど峠が豊富で、
情趣ある素敵な峠が多いのである。